水溶液とは ── 3つの言葉を区別する
濃度の計算が苦手な人のほとんどは、計算より先に 「どれが何のことか」 でつまずいています。まずは用語をハッキリ分けます。
- 溶質 = 砂糖
- 溶媒 = 水
- 溶液 = 砂糖水(砂糖+水)
- 溶媒が水なので、これは 水溶液でもある。
水溶液の3つの特徴
水溶液は、ただ「混ざっている」のではありません。次の3つを満たしてはじめて水溶液と呼びます。
①透明である(色がついていてもよい)。例:硫酸銅水溶液は青色だが、向こう側が透けて見える。
②均一である。どこをとっても同じ濃さで、どんなに長く置いても下に溜まったり上に浮いたりしない。
③溶質の粒子が、水の粒のすき間に バラバラに散っている。だから濾紙でこしても分けられない。
- 牛乳:白くて向こうが透けない(不透明)→ 水溶液ではない(乳濁液)。
- 墨汁:黒くて不透明、放っておくと底に沈む → 水溶液ではない。
- 泥水:にごっていて、しばらく置くと泥が下に溜まる → 水溶液ではない(懸濁液)。
質量パーセント濃度
水溶液の「濃さ」を数字で表すのが 質量パーセント濃度 です。中1理科で出る濃度の表し方は、これ1種類だけです。
濃度(%)= 溶質の質量(g)÷ 溶液の質量(g)× 100
ここで 溶液 = 溶質 + 溶媒(足し算)。割り算する相手は 溶液であって、溶媒(水)ではありません。
- 水95gに食塩5gを溶かした。
- 溶液の質量 = 95 + 5 = 100g。
- 濃度 = 5 ÷ 100 × 100 = 5%。
3つの公式の使い分け
濃度の式は1本ですが、何を求めるかによって式の形が変わります。「知りたい量を左辺に」と覚えれば自由に変形できます。
濃度知りたい:濃度 = 溶質 ÷ 溶液 × 100
溶質知りたい:溶質 = 溶液 × 濃度 ÷ 100
溶液知りたい:溶液 = 溶質 ÷ 濃度 × 100
ひっかけパターン:水と溶液を混ぜない
テストでもっとも多い間違いは、「水の質量」と「溶液の質量」をごちゃまぜに使ってしまうことです。問題文の書き方は2パターンあるので、見分けられるようにしておきます。
- パターンA:「水〇gに食塩〇gを溶かす」と書かれている → 〇gは 溶媒の質量。溶液の質量を出すには 足し算が必要。
- パターンB:「〇%の食塩水〇g」と書かれている → 〇gはすでに 溶液の質量。そのまま割り算に使える。
例題1:水95gに食塩5gを溶かしたとき、濃度は何%?
溶液 = 95 + 5 = 100g。濃度 = 5 ÷ 100 × 100 = 5%。
例題2:5%の食塩水200gに含まれる食塩は何g?
「5%の食塩水200g」は 溶液の質量。溶質 = 溶液 × 濃度 ÷ 100 = 200 × 5 ÷ 100 = 10g。
例題3:10%の食塩水を100g作りたい。水と食塩は何gずつ必要?
食塩(溶質)= 100 × 10 ÷ 100 = 10g。水(溶媒)= 100 − 10 = 90g。
ここでも 溶液 = 溶質 + 溶媒 の式から、水の量を逆算します。
混合の計算(少し応用)
濃さの違う水溶液を混ぜたときの濃度は、「溶質の合計」を「溶液の合計」で割るだけです。
例:5%の食塩水100gと、10%の食塩水200gを混ぜたときの濃度は?
