図でつかむ
この図は、式や定理を読む前に全体像をつかむための補助図です。問題を解くときも、まず同じような簡単な図を自分で描いてから条件を書き込むと、見落としが減ります。
変化の割合の定義
記号で書くと: Δy / Δx
※ Δ(デルタ)は「差」「変化量」を表す
増加量とは
x の増加量 = 後の x − 前の x
y の増加量 = 後の y − 前の y
例:x が 2 → 5 のとき、x の増加量 = 5 − 2 = +3
例:y が 7 → 3 のとき、y の増加量 = 3 − 7 = −4(マイナスでも「増加量」と呼ぶ)
一次関数の変化の割合 = a(重要)
x がどの範囲を動いても、どこを取っても同じ値になる。
これが一次関数の 最大の特徴。
x が 1 → 4 のとき:y は 5 → 11
変化の割合 = (11−5)/(4−1) = 6/3 = 2 = a ✓
x が −2 → 1 のとき:y は −1 → 5
変化の割合 = (5−(−1))/(1−(−2)) = 6/3 = 2 = a ✓
どこをとっても変化の割合 = 2 で一定
x が 0 → 2 のとき:y は 5 → −1
変化の割合 = (−1 − 5)/(2 − 0) = −6/2 = −3 = a ✓
y の増加量を計算する
傾き a が分かっていれば、x の増加量から y の増加量がすぐ分かる。
y の増加 = a × (x の増加) = 3 × 2 = 6
→ y は 6 増える
y の増加 = (−1) × 4 = −4
→ y は 4 減る(負の増加 = 減少)
y の増加 = (1/2) × 6 = 3
グラフの傾きとの関係
グラフ上で、右に1動くと上下に a 動く
a が 正:右上がりの直線
a が 負:右下がりの直線
|a| が 大きい:傾きが急(縦に近い)
|a| が 小さい:傾きが緩やか(横に近い)
変化の割合から a を求める
x の増加量 = 5 − 2 = 3
y の増加量 = 6
a = 6 / 3 = 2
x の増加量 = 4、y の増加量 = −8
a = −8 / 4 = −2
2点から a を求める
a = (y₂ − y₁) / (x₂ − x₁)
例:(1, 3) と (5, 11) を通る
a = (11 − 3) / (5 − 1) = 8 / 4 = 2
例:(−1, 4) と (2, −2) を通る
a = (−2 − 4) / (2 − (−1)) = −6 / 3 = −2
- 「y の増加量」は 負でもよい(負ならその分減る)
- 「x が増えるとき」の話なので、x の増加量は通常正
- × y は4減るから増加量は4(誤、増加量は −4)
- ○ y の増加量は −4
- 変化の割合 = y の増加 / x の増加
- × x / y ○ y / x
- 「変化の割合」は y/x の感覚(傾き = 高さ/幅)
- x が −3 から 2 へ:増加量 = 2 − (−3) = 5
- x が 4 から −1 へ:増加量 = −1 − 4 = −5
- 「後 − 前」の順序を守る
この章でつまずきやすいところ
変化の割合と傾きは、一次関数の式とグラフをつなぐ橋のような存在です。本文を読み進める途中で、分子と分母を入れ替えてしまったり、符号の扱いで止まってしまったりする迷いが起きがちです。途中で立ち止まる場面を先取りしておきましょう。
分子と分母を逆に思い込んでしまう
- つまずく場面:本文に「変化の割合 = (y の増加量) ÷ (x の増加量)」と書かれている場面で、「割合だから x ÷ y では?」と迷い、式を逆に覚えてしまう。問題3で a を求めるときに分子と分母を入れ替えそうになる。
- 克服のコツ:位置関係で覚えるとよい。グラフで「右へ進んだ量」が分母、「上へ動いた量」が分子。図1の「右へ3、上へ2」をそのまま分数にすると 2/3 になる。傾き=高さ÷幅と口に出すと、上下が分子、左右が分母だと迷わない。
- ミニ例:(1, 3) と (5, 11) を通る式の a を求めるとき、右に4進んで上に8と読み、8÷4=2 と書く。先に「右へ/上へ」と言葉にしてから数字を入れる。
y が減る場面で増加量を正にしてしまう
- つまずく場面:「y が 7 から 3 に変わる」「y は 4 減る」という記述を読んでいる途中で、つい「増加量=4」と書きそうになる。問題2の「x が3増えると y は6減る」場面でも、増加量を −6 ではなく 6 と書いてしまいやすい。
- 克服のコツ:時系列で「後の値 − 前の値」の順を必ず守ると決める。減ったときは差が負になるが、それでも教科書では「増加量」と呼ぶ。「増加量=−4 = 4 減った」と頭の中で言い直すと符号ミスが減る。
- ミニ例:y が 7 → 3 のとき、後 − 前 = 3 − 7 = −4。「y の増加量は −4」と書いてから、変化の割合の式に代入する。
負の数同士の引き算でつまずく
- つまずく場面:問題3の「x が −1 から 3 に増えるとき」や本文の「x が −3 から 2 へ」のような場面で、x の増加量を出そうとして 3 − 1 や 3 + (−1) と混乱し、符号と順序のどちらを優先するか迷ってしまう。
