てんびんのイメージ
等式 A = B は、てんびんが つりあっている状態。
このてんびんを傾けない方法 ── それが等式の性質です。
等式の4つの性質
A = B のとき:
- ① 両辺に同じ数を足してもよい A + C = B + C
- ② 両辺から同じ数を引いてもよい A − C = B − C
- ③ 両辺に同じ数をかけてもよい A × C = B × C
- ④ 両辺を同じ数(0以外)で割ってもよい A ÷ C = B ÷ C (ただし C ≠ 0)
てんびんで考えると:
- ① 両側に同じおもりを乗せる → つりあったまま
- ② 両側から同じだけ取り除く → つりあったまま
- ③ 両側を同じ倍数にする(同じ数で複製する) → つりあったまま
- ④ 両側を同じ数で分ける → つりあったまま
性質を使って方程式を解く
方程式を解くとは、x を 1つだけ左辺に残し、右辺に値が出るように変形すること。等式の性質を使えばできます。
x の前にじゃまな「+5」を消したい。両辺から5を引く(性質②)
x + 5 − 5 = 12 − 5
x = 7
x の前の「−3」を消したい。両辺に3を足す(性質①)
x − 3 + 3 = 9 + 3
x = 12
x の前の係数「4」を1にしたい。両辺を4で割る(性質④)
4x ÷ 4 = 20 ÷ 4
x = 5
x の前の係数「1/3」を1にしたい。両辺に3をかける(性質③)
x/3 × 3 = 6 × 3
x = 18
組み合わせて使う
1つの方程式で、性質を 2回以上使うこともよくあります。
まず +4 を消したい:両辺から4を引く(②)
3x + 4 − 4 = 19 − 4
3x = 15
次に係数3を消したい:両辺を3で割る(④)
3x ÷ 3 = 15 ÷ 3
x = 5
- 「定数項を反対側に移す」感覚で、まず ± をそろえる(①②)
- 「係数を1にする」感覚で、最後に × ÷ をそろえる(③④)
- 順番を逆にすると面倒になる ── ① ② を先、③ ④ を後 がベター
- 「片方だけ計算する」のは× 。必ず両辺に同じことをする。
- 例:x + 5 = 12 で、左辺だけ −5 して x = 12 と書くのはNG。右辺も −5 して x = 7。
この章でつまずきやすいところ
等式の性質は、方程式を解くときに教科書のすぐ最初に出てくる土台のルール。でも本文を読んでいる途中や練習問題を解いている途中で、つい「片方だけ」「ゼロでもいいかな」と迷ってしまう場面があります。ここではその迷いを整理します。
片方だけ計算してよいと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「x + 5 = 12」の解説を読んでいる途中、「5を消せばいいんだな」と思って、左辺だけ −5 して x = 12 と書きそうになる場面。教科書の「両辺から同じ数を引く」という一文を見落としている状態。
- 克服のコツ:見分け方は「=」の左右がてんびんの両皿だと思い出すこと。片方だけ操作するとてんびんは傾くので等式が崩れる。両辺から同じ数を引く(または両辺に同じ数を足す)のように、左にやったことを右にもやったかを必ず口に出して確認する習慣をつけると、片辺だけの誤りが減ります。
- ミニ例:x + 5 = 12 では 両辺から 5 を引く。左:x + 5 − 5 = x、右:12 − 5 = 7。だから x = 7。左だけ引いて x = 12 とするのは誤り。
係数を消す操作と項を移す操作を混同してしまう
- つまずく場面:「2x = 6」を見て、本文の足し算・引き算の例につられて「x = 6 − 2」と書きそうになる場面。2 は項ではなく x にかかっている 係数 なのに、引けば消えると勘違いしている状態。
- 克服のコツ:見分け方は「2 と x のあいだに記号があるか」をチェックすること。2x は 2 × x で記号は「×」、だから消すには ÷ 2(両辺を同じ数で割る性質)を使う。「+」「−」でつながっているなら引いたり足したりで消すが、「×」でつながっているならかけ算・割り算で消す、と分けて覚える。
- ミニ例:2x = 6 は両辺を 2 で割る。2x ÷ 2 = 6 ÷ 2 で x = 3。x = 6 − 2 = 4 と書くのは、係数と項を混同した誤り。
0で割ってもよいか迷ってしまう
- つまずく場面:「両辺を同じ数で割ってもよい」という性質を読んでいる途中、「同じ数なら何でもいいのかな」と思って、もし両辺に 0 がからんだ問題が出たら 0 で割ろうとしてしまう場面。教科書の「ただし C ≠ 0」というただし書きを見落としている状態。
