図でつかむ
この図は、式や定理を読む前に全体像をつかむための補助図です。問題を解くときも、まず同じような簡単な図を自分で描いてから条件を書き込むと、見落としが減ります。
証明とは何か
「なんとなく成り立つ」ではなく、「必ず成り立つ理由」を文章で示す。
仮定と結論
仮定:問題で「与えられている条件」(「〜とする」「〜のとき」)
結論:問題で「示したいこと」(「〜を証明せよ」)
例:「AB = AC のとき、△ABC が二等辺三角形であることを証明せよ」
仮定:AB = AC
結論:△ABC は二等辺三角形
証明の流れ
- 合同を示したい2つの三角形を明示(△ABC と △DEF において)
- 等しい 辺・角を3つ挙げる
- それぞれに 理由を書く(仮定/共通/対頂角/平行線の同位角・錯角など)
- 合同条件のどれを使ったか書く
- 合同と結論(よって △ABC ≡ △DEF)
標準フォーマット
[証明] △ABC と △DEF において、
① AB = DE(理由)
② BC = EF(理由)
③ ∠B = ∠E(理由)
①、②、③ より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
よって △ABC ≡ △DEF (証明終)
「等しい理由」のパターン(重要)
| 理由 | 意味 |
|---|---|
| 仮定 | 問題文で与えられた条件 |
| 共通 | 両方の三角形に共通する辺・角(同じ辺がある) |
| 対頂角 | 2直線が交わってできる向かい合う角 |
| 平行線の同位角 | 2直線が平行のとき、同位角が等しい |
| 平行線の錯角 | 2直線が平行のとき、錯角が等しい |
| 正三角形の性質 | 3辺、3角がすべて等しい |
| 二等辺三角形の性質 | 2辺、底角が等しい |
| 中点の定義 | 中点が分ける2辺は等しい |
| 角の二等分線 | 2分される角は等しい |
| 垂直 | 90°の角 |
具体例1 ── 二等辺三角形の対称性
[証明] △ABD と △ACD において、
① AB = AC(仮定)
② BD = CD(D は BC の 中点)
③ AD = AD(共通)
①、②、③ より、3組の辺がそれぞれ等しい
よって △ABD ≡ △ACD (証明終)
具体例2 ── 平行四辺形の性質
[証明] △ABC と △CDA において、
① AB = CD(仮定)
② AC = CA(共通)
③ ∠BAC = ∠DCA(平行線の錯角、AB // CD)
①、②、③ より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
よって △ABC ≡ △CDA (証明終)
具体例3 ── 対頂角の利用
△AOC ≡ △BOD を示す
[証明] △AOC と △BOD において、
① OA = OB(仮定)
② OC = OD(仮定)
③ ∠AOC = ∠BOD(対頂角)
①、②、③ より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
よって △AOC ≡ △BOD
合同を示した後の利用
合同が示せると、対応する 残りの辺・角もすべて等しい
例:△ABD ≡ △ACD なら、∠B = ∠C、AB = AC が言える
→ これを使って二等辺三角形の底角の性質を証明できる
問題文で「○○ を示せ」と言われていたら、合同を示した後に
「△ABD ≡ △ACD より、〜 = 〜」と書いて結論につなぐ
証明を書くコツ
- 図にマークをつける:等しい辺・角に印を入れて視覚化
- 仮定をすべて使うか確認
- 結論から逆算:「合同を示したい → どの2三角形?」を考える
- 3つの根拠(辺・辺・辺 or 辺・角・辺 or 角・辺・角)を揃える
- 必ず合同条件の 名前を書く(採点ポイント)
- 「AB = DE」だけでなく、「仮定」「共通」など 理由を必ず書く
- × AB = DE → △ABC ≡ △DEF
- ○ AB = DE(仮定)
- 採点で「理由がない」と減点される
- 「3組の辺がそれぞれ等しい」
