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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

花のつくりとはたらき ── 被子植物と裸子植物

花は、ただきれいに咲いているわけではありません。種子をつくるための装置です。がく・花びら・おしべ・めしべがそれぞれ役割を持ち、受粉と受精を経て、子房は果実に、胚珠は種子に変わる──。今回は、この一連の流れをしくみから理解し、最後に「胚珠が子房に包まれているか」で分かれる被子植物と裸子植物の違いまで一気に押さえます。

花の4つの部分

典型的な花(アブラナやサクラなど)は、外側から内側へ がく → 花びら(花弁)→ おしべ → めしべ の順で4つの部分が並んでいます。それぞれに、ちゃんと意味のある役割があります。

用語:がく
花のいちばん外側
花全体を 下から支える 部分。つぼみのときは緑色の小さな葉のようになって、花の中身を外から守る 役割もしています。サクラの花の付け根で緑色になっている部分が、がくです。
用語:花びら(花弁)
色や形で目立つ部分
きれいな色や形で 虫を呼び寄せる 部分。虫に来てもらって 花粉を運んでもらう 花では、色が派手だったり、においが強かったりすることが多い。
用語:おしべ
花粉をつくる部分
先端のふくらんだ部分を やく といい、ここで 花粉 をつくります。ふつう花の中に何本もあり、虫の体に花粉がつきやすいように位置や長さが工夫されています。
用語:めしべ
種子をつくる中心部分
花の中心に1本立っていて、上から 柱頭・花柱・子房 の3つに分かれます。柱頭は花粉を受け取る場所、子房はその下のふくらんだ部分で、中に 胚珠(種子のもとになる粒)が入っています。
つまずきポイント:「やく」と「柱頭」を混ぜない
  • やくはおしべの先端。花粉を 出す 側。
  • 柱頭はめしべの先端。花粉を 受け取る 側。
  • 名前が似ているので混同しがちですが、「やくは雄、柱頭は雌」と整理しましょう。

受粉と受精 ── 種子ができる流れ

花の役割は「種子をつくること」。そのために必要なのが 受粉 と 受精 です。この2つは似た言葉ですが、別の段階を指します。

用語:受粉
花粉が柱頭につくこと
おしべのやくから出た 花粉が、めしべの柱頭にくっつく こと。虫や風が花粉を運びます。受粉はあくまで「花粉が到着した」段階で、まだ種子はできていません。
用語:受精
精細胞と卵細胞が合体すること
柱頭についた花粉から 花粉管 という細い管が伸びて子房まで届き、花粉管の中を運ばれてきた 精細胞 が、胚珠の中の 卵細胞 と合体すること。これでようやく 新しい命のもと ができます。

受精が終わると、花の中で大きな変化が起きます。ここがテストでもよく問われる重要ポイントです。

めしべの拡大図と、受精後にどう変わるか 受精前(花が咲いているとき) 柱頭 ← 花粉が   つく 花柱 (花粉管が通る) 子房 胚珠 子房の中に 胚珠が入って いる 受精後 受精後(実がなったあと) 果実 (もとは子房) 種子(もとは胚珠) 対応:子房 → 果実 / 胚珠 → 種子
図1:受精後、子房は果実に、胚珠は種子に変わる
重要
受精後の変化
  • 子房 → 果実(子房がふくらんで実になる)
  • 胚珠 → 種子(胚珠の中で新しい植物の赤ちゃんが育って種になる)

リンゴ・モモ・トマトの「実」は、もとは花の 子房 でした。中の種は、もとは 胚珠 です。サクランボを食べるとき、私たちは「子房だったもの」をかじり、「胚珠だったもの」を出している、というわけです。

被子植物と裸子植物の違い

ここまで見てきたのは、すべて 子房がある植物 の話でした。じつは植物の中には、子房を持たないグループもあります。種子をつくる植物(種子植物)は、この点で2つに分かれます。

