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那須与一 ── 屋島の戦いの名場面

『平家物語』の名場面 「那須与一」。源氏方の若き弓の名手が、平家の挑発に応えて 遠くの扇の的を射抜く、緊張感あふれる名シーン。中2国語の古典の中でも特に人気の高い章段。

場面の背景 ── 屋島の戦い

用語
屋島の戦い
1185年、源平合戦の重要な戦い。
場所:讃岐国 屋島(現在の香川県高松市)
源義経の急襲により、平家軍が海上に逃れ、源氏軍と対峙。
場面の状況

2月、寒い時期

瀬戸内海で源氏軍(陸)と平家軍(海上の船)が向かい合う

平家側の 挑発:船の上に女房(女性)が乗り、竿の先に を立てる

「これを射抜いてみよ」というメッセージ

源義経の命を受けて、若き武士 那須与一宗高が挑む

那須与一について

  • 那須与一宗高(なすのよいち むねたか)
  • 下野国(現在の栃木県)那須の出身
  • 弓の名手として知られた
  • 当時 約 20歳(若さで重要な任務を任される)
  • 10人兄弟の末弟、「与一」は「十余り一(十一番目)」の意

有名な原文の一節

緊迫の状況

折節(おりふし)北風はげしくて、磯打つ波も高かりけり。

船は揺り上げ揺りすゑ、漂へば、扇もくしに定まらずひらめいたり。

沖には平家、船を一面に並べて見物す。

陸には源氏、くつばみを並べてこれを見る。

いづれもいづれも、晴れならずといふ事ぞなき。

現代語訳

折しも北風が激しく、磯を打つ波も高かった。

船は上下に揺れ、漂うので、扇も竿の先で安定せず、ひらひらと動いている。

沖には平家が船を一面に並べて見物している。

陸には源氏が馬を並べてこれを見ている。

どちらもどちらも、晴れがましくないということはない(みなが緊張して見つめている)。

那須与一の覚悟と祈り

原文

「南無八幡大菩薩、別(べち)しては我が国の神明、日光の権現・宇都宮・那須の湯泉大明神、願はくは、あの扇の真ん中射させてたばせ給へ。これを射損ずるものならば、弓切り折り自害して、人に二度面(おもて)を向かふべからず。」

現代語訳

「南無八幡大菩薩、特に我が国の神々、日光権現・宇都宮明神・那須湯泉大明神、どうかあの扇の真ん中を射させてください。もし射損じたら、弓を折って自害し、二度と人に顔を見せません。」

→ 神への祈りと、失敗への覚悟(自害)

→ 若さと真剣さがにじむ場面

見事に的中 ── クライマックス

的中の瞬間

与一は鏑矢(かぶらや)を放つ

→ 矢は風を切って飛び、見事に 扇の要を射抜く

扇は 春風に乗って空高く舞い上がり、海に落ちる

→ 平家・源氏両方から歓声が上がる

「沖には平家、ふなばたを叩いて感じたり。陸には源氏、えびらを叩いてどよめきけり」

→ 敵味方の区別なく、その美しさに感動

続編 ── 老武者の舞

後日談

扇が射抜かれた後、平家の老武者が船べりに出て舞を舞う(喜んでいる素振り?挑発?)

源義経が「もう一射よ」と那須与一に命令

与一は再び矢を放ち、老武者を射倒す

→ 平家側は静まり返り、源氏側も「あまりにも非情だ」と引きずるような気持ちに

→ 戦争の 非情さを示すエピソード

場面の魅力と教科書での扱い

  • 緊張感ある場面描写(風・波・船・矢)
  • 若き武士の 覚悟祈り
  • 敵味方を超えた 感動
  • 戦争の 非情さもしっかり描く
  • 音読しても美しい 七五調のリズム
  • 琵琶法師の語りを意識した文体

重要語句

古語意味
折節(おりふし)ちょうどそのとき
はげしく激しく
くしに定まらず竿の先で安定せず
ひらめくひらひらと動く
くつばみ馬の口にかける金具、ここでは「馬」を指す
晴れならず晴れがましくない(注目されないこと)
南無祈りの言葉
別して特に
面(おもて)を向かふ顔を向ける

源平合戦の流れと位置づけ

時系列

1180年:源頼朝、伊豆で挙兵

1183年:木曾義仲が京都へ入る

1184年:一の谷の戦い(鵯越の逆落とし)

1185年:屋島の戦い(那須与一の活躍)

1185年:壇ノ浦の戦い(平家滅亡)

つまずきポイント①:源平合戦の流れ
  • 1180年 源頼朝挙兵
  • 1184年 一の谷の戦い
  • 1185年 屋島の戦い(那須与一の活躍
  • 1185年 壇ノ浦の戦い(平家滅亡)
  • 歴史と国語を関連付けて覚える
つまずきポイント②:与一の祈り
  • 「南無八幡大菩薩」「日光権現」「那須湯泉大明神」など複数の神を挙げる
  • 失敗したら自害するという覚悟
  • 若き武士の真剣さがよく表れた場面
つまずきポイント③:感動の表現
  • 「ふなばたを叩く」(船べりを叩く、感動の表現)
  • 「えびらを叩く」(矢入れを叩く、武者の感動)
  • 敵味方を超えて感動する姿が描かれる

教科書で確認した場面読解の軸

  • 「扇の的」は屋島の戦いの一場面で、那須与一の緊張と覚悟が中心になる。
  • 扇は小舟の上で揺れ、夕方の海という条件が難しさを強めている。
  • 与一の祈り、的中、敵味方の反応を順に追うと、場面の盛り上がりが見える。
つまずき:成功だけを読むと浅くなる
  • 与一は名誉だけでなく、失敗すれば源氏全体の面目に関わる重圧を背負う。
  • 老武者の舞の場面は、武士の価値観と残酷さを考える材料になる。

練習問題

問題1(基本)
  1. 那須与一が活躍した戦いは何か
  2. 那須与一は何を射抜いたか
  3. 『平家物語』の作者
  4. 那須与一はおよそ何歳だったか
答えを見る

(1) 屋島の戦い (2) 扇(扇の的) (3) 不詳(琵琶法師が語り継いだ) (4) 約20歳

問題2(語句)

次の古語の意味を答えよ。

  1. 折節
  2. 晴れならずといふ事ぞなき
  3. くつばみを並べて
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(1) ちょうどその時

(2) 晴れがましくない(注目されない)ということはない(みなが見つめている)

(3) 馬を並べて

問題3(内容)

与一が祈った時、もし失敗したらどうすると誓ったか。

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弓を折って自害し、二度と人に顔を見せないと誓った。

問題4(場面)

扇を射抜いた後、平家・源氏はどう反応したか。

答えを見る

平家は船べりを叩き、源氏はえびら(矢入れ)を叩き、どちらも感動した。敵味方関係なくその技に感激した。

まとめ

  • 那須与一:屋島の戦い(1185年)で活躍した若き弓の名手。
  • 平家の挑発に対し、扇の的を射抜く。
  • 覚悟と神への祈りが見事に結びついた名場面。
  • 敵味方を超えた感動の描写。
  • 続編で老武者を射る場面は戦争の非情さを描く。
  • 七五調のリズムで琵琶法師の語りに合う美しい文体。