移項(いこう)とは
これは「両辺に同じ数を足す/引く」の操作を、ショートカットしたもの。
移項のルール
- 左辺の + □ を右辺に移すと − □ になる
- 左辺の − □ を右辺に移すと + □ になる
- 右辺から左辺へも同じ(符号が反対に)
これが、前回「両辺から5を引く」とやった操作の 結果だけを書くショートカットです。両辺に同じ操作をしているので、等式の性質が裏で成り立っています。
解き方の3ステップ
- 移項:x を含む項は左辺、定数項は右辺に集める(移項のたびに符号反転)
- 整理:同類項をまとめて、ax = b の形にする
- 係数で割る:両辺を a で割って x = b/a を出す
① 移項:+4 を右辺へ → 3x = 19 − 4
② 整理:3x = 15
③ 両辺÷3:x = 5
① −7 を右辺へ(+7に) → 5x = 18 + 7
② 5x = 25
③ 両辺÷5 → x = 5
x が両辺にある方程式
x の項が両辺にある場合は、x の項を左辺に集めるのが定石。
① 右辺の +2x を左辺へ(−2xに)、左辺の −3 を右辺へ(+3に)
5x − 2x = 9 + 3
② 3x = 12
③ 両辺÷3 → x = 4
① +x を左辺へ(−x)、+1 を右辺へ(−1)
4x − x = 13 − 1
② 3x = 12
③ x = 4
- 符号の変え忘れ:x + 5 = 12 を x = 12 + 5 = 17 と書く間違い。+5は−5に。
- x の係数(×)と定数項(+)の混同:3x の「3」は係数で 移項できない。3を消すには 両辺を3で割る。
- 移項できるのは +や−でつながった項だけ。×でつながっている係数は移項対象外。
解の確かめ(必ずやる癖を)
解いたら、もとの方程式に代入して両辺が等しくなるか確かめます。
5x − 3 = 2x + 9 に x = 4 を代入
左辺:5×4 − 3 = 20 − 3 = 17
右辺:2×4 + 9 = 8 + 9 = 17
17 = 17 → 合っている ✓
この章でつまずきやすいところ
移項は「項を反対側に移すと符号が変わる」だけの操作ですが、解いている途中で符号の扱いや係数との区別で迷いやすい場面が出てきます。よくある迷いポイントを3つにしぼり、見分け方と短い例で整理します。
符号を変えずにそのまま移すと思い込んでしまう
- つまずく場面:「x + 5 = 12」を見て、+5を右辺へ動かすときに、頭の中ではただ「右に持っていく」感覚になり、x = 12 + 5 と書きそうになる場面。移項=移動とだけ覚えていると、符号反転をうっかり飛ばしてしまいます。
- 克服のコツ:移項したら必ず符号を反転させる、と手順で区切ると見分けがつきます。移項の直前と直後で同じ項の+と−だけを比べることを習慣にし、反転していなければ書き直す、というチェックを毎回入れます。
- ミニ例:x + 5 = 12 で +5 を右辺へ移すと −5。だから x = 12 − 5 = 7。元の式に代入すると 7 + 5 = 12 で合います。
係数の3も移項できると思い込んでしまう
- つまずく場面:「3x = 15」まで来たあと、左辺の3を「邪魔だから右に移そう」と感じ、x = 15 − 3 と書こうとしてしまう場面。移項のイメージが強すぎて、×でつながる係数と、+−でつながる項の区別が混ざる迷いです。
- 克服のコツ:移項できるのは+−でつながる項だけ、というルールで見分けます。3xの3はxと×でつながっているので移項対象外。係数を消すときは両辺を同じ数で割る、と操作の種類を切り替えます。
- ミニ例:3x = 15 は移項ではなく、両辺を 3で割る ので x = 15 ÷ 3 = 5。「+でつながっていれば移項、×なら割り算」と頭の中で確認します。
xの項と数の項を集める向きが途中で混ざってしまう
- つまずく場面:「5x − 3 = 2x + 9」を解いている途中、+2xを左辺へ、−3を右辺へ動かそうとして、どちらをどっちに集めるのかが分からなくなり、xの項と数の項が同じ辺に残ってしまう場面。整理の方針がぶれて手が止まります。
