夏休みの終わりが見えてくるころ、机の上に読書感想文の原稿用紙だけが残っている。そんな光景は、いつの時代も変わりません。
変わったのは、その隣に「ChatGPTに書かせる」という選択肢が現れたことです。
文部科学省の令和6年度全国学力・学習状況調査では、中学3年生の国語の平均正答率は58.4%と、前年度の70.1%を大きく下回りました。出題内容が毎年変わるため単純な比較はできませんが、一方で小学生の50.7%がChatGPTの利用経験を持ち、36.6%が勉強や宿題に何らかのAIを使ったと報告されています(ニフティキッズ調査、2025年)。この二つの数字が同時に並ぶと、「AIが国語力を下げている」という結論に飛びつきたくなります。しかし、因果関係はそれほど単純ではありません。
「丸投げ」と「足場かけ」では影響がまったく異なる
ChatGPTが国語力に与える影響は、使い方によって正反対の方向に働きます。「作文を書いて」と入力して出力された文章をそのまま提出する行為は、思考と表現の練習機会をゼロにします。この場合、国語力への悪影響は避けられません。一方、「自分で書いた作文の構成を批評して」「この文の主語と述語のつながりはおかしいか確認して」という使い方は、書いた後に自分の文章を客観的に見直す機会を与えます。これは従来の添削指導と同じ機能を持ちます。
・令和6年度全国学力・学習状況調査:中学3年生の国語の平均正答率は58.4%(前年度は70.1%。出題は毎年異なるため単純比較は不可)
・小学生の50.7%がChatGPTの利用経験あり、36.6%が勉強や宿題で何らかのAIを利用(ニフティキッズ調査・2025年)
「AIで書いた文章を超える国語力」が必要になる逆説
ここに見落とされがちな逆説があります。AIに質の高い文章を作らせるためには、何が「質の高い文章」かを判断できる読解力・語彙力が必要です。AIの出力に対して「この表現はわかりにくい」「この段落の論旨がずれている」と指摘できる子どもは、その力をAIを使わない場面でも活かせます。逆に言えば、AI出力の品質を判断できない段階でAIに任せきりにすると、そのフィードバックループが機能しません。
作文教育において有効な使い方とは
実際の教育現場では、AIを「作文の代替」ではなく「対話型添削ツール」として使う事例が広がっています。子どもが自分で下書きを書き、その文章をAIに読ませて改善点の提案をもらう。次に、AIの提案を受け入れるかどうかを自分で判断して最終稿を仕上げる。この手順では、書く→批評を受ける→判断する、というサイクルが繰り返され、従来の「書いて終わり」よりも深い学習が起きます。講談社の教育メディア「コクリコ」でも、ChatGPTを「優秀な作文教師」として使う具体的な親子の対話例が紹介されています。
国語力を守るために必要なのは禁止ではなく使い分けの教育
「ChatGPTを使うな」という禁止令は、子どもたちがすでにAIを日常的に使っている現実の前では実効性を持ちません。必要なのは、「何をAIに任せ、何を自分でやるか」を選択する判断力の教育です。自分の考えを言語化する段階はAIに渡さない、という一本の線引きを身につけることが、国語力とAI活用力を両立する出発点です。
大田区のデジタルこどもBASEでは、子どもたちがパソコンとAIを実際に使いながら、こうした「使い分け」の感覚を体験的に学べる無料プログラムを提供しています。
参考資料
- 文部科学省「令和6年度全国学力・学習状況調査」(2024年)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/index.htm - ニフティキッズ みんなのホンネ「AIについて」調査レポート(2025年5月)
https://kids.nifty.com/research/ai_20250502/ - エデュテックジン「小中学生の39.7%が勉強や宿題にAIを利用、ChatGPTの利用経験のある小学生は50.7%に」(2025年)
https://edtechzine.jp/article/detail/12561 - コクリコ(講談社)「Chat GPT丸投げはNG……子どもの言語能力を伸ばす驚きの活用方法」
https://cocreco.kodansha.co.jp/cocreco/general/study/GXLmd
