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加減法 ── 連立方程式の基本テクニック

連立方程式の解き方で 最もよく使うのが 加減法。2つの式を 足したり引いたりして、未知数を1つに減らすテクニックです。これを身につければ、連立方程式の8割が解けます。

図でつかむ

3x + 2y = 14 2x + 2y = 12 引く x = 2 y が消える 係数の符号が同じなら引く。符号が反対なら足して、1文字だけの式にします。
加減法は、2つの式を足す・引くことで同じ文字を消す解き方です。

先に「どの文字を消すか」を決め、係数をそろえてから足すか引くかを選びます。図のように、消える文字を目で確認してから計算すると符号ミスが減ります。

加減法とは

用語
加減法
2つの式を たし算または引き算することで、1つの未知数を 消去する方法。
消去後は1元の方程式になり、解くだけで答えが出る。

加減法の基本手順

  1. 消したい文字を決める(係数が揃えやすい方)
  2. 2式の係数を揃える(必要なら整数倍)
  3. 2式を足すか引くかで1文字を消去
  4. 残った1元の方程式を解く
  5. 得た値を元の式に代入して、もう1文字も求める

係数が揃っている場合(最も簡単)

例1:{ x + y = 5 / x − y = 1 }

y の係数が +1 と −1 → 2式を 足すと y が消える

(x + y) + (x − y) = 5 + 1

2x = 6 → x = 3

x = 3 を 1式目に代入:3 + y = 5 → y = 2

→ (x, y) = (3, 2)

例2:{ 2x + 3y = 11 / 2x − 3y = 1 }

y の係数が +3 と −3 → 足すと y が消える

4x = 12 → x = 3

x = 3 を 1式目に代入:6 + 3y = 11 → 3y = 5 → y = 5/3

→ (3, 5/3)

係数を揃える必要がある場合

例3:{ 3x + 2y = 14 / x + y = 6 }

y の係数が 2 と 1 → 2式目を 2倍して係数を揃える

{ 3x + 2y = 14 / 2x + 2y = 12 }

1式から 2式を引く:x = 2

x = 2 を 2式目に代入:2 + y = 6 → y = 4

→ (2, 4)

同符号は引く、異符号は足す(重要原則)

加減法の原則

消したい文字の係数が 同符号(両方+または両方−) → 引く

 例:3x + 2y = ... と 5x + 2y = ... → 引いて y を消す

消したい文字の係数が 異符号(+と−) → 足す

 例:3x + 2y = ... と 5x − 2y = ... → 足して y を消す

「同足異引」と覚える人もいる(実際は逆:同符号は引く、異符号は足す)

例題で確認

例4:{ 3x + 5y = 16 / 4x + 5y = 19 }

y の係数が同じ(同符号 +5)→ 引く(2式 − 1式)

x = 3

代入:3·3 + 5y = 16 → 5y = 7 → y = 7/5

→ (3, 7/5)

例5:{ 5x + 3y = 19 / 2x − 3y = 1 }

y の係数が +3 と −3(異符号)→ 足す

7x = 20 → x = 20/7

代入:5·(20/7) + 3y = 19 → 3y = 19 − 100/7 = 33/7 → y = 11/7

両方の係数を揃える

例6:{ 3x + 2y = 13 / 5x + 3y = 22 }

y を消すには、係数を最小公倍数 6 に揃える:

1式 × 3:9x + 6y = 39

2式 × 2:10x + 6y = 44

引く:x = 5(同符号6y で引く)

代入:15 + 2y = 13 → y = −1

→ (5, −1)

