同じAIを使っているのに、ある人は以前の何十倍、何百倍もの仕事をこなすようになり、ある人はほとんど変わらない。それどころか、仕事そのものがなくなっていく人もいる。AIが広まってから、そんな差がはっきり見えるようになりました。
AIは、誰でも同じように使える道具のはずです。それなのに、なぜこれほどの差がつくのか。私はずっと、うまく言葉にできずにいました。最近になって、キーワードは「スピード」ではないかと思うようになりました。
速い人には、ゴールが見えている
AIでぐんと仕事を伸ばしている人は、もともと仕事のスピードが速い人です。
なぜ速いのか。おそらく、走り出す前からゴールが見えているからです。どこに向かえばいいかがわかっているので、すぐに走り出せる。途中で寄り道をすることもなく、まっすぐたどり着けます。
遅い人は、走り出したときにゴールが見えていません。だから、走りながら迷う。迷っているうちに脇道にそれ、戻ってきて、また迷う。一つひとつの動きが遅いのではなく、ゴールが見えていないことが、結果として遅さになっているのです。
これまでは、待つ必要があった
ただ、これまでの世の中では、速さの差で数倍の差は出ても、何十倍、何百倍もの差がつくことはありませんでした。
どれだけ人より速く走れても、仕事は組織でするものです。チームで進める以上、速い人は、どこかで遅い人を待つ必要がありました。生産性のない会議に付き合わされ、確認を待ち、返事を待つ。組織という仕組みが、速さの差を小さくしていたとも言えます。
AIは、待たなくていい
AIは、待つ必要がありません。
ゴールが見えている速い人は、AIに次々と指示を出し、出てきたものを確かめて、すぐに次へ進みます。これまで誰かを待っていた時間が、そっくりなくなる。速い人が、AIでさらに急加速して進んでいるのが、いまの状況です。
一方で、遅い人がAIを使っても、たどり着けません。AIは、言われたとおりのものを返してくれます。でも、どこへ向かうのかを決めるのは、使う人自身です。自分にゴールが見えていなければ、AIに何を頼めばいいのかもわからない。AIがどれだけ速く走っても、行き先が決まっていなければ、どこにも着きません。
もっとも、これとは反対に、「AIは、むしろ仕事ができない人の方を大きく伸ばす」という研究もあります。アメリカで約5,000人のカスタマーサポート担当者を調べた研究では、AIの手助けによって、1時間あたりに解決できた問い合わせが平均で14%増え、経験の浅い人では34%増えました。一方、経験を積んだ人には、ほとんど効果がありませんでした。
ただ、これは仕事のレベルが浅い場合の話だと私は考えています。答え方の型がある程度決まっている仕事なら、AIがゴールまでの道筋を示してくれるので、遅い人も追いつけます。けれど、ゴールそのものを自分で描かなければならない仕事では、そうはいきません。
速さの差を、組織が吸収してくれた時代が終わりつつあります。スピードが速い人が無双する時代になった。私はそう感じています。
ゴールを思い描く力
では、速い人と遅い人を分けている「ゴールが見えているかどうか」は、生まれつき決まっているものなのでしょうか。私は、そうではないと考えています。
ゴールが見えるようになるには、頭を使い続ける長い経験が必要です。自分で考えてゴールまでたどり着く。それを何度も重ねて、はじめて走り出す前にゴールが見えるようになります。
その経験を、子どものうちから積めないか。それが私の思いです。パソコンを使って、何を作るかを自分で考え、ゴールに向かって作っていく。その経験が、ゴールを思い描く力の土台を築くのではないかと考えています。
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デジタルこどもBASEの放課後ラボでは、子どもたちが自分で作りたいものを決め、AIも使いながらゲームや作品を形にしています。作りたいものを言葉にしてAIに伝え、違えば言い直し、最後まで作りきる。その繰り返しの中で、子どもたちが自分のゴールを思い描けるようになってほしいと考えています。
