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学校のタブレットだけでは足りない──子どもにパソコンが必要な、本当の理由

学校でタブレットを使っているから、子どもはもう十分にデジタルに慣れている。そう感じる方もいるかもしれません。

けれど、タブレットを操作できることと、パソコンで文章を書き、ファイルを扱い、調べて、作って、発信できることは同じではありません。特にキーボード入力は、使う機会がなければなかなか身につきません。

文部科学省の調査では、小学生の1分間の平均キーボード入力数は5.9文字——大人の実務に求められる速度の10分の1にも満たない水準です。

GIGAスクール構想によって1人1台の端末が整備されたにもかかわらず、子どものキーボードスキルはほとんど育っていません。「学校で配られたタブレットだけで、子どもは十分なデジタルスキルを身につけられるのか」という問いは、このデータが示す通りです。

GIGAスクールの現実

GIGAスクール構想により、全国の公立小中学校では1人1台の端末が整備されました。文部科学省のデータによると、小学生の約78%がこれらの端末を利用しています。一見、デジタル格差は解消されたように見えます。しかし実情は異なります。

学校で使われている端末の多くはタブレット型で、主に「見る・読む・確認する」用途に設計されています。キーボードを日常的に使う機会は限られており、先進的な取り組みを行う学校では22文字を超える子どももいますが、それはごく一部に留まっています。

パソコンでしか育たないスキルがある

パソコンを使いこなすことで子どもが得られるスキルは多岐にわたります。文書の作成・編集、ファイルやフォルダの管理、表計算の基礎操作、Webでの情報検索と取捨選択──これらはスマートフォンやタブレットでは代替しにくい「PC固有の操作体験」です。こうした経験の積み重ねが、中学・高校・大学・社会人へと続く学習や仕事の基盤になります。

さらに重要なのは、プログラミングです。2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されましたが、本格的なコードを書いてプログラムを動かす体験は、マウスとキーボードを備えたパソコンなしには成立しません。タブレットでのビジュアルプログラミングは入口として有効ですが、そこで止まってしまう子どもが多いのが現状です。

AIを使いこなすには、まずパソコンを使いこなす力が必要

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX動向2025」では、AI時代に必要なデジタル人材育成として、基礎的なICTスキルの早期習得が強調されています。

ChatGPTやCopilotなどの生成AIは、テキスト入力と画面操作を前提とした設計です。AIを効果的に活用するには、的確な指示文(プロンプト)を素早く入力し、返ってきた情報を整理・編集する力が求められます。これはまさにパソコン操作の延長線上にあるスキルです。「AIが使えるか否か」は、今後の進路・就職・社会参加に直結する問題になりつつあります。

広がるデジタル格差、置き去りにされる子どもたち

問題はさらに深刻な側面を持ちます。経済的な事情から家庭にパソコンがない子どもと、日常的に使いこなしている子どもとでは、デジタルリテラシーに顕著な差が生まれています。KUMON「家庭学習調査2025」では、約30%の保護者が家庭でのデジタル学習を実施していないと回答しています。子どもへのデジタル機器の提供は、保護者の経済状況や意識に大きく依存しているのが実態です。

支援団体の調査が指摘するように、このデジタル格差は学力格差・収入格差とも連動しています。「個人の問題」ではなく「社会的課題」として捉え直す必要があります。学校が端末を配布しても、家庭でパソコンに触れる機会がなければ、その差は縮まりません。放課後や休日に自由に使える環境こそが、子どものデジタルスキルを育てます。

パソコンは「勉強道具」ではなく「基礎インフラ」

子どもにとってパソコンは「勉強道具のひとつ」ではなく、「社会に出るための基礎インフラ」です。読み書き計算と同じように、パソコン操作は現代社会での基礎リテラシーになっています。学校のタブレットだけでは届かない、「すべての子どもへの本当のデジタル教育」が必要です。

デジタルこどもBASEは、家庭にパソコンがない子どもへのPC無償提供と、大田区の施設でパソコンやAI・プログラミングを楽しく学べる場の提供に取り組んでいます。デジタルの力は、すべての子どもに届けられなければなりません。

参考資料