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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

敬語 ── 尊敬・謙譲・丁寧・丁重・美化

日本語の特徴のひとつ 敬語。教科書では、まず 尊敬語・謙譲語・丁寧語 を中心に学び、あわせて 丁重語・美化語 も確認します。相手・話題の人・聞き手のどこに敬意が向くのかを整理しましょう。

敬語とは

用語
敬語
相手や話題の人物、聞き手への 敬意 や改まった気持ちを表す言葉。
立場や関係に応じて、尊敬語・謙譲語・丁寧語などを使い分ける。

敬語の基本分類

公式
まず押さえる3種類 + 2つの補足

① 尊敬語:相手・話題の人の動作を 高める

② 謙譲語:自分・身内の動作を へりくだって、行為の向かう先を高める

③ 丁寧語:聞き手に対して 丁寧に話す(です・ます)

④ 丁重語:自分側の動作を丁重に述べ、聞き手への敬意を表す(参ります・申します など)

⑤ 美化語:言葉を上品にする(お茶・お菓子・ご飯 など)

敬意はどちら向きに働くか(尊敬・謙譲・丁寧) ① 尊敬語 「先生がおっしゃる」 先生 高める 自分 相手(動作主)を高める ② 謙譲語 「私が申し上げる」 先生 下げる 自分 自分を下げ、相手を立てる ③ 丁寧語 「〜です・ます」 ていねい 話し手 聞き手 主語に関係なく聞き手へ 点線は自分のふつうの高さ。相手を上げれば尊敬、自分を下げれば謙譲。
図:敬意の向きの違い。「先生がおっしゃる」は相手を高める尊敬語、「私が申し上げる」は自分を低める謙譲語、「です・ます」は主語に関係なく聞き手へ向ける丁寧語です。

① 尊敬語の作り方

3つの作り方

(a) お・ご + 動詞 + になる

 例:先生がお読みになる、お客様がご利用になる

(b) 動詞 + れる/られる

 例:先生が行かれる、先生が来られる

(c) 特別な尊敬の動詞を使う

 例:いらっしゃる、おっしゃる、なさる、召し上がる、ご覧になる

② 謙譲語の作り方

2つの作り方

(a) お・ご + 動詞 + する/いたす

 例:私がお持ちする、ご案内いたす

(b) 特別な謙譲の動詞を使う

 例:参る、申す(申し上げる)、いたす、いただく、拝見する、伺う

③ 丁寧語

作り方

語尾を「です・ます」に変える

例:行く → 行きます、本だ → 本です

「ございます」も丁寧語の一種

→ 誰に対しても使える基本的な丁寧表現

丁重語と美化語

教科書で出てくる補足分類

丁重語:動作の向かう先ではなく、聞き手に対して丁重に言う。例:私は明日、旅行に 参ります。

美化語:誰かを高めるのではなく、話し手が自分の言葉を上品にする。例:お鍋、お盆、ご飯。

「参る・申す・いたす・おる・存じる」などは、文の中で丁重語として働くことがある。

主要動詞の敬語表(最重要)

普通尊敬語謙譲語
言うおっしゃる申す/申し上げる
するなさるいたす
食べる召し上がるいただく
飲む召し上がるいただく
見るご覧になる拝見する
行くいらっしゃる参る/伺う
来るいらっしゃる参る
いるいらっしゃるおる
聞くお聞きになるうかがう
知るご存じだ存じる/存じ上げる
会うお会いになるお目にかかる
もらういただく/頂戴する
与えるくださる差し上げる

使い分けの基本 ── 主語で判断

主語が誰かを見る

主語が相手・目上の人(先生、お客様、上司など)→ 尊敬語

 例:先生が おっしゃった(先生が言った)

 例:先生が いらっしゃる(先生が来る)

主語が自分・身内(私、私たち、家族など)→ 謙譲語

 例:私が 申し上げた(私が言った)

 例:私が 参ります(私が行く)

→ 主語をしっかり見ることが大切

丁寧語と他の2つの違い

丁寧語は誰にでも使える

丁寧語(です・ます)は 動作の主語に関係なく、聞き手に対する丁寧さ

例:「明日は雨です。」(聞き手に対して丁寧)

尊敬・謙譲は 動作の主語に注目

3つを 組み合わせて使うことも:

 例:「先生がおっしゃいました。」(尊敬 + 丁寧)

 例:「私が申し上げました。」(謙譲 + 丁寧)

よくある二重敬語の誤り

二重敬語に注意

× お話しになられる(「お〜になる」と「れる」の二重)

○ お話しになる、または 話される

△ 拝見させていただく(相手の許可・恩恵がある場面なら適切だが、単に「見た」の意味で使うと過剰になりやすい)

○ 拝見する(シンプルに伝わる場面ではこちらで十分)

