「見たことある子だな」――お母さんのInstagramで見つけた、放課後ラボのゲームづくり

デジタルこどもBASEのInstagramは、何を隠そう(別に隠してはいないのですが)、ふだんAIが投稿しています。人間の私がInstagramを見ることは、ほとんどありません。その日、たまたま開いた画面を見て、「あれ、見たことある子だな……」という既視感がありました。放課後ラボに通っている男の子が、パソコンに向かっている写真です。投稿していたのは、その子のお母さんでした(元の投稿)。

放課後ラボで、男の子がノートパソコンに向かってゲームを作っている様子
お母さんのInstagramの写真(掲載の許可をいただいています)|元の投稿を見る

「これ、実話じゃないか」

投稿によると、彼は春から放課後ラボに通い始めました。家から会場までは4〜5キロもあり、遠くから毎週通ってきてくれています。最初はゲームで遊んで過ごす時期もありましたが、最近はもっぱらゲーム作りに夢中で、毎週のように作っているそうです。AIに指示を出しながらプログラムを組み、最初から思いどおりには作れないので、指示を出し直しながら完成を目指していく。そんな様子が書かれていました。

前の晩、お母さんは彼が作ったゲームを遊ばせてもらって、驚いたそうです。ゲームの中身は、「いかにストレスをためずに、退勤から電車通勤、帰宅までをこなすか」。以前、お母さんが混雑した電車にうっかりベビーカーで乗ってしまったときのことが、そのままゲームになっていました。「通勤モード」のほかに、もっと難しい「母子お出かけモード」まであるそうです。お母さんは「これ、実話じゃないか」と苦笑していました。

「なんとなく」では、ゲームは動かない

放課後ラボでは、AIを使ってゲームを作ることもあります。作ってみると、だいたい1時間ほどで、ちゃんと遊べるものができあがります。見学に来た大人は、まずそこに驚きます。子どもたちが投稿したゲームは、AIゲーム広場に並び、少しずつ増えていきます。

けれど、私が心を動かされたのは、ゲームの出来ではありませんでした。お母さんは投稿の中で、こんなふうに書いていました。ふだんは抽象的な言葉が多く、自分の気持ちを「なんとなく」で片付けてしまいがちな息子にとって、これは具体的で論理的な言葉を紡ぐ練習になっているのではないか、と。

AIは、言われたとおりにしか作りません。思ったものと違えば、どこが違うのかを自分の言葉で説明して、指示を出し直すしかありません。「なんとなく」では、ゲームは動かないのです。彼は毎週、その言い直しを繰り返しながら、自分の頭の中にあるものを形にしてきました。

そして彼が作ったのは、どこか遠い世界の冒険ではなく、お母さんが大変だった日の一場面でした。身近な誰かの「困った」を、遊べる形にする。それは、ものづくりのいちばん大事なところだと思います。

遊ぶ子も、作る子も

お母さんの投稿には、もう一つ、うれしいことが書かれていました。放課後ラボのカリキュラムは基本的に自由で、ゲームをして終わる子も、ひたすらタイピングをする子もいる。それはそれで、操作を覚えるから良し。彼自身も、そんなふうに過ごした時期があったそうです。

何をして過ごすかは、子ども自身が決めます。遊んでいる時間も、無駄ではありません。手がパソコンに慣れてきたころ、作りたいものが自然に出てくる子がいます。彼が、まさにそうでした。

次の水曜日、放課後ラボで彼のゲームを遊ばせてもらおうと思います。「母子お出かけモード」を、私はクリアできるでしょうか。

デジタルこどもBASEでは、毎週水曜日の放課後ラボと、学校に行きづらい子のためのふらっとラボを開いています。くわしくは子どもの居場所のご案内をご覧ください。

著者:漆谷 智行(デジタルこどもBASE理事長)