- 「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」
- 「1組の辺とその両端の角がそれぞれ等しい」
- これらを 正確に書く(略してはダメ)
- △ABC ≡ △DEF と書くときは 対応する頂点の順
- A→D、B→E、C→F
- 順序を間違えると、対応する辺・角が違ってしまう
- 頂点の位置をしっかり確認
この章でつまずきやすいところ
証明は「論理を文章で書く」練習。問題文を読んでいる途中、何が仮定で何が結論かを取り違えたり、図の見た目に頼ったりして手が止まりやすい。書き出す前に迷う具体場面を整理して、流れに乗れるようにしておこう。
「示したいこと」を仮定だと思い込んでしまう
- つまずく場面:「AB = AC のとき、△ABC が二等辺三角形であることを証明せよ」を読み、ABとACが等しいことから書き始めようか、二等辺だと言い切ってから根拠を並べようかで迷ってしまう場面。
- 克服のコツ:時系列で整理する。問題文の「〜のとき」「〜とする」が仮定(出発点)、「〜を証明せよ」「〜を示せ」が結論(ゴール)。結論から書き始めると流れが逆になるので、まず仮定を図に印で書き込み、結論は最後の一文で書く順番を守る。
- ミニ例:「AB = AC のとき〜」なら、仮定 = AB = AC、結論 = △ABCが二等辺三角形。書き出しは「△ABCにおいて、AB = AC(仮定)」から始める。
図で等しく見えるから等しいと書いてしまう
- つまずく場面:△ABDと△ACDの図を見ているとき、BDとCDが同じ長さに見えるからといって、Dが中点だと書かれていないのに「BD = CD」と理由なしに使ってよいのか迷う場面。
- 克服のコツ:見分け方は「問題文に書いてある条件か、定義・定理から導けるか」の2つだけ。図の見た目は根拠にならない。仮定/共通/対頂角/平行線の同位角・錯角/中点の定義などのどれに当てはまるかを必ず横に書く。当てはまらないなら、その等しさは使えない。
- ミニ例:「Dは BC の中点」と書いてあればBD = CD(中点の定義)と書ける。書いてなければ、見た目が同じでも使ってはいけない。
三角形の名前の並び順を適当に書いてしまう
- つまずく場面:△ABDと△ACDの合同を書こうとして、3つの等しい関係は集まったのに、結論を「△ABD ≡ △ADC」と書くか「△ABD ≡ △ACD」と書くかで止まってしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で確認する。対応する頂点を同じ位置に並べるのが鉄則で、A↔A、B↔C、D↔Dのように対応をそろえてから記号を書く。順番がずれると、対応する辺・角が違うものを指してしまい、最後に「対応する辺は等しい」と書いたとき別の辺の話になってしまう。
- ミニ例:AB = AC、BD = CD、AD = AD(共通)なら、Bの相手はC、Dの相手はDなので△ABD ≡ △ACD。△ABD ≡ △ADCではない。
合同条件の名前を省略してよいと思ってしまう
- つまずく場面:①②③で3つの等しさを書き終え、最後に合同条件をどう書くか迷い、「SAS」と略号で書いたり「2辺と角が等しい」とだけ書いたりしてよいのか手が止まる場面。
- 克服のコツ:因果関係を整える。「3つの根拠 → 合同条件名 → 合同の結論」の順でつなぐのが証明の型。条件名は教科書のとおり「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」のように正確に書く。略号や省略は採点の根拠を消してしまうので避ける。
- ミニ例:AB = DE、BC = EF、∠B = ∠Eの3つを示したら、「2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい」よって △ABC ≡ △DEFと続ける。
練習問題
四角形 ABCD で AB // CD、AB = CD のとき、△ABC ≡ △CDA であることを証明せよ。
答えを見る
[証明] △ABC と △CDA において、
① AB = CD(仮定)
② AC = CA(共通)