用語:被子植物(ひししょくぶつ)
胚珠が子房に包まれている植物
胚珠が子房という袋の 中に入っている。だから受精後に子房がふくらんで 果実 ができます。例:タンポポ、サクラ、アブラナ、エンドウ、リンゴ、トマト。
用語:裸子植物(らししょくぶつ)
胚珠がむき出しの植物
そもそも子房がなく、胚珠が むき出し になっている。包む袋がないので 果実はできません。例:マツ、スギ、イチョウ、ソテツ。
よくある誤解:マツの「まつぼっくり」は果実ではない
  • まつぼっくりは、雌花のりん片に 胚珠(のちに種子)が並んだもの が大きくなったものです。
  • マツには子房がないので、原理的に 果実はできません。まつぼっくりは「種子の集まり」であって果実ではない、と区別しましょう。
  • イチョウのギンナンも、見た目はくだもののようですが、実は種子の一部(外側のやわらかい部分)。果実ではありません。

「被子(ひし)」は 「服を着ている」、「裸子(らし)」は 「裸(はだか)」 と覚えると分かりやすいです。胚珠が子房という服を着ているのが被子植物、裸でむき出しなのが裸子植物。植物の進化の歴史では、裸子植物のほうが古く、被子植物のほうが新しい 時代に登場しました。子房という保護袋を発明したことで、被子植物は地球上で大きく繁栄しました。

マツの花のつくり ── 子房がない代わりに

裸子植物の代表 マツ の花は、サクラやアブラナとはかなり姿が違います。花びらもがくもなく、地味です。マツは 雌花と雄花が分かれて いて、それぞれ枝の別の場所につきます。

マツの花のつくり
  • 雌花:枝の 先端 につく赤っぽい花。重なった「りん片」に 胚珠 がむき出しでついている。
  • 雄花:新しく伸びた枝の もとの方 につく黄色っぽい花。りん片に 花粉のう があり、ここで花粉をつくる。
  • 受粉は 風 によって起こる(風媒花)。虫を呼ぶ必要がないので、花びらが地味でいい。
  • 受粉してから種子ができて まつぼっくりが熟す までに、なんと 1年以上 かかります。

被子植物の「おしべ・めしべ」にあたるのが、マツでは 雄花のりん片(花粉のうつき)と、雌花のりん片(胚珠つき) です。仕組みは同じでも、子房がないぶん、つくりがシンプルになっているのが裸子植物の特徴です。

練習問題

この章でつまずきやすいところ

花の単元は「やく」「柱頭」「胚珠」「子房」と似た用語が連続するうえ、受粉と受精、子房と胚珠の対応関係でつまずきやすいところです。本文を読んでいる途中で迷いがちな場面を、見分け方の軸とあわせて整理します。

「やく」と「柱頭」がどっちがどっちか分からなくなる

  • つまずく場面:本文で「おしべの先端のやくで花粉をつくる」「めしべの柱頭に花粉がつく」と続けて出てきた瞬間、似た位置にある先端どうしが頭の中で入れ替わり、どちらが花粉を出す側か分からなくなる場面です。
  • 克服のコツ:位置関係で整理します。やくはおしべの先端で花粉を出す側、柱頭はめしべの先端で花粉を受け取る側です。花粉の流れは「やく → 柱頭」と一方通行と覚えると、どちらが出口でどちらが入口か迷いません。
  • ミニ例:アブラナの花を観察すると、外側の何本もあるおしべの先端のふくらみ(やく)が花粉だらけで、中心のめしべの先端(柱頭)にだけ花粉がついている、と教科書では整理されます。

