かっこを含む方程式
カッコがあれば、分配法則でカッコをはずすのが第一歩。
分配法則でカッコをはずす:3x − 6 = 12
移項:3x = 12 + 6 = 18
両辺÷3:x = 6
両辺ともカッコをはずす:2x + 10 = 5x − 20
移項:2x − 5x = −20 − 10 → −3x = −30
両辺÷(−3):x = 10
分数を含む方程式:分母を払う
分数のままだと計算が面倒。両辺に分母の最小公倍数をかけて、分数を消すのが定番テクニック。これを 「分母を払う」 といいます。
等式の性質③(両辺に同じ数をかけてもよい)を使うので、解は変わらない。
分母 2 を払うため、両辺に2をかける
(x/2)×2 + 3×2 = 7×2
x + 6 = 14
移項:x = 14 − 6 = 8
分母 3 と 4 の最小公倍数 12 を両辺にかける
(x/3)×12 + (x/4)×12 = 7×12
4x + 3x = 84
7x = 84 → x = 12
- 分母を払うときは すべての項に同じ数をかける。
例:x/3 + 5 = 8 で、両辺に3をかけるなら、左辺の +5 にも3をかけて +15。x + 15 = 24。 - 分数の項にだけかけるのはNG(等式が崩れる)。
小数を含む方程式:10倍・100倍する
小数のままだと計算ミスしやすい。両辺を10倍・100倍して整数に変身させると安全。
小数第1位までなので、両辺を10倍
3x + 12 = 5x
移項:3x − 5x = −12 → −2x = −12
両辺÷(−2):x = 6
小数第2位まであるので、両辺を100倍
5x − 30 = 10
移項:5x = 10 + 30 = 40 → x = 8
3パターンを混ぜる場合
分数も小数もカッコも入っている方程式も、1つずつ前処理すれば解けます。基本の流れ:
- 分数 ── 分母を払う(最小公倍数をかける)
- 小数 ── 10倍・100倍で整数化
- かっこ ── 分配法則ではずす
- 移項 → 整理 → 係数で割る
分母 3 と 4 の最小公倍数 12 を両辺にかける
12 × (x+2)/3 = 12 × (2x−1)/4
4(x+2) = 3(2x−1)
カッコを分配ではずす:4x + 8 = 6x − 3
移項:4x − 6x = −3 − 8 → −2x = −11
両辺÷(−2):x = 11/2(=5.5)
- (x+2)/3 に12をかけるとき、分子全体(x+2)に4がかかる。x のところだけ4をかけるのはNG。
- 分子に2項以上ある場合は、必ずカッコでくくって整理してから掛け算する。
複雑な方程式を基本形に戻す
- かっこがある式は、分配法則でかっこを外してから同類項をまとめる。
- 分数を含む式は、すべての分母の最小公倍数を両辺にかけて分母を払う。
- 小数を含む式は、10倍・100倍して整数の方程式に直す。
- 前処理をしたあとは、移項して ax=b の形にする。最後に元の式で確認する。
- 両辺のすべての項に同じ数をかける。分数の項だけにかけると等式が変わってしまう。
- 分子が2項以上なら、必ずかっこを付けてからかける。
この章でつまずきやすいところ
かっこ・分数・小数つきの方程式は、前処理の途中で「どこにかけるんだっけ」「分配は全部に届く?」と手が止まりがち。本文を読んでいる最中に迷いやすい4つの具体場面を整理します。
分配法則をかっこの最初の項だけにかけてしまう
- つまずく場面:本文の「3(x − 2) = 12 では分配法則でかっこをはずす」を読み進めるとき、3 を x にだけかけて 3x − 2 = 12 と書いてしまい、後ろの −2 にも 3 がかかることを見落として手が止まる場面。
- 克服のコツ:位置関係で整理する。かっこの外の数は、かっこの中にある項すべてに届くと考える。書く順番を「外の数→中の第1項」「外の数→中の第2項」と二回に分け、矢印を引いてから計算すると抜けが消える。
- ミニ例:3(x − 2) では 3×x と 3×(−2) の両方を書き出してから足す。結果は 3x − 6。−2 のマイナスごと 3 をかける点に注意する。
分母を払うときに分数の項だけにかけてしまう
- つまずく場面:本文の「x/3 + 5 = 8 で両辺に 3 をかける」を読んでいる途中、x/3 だけに 3 をかけて x + 5 = 8 と書きそうになり、右の +5 や右辺にもかけるべきか迷って止まる場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。分母払いは「分母を消す操作」ではなく「等式の性質③で両辺に同じ数をかける操作」。だから両辺のすべての項に同じ数がかかる。整数の項にも、右辺にも、もれなくかける。
