図でつかむ
箱の長さは中央50%の散らばり、ひげの長さは端の値までの広がりを表します。平均ではなく、分布の形を比べるための図だと押さえてください。
箱ひげ図とは
5つの値(最小値・Q₁・中央値・Q₃・最大値)から作る。
1つの図で データの広がり、偏りがひと目で分かる。
5つの値(5数要約)
- 最小値(min):データの最小
- Q₁(第1四分位数):25% 位置
- Q₂(中央値):50% 位置
- Q₃(第3四分位数):75% 位置
- 最大値(max):データの最大
箱ひげ図のかき方
① 数直線(または軸)を用意
② 箱を Q₁ から Q₃ までの範囲で描く
③ 箱の中に 中央値 Q₂ の位置に縦線を引く
④ 箱の 両端から最小値・最大値まで水平線(ひげ)を伸ばす
⑤ 最小値・最大値の位置に小さな垂直線
箱ひげ図のイメージ
min ────[ Q₁ │ Q₂ │ Q₃ ]──── max
ひげ 箱 ひげ
左から:min、ひげ、Q₁、箱の中の中央値、Q₃、ひげ、max
縦に描く場合もある(高さ方向に並べる)
箱ひげ図の読み方
箱の長さ = 四分位範囲(Q₃ − Q₁):中央 50% の散らばり
→ 箱が長い:データが広く散らばっている
→ 箱が短い:データが密集
ひげの長さ = 端のデータまでの距離
→ ひげが長い:外れ値の可能性
中央値の位置:箱の中で偏っていれば、分布が非対称
→ 中央値が右寄り:データが左に偏っている
→ 中央値が左寄り:データが右に偏っている
具体例 ── 箱ひげ図を作る
並び替え済み
最小値 = 2、最大値 = 18
中央値 Q₂ = 8(5番目)
下半分(2,4,5,7)→ Q₁ = (4+5)/2 = 4.5
上半分(11,13,15,18)→ Q₃ = (13+15)/2 = 14
5数要約:2、4.5、8、14、18
→ これを数直線に描くと箱ひげ図完成
複数データの比較
複数のクラス・店舗などのデータを 並べて比較できる
中央値・散らばり・外れ値の有無が一目瞭然
→ ヒストグラムよりも比較に向く
→ A組 と B組 の成績比較、年度ごとの売上比較 など
A組:最小30、Q₁ 50、中央60、Q₃ 75、最大90
B組:最小40、Q₁ 55、中央70、Q₃ 80、最大95
→ 中央値はB組が高い(60→70)。Q₁・Q₃もB組が高いが、全体的な高さは箱ひげ全体の位置で判断する
→ A組のほうが範囲が広い(散らばりが大きい)
ヒストグラムとの違い
| 箱ひげ図 | ヒストグラム | |
|---|---|---|
| 表すもの | 5数要約 | 度数分布 |
| 得意 | 複数データの比較 | 1つのデータの形を見る |
| 分布の詳細 | 大ざっぱ | 細かく分かる |
| 用途 | 比較中心 | 1グループの詳細 |
外れ値と箱ひげ図
慣例:Q₁ − 1.5 × IQR より小、または Q₃ + 1.5 × IQR より大なら「外れ値」
外れ値は箱ひげ図で 点で表す(ひげの外側に)
→ 外れ値が見えるので、データ分析で役立つ
中学校レベルでは詳しくは扱わないが、知っておくと便利
- 最小値、Q₁、Q₂、Q₃、最大値 の 5つすべて必要
- 1つ抜けると箱ひげ図にならない
- 偶数個のデータは平均で計算(前回学習)
- 箱の 左端 = Q₁、右端 = Q₃
- 箱の中の縦線が 中央値 Q₂
- ひげの先が最小値・最大値
- 箱の長さ = 四分位範囲
- 箱ひげ図を描くときは 横軸の目盛りを等間隔に
- 等間隔でないとデータの広がりが正しく見えない
- 数値も明示する
この章でつまずきやすいところ
箱ひげ図は5つの値だけでデータの散らばりを見る図ですが、本文を読みながら「箱の中に全部入っているのかな」「ひげが長い側に人が多いのかな」と迷いやすい単元です。読み取りの途中で起きるつまずきを場面ごとに整理します。
