デジタルこどもBASEのロゴ特定非営利活動法人デジタルこどもBASE
中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

溶解度と再結晶 ── 温度で溶ける量が変わる

食塩のような固体を水にどんどん溶かしていくと、ある量を超えるとそれ以上溶けず、底にたまります。物質ごとに「水100gに溶ける限界の量」が決まっていて、しかも 温度で変わる のです。今回はこの「溶解度」と、温度差を利用して結晶を取り出す 再結晶 のしくみを、グラフの読み方と計算で攻略します。

水に溶ける量には限界がある

食塩を水にスプーン1杯ずつ入れていくと、最初はすぐ溶けます。でも何杯も入れると、ある量を超えたところで 溶けきれなくなり、底に白くたまっていきます。この単元で扱う固体の溶質では、水に溶ける量に限界があります。

用語:飽和水溶液
これ以上溶けない状態の水溶液
ある温度で、その物質が 溶ける限界まで溶けた 水溶液のこと。これ以上加えても、溶けずに底に残る。
用語:溶解度
水100gに溶ける最大の質量(g)
物質ごと・温度ごとに値が決まっている。たとえば「20℃の水100gに食塩は約36g溶ける」が、食塩の20℃での溶解度。
つまずきポイント:「水100g」が基準
  • 溶解度はいつも「水100g」あたりで考える。水が200gなら、溶ける量も2倍になる。
  • 「水溶液100g」ではなく 「水(だけ)100g」 が基準。問題文をよく読む。

溶解度は温度で変わる

ここがこの単元の主役です。固体の物質は、温度が上がるほど溶ける量が増える ものが多いです。砂糖、ホウ酸、硝酸カリウムなどが代表例。

温度と溶解度の関係(固体)
  • ほとんどの固体:温度が上がるほど溶解度が大きくなる(硝酸カリウム、ホウ酸、砂糖など)。
  • 例外:食塩(塩化ナトリウム)は、温度を上げてもほとんど変わらない。20℃で約36g、80℃で約38g。

逆に 気体 は温度が上がると 溶けにくく なります。炭酸飲料を温めるとあわが出てくるのは、温度が上がって二酸化炭素が水から逃げるから。冷蔵庫で冷やした炭酸の方が「シュワッ」と感じるのも同じ理由です。

溶解度曲線(グラフ)の読み方

横軸に温度(℃)、縦軸に水100gに溶ける質量(g)をとり、物質ごとに線で結んだグラフを 溶解度曲線 といいます。

溶解度曲線(水100gに溶ける質量) 0 50 100 150 200 水100gに溶ける質量(g) 0 20 40 60 80 100 温度(℃) 硝酸カリウム 塩化ナトリウム ホウ酸 硝酸カリウム:温度で大きく        変わる(再結晶◎) 塩化ナトリウム:ほぼ水平         (再結晶✗)
図1:3つの物質の溶解度曲線。硝酸カリウムは温度で大きく変わる、食塩はほぼ変わらない。

このグラフから、たとえば 硝酸カリウム の溶解度は、20℃で約32g、60℃で約109g、80℃で約169g とわかります。温度で4倍以上違うのです。一方、食塩 の線はほぼ水平で、20℃でも80℃でもおよそ36〜38gの間。これがあとで効いてきます。

再結晶 ── もう一度結晶として取り出す

温度を上げると溶解度が大きくなる物質は、熱い水にたくさん溶かしておいて、冷やすと溶けきれずに固体として出てくる という性質があります。これを 再結晶 といいます。

考え方
出てくる結晶の質量 = 高温の溶解度 − 低温の溶解度

水100gに溶けていた量から、冷やした後の温度で溶ける量を引けば、残りは結晶として現れる。

この計算は、高温で飽和水溶液になっている、または問題文で「その量がすべて溶けている」と示されているときに使います。水の量が100gでないときは、溶解度も水の量に合わせて比例計算します。

例題:80℃の水100gに硝酸カリウムを 160g 溶かして、これを20℃まで冷やす。出てくる結晶は何g?