受粉と受精を同じことだと思い込んでしまう

  • つまずく場面:「花粉が柱頭につく」と読んだ直後に「卵細胞と合わさる」と続くので、本文を流し読みしていると受粉と受精をひとまとめの出来事と捉えてしまい、どこまでが受粉でどこからが受精か区別がつかなくなる場面です。
  • 克服のコツ:時系列で整理します。まず受粉=花粉が柱頭にくっついた段階。そこから花粉管が子房まで伸び、その中を運ばれた精細胞が胚珠の中の卵細胞と合体するのが受精です。受粉はあくまで「到着」、受精は「合体」と段階を分けて読みましょう。
  • ミニ例:教科書では、柱頭に花粉が乗っただけの状態を受粉、そこから花粉管が伸びてその中を運ばれた精細胞が胚珠の卵細胞と合体した瞬間を受精として、別の段階として描き分けています。

子房が種子に、胚珠が果実になると逆に覚えてしまう

  • つまずく場面:受精後の変化を本文で読むとき、「子房」と「胚珠」のどちらが大きい袋でどちらが中身か曖昧なまま進んでしまい、果実と種子の対応を逆に思い込んでしまう場面です。
  • 克服のコツ:位置関係で整理します。外側の子房は袋、内側の胚珠は中の粒。袋(子房)はふくらんで果実に、中の粒(胚珠)は種子になります。「外=果実、中=種子」と外側から順に対応させると逆転しません。
  • ミニ例:リンゴをかじる場面を思い出すと、外側のやわらかい部分(もとは子房)が果実、芯の中の黒い粒(もとは胚珠)が種子、と教科書では整理します。

まつぼっくりや銀杏を「果実」だと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文で「裸子植物は果実をつくらない」と読んだ直後に、まつぼっくりやイチョウの銀杏が頭に浮かび、見た目が実っぽいのに果実ではないと言われて、どう区別すればいいのか分からなくなる場面です。
  • 克服のコツ:因果関係で整理します。果実は子房がふくらんでできるもの。マツやイチョウには子房がないので、原理的に果実はできません。つまり「子房がある=果実ができる、子房がない=果実はできない」という因果で判定します。
  • ミニ例:まつぼっくりは雌花のりん片に胚珠がむき出しで並んだものが大きくなった種子の集まりであって、子房から育った果実ではない、と教科書では整理します。
問題1(用語)
次の問いに答えなさい。
  1. 花の4つの部分を、外側から順に書きなさい。
  2. めしべの先端で、花粉を受け取る部分を何というか。
  3. めしべの下のふくらんだ部分の中にある、種子のもとになる粒を何というか。
  4. 花粉がめしべの柱頭につくことを何というか。
  5. 花粉から花粉管が伸び、その中を運ばれた精細胞が胚珠の中の卵細胞と合体することを何というか。
答えを見る

(1) がく → 花びら → おしべ → めしべ

(2) 柱頭

(3) 胚珠(その外側のふくらみは「子房」)

(4) 受粉

(5) 受精

問題2(記述)
受精のあと、子房と胚珠はそれぞれ何に変わるか。理由(しくみ)も簡単に説明しなさい。
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解答例:子房は 果実 に、胚珠は 種子 に変わる。受精によって胚珠の中に新しい植物の赤ちゃん(胚)ができるため、それを守るために胚珠そのものが種子になる。同時に、種子を包んでいる子房がふくらんで果実になり、種子を守ったり、動物に食べられて種子を遠くへ運んでもらったりする役割を持つ。

問題3(分類)
次の植物を、被子植物と裸子植物に分類しなさい。また、分類の決め手になる特徴を1文で書きなさい。
タンポポ・マツ・サクラ・イチョウ・スギ・アブラナ
答えを見る

