何か新しいことを前にしたとき、子どもが「自分にはできない」と思っているように見えることがあります。やってみる前から、できない自分を先に思い浮かべてしまうのです。
その様子は、性格や気の弱さのせいに見えるかもしれません。けれど日本では、この「自分にはできない」という感覚が、子どもから大人まで同じ形で続いています。
力はあるのに、「自分でできる」と思えない
OECDが2022年に行った国際学習到達度調査(PISA)で、日本の高校1年生は数学・読解・科学の3分野すべてで世界トップレベルの結果を出しました。ところが同じ調査で「また学校が休校になったら、次のことをする自信があるか」を尋ねた指標では、OECD平均の0.01に対して日本は−0.68で、34位でした。「自力で学校の勉強をこなす自信がある」と答えた生徒は41.6%、「やる気を出す自信がある」は33.9%にとどまります。力はあるのに、「自分でできる」と思えていないのです。
こども家庭庁が2023年度に、日本・米国・ドイツ・フランス・スウェーデンの13〜29歳を対象に行った調査でも、同じ傾向が出ています。「うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む」と答えた若者は、日本が56.4%。ほかの4か国は71.2〜80.0%で、日本だけが大きく下回りました。2018年度の51.5%からは上がっていますが、差はまだ15〜24ポイントあります。
「起業できる」と思える大人は12.5%
この傾向は、大人になっても続きます。起業への意識を国際比較する調査GEMの2025年調査で、「新しいビジネスを始めるために必要な知識・能力・経験を持っている」と答えた日本の成人は12.5%でした。2025年の値がある46か国の中で最も低く、次に低い台湾でも36.0%、英国は61.8%、米国は55.6%です。日本は2001年から一度も16%を超えたことがありません。
これは本人の自己評価で、実際の能力を測ったものではありません。日本人は控えめに答える傾向があるため、割り引いて読む必要もあります。ただ、起業するかどうかを左右するのは、まさにこの「思えるかどうか」です。18か国の成人を分析した研究では、起業するかどうかを最もよく予測したのは、実際の能力ではなく「自分には知識や能力がある」と思っているかどうかでした。
子どもの数字と大人の数字は、同じ人を追いかけたデータではありません。子どものころの自信が低いから大人が起業しない、とまでは言えません。それでも、「自分はできる」と思える人が少ない傾向は、子どもから大人まで一続きに見えます。
必要なのは、根拠のある自信
では、とにかく自信を持たせればよいのかというと、そうではありません。米国の創業者兼経営者201人を調べた研究では、楽観的な起業家ほど、事業の売上や雇用の伸びが低いという結果が出ています。根拠のない自信は、挑戦する力にはなっても、うまくいく力にはなりにくいのです。
大切なのは、「これはやったことがあるから、できる」と言える自信です。そしてこの自信は、実際に「できた」経験から育ちます。子どもと大人の研究をまとめた分析では、大人では自信と成果が互いに影響し合うのに対し、子どもでは成果が先にあり、自信は後からついてくる流れが中心でした。中身のないほめ言葉や、「君ならできる」という励ましだけでは、自信は長続きしません。性格そのものを変えようとするプログラムも、効果は弱いことが分かっています。
自信は、性格でも親のせいでもない
自信には生まれつきの部分もあります。日本を含む6か国、約1万3,000人の双子を調べた研究では、教科ごとの「自分はできる」という感覚の個人差のうち、遺伝で説明できるのは約40%でした。家庭環境の影響はほぼ0%で、残りの約60%は、その子自身がどんな経験をしたかで決まっていました。
自信は、親のせいでも親のおかげでもありません。差を生むのは、家の外も含めた、その子自身の「できた」経験の積み重ねです。子どもが「自分にはできない」と思っていそうなときは、励ます言葉より先に、小さな「できた」を一つ用意してみてください。
デジタルこどもBASEが目指しているのも、子どもたちが「やればできる」の経験を積める場所です。自分の手で動く作品を作って、少し頑張れば届く課題を一つずつ重ねていきます。