- 克服のコツ:時系列を守るのがコツ。「後 − 前」の順序を絶対に変えない。前の値が負でも、その負の数をそのまま引く。引き算が「−(−3)=+3」になることだけ意識すれば、順序を入れ替える必要はない。
- ミニ例:x が −3 → 2 のとき、後 − 前 = 2 − (−3) = 5。x が 4 → −1 のときは、−1 − 4 = −5。同じ形のまま当てはめる。
切片 b を傾きと混ぜてしまう
- つまずく場面:y = −2x + 5 の傾きを問われた場面で、「+5 の方も関係あるのでは?」と迷い、5 や 3(係数と足したもの)と答えそうになる。本文の「y=ax+b では変化の割合は常に a」の a と b の役割が混ざりやすい。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。x が動いたときに y を動かすのは a だけ。b は「x = 0 のときの y の値」で、直線を上下にずらす役。x が増えても b の部分は変わらないので、傾きには関与しない。
- ミニ例:y = −2x + 5 で x が 1 増えると、y は −2 増える(=2 減る)。+5 は最初の位置を決めるだけで、傾きは −2 のまま。
練習問題
次の一次関数の変化の割合は。
- y = 4x − 1
- y = −2x + 3
- y = (1/3)x + 5
答えを見る
(1) 4 (2) −2 (3) 1/3
- y = 3x + 2 で、x が 5 増えると y はどう変化?
- y = −2x + 1 で、x が 3 増えると y はどう変化?
- y = (1/2)x − 3 で、x が 4 増えると y はどう変化?
答えを見る
(1) 15 増える(3 × 5)
(2) 6 減る(−2 × 3 = −6)
(3) 2 増える(1/2 × 4 = 2)
- x が 2 から 5 に増えると y が 6 増えるときの a。
- x が −1 から 3 に増えると y が 8 減るときの a。
- 2点 (1, 5) と (4, 14) を通る一次関数の a。
答えを見る
(1) 6/3 = 2
(2) −8/4 = −2
(3) (14−5)/(4−1) = 9/3 = 3
一次関数 y = 2x + 3 で、x が a から a + 5 まで変化したとき、y の変化量を求めよ。
答えを見る
x の増加量 = 5、a = 2 なので、y の増加量 = 2 × 5 = 10
※ どこから動かしても変化の割合は一定なので、a の値によらない
まとめ
- 変化の割合 = (y の増加量) / (x の増加量)。
- 一次関数では 常に a で一定。
- y の増加量 = a × (x の増加量)。
- グラフの 傾き = 変化の割合 = a。
- 2点から a:(y₂ − y₁) / (x₂ − x₁)。
- a の符号:正→右上がり、負→右下がり。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
道路標識の「勾配○%」は傾きそのもの実生活
山道などにある「8%」の勾配標識は、水平に100m進むと8m上り下りする坂であることを示しています。これは一次関数の傾き a と同じ考え方で、横の変化に対する縦の変化(y の増加量÷x の増加量)を割合で表したものです。
道路には傾きの上限が決められている発展
道路構造令では、ふつうの道路の縦断勾配は原則として9%以下と定められ、急すぎる坂をつくれないようになっています。傾きの絶対値が大きいほど坂が急になるという一次関数の性質が、車が安全に走れる道づくりの基準にそのまま使われています。
車いす用スロープの「1/12」も傾き実生活
バリアフリー法の移動等円滑化基準では、車いすの人が通る傾斜路(スロープ)の勾配を12分の1(約8.3%)以下にすると定めています。12進むごとに1上がるという傾き a=1/12 をゆるやかに保つことで、自力でも安全に上り下りできるよう設計されています。
建築基準法でも階段に代わる傾斜路は8分の1以下発展
建築基準法施行令第26条では、階段の代わりにつくる傾斜路の勾配は8分の1(1/8)を超えてはならないと定められています。これは横に8進むと縦に1上がる傾きで、これより急な坂を建物の通路にはできないという最低限のルールです。
鉄道の坂は「パーミル(‰)」で表す発展
鉄道では坂の傾きを千分率のパーミル(‰)で表し、35‰なら1000m進む間に35m上がることを意味します。国土交通省の技術基準では普通鉄道の最急勾配の標準を定めており、横の距離に対する縦の上がりという傾きの考え方が安全な線路設計に使われています。
標高が高いほど気温は一定の割合で下がる発展
山を100m登るごとに気温はおよそ0.6℃ずつ下がっていきます。これは標高 x が増えるほど気温 y が一定の割合で減る一次関数の関係に近く、傾きが負(右下がり)の例として見ることができます。登山や天気の予想に役立つ目安です。
