子どもの将来の年収を、今から正確に予測することはできません。
けれど、どんな経験を早い時期に積んでいるかによって、将来選べる仕事の幅が変わることはあります。パソコンを使う、AIに触れる、プログラミングを試す。そうした経験は、単なる趣味ではなく、働き方の選択肢につながっていきます。
経済産業省の試算によると、AI・ロボット活用人材は2040年に約340万人が不足する見通しです。需要は782万人に対して供給は443万人にとどまると推計されており、この不足は今後さらに拡大する可能性があります。
この数字が示すのは、単なる「技術者不足」ではありません。デジタルスキルを持つかどうかが、将来の就職機会と年収を大きく左右する社会が近づいているということです。
データが示す「ITスキル×年収」の現実
すでに現在のデータが、その傾向を鮮明に示しています。ITエンジニアの平均年収は全業種平均の約1.2倍。AIスキルを持つ職種では日本平均比で+31%の年収差が生じており、AIの設計・運用を統括する上位職では+71%を超える水準に達しています。コンサルタント・プロジェクトマネージャーなどAIと親和性の高い職種では年収900万円超が標準的な水準となっています。
重要なのは、こうした年収差が「特別な天才」だけに生じているのではないという点です。AIツールを日常的に使いこなし、データを読んで判断を下せる「デジタルリテラシーの高い一般社員」と、それができない社員との間でも、評価・昇進・報酬に格差が広がっています。ITスキルは一部の専門職の話ではなく、あらゆる職種に関わる基礎能力になりつつあります。
「学んだこと」より「慣れ親しんだ環境」が差を生む
では、子どもにITスキルを身につけさせるにはどうすればよいか。ここで見落とされがちな視点があります。ITスキルは、授業で「習う」だけでは身につきません。試行錯誤しながら何かを作り、失敗して修正し、また作り直す──その反復の中でしか得られない感覚があります。
幼少期から家庭や地域の場でパソコンに触れ、自由に使える環境で育った子どもは、機器の操作に対する「恐れ」がありません。新しいソフトが出ても、未知のAIツールが登場しても、まず触ってみようとする姿勢が自然に育まれます。これは学校の授業時間だけでは積み上げられない「慣れ」であり、早期体験の本質的な価値です。
格差の固定化を防ぐために
問題は、こうした「慣れ」を得られるかどうかが、家庭の経済状況によって左右されるという現実です。パソコンがある家庭の子どもは放課後も自由にデジタル体験を積めますが、そうでない子どもには機会そのものがありません。ITスキルによる年収格差が将来世代に引き継がれる前に、子どものうちに体験の機会を平等に確保することが社会的に重要な課題です。
デジタルこどもBASEは、家庭にパソコンがない子どもへの無償提供と、プログラミング・AI・デジタル制作を無料で体験できる場の開放を通じて、「デジタル格差」の芽を早期に摘み取ることを目指しています。将来年収が「どこに生まれたか」で決まらないように──その出発点となる体験を、すべての子どもに届けたいと考えています。