- 5%食塩水100gの中の食塩 = 100 × 5 ÷ 100 = 5g
- 10%食塩水200gの中の食塩 = 200 × 10 ÷ 100 = 20g
- 食塩の合計 = 5 + 20 = 25g
- 溶液の合計 = 100 + 200 = 300g
- 混ぜたあとの濃度 = 25 ÷ 300 × 100 = 約8.3%
「5%と10%だから真ん中の7.5%」とはなりません。溶液の量が違うから、濃いほうに引っぱられるのです。ここでも考え方の出発点は 溶液 = 溶質 + 溶媒、そして「溶質の合計/溶液の合計」です。
この章でつまずきやすいところ
水溶液の問題は、計算そのものより「文中のgが水のことか、食塩水のことか」で迷いやすい単元です。本文や問題文を読んでいる途中で立ち止まりがちな場面を取り上げ、どこで意味を取り違えやすいかを整理します。
「水〇gに食塩〇g」を見て、水の質量で割ってしまう
- つまずく場面:問題文に「水95gに食塩5gを溶かした」と書かれているのを読んでいる途中で、つい目に入った「95g」をそのまま割り算の分母に使おうとしてしまい、「5÷95」を始めかけてしまう場面です。
- 克服のコツ:見分け方は、文中のgが水(溶媒)か食塩水(溶液)かを読み取ること。「水〇gに〜を溶かす」と書かれていたら、その〇gは溶媒。溶液=溶質+溶媒の足し算を先にしてから、割り算に入る順番を守ります。
- ミニ例:水95g+食塩5gなら、まず溶液=95+5=100gを計算してから、濃度=5÷100×100=5%。割る相手は水ではなく食塩水。
透明だから水溶液、と見た目だけで判断してしまう
- つまずく場面:本文の「水溶液は透明で均一」という文を読んだ直後、身のまわりの液体を思い出して、「無色透明っぽい液は全部水溶液」「白くにごっていれば水溶液ではない」と決め打ちしてしまう場面です。
- 克服のコツ:見分け方は、透明・均一・粒子がバラバラに散るの3つを満たすかを順に確認すること。色がついていても向こうが透けて見えれば水溶液になりうるし、にごっていたり時間が経つと分離するものは水溶液ではありません。
- ミニ例:硫酸銅水溶液は青色でも透けて見えるので水溶液。一方、牛乳は白くて不透明、泥水は置くと底に泥がたまるので水溶液ではない。
溶けた食塩は「消えてなくなった」と感じてしまう
- つまずく場面:本文の「溶けた物質は目に見えない粒子として水中に広がっている」という説明を読んでいる途中で、「見えない=もう無い」と感覚的に受け取り、ろ過すれば食塩は水と分けられそう、蒸発させても何も残らないのでは、と思ってしまう場面です。
- 克服のコツ:因果関係でとらえ直すこと。食塩の粒子は水の粒のすき間に散らばっているだけで、なくなったわけではない。だからろ紙の目より小さくてろ過では分けられず、水だけを蒸発させれば食塩が結晶として残る、という流れで結びつけます。
- ミニ例:食塩水をろ紙でこしても食塩はそのまま通り抜けるが、加熱して水を蒸発させると白い食塩の結晶が皿に残る。
濃さのちがう食塩水を混ぜると、ちょうど真ん中の濃度になると思ってしまう
- つまずく場面:「5%の食塩水100gと10%の食塩水200gを混ぜる」という問題文を読んでいる途中で、5と10の真ん中だから7.5%、と暗算で答えを決めてしまい、量のちがいに気づかず先へ進んでしまう場面です。
- 克服のコツ:見分け方は、まず2つの食塩水の量が同じか違うかを文中で確認すること。違うときは真ん中にならず、量が多いほうの濃度に引っぱられる。考え方は常に「溶質の合計÷溶液の合計×100」で、足し算で出発します。
- ミニ例:5%×100gの食塩は5g、10%×200gの食塩は20g。合計25gを溶液300gで割って、混合後は約8.3%。10%側に近い値になる。
練習問題
- 水120gに砂糖30gを溶かした砂糖水の質量パーセント濃度は何%か。
- 15%の食塩水400gに含まれる食塩は何gか。
- 砂糖12gを溶かして6%の砂糖水を作るとき、必要な砂糖水の質量は何gか。
答えを見る
(1) 溶液 = 120 + 30 = 150g。濃度 = 30 ÷ 150 × 100 = 20%
(2) 溶質 = 溶液 × 濃度 ÷ 100 = 400 × 15 ÷ 100 = 60g
