図でつかむ
化学反応式は、左辺と右辺で原子の数が同じになるように係数で調整します。数を合わせてよいのは化学式の前の係数だけで、右下の添え字は変えられません。酸素が合わない状態から係数でそろえる流れを図で確かめましょう。
化学反応式の基本
左辺(反応物)→ 右辺(生成物)
左右で各原子の数が等しいこと(質量保存の法則の現れ)。
なぜ原子の数が等しくなる?
化学変化では、原子は 消えたり生まれたりしない。
原子の 組み合わせが変わるだけ。
→ 反応前と反応後で、各原子の数は同じ。
これが 質量保存の法則の理由。
書き方の手順
① 反応物と生成物を 化学式で表す
② 「→」で結ぶ(左:反応物、右:生成物)
③ 各原子について、左右の数を数える
④ 数が合わなければ 係数を調整
⑤ 最も小さい整数比に
例:水素の燃焼
① 反応:水素 + 酸素 → 水
H₂ + O₂ → H₂O
② 数える:左 H=2, O=2 / 右 H=2, O=1
③ 酸素が合わない → 右の H₂O を2倍:H₂ + O₂ → 2H₂O
④ 再度数える:左 H=2, O=2 / 右 H=4, O=2
⑤ 水素が合わない → 左の H₂ を2倍:2H₂ + O₂ → 2H₂O
⑥ 確認:左 H=4, O=2 / 右 H=4, O=2 ◯
→ 完成:2H₂ + O₂ → 2H₂O
主な化学反応式(要暗記)
| 反応 | 化学反応式 |
|---|---|
| 水素の燃焼 | 2H₂ + O₂ → 2H₂O |
| 炭素の燃焼 | C + O₂ → CO₂ |
| メタンの燃焼 | CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O |
| マグネシウムの燃焼 | 2Mg + O₂ → 2MgO |
| 銅の酸化 | 2Cu + O₂ → 2CuO |
| 鉄と硫黄 | Fe + S → FeS |
| 水の電気分解 | 2H₂O → 2H₂ + O₂ |
| 炭酸水素ナトリウムの熱分解 | 2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂ |
| 酸化銀の熱分解 | 2Ag₂O → 4Ag + O₂ |
| 酸化銅の還元(炭素) | 2CuO + C → 2Cu + CO₂ |
係数のつけ方のコツ
① 多原子の物質から合わせる(NaHCO₃ など)
② 単原子(O, C など)は最後に
③ 整数で表す(分数はダメ → 全体を倍にする)
④ 係数 1 は省略する
⑤ 最終的に 最も簡単な整数比に
同じ係数を持つ場合の表記
係数(前):分子の数を表す。3H₂O = 水分子3つ
添え字(下):分子内の原子数。H₂O は H が2個、O が1個
3H₂O では、H は 3×2 = 6個、O は 3×1 = 3個
- 原子の数を合わせるとき、添え字(下の数)は変えてはいけない。
- × H₂O を H₃O に変える(物質が違ってしまう)
- ○ H₂O の前に係数 2 をつけて 2H₂O にする
- 添え字を変えると 違う物質になってしまう。
- 「2H₂ + O₂ → 2H₂O」を読むと:
- ・水素分子 2個+酸素分子 1個 → 水分子 2個
- ・気体どうしなら、同じ温度・圧力で体積比も 2:1:2 と読める
- ・左右で H 原子は4個、O 原子は2個ずつになり、原子数が保存されている
- ・係数から、反応する物質の量の関係がわかる
この章でつまずきやすいところ
化学反応式は「左右の原子数を合わせる」のがルール。でも実際に式を書こうとすると、係数と添え字の違いや、どこから合わせ始めるかで手が止まりがちです。本文や問題を読みながら迷う場面を、克服のコツとミニ例で整理します。
添え字を書き換えて原子数を合わせようとしてしまう
- つまずく場面:H₂ + O₂ → H₂O の式を見て、右の酸素が足りないと気づき、つい H₂O を H₂O₂ や H₃O に書きかえて数をそろえようとしてしまう場面。化学式の中の小さい数字をいじれば早く合うように見えてしまう。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。添え字(右下の小さい数字)は「その分子の中の原子数」を表すので、書きかえると別の物質に変身してしまう。原子数を合わせていいのは、化学式の前に置く係数だけ。「物質は変えない、個数だけ変える」と覚える。
- ミニ例:右の酸素を増やしたいとき、H₂O を H₂O₂ にするのはNG(過酸化水素という別物質)。2H₂O のように前に係数2を置くのが正しい合わせ方。
単体の物質から先に係数を合わせ始めてしまう
- つまずく場面:CH₄ + O₂ → CO₂ + H₂O のような式で、まず左の O₂ から数を合わせにいき、後から H や O を直そうとして係数がぐちゃぐちゃになり、ふりだしに戻ってしまう場面。
- 克服のコツ:時系列(手順)で整理する。① 複数の元素を含む化合物(CH₄, CO₂, H₂O など)に含まれる原子から先に合わせる、② O₂ や H₂ のような単体(1種類の元素からできた物質)は最後に合わせる、の順番を固定する。単体は係数を1か所だけで自由に調整できるので、後回しにすると微調整しやすい。
