理系じゃないと不利?

前の記事で「文系でもITエンジニアになれる」と書きましたが、ではどんな分野なら理系が有利で、どんな分野なら文理関係ないのでしょうか。この記事では、ITの仕事で必要な数学・物理レベルを職種別に整理します。

「理系が有利」と言われる背景

IT業界には確かに「理系の方が有利」と言われる分野があります。AI(機械学習)・暗号・3Dグラフィックス・組み込みシステム・ロボティクスなどは、線形代数・微積分・確率統計・物理を使うため、理系で学ぶ内容が役立ちやすい分野です。一方、Webアプリ開発・業務システム・ITコンサル・スマホアプリなどでは、高校数学を毎日使うわけではなく、文理の差よりも学習量や制作経験が効く場面があります。

分野ごとの数学レベル

IT職全体に占める「必要な数学レベル」の割合 割合は目安。職種や会社によって必要な数学レベルは変わる 数学レベル:低(中学算数) Web開発・業務系・コンサル・UI/UX 70% 数学レベル:中(高校数学IA・IIB) ゲーム開発・データ分析・クラウド・セキュリティ 20% 数学レベル:高(線形代数・微積) AI・暗号・3Dシミュレーション・研究開発 10% 0 25% 50% 75%
図1:必要な数学レベルは分野で違う。Web・業務系は入門しやすく、AI・暗号などは数学の比重が高い

左の「低」グループは、Web開発、業務システム、サポート、ディレクションなど、入門しやすい分野です。AIや暗号など数学が必要な分野もありますが、ITの仕事すべてが高度な数学を使うわけではありません。「理系じゃないと不利」と感じる場合でも、どの分野を目指すかで必要な準備は変わります。

本当に問われている能力

企業が新卒採用で重視する項目(%は『重視する』と答えた企業の割合) 採用で見られる力は会社や職種で変わる。対話・主体性・論理性は共通して重要 コミュニケーション能力 82% 主体性 64% チャレンジ精神 48% 協調性 47% 論理性 24% 学業成績(偏差値) 5% ←成績だけで決まるわけではない 0 40% 80% ★ 文系・理系どちらでも鍛えられる力が多い
図2:採用ではコミュニケーション、主体性、論理性など、文理を問わず鍛えられる力も見られる

採用面接で問われるのは、数学の点数だけではありません。論理的に考える力、自分で調べて進める力、相手に伝える力も見られます。これらは文理どちらでも鍛えられます。理系の数学Ⅲを取っていなくても、英語・国語・社会の学習で論理的に答えを組み立てる練習をしている人は、IT業界でも強みを作れます。

中高生におすすめの取り組み方

文系志望でも、情報Ⅰは手を抜かないこと。大学入試だけでなく、大学卒業後のITキャリアにもつながります。次に、PythonやJavaScriptで簡単なプログラムを動かす経験を積んでおくと、文理どちらの大学に進んでも応用が利きます。逆に理系志望の人は、現代文・小論文を捨てないこと。仕様書や説明文を書ける文章力がないと、現場で苦労します。

分野選びでは、「数学が得意か」だけでなく「何を作りたいか」を見ます。人に使ってもらうWebサービスを作りたいなら、UIや文章の分かりやすさも重要です。AIや画像処理に進みたいなら、数学を少しずつ積み上げる必要があります。自分の興味に合わせて、必要な科目を後から足していく考え方でも大丈夫です。

気をつけたい落とし穴

進路選択でやりがちな3つの誤解
  • 「数学が苦手だからITは無理」と早めに諦める。分野によって必要な数学レベルは違う
  • 「理系だから文章は書かなくていい」と思い込む。ITでは仕様書や説明文を書く場面が多い
  • 「理系・文系」のラベルで判断する。今のITは情報学部・データサイエンス学部など文理融合学部が増えている

将来どう役立つ?

近年、データサイエンス学部や情報経営学部など、文理融合の学部が増えています。入試科目やカリキュラムは大学ごとに違うため、志望校の公式情報を確認しましょう。文理のラベルだけにとらわれず、自分が何を作りたいか、どんな問題を解きたいかで進路を考えるほうが、結果的に幅広い選択肢につながります。

今日からできること

3ステップで始めよう
  1. 志望大学のWebサイトで「情報」「データサイエンス」「経営情報」のつく学部を3つ調べる
  2. 自分が興味のあるIT分野(Web・ゲーム・AIなど)の必要数学レベルを調べる
  3. 得意な科目(国語でも数学でも)を、ITとどう繋げられるか考えて1行メモを書く

まとめ

ITの仕事で必要な数学レベルは分野によって違います。Web・業務系・コンサルなどは入門しやすく、AI・暗号・3Dなどは数学の比重が高くなります。本当に問われるのは、数学だけでなく、論理的に考える力・自走力・伝える力の3つです。これは文理どちらでも鍛えられます。