プログラミングをコツコツやるより、AIをやるべき理由

週に一度、パソコン塾に通ってプログラミングを習っている子どもたちがいます。画面に向かってコードを打ち込むその姿は、数年前なら間違いなく「一歩先を行く習い事」に見えたはずです。

その学びは、いまも無駄ではありません。ただ、かけた時間に対してどれだけの力が返ってくるか——その「実り」の大きさが、この数年で静かに変わりました。

「人間が手でコードを書く時代」は終わった

2025年4月、マイクロソフトのナデラCEOは、社内リポジトリのコードの20〜30%がすでにAIによって書かれていると明らかにしました。同じ時期に、グーグルのピチャイCEOも自社の新しいコードの3割以上がAI生成だと述べています。開発者コミュニティStack Overflowが2025年に約49,000人へ行った調査でも、開発者の84%がAIツールを利用中または利用予定と回答しました。プロの世界では、「構文を覚えて速く正確に書く」という作業が、この2〜3年で一気にAIへ移りました。基礎の理解はいまも土台として残りますが、「書く作業」の主役は、もう人間ではありません。

データで見る「コードを書く仕事」の変化

・マイクロソフト社内リポジトリのコードの20〜30%はAIが記述(ナデラCEO/2025年4月)
・グーグルの新規コードの30%超がAI生成(ピチャイCEO/2025年4月)
・開発者の84%がAIツールを利用中または利用予定(Stack Overflow調査/2025年・約49,000人回答)
・開発者の66%が「AIの答えはほぼ正しいが、少し違う」ことを最大の不満に挙げる(同調査)

道が間違っているのではなく、遠回りになった

同じ調査には、別の数字も並んでいます。開発者の66%が「AIの答えはほぼ正しいが、少し違う」ことを一番の不満に挙げ、45%が「AIが書いたコードの手直しに時間を取られる」と答えました。人間の仕事は、コードを書くことから、何を作るかを決め、AIの出力を疑い、直させることへ移ったのです。ところが、多くのプログラミング教室が最も時間をかけるのは、文法の暗記と見本どおりの写経——AIが最初に肩代わりした部分です。この道を数年かけて歩いても、目的地に着けないわけではありません。しかし、たどり着いた頃には「手で書く技能」の相場が下がっています。投じた時間に対するリターンで見ると、かなりの遠回りになりつつあるのです。

子どもは、大人が決めた「順番」を待たない

一方で子どもたちは、すでにAIを使い始めています。NTTドコモのモバイル社会研究所が2025年11月に全国の小中学生とその親1,200組へ行った調査では、中学生の生成AI利用率は4割を超え、1年で約3倍に増えました。問われているのは、使うかどうかではなく使い方の中身です。宿題の答えを写す道具として覚えるのか、作りたいものを形にする相棒として覚えるのか。「プログラミングの基礎が終わってからAI」と大人が順番を守らせている間に、子どもは答えを写す使い方だけを身につけていきます。変化に取り残されかけているのは子どもではなく、昔ながらの学び方にこだわる大人のほうです。

いま習っているプログラミングを、やめる必要はありません。基礎を学ぶことには、いまも意味があります。ただしそれは、手で書き続ける職人になるための基礎ではなく、AIの出力を読み、疑い、直させるための基礎です。文法を数年積み上げてから作品づくりに進むのではなく、初日にAIと作品を作り、思いどおりに動かないときに初めてコードの中身をのぞく。コードを読み、問題を分解し、AIに正確な指示を出す力は、この過程でこそ必要になり、同じ時間からずっと多くのものが返ってきます。小学生にも中高生にも、AIと「作る側」に回るための準備期間は要りません。

デジタルこどもBASEが大田区の無料講座で、初日から生成AIと一緒にゲームづくりを体験してもらっているのは、この考えによるものです。

参考資料

著者:漆谷 智行(デジタルこどもBASE理事長)