図でつかむ
この図は、式や定理を読む前に全体像をつかむための補助図です。問題を解くときも、まず同じような簡単な図を自分で描いてから条件を書き込むと、見落としが減ります。
応用問題の基本パターン
- 共通の形:y = (変化率) × x + (初期値)
- 変化率 a:単位時間 / 単位距離あたりの変化量
- 初期値 b:x = 0 のときの y の値(スタート地点)
- このパターンに当てはめれば、現実の問題が式になる
動点の問題
点 P が A(0) から毎秒2cmで進む。x 秒後の P の位置 y は?
y = 2x(変化率 2、初期値 0、比例関係)
5cm の位置から始めたなら:y = 2x + 5(一次関数)
A(0) からなら10秒後は y = 20cm、5cm の位置からなら y = 25cm
A から P が毎秒1cm、B(20cm) から Q が毎秒3cm でAに向かって進む
P:y = x(位置) Q:y = 20 − 3x
出会う:x = 20 − 3x → 4x = 20 → x = 5
5秒後に位置 5cm で出会う
速さと時間(水の問題)
100Lの水槽に毎分3Lずつ水を入れる。x 分後の水量 y は?
y = 3x + 100
200L になるのは:200 = 3x + 100 → x = 100/3 分 ≈ 33.3 分
200L の水槽から毎分5Lずつ水を抜く。x 分後の水量 y は?
y = −5x + 200(減るので傾きが負)
空になるのは:0 = −5x + 200 → x = 40 分
料金プランの比較
プラン A:基本料 1000円 + 通話 1分 20円 → y = 20x + 1000
プラン B:基本料 2000円 + 通話 1分 10円 → y = 10x + 2000
どちらが得? → 交点で考える
20x + 1000 = 10x + 2000 → 10x = 1000 → x = 100
100分未満:プラン A が得(基本料が安い)
100分を超える:プラン B が得(通話単価が安い)
100分でちょうど同じ料金
A 駐車場:30分 200円、以後10分ごとに50円
B 駐車場:1時間まで500円、以後 10分ごとに100円
どちらが得かは利用時間によって変わる → グラフを描いて比較すると一目瞭然
温度変化
地下に1m掘るごとに温度が0.5℃上がる。地上が25℃。
深さ x m での温度 y = 0.5x + 25
深さ 100m:y = 0.5·100 + 25 = 75℃
標高が100m上がるごとに気温が0.6℃下がる。地上が20℃
標高 x m での気温 y = −0.006x + 20
富士山頂(3776m):y = −0.006·3776 + 20 ≈ −2.7℃
動点と三角形の面積
底辺 BC = 10cm、高さ 8cm の三角形 ABC(B から C への線が底辺)。
動点 P が頂点 B から BC 上を秒速 1cm で進む。
x 秒後の三角形 BPA の面積 y は?
BP = x、高さは元のまま 8cm
y = (1/2) × x × 8 = 4x
→ y = 4x(変域 0 ≦ x ≦ 10)
ろうそく問題
長さ 20cm のろうそくが毎分 0.5cm 燃える。x 分後の長さ y は?
y = −0.5x + 20(減るので負の傾き)
完全に燃え尽きる:0 = −0.5x + 20 → x = 40 分
変域:0 ≦ x ≦ 40
応用問題を解く手順
- 問題の中の 変化する量を x、y として置く
- 初期値(x = 0 のときの y)を見つける → b
- 変化率(x 単位あたりの y の変化)を見つける → a
- y = ax + b の式を作る
- 問題が求めているものを 代入または 方程式で求める
- 変域(x の範囲)をチェック
- 動点問題では 動く範囲(時間の上限)が決まっている
- 例:水を入れる時間は満タンまで → x ≦ ある値
- 料金プランでは x ≧ 0
- 必ず 変域もチェック
- 水を抜く、ろうそくが燃える、温度が下がる → 傾きが負
- × ろうそくの長さ y = 0.5x + 20(増えると勘違い)
- ○ ろうそくの長さ y = −0.5x + 20
- 増減を文章でしっかり読む
- 時間が「分」なら、速さも「m/分」「L/分」に統一
- × 速さが「m/秒」、時間が「分」のままで計算
- 必要なら掛けて単位を変える
この章でつまずきやすいところ
一次関数の応用は、文章を読みながら「何が x で何が y か」「増えるのか減るのか」を判断する作業の連続です。本文や問題を読んでいる途中に起きやすい、3つの典型的な迷いを取り上げます。
減る場面なのに傾きを正と思い込んでしまう
- つまずく場面:「長さ20cmのろうそくが毎分0.5cm燃える」と読んだ瞬間、毎分0.5cmという数字に引っぱられて y = 0.5x + 20 と書きそうになり、本当にこれで合っているのか手が止まる。
- 克服のコツ:増減を文章で確認してから符号を決めるのが見分け方。「燃える・抜く・下がる」は減る → 傾きは負。「入れる・上がる・進む」は増える → 傾きは正。式を書く前に、文中の動詞に印をつけて増減を判定する手順を入れる。
- ミニ例:ろうそくは時間がたつほど短くなる。だから x=0 で 20cm、x が増えると y は減る → y = −0.5x + 20。同じく「水を抜く」も y = −5x + 200 のように傾きが負になる。
動点が動く範囲(変域)を考えずに式だけ立ててしまう