箱の中に全データが入っていると思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「箱はQ₁からQ₃まで」を読みながら図を見て、箱の外側に出ている部分を「データに含まれない部分」と勘違いし、箱の中だけが全データだと考えてしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で整理する。箱の左端=Q₁(25%地点)、右端=Q₃(75%地点)なので、箱に入るのは中央の約50%だけ。残りの下25%と上25%はひげの部分に含まれる。箱の外=データ外ではなく、ひげも立派にデータの一部だと押さえる。
- ミニ例:9個のデータ 2,4,5,7,8,11,13,15,18 で5数要約は 2、4.5、8、14、18。箱は4.5〜14に入る5,7,8,11,13の5個分(約半分)で、2と18はひげの先端に来る。
ひげが長い側にデータが多いと思い込んでしまう
- つまずく場面:練習問題で2クラスの箱ひげ図を見比べているとき、右のひげが長い図を見て「右側に人がたくさんいる」と読んでしまい、ひげの長さを人数の多さと混同してしまう場面。
- 克服のコツ:見分け方で整理する。ひげの長さは人数ではなく値の広がりを表す。箱ひげ図は最小〜Q₁、Q₁〜中央値、中央値〜Q₃、Q₃〜最大の4区間に分かれ、それぞれが全体の約25%で人数はどの区間も同じ。長い側は「同じ25%でも値が大きく散らばっている」という意味になる。長さ=範囲、人数は常に25%ずつと覚える。
- ミニ例:Q₃=80、最大値=95と上のひげが長く伸びても、そこに入るのは上位25%の人数だけ。下のひげ・箱の左半分・箱の右半分・上のひげの4区間がそれぞれ全体の25%ずつなので、ひげが長い=多人数ではない。
中央値の位置だけでクラスの優劣を決めてしまう
- つまずく場面:本文の2クラス比較例を読みながら、A組の中央値60、B組の中央値70だけを見て「B組の勝ち」と判断し、箱の長さやひげの広がりを見ないまま読み進めてしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。中央値が高い→中央値の位置は高いと言えるが、それだけでは全体的に高得点かどうか・散らばりの大小は分からない。本文の通り読み取りは①中央値→②箱の長さ(IQR)→③ひげと最大・最小の順。中央値で「位置」、箱で「中央50%の散らばり」、ひげで「端まで」を別々に読み、そのすべてを合わせて初めて「全体的に高い・低い」を判断する。
- ミニ例:例1(中央値だけが違う場合):A組・中央60、B組・中央70でIQRが同じなら「全体的にB組が高い」と言える。例2(IQRも違う場合):A組・中央60・IQR=10、B組・中央70・IQR=20ならB組のほうが点差が大きく、安定度はA組という別の読み取りもできる。
箱の中の縦線を平均値の線だと思い込んでしまう
- つまずく場面:図を見ながら箱の中の縦線が何を表すか曖昧になり、「真ん中だからきっと平均」と読み替えてしまう場面。本文の「箱の中の縦線が中央値Q₂」を読み飛ばすと、平均と中央値を混同しやすい。
- 克服のコツ:見分け方で整理する。箱ひげ図の縦線は必ず中央値(Q₂)=50%地点で、平均値ではない。中央値は「順番に並べてちょうど真ん中の値」、平均は「合計÷個数」で意味が違う。箱ひげ図には平均は描かれないと押さえれば迷わない。
- ミニ例:データ 2,4,5,7,8,11,13,15,18 で中央値は5番目の8だが、平均は (2+4+5+7+8+11+13+15+18)/9=約9.2。箱の中の線は8の位置に引かれる。
練習問題
データ:2, 4, 5, 7, 9, 11, 13, 15, 18 の5数要約を求めよ。
答えを見る
並び済み、9個。Q₂ = 9(5番目)
下半分 2, 4, 5, 7 → Q₁ = (4+5)/2 = 4.5
上半分 11, 13, 15, 18 → Q₃ = (13+15)/2 = 14
min = 2、max = 18
5数要約:2、4.5、9、14、18
あるクラスのテストの箱ひげ図で、Q₁ = 50、Q₃ = 80 だった。四分位範囲と、中央 50% の生徒が取った得点の範囲を答えよ。
答えを見る
四分位範囲 = 80 − 50 = 30
中央 50% の生徒は 50点〜80点 の範囲。
2つのクラス A、B の数学の点数の箱ひげ図を比較する。A の中央値が 65、B の中央値が 70 だった。中央値だけから何が言えるか?