被子植物:タンポポ、サクラ、アブラナ

裸子植物:マツ、イチョウ、スギ

分類の決め手:胚珠が子房に包まれているのが被子植物、子房がなく胚珠がむき出しになっているのが裸子植物。被子植物は果実ができるが、裸子植物は果実ができない。

まとめ

  • 花は外側から がく → 花びら → おしべ → めしべ。それぞれに「支える」「虫を呼ぶ」「花粉をつくる」「種子をつくる」という役割がある。
  • 受粉は花粉が柱頭につくこと、受精は花粉管を通って運ばれた精細胞が卵細胞と合体すること。受粉と受精は別の段階。
  • 受精後、子房は果実に、胚珠は種子に変わる。リンゴの実は子房、種は胚珠だったもの。
  • 胚珠が子房に包まれているのが 被子植物(タンポポ・サクラ・アブラナなど)、むき出しなのが 裸子植物(マツ・スギ・イチョウなど)。裸子植物には果実がない。
  • マツは雌花・雄花が分かれた風媒花で、まつぼっくりは果実ではなく 種子の集まり。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

イチゴやメロンの受粉をミツバチが助けている実生活

ビニールハウスで育てるイチゴやメロン、トマトなどは、花粉を運ぶ虫がいないと実がうまくつきません。そこで農家はミツバチやマルハナバチを放して受粉(花粉が柱頭につくこと)を助けてもらっており、農林水産省はこうした花粉交配用の昆虫を農業に欠かせないものと位置づけています。教科書で学ぶ「受粉」は、こうして私たちの食卓に並ぶ野菜や果物づくりを直接支えています。

出典:農林水産省「花粉交配用昆虫について」

イチョウには「精子」がある ── 日本人の大発見発展

1896年、平瀬作五郎は裸子植物であるイチョウに、シダ植物のように水中を泳ぐ精子があることを発見しました。胚珠の中に取り込まれた花粉から花粉管がのび、その中で精子がつくられて卵細胞と受精します。これは、シダ植物から種子植物へという植物の進化のつながりを示す世界的な発見でした。

出典:日本植物学会「イチョウ精子発見者平瀬作五郎」

スギ花粉症は「風で運ばれる花粉」が原因実生活

スギやヒノキは虫を呼ぶ花びらを持たず、風で花粉を運ぶ風媒花なので、大量の花粉を空中にまき散らします。春に飛ぶ花粉の量は、前の年に育ったスギの雄花(花粉をつくる花)の多さで大きく変わるため、環境省は雄花の量を調べて飛散を予測しています。マツと同じ裸子植物のなかまであるスギの花のつくりが、私たちの花粉症と深く関わっています。

出典:環境省「花粉情報サイト」

花の派手な色や形は、虫とともに進化してきた発展

虫媒花の花びらの色・形・においは、花粉を運んでくれる特定の昆虫(送粉者)を効率よく呼び寄せるために進化してきたと考えられています。東京大学の研究では、こうした花の特徴が、訪れる昆虫の好みに応じて変化しうることが示されています。地球上に多様な花の形があるのは、植物と昆虫が互いに影響し合ってきた結果なのです。

出典:東京大学 大学院理学系研究科・理学部「花と送粉者の秘密のやり取り」

果実は、種子を遠くへ運ぶための「仕組み」発展

子房が変化してできた果実には、動物に食べてもらい、種子を遠くへ運ばせる役割があります。鳥などが果実を食べると、種子は消化されずにふんと一緒に別の場所へ運ばれ(被食散布)、そこで芽を出します。京都大学などの研究では、森全体の果実のでき具合が、鳥による種子の運ばれ方を左右することも明らかにされています。

出典:京都大学「動物による種子散布メカニズムの一端を解明」

ミツバチの受粉がもたらす大きな経済効果実生活

ミツバチをはじめ、花粉を運ぶ生き物(送粉者)が日本の農業ではたらく価値は、作物の生産でみると年間およそ4,700億円にのぼると見積もられています(農業環境技術研究所2013年試算)。このうちセイヨウミツバチによる貢献は約1,000億円とされ、残りの多くはハナバチなどの野生の虫が担っています。小さな虫が花粉を柱頭に運ぶというはたらきが、社会全体を支える大きな価値を生んでいます。

出典:農業環境技術研究所(現NARO)「日本の農業における送粉サービスの経済価値を評価」