子どもに最初に持たせるデジタル機器として、スマートフォンを思い浮かべる家庭は多いと思います。
連絡が取れる、場所がわかる、写真も撮れる。便利で身近な道具であることは間違いありません。けれど、子どもの学びや創造性を育てる道具として考えると、スマホだけでは足りない部分があります。
NTTドコモ モバイル社会研究所の2025年調査によると、小学生高学年のスマートフォン利用時間は1日平均78分となり、前年を上回る水準で増加し続けています。所有率も小学6年生で初めて半数を超え、スマホはいまや子どもにとって最も身近なデジタル機器です。
一方で同年7月、文部科学省が公表した経年変化分析調査では、3年前と比べてすべての教科で平均スコアが低下しており、スマホ・ゲームの利用時間増加と学習時間の減少との相関が指摘されています。
こうした状況を踏まえると、「子どもにデジタル機器を与えるなら何を選ぶか」という問いは、単なる機器の好みの話ではありません。スマホとパソコンには、教育的観点から見て本質的な違いがあります。
スマホは「消費」、パソコンは「制作」のために設計されている
スマホのUX(ユーザー体験)は、コンテンツを次々と消費させるために精緻に設計されています。無限にスクロールするフィード、短時間で完結する動画、プッシュ通知による中断──これらはすべて、ユーザーができるだけ長く画面に向き合い続けるよう計算されたものです。子どもがスマホを手にしたとき、能動的に何かを「作る」より、受動的に何かを「見る・消費する」方向に流れやすい構造がそこにはあります。
パソコンは違います。キーボードとマウス、大きな画面、ファイル管理の仕組み──これらはすべて、「何かを作り上げる」ための道具です。文章を書く、プログラムを組む、スライドを作る、画像を編集する、ゲームを設計する。パソコンはこうした「能動的な制作活動」を前提として設計されており、その操作経験そのものが思考力や創造力の基盤となります。
キーボード入力という「基礎体力」
スマホとパソコンの最も重要な違いのひとつが、入力方法です。フリック入力とキーボードタイピングでは、脳の使い方も思考のスピードも根本的に異なります。
スマホを主なデジタル機器として育った子どもが社会に出たとき、ビジネスの現場でパソコン操作に苦労するケースは現在でも多く報告されています。キーボードに慣れ親しむ機会は、小学生のうちに意識的に確保する必要があります。
「作る体験」が育てる力はスマホでは得られない
パソコンを使うことで子どもが得られる最大の価値は、「作る体験」です。プログラムを書いてゲームを動かす、イラストを描いてアニメーションにする、調べたことをスライドにまとめて発表する──こうした一連の体験を通じて、論理的思考力・問題解決力・表現力・やり遂げる達成感が同時に育まれます。
スマホアプリでも似たことができると感じる方もいるかもしれません。しかし画面サイズ・インターフェース・処理能力のいずれにおいても、パソコンは「深く作り込む」ための環境として圧倒的に優れています。複雑なプログラムの作成、動画編集、AI活用──こうした本格的な制作体験は、パソコンなしには成立しません。
スマホを否定するのではなく、優先順位を考える
スマホを持つことが悪いわけではありません。問題は、スマホだけが子どもにとっての「デジタル体験」のすべてになってしまうことです。スマホで消費するだけのデジタルリテラシーと、パソコンで制作できるデジタルリテラシーとの間には、AI時代においてますます大きな格差が生じます。
デジタルこどもBASEでは、家庭にパソコンがない子どもへの無償提供と、パソコン・プログラミング・AIを自由に体験できる場の開放を通じて、「制作できるデジタルリテラシー」をすべての子どもに届けることを目指しています。スマホを持つ前に、あるいは持ちながらでも、パソコンで「作る体験」をしてほしい──それが私たちの願いです。