- ミニ例:CH₄ + O₂ → CO₂ + H₂O では、先に H を合わせて CH₄ + O₂ → CO₂ + 2H₂O、最後に単体の O₂ の係数を直して CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O と完成させる。
係数の1と添え字の2を区別せずに原子数を数えてしまう
- つまずく場面:2H₂O を見て「H が2個、O が1個」と数えてしまったり、3H₂O を「水分子は1つで、H が3個、O が2個」と添え字と係数を取り違えて数える場面。係数と添え字の位置の違いを意識しないと、左右の原子数チェックでズレが起きる。
- 克服のコツ:位置関係で整理する。化学式の前にある数字=係数(分子の個数)、元素記号の右下の小さい数字=添え字(その分子内の原子数)。原子の総数は「係数×添え字」で計算する。位置を声に出して確認してから数える習慣をつける。
- ミニ例:3H₂O なら、H は 3×2=6個、O は 3×1=3個。係数の3を無視して「H 2個、O 1個」と数えると左右が合わなくなる。
分数の係数で合わせて、そのまま提出してしまう
- つまずく場面:H₂ + O₂ → H₂O を合わせる途中で、「右を 1H₂O にして左の O₂ に 1/2 をつければ合う」と気づき、H₂ + (1/2)O₂ → H₂O のまま完成だと思ってしまう場面。原子数自体は確かにそろっているように見える。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。係数は「分子の個数」を表すので、半分の分子は実際には存在しない。分数が出たら全体を倍にして整数にするのがルール。最終チェックは「整数か」「最も簡単な比か」の2点で行う。
- ミニ例:H₂ + (1/2)O₂ → H₂O のままだと×。全体を2倍して 2H₂ + O₂ → 2H₂O と直すのが正解の形。
練習問題
- ( )H₂ + ( )O₂ → ( )H₂O
- ( )Mg + O₂ → ( )MgO
- ( )Cu + O₂ → ( )CuO
- ( )Ag₂O → ( )Ag + O₂
答えを見る
(1) 2, 1, 2 (2) 2, 2 (3) 2, 2 (4) 2, 4
次の反応の化学反応式を書け。
- 炭素を燃やすと二酸化炭素ができる
- 鉄と硫黄が反応すると硫化鉄ができる
- 水を電気分解すると水素と酸素になる
答えを見る
(1) C + O₂ → CO₂
(2) Fe + S → FeS
(3) 2H₂O → 2H₂ + O₂
2NaHCO₃ の中には、各原子が何個ずつあるか。
答えを見る
Na 2個、H 2個、C 2個、O 6個
まとめ
- 化学反応式:反応物 → 生成物。
- 左右で 各原子の数を等しく。
- 係数で調整(整数、最も簡単な比)。
- 添え字は変えない、係数だけで調整。
- 主要な反応式(水素燃焼・銅酸化・水電気分解など)は暗記。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「原子の数を合わせる」の出発点 ── 質量保存の法則とラボアジエ発展
化学反応式で左右の原子数をそろえるのは、化学変化の前後で物質全体の質量が変わらないからです。これは1774年にフランスのラボアジエが金属と酸素が化合する実験から見つけた「質量保存の法則」で、原子は消えたり生まれたりせず組み合わせが変わるだけ、という考え方の土台になっています。
パンやお菓子がふくらむのは 2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂実生活
重曹(炭酸水素ナトリウム)やベーキングパウダーを使ったお菓子がふくらむのは、加熱で炭酸水素ナトリウムが分解し、二酸化炭素という気体が発生して生地の中に小さな泡をつくるからです。教科書に出てくる熱分解の反応式 2NaHCO₃ → Na₂CO₃ + H₂O + CO₂ が、台所のお菓子作りでそのまま起きています。
燃料電池は「水の電気分解の逆」 ── 2H₂ + O₂ → 2H₂O実生活
水素で走る燃料電池自動車は、水素と酸素を反応させて電気をつくる装置で、反応式は水素の燃焼と同じ 2H₂ + O₂ → 2H₂O です。これは水の電気分解 2H₂O → 2H₂ + O₂ のちょうど逆向きの反応で、発電のときに出るのは水だけなので二酸化炭素を出さない発電として注目されています。
係数は「気体の体積比」にもなる ── アボガドロの法則発展
気体どうしの反応では、同じ温度・圧力なら同じ体積の中に同じ数の分子が入っています(アボガドロの法則)。だから 2H₂ + O₂ → 2H₂O の係数 2:1:2 は、反応する水素・酸素・水蒸気の体積比 2:1:2 としても読め、係数が単なる数あわせ以上の意味を持つことが分かります。
都市ガスのコンロの火 ── CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O実生活
家庭の都市ガスの主成分はメタンで、コンロでよく燃える(完全燃焼する)と CH₄ + 2O₂ → CO₂ + 2H₂O の反応で二酸化炭素と水になります。酸素が足りないと有害な一酸化炭素ができるため、換気が大切で、これも左右の原子数を合わせて考えると反応の意味がよく分かります。
