図でつかむ
この図は、式や定理を読む前に全体像をつかむための補助図です。問題を解くときも、まず同じような簡単な図を自分で描いてから条件を書き込むと、見落としが減ります。
三平方の定理
a² + b² = c²
C
/|
c | b
/ |
A────B ← 直角は B
a
a, b:直角を挟む2辺 / c:斜辺(直角の向かい)
なぜ a² + b² = c² が成り立つのか(証明)
三平方の定理は暗記するだけでなく、なぜ成り立つのかを面積で確かめることができます。教科書でも定番の「正方形の中に直角三角形を4枚並べる」証明を見てみましょう。
1辺の長さが a+b の正方形を用意し、その中に直角三角形(直角を挟む辺 a, b、斜辺 c)を4枚、同じ向きに回転させながらすき間なく並べる。
4枚の直角三角形の斜辺どうしが内側で、1辺 c の正方形を作る。
この大きな正方形の面積を、2通りの方法で表す。
① 1辺 (a+b) の正方形として:面積 = (a+b)²
② 直角三角形4枚 + 内側の正方形として:
直角三角形1枚の面積は ab ÷ 2 → 4枚分は 4 × (ab/2) = 2ab
内側の正方形(1辺 c)の面積は c²
よって面積 = 2ab + c²
①と②は同じ大きな正方形の面積だから、次の式が成り立つ。
(a+b)² = 2ab + c²
左辺を展開:(a+b)² = a² + 2ab + b²
a² + 2ab + b² = 2ab + c²
両辺から 2ab を引く:
a² + b² = c²
これで三平方の定理が証明できた。
- 4辺の長さが等しい:4辺はすべて直角三角形の斜辺 c だから、長さが等しい。
- 4つの角がすべて90°:正方形の1つの頂点のまわりは、直角三角形の2つの鋭角と、内側の四角形の1つの角の合計。直角三角形の2つの鋭角の和は90°(直角三角形の内角の和180°から直角90°を引いた残り)なので、内側の四角形の角 = 180° − 90° = 90°。
- 4辺が等しく、4つの角がすべて90°なので、内側の四角形は正方形と言える。
身近な例 ── 整数比の直角三角形
- 3 : 4 : 5(9 + 16 = 25)
- 5 : 12 : 13(25 + 144 = 169)
- 8 : 15 : 17(64 + 225 = 289)
- 7 : 24 : 25(49 + 576 = 625)
3:4:5 と 5:12:13 だけ覚えれば、入試の8割はカバー。
使い方 ── 斜辺を求める
c² = 3² + 4² = 9 + 16 = 25
c = 5
c² = 25 + 144 = 169
c = 13
c² = 1 + 4 = 5
c = √5
使い方 ── 直角を挟む辺を求める
5² + b² = 13²
25 + b² = 169 → b² = 144
b = 12
6² + b² = 10² → b² = 64 → b = 8
三平方の定理の逆
3辺が 7, 24, 25 の三角形は直角三角形か?
7² + 24² = 49 + 576 = 625 = 25² ◯
→ 直角三角形(斜辺 25)
有名な直角三角形の比(覚える)
45°-45°-90°(直角二等辺):辺の比 1:1:√2
30°-60°-90°:辺の比 1:√3:2
直角を挟む2辺 5、5 の直角二等辺三角形
斜辺 = 5√2
最短の辺(30° の対辺)= 4
中辺(60° の対辺)= 4√3
斜辺(90° の対辺)= 8
- 斜辺 = 直角の向かい側の辺。3つの辺のうち 最も長い。
- 「a² + b² = c²」の c は斜辺。a, b は直角を挟む2辺。順序を確認。
- 慣れるまでは図を描いて、どこが斜辺かにマーキング。
使う前に斜辺を決める
- 三平方の定理は直角三角形だけで使える。まず直角の印を確認する。
- 斜辺は直角の向かい側で、3辺の中で最も長い。式の右辺に置くのは斜辺の2乗。
- 残りの辺を求めるときは、斜辺の2乗から、わかっている直角を挟む辺の2乗を引く。
- 逆の定理では、一番長い辺をcとして a²+b²=c² を調べる。
x²=6²+8²=100 なので x=10。
もし斜辺が8なら、6²+x²=8² と置く。どの辺が斜辺かで式が変わる。
この章でつまずきやすいところ
三平方の定理は「a²+b²=c²」とシンプルな式ですが、いざ図を見ると、どれが斜辺か・どんな三角形に使えるかで手が止まりがちです。本文や問題図を眺めている途中に起きる典型的な迷いを4つ取り上げます。
いちばん長く見える辺をcと思い込んでしまう
- つまずく場面:問題図を見て「6と8と10だから、長い10をcにすればいいかな」と当たりをつけたあと、別の問題で「斜辺13、1辺5」と書かれていて、どの辺をcに置けばよいか手が止まる場面。
- 克服のコツ:位置関係で見分けます。cは「長さの順位」ではなく直角の向かい側の辺。まず図に直角マークを探し、その向かいの辺を指でなぞってcにする。結果として、その辺が3辺の中で最長になっている、という順序で確認します。
- ミニ例:斜辺13・1辺5の問題では、長い13がc。式は5² + b² = 13²。「直角の向かい=c」と先に決めてから式に入れると迷いません。