→ 同じ種類の敬語を同じ語に重ねる「二重敬語」は避ける。「させていただく」は場面によって適切さが変わる表現なので、使いすぎに注意する

場面別の敬語

  • 授業中の先生との会話:尊敬語 + 丁寧語
  • 家族や友達:丁寧語不要(普通の言い方)
  • お客様への接客:尊敬語+謙譲語+丁寧語の組合せ
  • 就職面接:すべての敬語を正しく使う
  • メール・手紙:丁寧語+場面に応じた尊敬/謙譲
つまずきポイント①:主語で判断
  • 主語が相手・目上 → 尊敬語
  • 主語が自分・身内 → 謙譲語
  • 「先生がおっしゃった」(先生→尊敬)/「私が申し上げた」(私→謙譲)
  • 主語が誰かを必ず確認
つまずきポイント②:身内には謙譲
  • 外部の人に話すとき、自分の家族・会社内の人は 身内扱い
  • × 「父がおっしゃいました」(自分の父に尊敬は不適切)
  • ○ 「父が申しました」(謙譲を使う)
  • 会社で他社の人に:「弊社の田中が参ります」(社内の田中は身内)
つまずきポイント③:二重敬語
  • 敬語を重ねすぎると不自然
  • × おっしゃられる(おっしゃる+れる)
  • ○ おっしゃる
  • × 召し上がられる
  • ○ 召し上がる

教科書で確認した敬意の向き

  • 尊敬語は、動作・行為をする人を高める。
  • 謙譲語は、自分側の動作をへりくだって述べ、行為の向かう先への敬意を表す。
  • 丁重語は、行為の向かう先ではなく、聞き手への敬意を表す。美化語は言葉を上品にする働き。
つまずき:誰への敬意かを線で結ぶ
  • 「先生がご覧になる」は先生の動作を高める尊敬語。
  • 「私が先生にお見せする」は先生へ向かう自分側の動作なので謙譲語。

この章でつまずきやすいところ

敬語の問題は、文を読んでいる途中で「これは誰の動作?」と立ち止まると一気に混乱します。ここでは尊敬語・謙譲語・丁寧語を読み解くときに中学生がつい踏み外しがちな具体場面を、止まって考えるコツとともに整理します。

「お・ご」が付いていれば尊敬語と思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文中の「私がお持ちする」を見て、頭の「お」だけで尊敬語と判断しがち。けれど主語は「私」で、自分側の動作です。「お・ご」のラベルだけで分類してしまうと、尊敬語と謙譲語を取り違えてしまいます。
  • 克服のコツ:見分け方の順序を固定します。①まず主語が「相手・目上」か「自分・身内」かを確認 → ②そのうえで「お・ご+〜になる」型なら尊敬、「お・ご+〜する/いたす」型なら謙譲、と読み解きます。「お・ご」は尊敬語・謙譲語・美化語のいずれにも使われるため、「お・ご」が付くこと自体は決め手にはならず、主語と組み合わせ全体を見ることが先です。
  • ミニ例:「先生がお読みになる」は主語が先生で「お〜になる」型なので尊敬語。「私がお持ちする」は主語が私で「お〜する」型なので謙譲語。先頭の「お」は同じでも役割が逆になります。

身内の動作にも尊敬語を使ってしまう

  • つまずく場面:「父がいらっしゃいました」のような文を読んで、自然に聞こえてしまうため違和感に気づけない場面。外部の人に向かって自分の家族を話題にしている文では、身内に尊敬語を使う形になっていて不適切です。
  • 克服のコツ:位置関係で判断します。話している相手(聞き手)から見て、動作する人物が自分側(家族・自分の学校など)に入るなら謙譲語。「家族・身内=自分側」と線を引いてから、その人の動作には「参る・申す・いたす」を当てます。聞き手側に立つ人だけが尊敬語の対象です。
  • ミニ例:先生に向かって「母がいらっしゃいます」と言うのは不自然。母は身内なので、先生に向かっては「母が学校に参ります」と謙譲語を使います。

「参る」が出てくると反射的に謙譲語と決めてしまう

  • つまずく場面:本文に「私は明日、旅行に参ります」とあるのを見て、行く先を高めるための謙譲語だと読んでしまう場面。けれど旅行先は高める対象ではないので、ここでの「参る」は聞き手にへりくだって述べる用法として働いています。
  • 克服のコツ:因果関係で読み分けます。「参る」を見たら→①その動作の向かう先に高めたい人物がいるかを確認 → いれば行き先の人物を高める謙譲語、いなければ聞き手に対してへりくだって述べる用法(教科書によっては丁重語と呼ばれることもあります)と判断します。中学校では広い意味で謙譲語のはたらきとして整理されることが多く、採用教科書によって用語の扱いには違いがあります。
  • ミニ例:「先生のお宅に参ります」は向かう先が先生なので、行き先の人物を高める謙譲語。「明日、旅行に参ります」は向かう先を高めるわけではなく、聞き手にへりくだって述べる用法。同じ「参る」でも文中の役割が変わります。