- 克服のコツ:見分け方は「割る数が 0 になっていないか」を式変形の直前に確認すること。0 で割る操作は数学では定義されていないため、両辺を割る性質の対象外。さらに、0 をかけると両辺がどちらも 0 になって式の意味が失われてしまうので、実際の方程式解法ではかけ算・割り算ともに 0 以外を選ぶのが安全です。
- ミニ例:4x = 20 は両辺を 4 で割って x = 5。両辺を 0 で割って x = ? とするのは禁止。割るときは「この数は 0 じゃないよね」と一呼吸おいて確認する。
±と×÷の操作順を逆にしてしまう
- つまずく場面:「3x + 4 = 19」を解く例を読んでいる途中、先に係数の 3 を消そうとして両辺を 3 で割り、x + 4/3 = 19/3 と分数を生んでしまう場面。本文の例題の流れから読み取れる「先に ±(定数)、後に ×÷(係数)」という順序のコツを意識できていない状態。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。先に定数項(+4 や −4)を消すと、残るのは「○x = △」のきれいな形になる。そのあとに係数で割ると整数のままで進めやすい。順番を逆にすると分数計算が増えて間違えやすくなる、というのが教科書の例題から読み取れる整理。
- ミニ例:3x + 4 = 19 ではまず両辺 −4 で 3x = 15、次に両辺 ÷3 で x = 5。先に ÷3 してしまうと x + 4/3 = 19/3 と分数になり、計算が複雑になる。
練習問題
- x + 7 = 15
- x − 4 = 9
- 5x = 30
- x/2 = 8
答えを見る
(1) 両辺−7 → x = 8
(2) 両辺+4 → x = 13
(3) 両辺÷5 → x = 6
(4) 両辺×2 → x = 16
- 2x + 3 = 11
- 4x − 5 = 7
- x/3 + 2 = 5
答えを見る
(1) 両辺−3 → 2x = 8、両辺÷2 → x = 4
(2) 両辺+5 → 4x = 12、両辺÷4 → x = 3
(3) 両辺−2 → x/3 = 3、両辺×3 → x = 9
- x + 8 = 3
- −2x = 14
答えを見る
(1) 両辺−8 → x = 3−8 = −5
(2) 両辺÷(−2) → x = 14÷(−2) = −7
まとめ
- 等式 A=B は てんびんがつりあった状態。
- 等式の性質:両辺に同じ数を 足す・引く・かける・割る(0で割るのは禁止)してもつりあいは保たれる。
- 方程式を解く=この性質を使って x = ○ の形に変形する。
- 順序:先に ±(定数)、後に ×÷(係数)。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
上皿てんびんは「両辺に同じ操作」で重さをはかる道具実生活
上皿てんびんは、片方の皿に測りたい物、もう片方に分銅をのせ、つり合うまで分銅を足したり減らしたりして質量をはかります。これは『つり合いを保ったまま両側を調整する』操作で、等式の性質そのものを実物で再現しています。つり合った瞬間、分銅の合計=物の質量という等式が成り立ちます。
「代数(algebra)」の語源は『移項する』という意味のことば発展
中学で学ぶ代数(algebra)は、9世紀の数学者フワーリズミーの著書名の一部「アル・ジャブル(al-jabr)」に由来します。al-jabr はもともと『変形・移項する』という意味で、等式の両辺を操作して方程式を解く考え方を表していました。みなさんが使う等式の性質は、千年以上前から数学の中心にあったのです。
「アルゴリズム」も同じ数学者の名前から生まれた発展
コンピュータの手順を表す「アルゴリズム(algorithm)」という語も、代数と同じくフワーリズミーの名前に由来します。彼の著作がラテン語に訳されたとき、名前から「アルゴリスミ」という語が付けられ、それが今のアルゴリズムになりました。方程式を順序立てて解く手順は、まさに最初期のアルゴリズムだといえます。
次に習う「移項」は、等式の性質を1つにまとめた近道発展
移項とは、等式の一方の辺の項を、符号を変えてもう一方の辺へ移すことです。たとえば x+5=12 で両辺から5を引く操作を、「+5を右辺に移して −5にする」とまとめたのが移項です。新しいルールではなく、等式の性質を素早く使うための書き方だと理解すると、次の単元がすっきり身につきます。
質量の世界共通の基準「キログラム」も等しさで支えられている実生活
2019年5月20日から、1キログラムはプランク定数という変わらない物理定数を使って世界中で同じ大きさに定義されました。これにより、どの国のはかりも『同じ質量=同じ値』という等しさが保証されています。両辺が等しいことを正確にそろえる考え方は、最先端の計量の基礎にもなっています。