答えを見る
中央値はB組が高い(65→70)。ただし「全体的に高得点」と断定はできない。四分位数や箱・ひげ全体の位置も合わせて見る必要がある。
A のクラス:四分位範囲 = 10、B のクラス:四分位範囲 = 20。どちらが散らばりが大きいか?
答えを見る
B(IQR が大きい = 中央50%の散らばりが大きい)
まとめ
- 箱ひげ図:5つの値(min, Q₁, Q₂, Q₃, max)で作る。
- 箱の長さ = 四分位範囲(中央50%の散らばり)。
- ひげの長さ = 全体の散らばり。
- 箱の中の縦線 = 中央値。
- 複数データの比較に便利(ヒストグラムより向く)。
- 外れ値が見えやすい。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
箱ひげ図を考案したのは天才数学者テューキー発展
箱ひげ図は、アメリカの統計学者ジョン・テューキーが1977年の著書『探索的データ解析(Exploratory Data Analysis)』の中で広めた図です。彼は平均や分散などの一つの数値だけでなく、データを目で見て直感的に理解することの大切さを訴えました。テューキーは高速フーリエ変換(FFT)の開発でも知られる人物です。
国の統計でも都道府県の比較に使われる実生活
総務省統計局は、箱ひげ図を「異なる複数のデータのばらつきを比較できる」グラフとして紹介しています。たとえば都道府県別の人口10万人あたりの医師数を箱ひげ図で表すと、2012年と2016年を比べて全体として増加していることが読み取れます。授業で習った「複数データの比較」が、実際の社会統計でそのまま役立っています。
箱の外の点「外れ値」を見つけるルール発展
箱ひげ図では、第1四分位数から1.5×四分位範囲(IQR)より小さい値、または第3四分位数から1.5×IQRより大きい値を「外れ値」として点で示すことがあります。この基準だと全体のおよそ0.7%だけが外れ値となり、「めったに起きないが注目すべき値」をうまく拾えます。製造業の品質管理などで、不良品や測定ミスを見つけるのにも使われます。
天気予報の「ばらつき」も箱ひげ図で見る実生活
気象庁はわずかに違う初期値から何通りも予報を計算する「アンサンブル予報」を行い、その結果のばらつき(スプレッド)を時系列の箱ひげ図のような図で表します。ばらつきが大きいほど予測の不確実性が大きく、予報の信頼度が低いと判断します。週間天気予報で見る「信頼度A・B・C」の背景には、こうしたデータの散らばりの考え方があります。
なぜ中2で習うようになったのか発展
四分位範囲や箱ひげ図は、もともと高校数学で扱う内容でしたが、平成29年告示の学習指導要領で中学2年生に移されました。これは、複数のデータの分布を比べて読み取り、結論を「批判的に考察し判断する」力を、より早い段階から育てるためです。中央値だけでなく散らばりも合わせて見る姿勢が求められています。
