中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

近代小説 ── 漱石・芥川・太宰

明治・大正・昭和の文学を代表する3人の小説家:夏目漱石・芥川龍之介・太宰治。それぞれの作風と代表作を知ると、近代小説の読み方が見えてきます。教科書頻出の作品も多く、入試にも役立ちます。

近代小説の流れ

  • 明治:写実主義(坪内逍遥)・自然主義(島崎藤村)
  • 明治後期〜大正:夏目漱石、森鴎外
  • 大正:芥川龍之介、菊池寛、白樺派(武者小路実篤)
  • 昭和:太宰治、川端康成、三島由紀夫

夏目漱石

作家
夏目漱石(1867〜1916)
明治〜大正の小説家。東京帝大講師・朝日新聞社員。近代的自我の苦悩を描く。
  • 吾輩は猫である』:猫の視点から人間社会を風刺
  • 坊っちゃん』:四国・松山の中学校教師の活躍を描く青春小説
  • こころ』:「先生」の苦悩と自殺、近代人の孤独
  • 三四郎』『それから』『』:前期三部作

芥川龍之介

作家
芥川龍之介(1892〜1927)
大正の小説家。短編の名手。古典を題材に人間心理を鋭く描く。「芥川賞」は彼を記念して創設。
  • 羅生門』:飢えに苦しむ下人が老婆と対面、人間の悪を描く
  • 』:禅智内供の長い鼻と、人の心の悪意
  • 地獄変』:絵師の芸術への執念
  • 蜘蛛の糸』:地獄からの救いと利己心
  • 杜子春』:富と権力よりも家族の愛

太宰治

作家
太宰治(1909〜1948)
昭和の小説家。無頼派。自虐的で繊細な文体、青年の苦悩を描く。
  • 走れメロス』:友情と信頼、人間性の回復(中学教科書定番)
  • 人間失格』:人間社会に馴染めない男の手記
  • 斜陽』:没落貴族の家族
  • 富嶽百景』:富士山を見つめる作家の心の動き

近代小説の読み方のポイント

読み方のコツ

登場人物の関係と各人物の 性格を把握

② 主人公の 心情の変化を追う

背景描写から心情を読み取る(雨=悲しみ、晴れ=希望など)

会話から人物の性格を推測

⑤ 作者の テーマを考える

その他の重要な近代作家

作家代表作時代・特徴
森鴎外『舞姫』『高瀬舟』明治、漱石と並ぶ大家
島崎藤村『破戒』『夜明け前』明治・大正、自然主義
樋口一葉『たけくらべ』明治、女流作家、24歳で早逝
川端康成『伊豆の踊子』『雪国』昭和、ノーベル文学賞
三島由紀夫『金閣寺』『潮騒』昭和、美意識の作家
志賀直哉『城の崎にて』『暗夜行路』白樺派
井上靖『天平の甍』歴史小説
つまずきポイント①:作品と作家の組み合わせ
  • 『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こころ』→ 夏目漱石
  • 『羅生門』『鼻』『蜘蛛の糸』→ 芥川龍之介
  • 『走れメロス』『人間失格』→ 太宰治
  • テストでは「次の作品の作者は」が頻出。確実に覚える
つまずきポイント②:時代と作家
  • 明治:森鴎外、夏目漱石(後半)、樋口一葉、島崎藤村
  • 大正:芥川龍之介、武者小路実篤、志賀直哉
  • 昭和:太宰治、川端康成、三島由紀夫
  • 時代区分も問われやすい
つまずきポイント③:芥川賞
  • 「芥川賞」は芥川龍之介を記念して創設された
  • 純文学の新人賞として現在も継続
  • 太宰治は芥川賞を熱望したが、ついに受賞できなかった

教科書で確認した小説読解へのつなげ方

  • 中3では、近代以降の小説を人物の関係・語り手・時代背景から読む。
  • 作品名や作者名は、本文読解のための背景知識として使う。
  • 一人称の語りでは、語り手が何を見て、何を見落としているかにも注意する。
つまずき:文学史と読解を切り離さない
  • 漱石・芥川・太宰などは暗記対象だが、入試では作品の一場面を読ませる問題も多い。
  • 人物の心情は、行動・会話・情景描写から根拠を取って説明する。

練習問題

問題1(作者)

次の作品の作者を答えよ。

  1. 『吾輩は猫である』
  2. 『羅生門』
  3. 『走れメロス』
  4. 『こころ』
  5. 『蜘蛛の糸』
答えを見る

(1) 夏目漱石 (2) 芥川龍之介 (3) 太宰治 (4) 夏目漱石 (5) 芥川龍之介

問題2(『走れメロス』)

『走れメロス』のテーマを簡潔に書け。

答えを見る

友情と信頼。人間の弱さと再生。約束を守ろうとする決意。

近代文学の流派

  • 写実主義:現実をありのままに描く(坪内逍遥、二葉亭四迷)
  • 浪漫主義:感情・理想を描く(森鴎外、樋口一葉)
  • 自然主義:人間の本性を客観描写(島崎藤村、田山花袋)
  • 白樺派:理想と人道主義(武者小路実篤、志賀直哉)
  • 新思潮派:合理主義・知性派(芥川龍之介、菊池寛)
  • 無頼派:戦後の頽廃と再生(太宰治、坂口安吾)

夏目漱石の代表作

漱石の3つの傑作

『吾輩は猫である』(1905):猫の視点で人間社会を風刺

『坊っちゃん』(1906):松山中学に赴任した青年教師の物語

『こころ』(1914):「私」と「先生」、恋愛と裏切りと自殺

→ 漱石の3作品は中学・高校で頻出

→ 千円札の肖像にもなった(1984-2007年)

問題3(語り手)

一人称小説を読むとき、語り手について確認すべきことを二つ答えなさい。

答えを見る

語り手が何を見ているか、何を知らないかを確認する。語り手の感じ方が、作品全体の印象を左右するため。

まとめ

  • 夏目漱石:明治〜大正の代表作家。『吾輩は猫である』『坊っちゃん』『こころ』
  • 芥川龍之介:大正の短編の名手。『羅生門』『鼻』『蜘蛛の糸』
  • 太宰治:昭和の無頼派。『走れメロス』『人間失格』
  • 近代文学:写実主義 → 浪漫主義 → 自然主義 → 白樺派 → 無頼派
  • 読み方:人物関係・心情の変化・背景描写・テーマを意識。