(3) 溶液 = 溶質 ÷ 濃度 × 100 = 12 ÷ 6 × 100 = 200g
※ (1)で「30 ÷ 120 × 100 = 25%」とすると 水で割っているので不正解。溶液(150g)で割る。
- 8%の食塩水500gに含まれる食塩は何gか。
- 150gの水に何gの砂糖を溶かすと、20%の砂糖水になるか。
答えを見る
(1) 溶質 = 500 × 8 ÷ 100 = 40g
(2) 砂糖の質量を x g とおく。
溶液 = 150 + x、濃度 20% より
x ÷ (150 + x) × 100 = 20
x = (150 + x) × 0.2
x = 30 + 0.2x → 0.8x = 30 → x = 37.5g
※ (2)は「150 × 20 ÷ 100 = 30g」と答えやすいひっかけ。これは 水の質量で計算してしまうミス。150gは水(溶媒)であって溶液ではないので、そのままは使えない。
答えを見る
5%食塩水100gの中の食塩 = 100 × 5 ÷ 100 = 5g
15%食塩水100gの中の食塩 = 100 × 15 ÷ 100 = 15g
食塩の合計 = 5 + 15 = 20g
溶液の合計 = 100 + 100 = 200g
濃度 = 20 ÷ 200 × 100 = 10%
※ 同じ量どうしを混ぜたときに限り、ちょうど真ん中の濃度(5%と15%の中間で10%)になる。量がちがう場合は真ん中にならない。
まとめ
- 溶質・溶媒・溶液を区別する。溶媒が水のときの溶液が 水溶液。
- 水溶液の特徴は 透明・均一・粒子がバラバラに散る。にごる液(牛乳・墨汁・泥水)は水溶液ではない。
- 濃度の出発点はいつも 溶液 = 溶質 + 溶媒。割る相手は溶液であって、水ではない。
- 公式は3つ:濃度=溶質÷溶液×100/溶質=溶液×濃度÷100/溶液=溶質÷濃度×100。知りたい量を左辺に。
- 「水〇gに食塩〇g」と「〇%の食塩水〇g」では、その〇gの意味がちがう。問題文を読むときに 溶液か溶媒かを確認してから計算する。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
海水の塩分濃度はおよそ3.5%実生活
世界の海水の平均的な塩分濃度は約3.5%で、海水1Lのなかにおよそ35gの塩分がとけていることになります。ただし蒸発や降水、川の流れこみの影響で場所によって差があり、日本の近海は3.3〜3.4%とやや低めです。これも溶質(塩分)÷溶液(海水)×100で表せる、身近な水溶液の濃度の例です。
点滴に使う生理食塩水は約0.9%実生活
病院の点滴や洗浄に使う生理食塩水は、塩化ナトリウムを約0.9%の濃さにした水溶液です。この濃さは血液や体液とほぼ同じはたらき(浸透圧)になるよう決められていて、体に負担が少ないのが理由です。1Lにつき約9gの食塩がとけている計算で、まさに質量パーセント濃度が役立つ場面です。
気体も水にとけている──炭酸水発展
溶質は固体だけでなく気体もあり、炭酸水は二酸化炭素という気体を水にとかした水溶液です。気体は温度が高いほどとけにくく、圧力が高いほどよくとけるため、ペットボトルの炭酸水は二酸化炭素を強い圧力で押しこんでつくられています。ふたを開けると圧力が下がり、とけきれなくなった気体があわとなって出てきます。
海水から塩をつくる仕組み(イオン交換膜法)発展
今の日本では、海水をそのまま煮つめるのではなく、まずイオン交換膜という特別な膜と電気を使って塩分の濃い「かん水」をつくり、それを蒸発させて塩を取り出しています。プラスのイオンだけを通す膜とマイナスのイオンだけを通す膜を交互に並べて電気を流すと、塩分が一か所に集まって濃い水溶液ができるのです。水溶液から溶質を取り出す技術が、私たちの食卓の塩を支えています。
スポーツドリンクと経口補水液は濃さがちがう実生活
経口補水液(OS-1など)は、水分と電解質(とくにナトリウム)を効率よく体に吸収させるため、スポーツドリンクよりナトリウム濃度を高く、糖分をひかえめに設計した水溶液です。世界保健機関(WHO)の考え方をもとに、体液に近い組成になるよう成分の割合が調整されています。とけている物質の量や割合をどう決めるかという、濃度の考え方が活きた例です。