計算の手順

①20℃での硝酸カリウムの溶解度は 約32g。

②つまり20℃の水100gには32gまでしか溶けない。

③もともと160g溶けていたので、160 − 32 = 128g が結晶として出てくる。

食塩は再結晶にむかない
  • 食塩は温度を変えても溶解度がほとんど変わらない(20℃でも80℃でも36〜38g)。冷やしても 差がほぼゼロ なので、結晶として出てくる量も少ない。
  • 食塩を取り出すには、水を蒸発させて 水の量自体を減らす方法が使われる(海水から塩を作るのと同じ)。

結晶の形

結晶になると、物質ごとに 決まった形 をとります。これは粒子のならび方が物質ごとに決まっているからです。

  • 食塩(塩化ナトリウム):立方体(さいころのような四角い形)
  • ミョウバン:正八面体(ピラミッドが2つ底でくっついた形)
  • 硫酸銅:青い柱状の結晶

理科室で結晶を作る実験をすると、ルーペで見たときに教科書通りの形が観察できます。結晶の形を見れば、何の物質かを見分ける手がかりになる のです。

再結晶の使いみち

再結晶は、ただ結晶を作る遊びではなく、物質を純粋にする(混ざり物を取り除く) ための大切な技術です。

例:少量の食塩が混ざった硝酸カリウムを純粋にしたい
  • ① 高温の水にすべて溶かす。両方とも溶ける。
  • ② ゆっくり冷やす。硝酸カリウムは溶解度が大きく下がるので、たくさん結晶として出てくる。
  • ③ 食塩は溶解度がほぼ変わらないので、水溶液に溶けたまま残る。
  • ④ 結晶をろ過して取り出すと、ほぼ純粋な硝酸カリウムが得られる。

このように、溶解度の温度変化のちがい を利用すれば、混ざり合った物質を分けることができます。工場で薬品や砂糖を精製するときにも使われている方法です。

この章でつまずきやすいところ

溶解度の単元は、グラフ・計算・用語が重なって、本文を読んでいる途中で「あれ、何を基準にしてるんだっけ?」と迷いやすい所です。読みながら起きがちな4つの引っかかりを、見分け方と短い具体例で整理します。

「水100g」と「水溶液100g」を取りちがえてしまう

  • つまずく場面:溶解度の本文を読んでいる途中で、「20℃の水100gに食塩は約36g」という数字が出てくる。次の問題で「水溶液100gのうち溶質は何g?」と聞かれた瞬間、同じ100gのつもりで36gと書いてしまいそうになる。
  • 克服のコツ:位置関係で整理する。溶解度の100gは溶媒(水だけ)の重さ、質量パーセント濃度の分母は水溶液全体の重さ。問題文で「水」と「水溶液」のどちらが100gかを指で押さえながら読むと取りちがえにくい。
  • ミニ例:20℃で食塩を水100gに36g溶かしたとき、できた水溶液は136g。「水溶液100g」を聞かれたら、136gではなく100gを基準に考え直す必要がある。

「温度が上がれば何でもよく溶ける」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文で硝酸カリウムが80℃で約169g溶けると出てきて、「やっぱり熱くすればたくさん溶けるんだな」と納得した直後に、食塩の表(20℃で約36g、80℃で約38g)を読んで「あれ、ほとんど変わらない」と止まってしまう。
  • 克服のコツ:見分け方として、固体は「温度で大きく増えるグループ(硝酸カリウム・ホウ酸・ミョウバンなど)」と「ほぼ変わらないグループ(食塩)」に分ける。さらに気体は逆で、温度が上がると溶けにくくなる。固体か気体かをまず確認してからグラフを読む。
  • ミニ例:炭酸飲料を温めるとあわが出るのは、気体の二酸化炭素が温度上昇で水から逃げるため。固体の食塩を温めても、溶ける量はほとんど増えない。

結晶量の式で「冷やした後の溶解度を足してしまう」

  • つまずく場面:「出てくる結晶の量=高温の溶解度−低温の溶解度」という式を本文で見たあと、例題で「80℃で限界まで溶かして20℃に冷やす」と読むと、つい引く向きを逆に書いたり、もとの量と冷やした後の溶解度を足してしまいそうになる。
  • 克服のコツ:因果関係で順番を固定する。①最初に溶けていた量、②冷やした後の温度でまだ溶けていられる量、③その差が押し出されて結晶になる、という流れ。式は必ず「もとの量 − 冷やした後の溶解度」の向きで書く。
  • ミニ例:80℃の水100gに硝酸カリウムを限界まで(約169g)溶かし、20℃に冷やすと、20℃の溶解度は約32gなので169 − 32 = 137gが結晶として出る。低温の値の方を引くと覚える。

食塩も冷やせば再結晶で取り出せると考えてしまう

  • つまずく場面:再結晶の説明を読んで「冷やせば結晶が出てくる」と理解した直後、練習問題で「食塩を水溶液から取り出すには?」と聞かれ、つい「冷やす」と書きそうになる。本文の「食塩は再結晶にむかない」という一文を見落としやすい場面。
  • 克服のコツ:因果関係で押さえる。再結晶は「溶解度の温度差」を利用する方法。食塩は温度を変えても溶解度がほぼ変わらないので、差がほぼゼロで結晶として出てこない。差が小さい物質には水を蒸発させて水の量自体を減らす方法を使う。
  • ミニ例:海水から塩を作るのは、冷やすのではなく水を蒸発させて取り出す方法。ポイントとして「食塩は蒸発で取り出す/硝酸カリウムは冷却(再結晶)で取り出す」と整理しておくと混乱しない。