敬意を強めようとして二重に重ねてしまう

  • つまずく場面:「先生がおっしゃられました」「ご覧になられる」など、特別な尊敬語にさらに「れる/られる」を重ねた文を、より丁寧で正しいと感じてしまう場面。敬意を強めたつもりが、結果として教科書では不自然な二重敬語と整理されます。
  • 克服のコツ:見分け方として「敬語は1つで十分」を基準に置きます。①特別な尊敬の動詞(おっしゃる・召し上がる・ご覧になる など)に「れる/られる」を足していないか確認 → ②「お〜になる」と「れる」を同時に使っていないか確認。一文に尊敬要素が二つ重なっていたら片方を外すのが原則です。
  • ミニ例:「先生がおっしゃられました」は二重敬語。「先生がおっしゃいました」または「先生が話されました」のどちらかにします。「召し上がられる」も「召し上がる」+「れる」で二重なので、「召し上がる」で十分です。

練習問題

問題1(敬語の種類)

次の言葉はどの敬語か。

  1. おっしゃる
  2. 申し上げる
  3. 参ります(聞き手に丁重に言う場合)
  4. 召し上がる
  5. いただく
  6. です・ます
答えを見る

(1) 尊敬語 (2) 謙譲語 (3) 丁重語 (4) 尊敬語 (5) 謙譲語 (6) 丁寧語

問題2(適切に直す)
  1. 先生が来た。 → ?
  2. 私が話した。(先生に対して)→ ?
  3. 先生が見た。 → ?
  4. 私が食べた。(お客様の前で)→ ?
答えを見る

(1) 先生がいらっしゃった

(2) 私が申し上げた

(3) 先生がご覧になった

(4) 私がいただきました

問題3(誤りを直す)

次の誤りを直せ。

  1. 先生がおっしゃられました
  2. 父がいらっしゃいました(他社の人に)
答えを見る

(1) 「おっしゃる」+「れる」の二重敬語。→ 「先生がおっしゃいました」

(2) 父は身内なので謙譲。→ 「父が参りました」

問題4(場面に応じて)

「お客様から商品を受け取った」を、お客様に対して丁寧に言いかえよ。

答えを見る

「お客様から商品をいただきました」(謙譲+丁寧)

まとめ

  • 敬語はまず 尊敬語・謙譲語・丁寧語 を区別する。
  • 尊敬:相手の動作を高める。
  • 謙譲:自分側の動作をへりくだり、行為の向かう先を高める。
  • 丁寧:聞き手に対する丁寧表現(です・ます)。
  • 丁重語は聞き手への敬意、美化語は言葉を上品にする表現。
  • 主語が誰かで尊敬/謙譲を使い分ける。
  • 身内(家族・社内の人)には謙譲語を使う。
  • 二重敬語は不自然、敬語は1つで十分。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

教科書の「5分類」は国が決めた指針が土台発展

尊敬語・謙譲語・丁寧語に加えて丁重語・美化語を学ぶのは、文化審議会の答申「敬語の指針」(2007年)が敬語を5種類に整理したためです。国が示した基準なので、迷ったときはこの考え方に立ち返ると判断しやすくなります。

出典:文化庁「敬語の指針」(文化審議会答申)

教科書の「謙譲語」は、実は2つに分かれる発展

文化庁は謙譲語を、相手に向かう行為を低めて述べる「謙譲語I(伺う・申し上げる)」と、自分の行為を聞き手に丁重に述べる「謙譲語II=丁重語(参る・申す)」に分けています。教科書が丁重語を別に立てるのはこのためで、同じ「参る」でも向かう敬意が違うと理解できます。

出典:文化庁 敬語おもしろ相談室(第二話「敬語の基本」解説)

「御利用される」はなぜ間違い?──公的解説で確認実生活

文化庁は「御利用される」を、謙譲語Iの「御利用する」と尊敬語の「れる」が重なった不適切な例だと説明しています。正しくは「利用される」「御利用になる」です。教科書の「二重敬語に注意」は、こうした公的な解説と同じ考え方に基づいています。

出典:文化庁 敬語おもしろ相談室(理解度チェックの解答)

「させていただく」が使えるのは2つの条件がそろうとき実生活

文化庁の「敬語の指針」は、「させていただく」が適切なのは、相手や第三者の許可を受け、それで自分が恩恵を受ける場合だと示しています。許可も恩恵もないのに使うと不自然になるので、面接やメールで使う前にこの2点を確かめると安心です。

出典:文化庁「敬語の指針」(文化審議会答申)

大人も「敬語」を気にしている──世論調査の数字実生活

文化庁の令和5年度「国語に関する世論調査」では、国語で関心がある点として「敬語の使い方」を挙げた人が48.9%で、日常の言葉遣いに次ぐ2位でした。敬語は学校だけでなく、社会に出てからも多くの人が意識し続けるテーマだとわかります。

出典:文化庁 令和5年度「国語に関する世論調査」の主な結果

「敬語」は日本語の魅力としても上位に発展

同じ令和5年度の調査では、日本語の魅力を感じる点として「敬語などの敬意を表す言葉遣い」を選んだ人が58.1%で、文字の多様さに次ぐ2位でした。敬語は正しく使う対象であると同時に、日本語らしさを支える特徴として評価されています。

出典:文化庁 令和5年度「国語に関する世論調査」の主な結果