学校から持ち帰ったタブレットで、子どもが宿題をしている。その姿を見て、「デジタルのことは、もう学校が面倒を見てくれている」と感じている方もいるかもしれません。
実際、端末は行き渡りました。数字の上では、ほぼすべての子どもがパソコンやタブレットを「使える」状態にあります。
「学校の端末」は当たり前になった
こども家庭庁が2026年2月に公表した令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」の速報によると、10〜17歳の青少年の72.7%が、学校から配布・指定されたパソコンやタブレット、いわゆるGIGA端末でインターネットを利用しています。スマートフォン(78.5%)に迫る水準で、ゲーム機やテレビを上回りました。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査でも、貸与された端末を家庭で使う小中学生は全国で約8割にのぼり、約6割は宿題をタブレットやパソコンで行っています。「学校の端末を家でも使う」は、すでに当たり前の風景です。
ところが「自分専用のパソコン」は小学生で20人に1人
一方で、「自分専用のパソコン」となると、数字は一気に小さくなります。株式会社教育ネットが2025年度に支援自治体の小中学生19,141人へ行った調査(2026年6月公表)では、自分専用のパソコンを持つ子は小学1年生で3.9%、学年が上がっても小学6年生で7.0%。おおむね20人に1人です。中学生でも中学1年生10.4%、中学3年生12.7%にとどまります。同じ調査で、自分専用のスマートフォンは中学生全体の87.2%、中学3年生では90.4%と調査開始以来の最高値でしたから、開きは歴然です。
・学校配布・指定の端末(GIGA端末)でネットを利用する青少年:72.7%(こども家庭庁・令和7年度速報)
・自宅用のパソコンやタブレット(家族共用含む)でのネット利用:42.5%(同上)
・自分専用のパソコンを持つ子:小1で3.9%〜小6で7.0%、中3でも12.7%(教育ネット・2025年度調査、小中学生19,141人)
・自分専用のスマートフォン:中学生全体87.2%(同上)
家族と共用のものまで含めても、自宅のパソコンやタブレットでインターネットを使う青少年は42.5%にとどまり、家庭のデジタル環境は学校の整備に追いついていません。
貸与端末では「作る」に届かない
この開きを「学校にあるのだから、家には要らない」と読むこともできます。しかし、学校の端末と自分のパソコンは、同じ機械でも使える範囲が違います。貸与端末には学習用のフィルタリングや機能制限がかかっており、好きなソフトを入れる、プログラミングの環境を整える、画像や動画を本格的に編集する、といったことは基本的にできません。決められた範囲で「使う」ことはできても、思いつきを試して「作る」ことには向かないのです。
20人に1人という数字が示しているのは、「自由に試せる自分の道具」を持つ子がまだ少数だという事実です。タイピングも、プログラミングも、生成AIへの指示も、上達のいちばんの近道は、失敗してもよい環境で何度も触ることです。
AIで「生産する」には、パソコンが要る
「自分の道具」を持つかどうかの差は、AIの普及でいっそう重くなります。生成AIに質問して答えを読むだけなら、スマートフォンで足ります。しかし、AIを使って何かを生産する段階──長い指示文を組み立てる、AIが書いた文章やプログラムをファイルに保存して直す、生成した画像や動画を編集して仕上げる──に入ると、キーボードと大きな画面、ファイルを自由に扱える環境、つまりパソコンが前提になります。AIに開発を手伝わせるプログラミングの道具も、その多くはパソコンで動くことを想定して作られています。
スマートフォンだけで育つと、AIの答えを受け取る練習はできても、AIに指示を出して作る練習がほとんどできません。専用スマホ87.2%・専用パソコン12.7%という中学生の数字は、子どもとAIの関係が「消費」の側に偏りかねないことを示しています。AIを使いこなして作る側に回るための道具は、いまの子どもの手元では圧倒的に不足しているのです。
高価な新品である必要はない
ここで強調したいのは、子どものパソコンは高価な新品である必要はない、ということです。文章を書く、調べる、プログラミングを始める──その入口に必要な性能は、型落ちの中古パソコンで十分まかなえます。中学生や高校生であれば、自分用の1台を手に入れたその日から、学校の端末ではできなかった「環境づくり」そのものが学びになります。
デジタルこどもBASEは大田区で、企業や個人から譲り受けたパソコンを整備して子どもたちに無償で届ける活動と、パソコンに自由に触れられる無料の体験会を続けています。「家に自分のパソコンがある」を、特別なことではなく当たり前にしていく。小学生の20人に1人という数字は、私たちの活動の出発点です。
