図でつかむ
この図は、式や定理を読む前に全体像をつかむための補助図です。問題を解くときも、まず同じような簡単な図を自分で描いてから条件を書き込むと、見落としが減ります。
直角三角形の用語
直角の向かい側の辺を 斜辺(最も長い辺)、残りの2辺を 直角をはさむ辺という。
△ABC で ∠B = 90°(直角は B)
斜辺:AC(直角の向かい側)
直角をはさむ辺:AB と BC
鋭角:∠A と ∠C(残りの2角、90°未満)
直角三角形の合同条件(2つ)
① 斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい(RHS)
② 斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい(RHA)
このいずれかが言えれば合同。
① 斜辺と他の1辺
直角三角形 ABC で 直角 = B、斜辺 AC = 10、AB = 6
直角三角形 DEF で 直角 = E、斜辺 DF = 10、DE = 6
→ 直角三角形の合同条件①で合同
普通なら 3辺必要だが、直角があるので 2辺でOK
なぜなら、三平方の定理(中3で学ぶ)で残りの辺 BC = √(10² − 6²) = 8 が決まる
② 斜辺と1鋭角
直角三角形 ABC で 斜辺 AC = 8、∠A = 30°(直角は B)
直角三角形 DEF で 斜辺 DF = 8、∠D = 30°(直角は E)
→ 合同条件②で合同
直角+∠A=30° から残りの ∠C = 60° も決まる → 1辺と両端の角と同じ
なぜ少ない条件で合同?
直角三角形は すでに1つの角(90°)が決まっている
→ 通常の合同条件「3角」では足りないが、「直角+鋭角」 = 2角が決まる
→ さらに辺が1本決まれば形が一意に決まる
普通の三角形より 1つ少ない情報で合同が言える
通常の合同条件との関係
- 直角三角形の合同条件②(斜辺と1鋭角)= 通常の「1辺両端角」と本質的に同じ
- (直角と鋭角の2角が決まり、斜辺は1辺)
- 直角三角形の合同条件①(斜辺と他の1辺)= 三平方の定理(中3)で3辺目が決まる
- 通常の3辺合同に帰着できる
- → 一見特別だが、実は通常の合同条件の特殊な場合
使い分けのコツ
問題に「直角三角形」「∠B = 90°」「⊥」が出てきたら、直角三角形の合同条件が使える可能性
通常の合同条件3つでも証明できるが、直角三角形の合同条件を使うと早い
高校以降は通常の合同条件で統一して使うことが多い
応用例 ── 二等辺三角形の証明(垂線使用)
AB = AC の二等辺三角形 ABC で、A から BC への垂線の足を H とする
△ABH ≡ △ACH を示せ
[証明] △ABH と △ACH で
① ∠AHB = ∠AHC = 90°(垂線)
② AB = AC(仮定)
③ AH = AH(共通)
①、②、③ より、直角三角形の斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい
よって △ABH ≡ △ACH
応用例 ── 角の二等分線の性質
∠AOB の二等分線上の点 P から、OA、OB に垂線 PH、PK を下ろす。
△OHP ≡ △OKP を示せ。
[証明] △OHP と △OKP で
① ∠OHP = ∠OKP = 90°(垂線)
② OP = OP(共通、斜辺)
③ ∠HOP = ∠KOP(角の二等分線)
①、②、③ より、直角三角形の斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい
よって △OHP ≡ △OKP
→ PH = PK(角の二等分線上の点は、両辺から等距離)
- 斜辺:直角の向かい側の辺。最も長い辺
- 「斜辺と他の1辺」 = 斜辺+直角をはさむ辺の1本(合計2辺)
- × 斜辺と斜辺(同じものを2回数える)
- 図で 斜辺をマーキングするクセを
- 「直角三角形」だと言うこと自体が「∠ = 90°」を含む
- 合同条件①の3つの根拠:「直角」+「斜辺等しい」+「他の1辺等しい」
- → 直角は「直角三角形」の条件としてあらかじめ与えられた
- 「斜辺と1つの鋭角」の鋭角は、90°未満の角
- 合同条件②では、その鋭角の 位置(どの位置の鋭角か)も明示
- 例:直角の隣の鋭角(斜辺と直角辺ではさむ角)
この章でつまずきやすいところ
直角三角形の合同条件は、普通の三角形より少ない情報で合同が言える便利な道具ですが、「斜辺はどれか」「直角は条件に数えるのか」で読み進める途中に迷いやすい単元です。本文を追う場面ごとに、引っかかりやすいポイントを整理します。
斜辺を「長く見える辺」と思い込んでしまう
- つまずく場面:「斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい」という条件を読んでいる途中で、図の中の斜めに描かれた辺をそのまま斜辺だと決めつけ、直角の位置を確認しないまま辺の対応を書き始めて迷ってしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で見分けます。斜辺は「直角の向かい側にある辺」と定義されているので、図を見たら最初に直角マークを探し、その向かい側の辺に印を付けてから条件を読み直す。長く見えるかどうかではなく、直角からの位置で決まることを徹底する。
- ミニ例:△ABC で ∠B = 90° なら、斜辺は B の向かいの AC。図が回転して AC が水平に描かれていても、直角 B の向かいである事実は変わらない。
直角を合同条件の1つにカウントしてしまう
- つまずく場面:「斜辺と他の1辺」で証明する途中、根拠を書き出すときに「直角が等しい」「斜辺が等しい」「他の1辺が等しい」と3つ並べてしまい、なぜこれが特別な条件と呼ばれるのか分からなくなってしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理します。「直角三角形である」と宣言した時点で 1つの角が 90° であることは前提として与えられている、と考える。だから直角は「追加で示す条件」には数えず、追加で示すのは斜辺と他の1辺の2つだけ。これが「普通より1つ少ない情報で済む」理由になる。