- つまずく場面:「高さAB=8cm、底辺BC=10cm の三角形ABCで、点PがBからCへ秒速1cmで進む。x秒後の△ABPの面積を y cm² とする」と読み、y = 4x という式は書けたものの、x にどんな値まで入れていいのかが本文を読み返しても判断できず迷う。
- 克服のコツ:x が動ける位置関係で範囲を決めるのがコツ。Pが進めるのは B から C までだから、x の最大値は BC の長さを速さで割った時間(秒)になる。動点問題では「式」と「変域」をワンセットで書く習慣をつけると、範囲の見落としが減る。
- ミニ例:BPの長さは x cm(秒速1cm × x秒)、高さABは8cmだから △ABP の面積は y = 1/2 × x × 8 = 4x。PがCに着くのは10秒後なので、変域は y = 4x(0 ≦ x ≦ 10)。長さ20cmのろうそくが毎分0.5cmなら 0 ≦ x ≦ 40 のように、ゴール時点で変域が止まる。
「分」と「秒」など単位がずれたまま式に入れてしまう
- つまずく場面:速さが「毎秒2cm」なのに、設問は「3分後の位置を求めよ」と聞いてくる。本文の数字をそのまま y = 2x の x に「3」と入れていいのか、それとも何か変換が要るのかで手が止まる。
- 克服のコツ:x の単位と速さの単位を必ず一致させるのが見分け方。「毎秒○cm」なら x は秒、「毎分○L」なら x は分。問題文と式で単位が違うときは、先に単位を揃えてから代入する手順を固定する。
- ミニ例:毎秒2cmの動点で「3分後」を聞かれたら、3分=180秒に直してから y = 2 × 180 = 360cm。料金プランで「1分20円」なら x も「分」で揃え、y = 20x + 1000 に分単位で代入する。
練習問題
20L の水が入った水槽に、毎分2Lずつ水を入れる。x 分後の水量 y を式で表し、60L になる時間を求めよ。
答えを見る
y = 2x + 20。
60 = 2x + 20 → 2x = 40 → x = 20 分
プランA:基本料 500円 + 1回 50円。プランB:基本料 1500円 + 1回 30円。何回以上ならBが得?
答えを見る
A:y = 50x + 500、B:y = 30x + 1500
50x + 500 = 30x + 1500 → 20x = 1000 → x = 50
50回で同額。回数が整数なら、51回以上で B が得
長さ 30cm のろうそくが毎分 0.6cm 燃える。x 分後の長さ y の式を求め、長さが半分(15cm)になる時間を求めよ。
答えを見る
y = −0.6x + 30
15 = −0.6x + 30 → 0.6x = 15 → x = 25 分
底辺 8cm、高さ 6cm の三角形 ABC。動点 P が B から底辺上を秒速 1cm で進む。x 秒後の三角形 ABP の面積 y を式で表せ(変域も)。
答えを見る
BP = x、高さ 6cm のまま
y = (1/2) × x × 6 = 3x
変域:0 ≦ x ≦ 8
まとめ
- 一次関数は 現実の変化を表せる強力なツール。
- パターン:y = (変化率) × x + (初期値)。
- 増えるなら傾き正、減るなら負。
- 料金比較:直線の 交点で「どちらが得」が分かる。
- 動点・水量・温度・ろうそく・面積 など、応用範囲が広い。
- 必ず 変域(x の範囲)も意識。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
標高が上がると気温が下がる ── 傾きが負の一次関数実生活
気象では、空気が山をのぼると標高100mあたりおよそ0.6℃(地理では0.55℃、理科では国際標準大気の0.65℃を用います)ずつ気温が下がるとされます。標高xmでの気温yは、これらの近似値を使って y=−0.006x+(地上の気温) のように表せ、これは「変化が一定の割合で減る」一次関数そのものです。傾きが負になるのは、上に行くほど量が減るためです。
山をのぼる空気は、雲ができると傾きが変わる発展
気象庁の解説によると、雲がないかわいた空気は100mのぼるごとに約1℃下がりますが、雲ができたあとは約0.5℃しか下がらなくなります。つまり1本の直線ではなく、途中で傾きが変わる「区間ごとに式が変わる」関数になり、動点や駐車場料金の問題と同じ見方が必要です。
地下を掘ると温度が上がる ── 本当の傾きはどれくらい?発展
火山などが近くにない日本の地下では、深さ100mあたり温度がおよそ3℃ずつ上がる(地温勾配 約0.03℃/m)ことが知られています。深さxmと温度yはほぼ一次関数の関係になりますが、地熱地域では傾きがその10倍以上になることもあり、係数aが場所で変わる点が現実の面白さです。
地下の熱を使う地熱発電 ── 日本は資源量で世界第3位実生活
地温勾配が大きい火山地帯では、地下の熱で発電する地熱発電ができます。資源エネルギー庁によると、日本の地熱資源量は約2347万kWでアメリカ・インドネシアに次ぐ世界第3位ですが、実際に発電に使われている量はまだごく一部にとどまっています。深さと温度の関係を読むことが、こうしたエネルギー利用の出発点になります。
一次関数の予測には「ずれ」もある ── 富士山頂の気温発展
標高3776mの富士山頂を y=−0.006x+(地上気温) で計算すると、地上が約20℃なら山頂は約−2.7℃と求まります。しかし気象庁の観測による富士山頂の年平均気温の平年値は約−5.9℃で、一次関数による予想と実測には差があります。式はあくまで現象を近似する道具で、現実と照らし合わせる姿勢が大切だと分かります。