- ミニ例:x/3 + 5 = 8 に両辺×3 をすると、x/3×3 + 5×3 = 8×3 となり x + 15 = 24。+5 にも 3 をかける点が要。
10倍するとき片方の辺だけ10倍してしまう
- つまずく場面:本文の「0.3x + 1.2 = 0.5x は両辺を10倍」を読み進めるとき、左辺だけ 3x + 12 にして右辺は 0.5x のまま書いてしまい、整数と小数が混ざって計算が合わなくなる場面。
- 克服のコツ:見分け方で整理する。小数を消す10倍・100倍も、分母払いと同じ「両辺に同じ数をかける操作」。先に「両辺を10倍する」と宣言して左辺・右辺のすべての項に丸を付け、一つずつ10倍してから書き直す。
- ミニ例:0.3x + 1.2 = 0.5x を両辺×10 すると 3x + 12 = 5x。右辺の 0.5x も忘れず 5x になる。
分子に2項あるのにかっこを付けずに分母を払ってしまう
- つまずく場面:本文の「(x + 2)/3 = (2x − 1)/4 の両辺に12をかける」を読む途中、x のところだけ 12÷3=4 をかけて 4x + 2 と書いてしまい、+2 にも 4 がかかることを忘れて止まる場面。
- 克服のコツ:位置関係で整理する。分子が「x+2」のように2項以上あるときは、分母を払った瞬間に分子全体がかっこでくくられると考える。先に 4(x+2) と書いてから、その後で分配法則を使ってはずす二段構えにする。
- ミニ例:(x+2)/3 に 12 をかけると、いきなり 4x+2 ではなく 4(x+2)。次の行で分配して 4x+8 に直す。
練習問題
- 2(x + 3) = 14
- 3(x − 1) = x + 7
- 5(x − 2) = 2(x + 4)
答えを見る
(1) 2x+6=14 → 2x=8 → x = 4
(2) 3x−3=x+7 → 2x=10 → x = 5
(3) 5x−10=2x+8 → 3x=18 → x = 6
- x/2 = 5
- x/3 + 4 = 9
- x/2 − x/3 = 1
答えを見る
(1) 両辺×2 → x = 10
(2) 両辺×3 → x+12=27 → x = 15
(3) 両辺×6 → 3x−2x=6 → x = 6
- 0.5x + 2 = 7
- 0.2x − 0.6 = 1.4
答えを見る
(1) 両辺×10 → 5x+20=70 → 5x=50 → x = 10
(2) 両辺×10 → 2x−6=14 → 2x=20 → x = 10
まとめ
- かっこ:分配法則ではずす。−( )は符号反転。
- 分数:両辺に分母の 最小公倍数 をかけて整数化。
- 小数:両辺を 10倍・100倍して整数化。
- 分数や小数を払うときは、すべての項に同じ数をかける。一部だけにかけるのはNG。
- 前処理で整数になれば、3章3/6 で学んだ基本の3ステップで解ける。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「移項」のルーツは1200年前の「アル・ジャブル」発展
9世紀バグダードの数学者フワーリズミーは、方程式の引かれている項を反対の辺へ移して整理する操作を「アル・ジャブル(復元)」と呼び、解き方を体系化しました。これがいまみんなが使っている「移項」のもとになった考え方で、英語の algebra(代数)という言葉もこの本の題名に由来します。
出典:ブリタニカ百科事典「The Compendious Book on Calculation by Completion and Balancing」
「アルゴリズム」も同じ数学者の名前から発展
代数の体系化で知られるフワーリズミーの名前は、ラテン語で Algoritmi と書かれて西ヨーロッパに伝わりました。プログラミングや計算の手順を表す「アルゴリズム(algorithm)」という言葉は、この人名のラテン語形がもとになっています。方程式を順序立てて解く手順そのものが、まさにアルゴリズムの一例です。
3600年前のパピルスにも一次方程式があった発展
大英博物館が所蔵する「リンド数学パピルス」は、紀元前1650年ごろに書記アーメスが写した古代エジプトの数学書です。「ある量とその7分の1を合わせると19になる。その量は?」のような、未知数を求める一次方程式の問題が記されており、現代の x を使う式とは違う「仮置き(仮定法)」という方法で解いていました。
値札の「税込価格」は一次方程式で決まっている実生活
お店が消費者に示す値段は、消費税を含めた税込価格で表示することが法律で義務づけられています(総額表示)。税抜価格を x 円とすると、税率10%のときの税込価格は 1.1x 円。たとえば税抜10,000円の商品は 1.1×10000=11,000円と表示され、逆に税込価格から税抜価格を求めるときも一次方程式の考え方を使います。