- ミニ例:△ABC で AB = AC の二等辺三角形を考え、A から BC へ下ろした垂線の足を H とすると、△ABH と △ACH はともに直角三角形になり、∠AHB = ∠AHC = 90° は「直角三角形である」前提に使える。追加根拠として斜辺 AB = AC と他の1辺 AH = AH(共通)の2つを示す形にする。
「斜辺と1鋭角」の鋭角の位置を確認せずに使ってしまう
- つまずく場面:合同条件②「斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい」を読み、片方の三角形で ∠A = 30°、もう片方で ∠F = 30° と書かれているのを見て、位置が同じか確かめないまま「鋭角が等しいからOK」と先に進んでしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で確認します。鋭角は2つあるので、どちらの鋭角どうしを対応させるかを頂点の順序とセットでチェックする。斜辺の両端にある2つの鋭角のうち、どちらに着目しているのかを頂点記号で対応させることを意識し、対応する頂点の順序で三角形名を書く。
- ミニ例:△ABC(直角 B、斜辺 AC、∠A = 30°)と △DEF(直角 E、斜辺 DF、∠D = 30°)では、A と D が対応する鋭角。順序を守って △ABC ≡ △DEF と書く。
「2鋭角が等しい」だけで合同と言えると思ってしまう
- つまずく場面:練習問題で「2鋭角が等しいなら合同か」と問われたとき、本文の合同条件②(斜辺と1鋭角)の印象に引きずられて「角が2つも合えば合同に決まっている」と感じ、形と大きさの違いを区別できずに迷う場面。
- 克服のコツ:因果関係で押さえます。2つの鋭角が等しいと「直角+2鋭角」で形は決まるが、辺の情報が1つもないため大きさは決まらない。合同には「形+大きさ」の両方が必要なので、必ず1辺(斜辺でも直角をはさむ辺でも)の情報を加える必要がある、と読み直す。
- ミニ例:直角と ∠A = 30° が同じ直角三角形は無数にあり、斜辺 5cm のものと斜辺 10cm のものは相似だが合同ではない。1辺の長さが加わって初めて合同が言える。
練習問題
2つの直角三角形について、合同を示すには次のうちどれが言えればよい?(複数可)
- 斜辺と1辺
- 斜辺と1鋭角
- 2鋭角
- 斜辺と直角
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(1) ○(合同条件①)
(2) ○(合同条件②)
(3) ×(形は決まるが大きさが決まらない)
(4) ×(直角はすでに直角三角形に含まれるので情報増えず)
AB = AC の二等辺三角形 ABC。A から BC への垂線の足を H とする。△ABH ≡ △ACH を証明せよ。
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△ABH と △ACH で、
① ∠AHB = ∠AHC = 90°(垂線)
② AB = AC(仮定)
③ AH = AH(共通)
直角三角形の斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいので △ABH ≡ △ACH
∠AOB の二等分線上の点 P から OA、OB に垂線 PH、PK を下ろす。PH = PK を示すには何の合同を示せばよいか。
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△OHP ≡ △OKP を示せばよい。斜辺 OP 共通、∠HOP = ∠KOP(二等分線)、∠H = ∠K = 90° → 斜辺と1鋭角。合同から PH = PK。
「2つの直角三角形で、ある1辺と1鋭角が等しい」だけで合同と言えるか?
答えを見る
対応する位置の1辺と1鋭角まで分かっていれば、直角も含めて「1辺とその両端の角」に帰着できるので合同。
ただし、直角三角形専用の合同条件として使うなら 斜辺と1鋭角、または 斜辺と他の1辺 を明示する。
まとめ
- 直角三角形の合同条件は 2つ。
- ① 斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい。
- ② 斜辺と1つの鋭角がそれぞれ等しい。
- 普通の三角形より少ない条件で合同が言える。
- 直角があるため、形が一意に決まりやすい。
- 使いどころ:垂線・二等辺三角形・角の二等分線。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
三角測量:1辺と角で位置を決める実生活
国土地理院によると、三角測量では3〜10km離れた2点間の距離(基線)を正確に測り、もう1点を加えて三角形を作り、その内角を測ります。この基線とその両端の2つの角から三角形の大きさと形が計算で決まるしくみで、「1辺とその両端の2つの角が決まれば三角形は1つに決まる(合同条件ASA=一辺両端角)」という考え方が使われています。
明治の日本を測った三角網発展
国土地理院によると、日本初の三角測量は1872年に実施され、1913年に全国の一等三角測量が終了しました。地上に三角形の網を次々につないで全国の正確な位置を求めたもので、三角形の形が条件によって決まる性質が、地図づくりの土台になりました。
東京スカイツリーを支えるトラス構造実生活
東京スカイツリーの塔体は、主材・水平材・斜材を三角形状に接合した「トラス構造」でできています。三角形は辺の長さが決まれば形が変わらない(合同条件で形が一意に決まる)ため、四角形の骨組みより少ない部材で、風や地震の横向きの力にも強い構造をつくれます。
なぜ三角形だけが変形しないのか発展
四角形は辺の長さを変えなくても平行四辺形へ崩れますが、三角形は3辺の長さが決まると形が1つに決まり、つぶれません。これは三辺相等(SSS)の合同条件そのものです。国土交通省の解説でも、橋に使われるトラスは「三角形の集合体のことで、変形しにくい構造」と説明されており、橋や鉄塔の骨組みに三角形が使われる数学的な理由になっています。