③ ∠BAC = ∠DCA(平行線 AB // CD の錯角)
①、②、③ より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
よって △ABC ≡ △CDA
線分 AB の中点を M とし、M を通る直線が AB に垂直で、その上に点 P をとる。△AMP ≡ △BMP を証明せよ。
答えを見る
[証明] △AMP と △BMP において、
① AM = BM(M は中点)
② MP = MP(共通)
③ ∠AMP = ∠BMP = 90°(仮定:垂直)
①、②、③ より、2組の辺とその間の角がそれぞれ等しい
よって △AMP ≡ △BMP
正三角形 ABC で、辺 AB、AC 上に AD = AE となる点 D、E をとる。△ADE が正三角形になることを示すには、まず何を示せばよいか。
答えを見る
△ADE に着目する。AD = AE(仮定)なので △ADE は二等辺三角形。頂角 ∠DAE は D が AB 上、E が AC 上にあるので ∠BAC と同じ角であり、△ABC は正三角形だから ∠DAE = ∠BAC = 60°。二等辺三角形の底角は等しいので、∠ADE = ∠AED = (180° − 60°) ÷ 2 = 60°。3つの角がすべて60°になるので、△ADE は正三角形である。
「2辺と1角が等しければ三角形は合同である」という命題の仮定と結論を答えよ。
答えを見る
仮定:2辺と1角が等しい
結論:三角形が合同である
※ ただしこの命題は 偽(1角が外の角だと合同とは限らない)
まとめ
- 証明の基本:仮定 → 等しい関係を3つ → 合同条件 → 結論。
- 等しい理由:仮定・共通・対頂角・平行線の同位角/錯角 など。
- 必ず合同条件の 名前を書く。
- 頂点の対応の順序を間違えない(△ABC ≡ △DEF)。
- 合同を示したあとは、対応する辺・角の等しさを利用。
- 図に印をつけ、論理の流れを整理してから書く。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
三角測量 ── 三角形の角と1辺で位置を決める実生活
国土地理院の三角測量では、まず2点間の距離を正確にはかり、そこに点を加えて三角形をつくります。1辺の長さと内角がわかれば三角形の大きさと形が計算で決まるため、遠くの点の正確な位置を求められます。証明で学ぶ「辺と角がそろえば三角形が定まる」という考えが、地図づくりの土台になっています。
三角点と三角網 ── 地図の基準になる三角形実生活
全国の山頂などにある三角点は、正確な位置を求めるために国土地理院が設けた基準点です。三角点をつないでできる「三角網」が地図記号のもとにもなっており、たくさんの三角形を組み合わせて広い範囲の位置を正確に決めています。図形の合同で角や辺の対応を正しくたどる考え方が、ここでも生かされています。
ユークリッド『原論』 ── 証明の文化の出発点発展
紀元前300年ごろのユークリッドは、著書『原論(ストイケイア)』で、それまでのギリシア数学の成果を体系的にまとめあげました。少数の前提から命題を順に導く形式は、今みなさんが書いている「仮定から結論へ」という証明の書き方の源流です。2000年以上前の方法が、今の教科書にそのまま受けつがれています。
平行線公準と非ユークリッド幾何学発展
ユークリッドの第5公準(平行線についての前提)は、ほかの公準より複雑で、長く議論の的になりました。19世紀にこの前提を別のものに置きかえると、ロバチェフスキーらの幾何学では三角形の内角の和が180度より小さく、リーマンの幾何学では大きくなることがわかりました。「何を前提(仮定)にするか」で結論が変わる、という証明の本質をよく示す例です。
災害後の再測量 ── 動いた基準点を確かめる実生活
2011年の東北地方太平洋沖地震では、地面が大きく動いたため、国土地理院は約1300点もの三角点を測りなおし、座標を補正しました。基準点どうしを三角形で結びなおして位置の変化を求める作業で、正確な地図や復旧工事を支えています。図形を正しく対応づけて結論を出す力が、社会の安全にも役立っています。