どんな三角形でもa²+b²=c²が使えると思ってしまう
- つまずく場面:本文の「3辺の関係」という言葉だけが頭に残り、問題で3辺が示されると、直角の印を確かめずに条件反射で「a²+b²=c²」に当てはめてしまう場面。途中で答えが合わず手が止まる。
- 克服のコツ:因果関係で押さえます。三平方の定理が成り立つのは直角三角形だから。図に直角マークがあるかを先に確認し、無ければ使えません。逆に3辺だけ与えられたときは、最長辺をcとしてa²+b²=c²が成り立つかを調べ、成り立てば直角三角形と判定します。
- ミニ例:3辺が5,6,8の三角形は、25+36=61で64と一致しません。直角三角形ではないので三平方の定理は使えません。
斜辺が分かっているのに足し算してしまう
- つまずく場面:「斜辺10、直角を挟む1辺6、残りの辺は?」と読んだとき、つい習慣で「6²+10²」と足してしまい、出てきた数が大きすぎて違和感を覚えて止まる場面。
- 克服のコツ:見分け方のコツは「c²はいつも式の右辺」と決めておくこと。斜辺が既に分かっているなら、残りの辺の2乗 = 斜辺² − わかっている辺²と引き算に切り替えます。足すか引くかは、求めたい辺が斜辺か否かで決まります。
- ミニ例:斜辺10、1辺6なら6² + b² = 10²。整理してb² = 100 − 36 = 64、b = 8。引く順を間違えないよう、まずc²を右辺に書きます。
5,5の直角二等辺で斜辺を5と書いてしまう
- つまずく場面:「45°-45°-90°、直角を挟む2辺が5と5」と読んだとき、辺の比1:1:√2が頭をよぎり、つい斜辺も5と書きそうになる場面。√2を掛ける位置がぼやけて手が止まる。
- 克服のコツ:位置関係で整理します。比1:1:√2の√2に当たるのは斜辺の側です。直角を挟む辺が1のとき斜辺が√2、という対応を図に書き込み、辺の数値が5なら全体を5倍して5:5:5√2と読み替えます。
- ミニ例:直角を挟む2辺が5と5の直角二等辺三角形なら、斜辺は5√2。30°-60°-90°なら短辺:中辺:斜辺 = 1:√3:2と並び順をそろえて覚えます。
練習問題
- 6 と 8
- 9 と 12
- 2 と 3
- √3 と 1
答えを見る
(1) √(36+64) = 10 (2) √(81+144) = 15 (3) √13 (4) √(3+1) = 2
- 斜辺 10、1辺 6
- 斜辺 13、1辺 5
- 斜辺 √5、1辺 1
答えを見る
(1) √(100−36) = 8 (2) √(169−25) = 12 (3) √(5−1) = 2
次の3辺の三角形は直角三角形か。
- 8, 15, 17
- 5, 6, 8
- 9, 40, 41
答えを見る
(1) 64+225 = 289 = 17² → 直角 (2) 25+36 = 61 ≠ 64 → 違う (3) 81+1600 = 1681 = 41² → 直角
まとめ
- 三平方の定理:a² + b² = c²(c は斜辺)。
- 覚える整数比:3:4:5、5:12:13。
- 逆も成り立つ:a² + b² = c² ⇒ 直角三角形。
- 特別な直角三角形:1:1:√2(45°)、1:√3:2(30-60°)。
- 斜辺 = 直角の向かい側で、3辺中 最大。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「ピタゴラスの定理」は本当にピタゴラスが見つけた?発展
この定理はギリシャのピタゴラス(紀元前540年ごろ)の名で呼ばれますが、実は彼が発見者だという見解は今では有力ではありません。古代バビロニア・インド・中国でもそれぞれ独立して知られていたことが分かっています。
「三平方の定理」という名前は戦争中に生まれた発展
「三平方の定理」という呼び方は、第二次世界大戦中の日本で考案され、その後通称として定着したものです。江戸時代の和算では中国由来の「勾股弦(こうこげん)」という名で呼ばれていました。
江戸の和算でも研究された「裁ち合せ」発展
日本でも江戸時代の和算家がこの定理を深く研究しました。正方形をはさみで切って並べ替える「裁ち合せ」として扱われたり、坂部広胖の『算法点竄指南録』(1815年)ではピタゴラス数を体系的に求める方法が記されています。
富士山の山頂からは約220km先まで見える実生活
地球を半径6378kmの球、富士山を高さ3776mとみなすと、山頂・地球の中心・見える限界点で直角三角形ができ、三平方の定理で見渡せる範囲が計算できます。実際に求めると約220kmとなり、横浜や名古屋まで届く距離です。
地図の座標から2地点間の距離を計算する実生活
国土地理院は、平面直角座標から2点間の距離を求める計算サイトを公開しています。地図上の2点の座標の差を直角を挟む2辺とみなせば、三平方の定理によって実際の直線距離が求められます。
地震の震源の深さも直角三角形で求められる実生活
観測点までの「震源距離」、その真上の震央までの「震央距離」、地下の「震源の深さ」は直角三角形の3辺の関係になっています。震央から地下へ垂線をおろす作図で深さを求めることができ、三平方の定理がその根拠になっています。