- 克服のコツ:xの項は左辺、数の項は右辺と最初に決めてから動かします。移項の順番ではなく「集める場所」を先に決めることで、どちらに動かすかが一意に決まり、項の消し忘れも見つけやすくなります。
- ミニ例:5x − 3 = 2x + 9 → +2xは左へ(−2x)、−3は右へ(+3)。5x − 2x = 9 + 3 で 3x = 12、x = 4。代入すると両辺17で一致。
練習問題
- x + 6 = 11
- x − 8 = 3
- 2x + 5 = 17
- 3x − 7 = 14
答えを見る
(1) x = 11−6 = 5
(2) x = 3+8 = 11
(3) 2x = 17−5 = 12 → x = 6
(4) 3x = 14+7 = 21 → x = 7
- 4x + 3 = x + 12
- 5x − 2 = 2x + 7
- 3x + 8 = 6x − 1
答えを見る
(1) 4x − x = 12 − 3 → 3x = 9 → x = 3
(2) 5x − 2x = 7 + 2 → 3x = 9 → x = 3
(3) 3x − 6x = −1 − 8 → −3x = −9 → x = 3
- 2x + 9 = 1
- 3x − 4 = 5x + 6
答えを見る
(1) 2x = 1 − 9 = −8 → x = −4
(2) 3x − 5x = 6 + 4 → −2x = 10 → x = −5
まとめ
- 移項=項を符号を変えて反対側に移す。等式の性質①②のショートカット。
- 解き方3ステップ:① 移項 ② 整理(同類項) ③ 係数で割る。
- x が両辺にあるときは、x の項を左辺、定数項を右辺に集める。
- 係数(×でつながる数)は移項できない。両辺を割って処理する。
- 解いたら必ず 代入して確かめる癖を。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「移項」は1200年前の数学書が生まれ故郷発展
9世紀のバグダッドで活躍した数学者アル・フワーリズミー(およそ780〜850年)は、方程式を解くための「アル・ジャブル(移して整える)」と「アル・ムカーバラ(両辺の同じ項を消す)」という方法を初めて体系的にまとめました。みなさんが習う移項は、このときの考え方をそのまま受けついだものなのです。
「代数(algebra)」という言葉の由来発展
中学・高校で学ぶ「代数」を英語でalgebra(アルジェブラ)といいますが、これはアル・フワーリズミーの本のタイトルにある「アル・ジャブル」が語源です。「アル・ジャブル」は『元にもどす・つなぎ直す』という意味で、まさに項を反対側へ移す移項の操作を指す言葉でした。
「アルゴリズム」も同じ数学者の名前から発展
コンピューターの計算手順を表す「アルゴリズム(algorithm)」という言葉も、アル・フワーリズミーの名前がラテン語に変化して生まれました。一次方程式を「移項→整理→係数で割る」と決まった手順で解くのは、まさにアルゴリズム的な考え方の入り口といえます。
未知数を「x」と書くのを決めた人発展
方程式で求めたい数を x、y、z で表し、わかっている数を a、b、c で表す書き方は、フランスのデカルトが1637年の著書『幾何学(La Géométrie)』で広めたものです。今みなさんが「x=…」と書くスタイルは、約400年前に定着したルールなのです。
等号「=」が生まれた理由発展
方程式に欠かせない等号「=」は、1557年にイギリスのロバート・レコードが著書『知恵の砥石』で初めて使いました。彼は『2本の平行線ほど等しいものはない』という理由で、長さの等しい平行な2本の線を等号に選んだと説明しています。
料金プランの『どっちが得?』も方程式実生活
携帯電話の料金プランは「基本料金+通話料×時間」という一次式で表せます。たとえばAプランがy=30x+3000、Bプランがy=20x+4000のとき、料金が等しくなる時間は30x+3000=20x+4000を移項して解けば求められ、そこを境にどちらが得かが分かります。