例7:x を消す方が楽な場合

{ 2x + 5y = 13 / 3x + 7y = 19 }

x の係数を揃える:1式×3、2式×2 → 6x

 1式×3:6x + 15y = 39

 2式×2:6x + 14y = 38

引く:y = 1、代入で x = 4

どちらの文字を消すか選ぶ

  • 係数が小さい方が計算が楽
  • 係数の最小公倍数が小さい方の文字を消す
  • 1の係数があれば、それを揃えやすい
  • 分数や小数を避けられる方を選ぶ
つまずきポイント①:両辺に同じ数を掛ける
  • 「2式目を3倍」と決めたら、左辺も右辺も3倍する
  • × 左辺だけ3倍、右辺はそのまま(不一致)
  • 係数だけでなく 定数項も忘れずに
  • 例:x + y = 5 を3倍 → 3x + 3y = 15(5も3倍)
つまずきポイント②:足す or 引くの判断
  • 同符号(++ or −−)→ 引くと消える
  • 異符号(+−)→ 足すと消える
  • 係数の絶対値が同じだけでなく、符号も確認
つまずきポイント③:代入の式
  • x の値が出たら、元の式(変形前)に代入
  • 変形後の式に代入してもよいが、計算が面倒になることも
  • 係数の小さい式に代入する方が楽

この章でつまずきやすいところ

加減法は手順自体はシンプルですが、本文や問題を読みながら「同符号と異符号、どっち?」「何倍したっけ?」と途中で迷いやすい単元です。式を見ながら止まりがちな具体場面を整理して、止まらず最後まで解けるようにします。

同符号と異符号を逆に思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文を読んでいる途中で「3x+2y=14 と 2x+2y=12」を見て、y の係数が同じなのに反射的に足してしまい、消したかった y が +4y のまま残って手が止まってしまう場面です。
  • 克服のコツ:見分け方として、消したい文字の係数の符号を2式で並べて確認します。消したい文字の係数が同符号なら2式を引く、異符号なら2式を足す。係数の絶対値だけでなく、必ず符号もペアで見るのがコツです。
  • ミニ例:3x+2y=14 と 2x+2y=12 では y の係数が 同じ +2(同符号)なので 引く。引けば 2y−2y=0 となり、x=2 が残ります。

式を整数倍するとき右辺を倍にし忘れる

  • つまずく場面:「2式目を3倍して係数をそろえよう」と決めて式を書き直す途中で、左辺の x と y は3倍したのに、右辺の数だけそのまま写してしまい、後の計算で答えが合わなくなる場面です。
  • 克服のコツ:因果関係として、「両辺に同じ数をかける」から等式は保たれます。左辺だけ倍にすると等式が崩れるので、整数倍したら必ず右辺も同じ倍率にする。式を書く前に「両辺×3」と頭に置いてから書き始めると忘れません。
  • ミニ例:x+y=5 を3倍するときは、左辺だけでなく 右辺の 5 も3倍して 3x+3y=15 とします。3x+3y=5 と書くのは誤りです。

消す文字を係数の大きい方で選んでしまう

  • つまずく場面:問題を解く途中で {3x+4y=25, 2x−5y=−2} のような式を見て、なんとなく先に出てきた x を消そうとしたものの、y の係数の最小公倍数が大きく、途中の計算が分数まみれになって手が止まる場面です。
  • 克服のコツ:見分け方として、x を消す場合と y を消す場合の係数の最小公倍数をそれぞれ出し、小さい方の文字を消すと決めます。1の係数があればそれを使うのも楽です。式を倍にする前に一度立ち止まるのがコツです。
  • ミニ例:{3x+4y=25, 2x−5y=−2} では、x を消すのに必要な係数の最小公倍数は lcm(3,2)=6、y を消す場合は lcm(4,5)=20。小さい 6 で済む x を消す方が計算が楽で、ミスが減ります。

代入する式を変形後の式に戻してしまう

  • つまずく場面:x の値が出てホッとした直後、「どの式に代入しよう」と迷い、係数をそろえるために整数倍した変形後の式に代入してしまって、数字が大きくなり計算ミスが増える場面です。
  • 克服のコツ:時系列で整理すると、代入は変形する前の元の式に戻すのが基本です。変形後でも答えは同じですが、係数が大きくなりがちで計算量が増えます。係数が小さい方の元の式に代入すると一番楽になります。
  • ミニ例:{3x+2y=14, x+y=6} で x=2 が出たら、変形後の 2x+2y=12 ではなく、元の x+y=6 に代入。2+y=6 から y=4 とすぐ求まります。

