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蒸留 ── 沸点の差で液体を分ける

単元2の最終回。これまで「ろ過」「再結晶」「水の蒸発」など、混合物から純粋な物質を取り出す方法を見てきました。今回はその仕上げとして、液体どうしが混じった混合物を分ける方法を学びます。キーワードは 沸点の差。水とエタノールが混じった液体から、エタノール濃度の高い液体を取り出す ── これが 蒸留 です。装置の図を見ながら、なぜそういう設計になっているかを一つずつ確認していきましょう。

混じった液体を分けたいとき

たとえばワインや日本酒のような 醸造酒 は、水とエタノール(アルコール)の混合物です。ここから純粋なエタノールに近いものを取り出したい ── こんなときどうすればいいでしょうか。ヒントは、水とエタノールで 沸点が違う ことです。

  • 水の沸点:100℃
  • エタノールの沸点:78℃

液体を加熱していくと、沸点の低いエタノールが先に蒸発します。その蒸気を集めて冷やせば、ふたたび液体に戻ります。戻った液体には、もとの混合物よりエタノールが多く含まれています。これが蒸留のしくみです。

用語:蒸留
蒸留(じょうりゅう)
液体を加熱して蒸発させ、その 蒸気を冷やして再び液体として取り出す 操作。沸点の違いを利用して、混じった液体を分ける方法です。

蒸留の装置

教科書に必ず出てくる、蒸留装置の図を確認します。各部に名前と役割があり、どれも「なぜそこにそれが置かれているか」がはっきり決まっています。

枝つきフラスコ (液体を入れる) 沸騰石(突沸防止) 温度計 球部は 枝の付け根に リービッヒ冷却器 (蒸気が液体に戻る) 水 入口 (下から) 水 出口 (上へ) 蒸気の進む向き → ガラス管 試験管 (液体を集める) ガスバーナー(弱火) 蒸留装置の各部
図1:蒸留装置の各部の名前と役割
装置の重要ポイント(4点)
  1. 温度計は 枝の付け根 に球部を合わせる。液体の温度ではなく、出てくる気体の温度 を測るため。
  2. 沸騰石を必ず入れる。突然沸騰して液体が飛び出す「突沸(とっぷつ)」を防ぐためです。
  3. 加熱はガスバーナーで 弱火。急激に加熱すると、液体が一気に飛び出してしまいます。
  4. 冷却器の水は 下から上に 流す。蒸気が進む向きと逆方向に水を流すことで、効率よく冷やせます。

水とエタノールの蒸留 ── 何が起きるか

実際に水とエタノールの混合液(たとえば赤ワインなど)を蒸留すると、温度計の値の変化と、出てくる液体の性質に注目するとよくわかります。

蒸留中の変化
  • 加熱開始:温度がゆっくり上がっていく。
  • 78℃付近:エタノールが盛んに蒸発。温度計の値はしばらく78℃前後で停滞気味になる。
  • 試験管1(最初に集まる液体):エタノールが多めに含まれる。火を近づけると よく燃える。アルコール特有のにおいがある。
  • 温度がさらに上がり100℃近くに:水も蒸発し始める。
  • 試験管2(あとから集まる液体):水のほうが多い。火を近づけても あまり燃えない。においも弱い。

大事なのは、蒸留しても 完全に純粋なエタノールにはならない ということ。沸点が78℃と100℃で離れているとはいえ、エタノールの蒸気の中には水蒸気も少し混じってしまいます。それでも、もとの混合液よりは エタノール濃度をずっと高くできる ── これが蒸留の効果です。

身近な蒸留の応用

蒸留は、実は私たちの身のまわりでも広く使われている技術です。

  • ウイスキー・焼酎の製造:醸造酒(ビール・ワイン・日本酒のもとになる液体)を蒸留して、アルコール濃度を高めたお酒。
  • 海水から真水を作る装置:海水を加熱して水蒸気にし、それを冷やして真水を取り出す。船や離島で使われます。
  • 石油の精製:原油を加熱し、沸点の違いを利用して ガソリン・灯油・軽油・重油 などに分けます(分留)。これも蒸留の一種。

再結晶と蒸留の使い分け(単元2のまとめ)

単元2でいくつかの「物質を取り出す方法」が出てきました。混乱しやすいので、ここで一度整理しておきます。

単元2の整理
混合物から物質を取り出す3つの方法

液体に溶けない固体を取り出す → ろ過(例:泥水から砂を分ける)

水溶液中の固体を、純粋に取り出す → 再結晶(例:硝酸カリウム水溶液を冷やす)

水溶液から溶質を全部取り出す → 水を蒸発させる(例:食塩水から食塩)

混じった液体を分ける → 蒸留(例:水とエタノール)

「何を取り出したいか」「もとの混合物が固体なのか液体なのか」で方法が変わります。テストではこの使い分けをよく問われます。

練習問題

問題1(用語)
次の蒸留装置の各部の名前を答えなさい。
  1. 蒸留する液体を入れる、口が枝のように出ているフラスコ。
  2. 突沸を防ぐために、フラスコの底に入れる小さな石。
  3. 蒸気を冷やして液体に戻す、水を流す筒状の装置。
  4. 出てきた液体を集める器具。
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(1) 枝つきフラスコ

(2) 沸騰石

(3) リービッヒ冷却器

(4) 試験管

問題2(記述)
次の3つについて、その理由を答えなさい。
  1. 温度計の球部を、枝つきフラスコの 枝の付け根 に合わせるのはなぜか。
  2. 蒸留前に 沸騰石 を入れるのはなぜか。
  3. 冷却器の水を 下から上に 流すのはなぜか。
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(1) 出てくる 気体(蒸気)の温度 を測るため。液体の温度ではなく、フラスコから出ていく蒸気の温度を測ることで、いま何が蒸発しているかがわかる。

(2) 突沸(液体が突然沸騰して飛び出すこと)を防ぐため。沸騰石の小さな穴から少しずつ気泡が出ることで、おだやかに沸騰させることができる。

(3) 冷却器の中を 水で常に満たし、効率よく蒸気を冷やすため。蒸気の進む向きと逆方向に水を流すことで、温度差を大きく保てる。

問題3(応用)
水(沸点100℃)とエタノール(沸点78℃)を同じ量ずつ混ぜた液体を蒸留した。最初に出てきた液体には、水とエタノールのどちらが多く含まれているか。理由もあわせて答えなさい。
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解答:エタノール

理由:エタノールの沸点(78℃)は水の沸点(100℃)よりも低いため、加熱すると エタノールのほうが先に蒸発 する。最初に冷却器を通って試験管にたまる液体は、その蒸気を冷やしたものなので、エタノールの割合が高くなる。ただし、水の蒸気も少し混じるので、完全に純粋なエタノールにはならない。

まとめ

  • 蒸留:液体を加熱して蒸発させ、蒸気を冷やして再び液体として取り出す操作。沸点の違い を利用する。
  • 水(100℃)とエタノール(78℃)の混合液を蒸留すると、最初は エタノールが多い液体 が出てくる。
  • 装置の重要ポイント:温度計は枝の付け根沸騰石を入れる冷却水は下から上
  • 応用:ウイスキーや焼酎の製造、海水からの真水取り出し、石油の精製(分留)など。
  • 単元2で学んだ取り出し方の使い分け:ろ過/再結晶/水の蒸発/蒸留。何を分けたいかで選ぶ。