練習問題

問題1(読み取り・計算)
硝酸カリウムの溶解度は、20℃で32g、60℃で109gとする。60℃の水100gに硝酸カリウムを109g溶かして飽和水溶液をつくり、これを20℃まで冷やした。出てくる結晶は何gか。
答えを見る

20℃の水100gには32gまでしか溶けないので、溶けきれない分が結晶として出る。

109 − 32 = 77g

答え:77g

問題2(判別)
次の問いに答えなさい。
  1. 水に溶かしたあと、冷やしても結晶があまり出てこない物質は、ホウ酸と食塩のどちらか。
  2. 再結晶という方法で純粋にしにくい物質はどちらか。
  3. その物質を水溶液から取り出すには、どんな方法を使えばよいか。
答えを見る

(1) 食塩(温度を変えても溶解度がほとんど変わらないため)

(2) 食塩(同じ理由)

(3) 水を蒸発させる(加熱して水を減らす)方法

問題3(記述)
食塩を水溶液から取り出すときに、再結晶ではなく水を蒸発させる方法が使われる理由を、「溶解度」という言葉を使って説明しなさい。
答えを見る

解答例:食塩の溶解度は温度を変えてもほとんど変化しないため、水溶液を冷やしても結晶として取り出せる量がほとんどない。そこで、水自体を蒸発させて減らすことで、溶けきれなくなった食塩を結晶として取り出す方法が用いられる。

まとめ

  • 溶解度は、水100gに溶ける最大の質量(g)。物質ごと・温度ごとに決まっている。
  • ほとんどの固体は 温度が上がると溶解度が大きくなる。例外は食塩で、ほぼ変化しない。
  • 再結晶は、熱い水に溶かして冷やし、溶解度の差の分だけ結晶を取り出す方法。
  • 出てくる結晶の質量 = 高温の溶解度 − 低温の溶解度(水100gあたり)。
  • 食塩は再結晶にむかないので、水を蒸発させて 取り出す。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

海水から塩をつくるのも「水を蒸発させる」しくみ実生活

食塩は温度を下げても溶解度がほとんど変わらないため、冷やす方法では結晶を取り出しにくく、日本では海水を濃い塩水にしてから煮つめ、水分を蒸発させて塩の結晶を取り出しています。教科書で習う「食塩は蒸発で取り出す」という考え方が、実際の製塩工場でそのまま使われているのです。

出典:公益財団法人塩事業センター 塩百科「イオン膜・立釜法」

白いお砂糖は「再結晶」で純粋にしている実生活

原料となる砂糖には色素などの不純物が混ざっていますが、いったん水に溶かしてから濃縮・冷却してショ糖だけを結晶として取り出すことで、純度の高い白い精製糖がつくられます。これは理科で習う「溶解度の差を利用して物質を純粋にする再結晶」を、食品工場で大規模に行っているものです。

出典:独立行政法人 農畜産業振興機構(alic)作ってみよう!砂糖の結晶

「過冷却」を使ったエコカイロのしくみ発展

酢酸ナトリウムは温度が高いほど水によく溶け、約58℃で固まる物質ですが、ゆっくり冷やすと固まらずに過飽和のまま液体でいられる「過冷却」という状態をつくれます。中の金属板をパチンと押すとそこを起点に一気に結晶ができ、その際に熱を出すため、くり返し使えるカイロとして利用されています。

出典:日本学術振興会(JSPS)ひらめき☆ときめきサイエンス 東京電機大学「使い捨てないカイロの製作」

気体は冷たい水ほどよく溶ける ── 川の魚と溶存酸素発展

固体とは逆に、酸素などの気体は水温が低いほど多く溶け、水温が上がると溶けていられる量が減ります。そのため夏に水温が高くなると川や湖の水にとけている酸素(溶存酸素)が少なくなり、魚がすみにくくなることがあります。

出典:気象庁 海洋内部の知識「溶存酸素量」

海水温が上がると二酸化炭素を溶かしこむ力が弱まる発展

二酸化炭素も気体なので、水温が低いほど水によく溶け、水温が高くなると溶けにくくなります。海は大気中の二酸化炭素を吸収していますが、海水温が上がるとその溶ける量が減るため、地球の気候を考えるうえで気体の溶解度がとても重要になります。

出典:国立環境研究所 地球環境研究センター ココが知りたい地球温暖化「海から二酸化炭素が放出された?」