練習問題

問題1(加減法・基本)

次を解け。

  1. { x + y = 8、x − y = 2 }
  2. { 2x + y = 7、3x − y = 8 }
  3. { x + 2y = 9、3x + 2y = 13 }
答えを見る

(1) 足す:2x=10 → x=5、y=3

(2) 足す:5x=15 → x=3、y=1

(3) 2式−1式:2x=4 → x=2、1式:2+2y=9 → y=7/2

問題2(係数を揃える)
  1. { 2x + 3y = 12、x + y = 5 }
  2. { 3x + 2y = 16、5x + 4y = 30 }
  3. { 4x − 3y = 10、2x + y = 5 }
答えを見る

(1) 2式×2:2x+2y=10、1式から引く:y=2、x=3

(2) 1式×2:6x+4y=32、2式から引く:x=2、y=5

(3) 2式×3:6x+3y=15、1式と足す:10x=25 → x=5/2、y=0

問題3(応用)

{ 5x + 2y = 4、3x − 4y = −21 } を解け。

答えを見る

1式×2:10x + 4y = 8

足す(y の係数が +4 と −4 で異符号):13x = −13 → x = −1

代入:−5 + 2y = 4 → y = 9/2

問題4(判断)

{ 3x + 4y = 25、2x − 5y = −2 } で、x と y のどちらを先に消すと楽か?

答えを見る

x の係数 3 と 2 の最小公倍数 6(1式×2、2式×3)

y の係数 4 と −5 の最小公倍数 20(1式×5、2式×4)

→ x を消す方が小さい数で計算でき、楽

まとめ

  • 加減法:2式を 足す or 引くで1文字消去。
  • 同符号は 引く、異符号は 足す。
  • 係数を揃えるため両式を 整数倍することも(最小公倍数)。
  • 両辺すべてに同じ数を掛ける(右辺も忘れずに)。
  • 1文字を求めたら、元の式に代入してもう1文字も求める。
  • どちらの文字を消すかは、係数の最小公倍数が小さい方を選ぶ。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

加減法は「ガウスの消去法」へつながる発展

中学で習う加減法(消去法)と同じ考え方は、変数が3つ4つと増えても、何百個になっても通用します。これを一般化したものが大学で学ぶ「ガウスの消去法」で、式の定数倍を別の式に加えて文字を順に消していく手順そのものが加減法と同じです。

出典:高校数学の美しい物語(学びTimes)

計算が速いから大規模問題でも使える発展

未知数を消していく加減法の発展形(ガウスの消去法)は、計算の手数が比較的少なくて済むのが特長です。そのため、コンピュータで数百〜数千個もの連立方程式を解くような大規模な問題でも実際に使われています。

出典:高校数学の美しい物語(学びTimes)

スマホのGPSは連立方程式で位置を決める実生活

GPSは、複数の人工衛星の位置と、そこから受信機までの距離の情報をもとに連立方程式を解いて現在地を求めています。位置を正しく決めるには最低4基の衛星が必要で、実際には4基以上の情報を使って計算しています。

出典:電子航法研究所「GPS測位計算プログラム入門」

ものの値段(均衡価格)も連立方程式で求まる実生活

経済学では、買いたい量を表す「需要」の式と、売りたい量を表す「供給」の式を連立方程式として解くと、市場で釣り合う価格と数量(均衡価格・均衡数量)が求められます。値段が高すぎても安すぎてもいけない、ちょうどよい価格を計算で出すしくみです。

出典:名古屋大学OCW 全学教育「経済学」第2回 需要曲線(柳瀬明彦)

江戸の数学者・関孝和と連立方程式発展

江戸時代の和算家・関孝和は、文字と数を一つの式で表せる「傍書法」を考え出し、複数の未知数を消去する連立方程式の計算を進歩させました。鶴亀算のような問題を解く日本の数学は、こうして世界に劣らない水準へ発展しました。

出典:国立国会図書館「江戸の数学」