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水溶液とイオン ── 電解質と電離

食塩水は電気を通すのに、砂糖水は通さない。その違いは 「水に溶けるとイオンに分かれるか」。中3理科の山場、イオンの世界に入っていきます。原子が電子をやり取りすることで生まれるイオン、その仕組みと表記を整理しましょう。

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イオンのでき方 ── 電子を失えば+、受け取れば− ナトリウム Na → 陽イオン Na⁺ Na 陽子11・電子11 e⁻ 電子1個 Na⁺ 陽子11・電子10 + Na → Na⁺ + e⁻(電子1個を失う) 塩素 Cl + e⁻ → 陰イオン Cl⁻ Cl 陽子17・電子17 e⁻ 電子1個 Cl⁻ 陽子17・電子18 − Cl + e⁻ → Cl⁻(電子1個を受け取る) 電解質(NaCl・HCl・NaOHなど)は水中で電離して電気を通す 砂糖・エタノールは分子のまま=非電解質(電気を通さない)
イオンのでき方 ── Naは電子を1個失ってNa⁺(陽イオン)、Clは電子を1個受け取ってCl⁻(陰イオン)になる

ナトリウム原子は電子を1個失うと、陽子11個に対して電子10個になり、+の電気を帯びたNa⁺になります。塩素原子は逆に電子を1個受け取って−のCl⁻に。この電子のやり取りが、電解質が水中で電離して電気を通すしくみの土台です。

電解質と非電解質

用語
電解質/非電解質

電解質:水に溶けると電気を通す物質(例:食塩、塩化銅、塩酸、硫酸)

非電解質:水に溶けても電気を通さない物質(例:砂糖、エタノール)

イオンとは ── 電気を帯びた粒子

用語
イオン
原子が 電子を失うまたは 電子を受け取ることで、電気を帯びた粒子になったもの。
  • 陽イオン:電子を失って +の電気を帯びた粒子(例:Na⁺、K⁺、H⁺、Mg²⁺)
  • 陰イオン:電子を受け取って −の電気を帯びた粒子(例:Cl⁻、OH⁻、SO₄²⁻)

電離 ── 水中でイオンに分かれる

用語
電離
電解質が水に溶けるとき、陽イオンと陰イオンに分かれること。
電離の式(例)

塩化ナトリウム:NaCl → Na⁺ + Cl⁻

塩化銅:CuCl₂ → Cu²⁺ + 2Cl⁻

塩酸:HCl → H⁺ + Cl⁻

硫酸:H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻

水酸化ナトリウム:NaOH → Na⁺ + OH⁻

主なイオンの一覧

名前記号電荷
水素イオンH⁺+1
ナトリウムイオンNa⁺+1
カリウムイオンK⁺+1
銅イオンCu²⁺+2
亜鉛イオンZn²⁺+2
マグネシウムイオンMg²⁺+2
塩化物イオンCl⁻−1
水酸化物イオンOH⁻−1
硫酸イオンSO₄²⁻−2
硝酸イオンNO₃⁻−1

電子のやりとりで考えるイオン

例1:Na の陽イオン化

Na(中性の原子)→ Na⁺ + e⁻(電子1個を失う)

陽子数 > 電子数 → 全体として + の電荷

例2:Cl の陰イオン化

Cl + e⁻ → Cl⁻(電子1個を受け取る)

陽子数 < 電子数 → 全体として − の電荷

電気を通すしくみ

電解質の水溶液に電極を入れて電圧をかけると、陽イオンは陰極(−極)へ、陰イオンは陽極(+極)へ移動する。これが「電気を通す」現象の正体。

原子の構造とイオン

原子の中身

原子核(陽子+中性子)と 電子でできている

陽子:+電気を持つ(原子番号 = 陽子数)

中性子:電気を持たない

電子:−電気を持つ(陽子と同数なら中性)

→ 中性原子は 陽子数 = 電子数

→ 電子を失う → 陽イオン

→ 電子を受け取る → 陰イオン

同じ元素でも、陽子の数(原子番号)は同じなのに中性子の数が異なる原子が存在することがあります。これを同位体(アイソトープ)といい、化学的な性質はほとんど同じですが、中性子の数が違うぶん質量がわずかに異なります。例えば炭素には陽子6個・中性子6個の炭素12と、陽子6個・中性子8個の炭素14という同位体があります。

イオンになりやすさ(電子配置)

なぜイオンになる?

多くの原子は、電子を失ったり受け取ったりすると「貴ガス(安定な電子配置)」と同じ並びになる

ナトリウム Na(11番):電子11個 → 1個失えば Ne(10番)と同じ電子配置になる → Na⁺

塩素 Cl(17番):電子17個 → 1個受け取れば Ar(18番)と同じ → Cl⁻

→ 安定な電子配置を目指して電子をやり取り

→ Ne・Ar・Kr などの貴ガス(希ガス)は安定でイオンになりにくい

食塩水で電気が流れる仕組み

電流のしくみ

食塩水 + 電極(電源あり)

→ Na⁺ は 陰極(−極)へ移動

→ Cl⁻ は 陽極(+極)へ移動

→ 電極で電子のやり取り → 電流が流れる

→ 砂糖水は分子のままなので電気が流れない

つまずきポイント①:イオン記号の電荷数
  • Cu²⁺ は「銅が 電子2個を失った状態」。+2 とも書く。
  • SO₄²⁻ のような 多原子イオンは、まとまって 1 つの陰イオンとして電離する。
  • 電離の式では 係数と電荷のバランスをチェック。例:CuCl₂ → Cu²⁺ + 2Cl⁻(電荷 +2 と −1×2 で釣り合う)。
つまずきポイント②:電解質か非電解質か
  • 電解質:水中でイオンに分かれる(電気を通す)
  • 例:NaCl、HCl、NaOH、CuCl₂、CaCl₂
  • 非電解質:分子のまま溶ける(電気を通さない)
  • 例:砂糖(C₁₂H₂₂O₁₁)、エタノール(C₂H₆O)、グルコース
  • 目印は「水に溶けてイオンに分かれる塩」「酸・アルカリ」。金属を含んでも水に溶けにくい物質は例外になる
つまずきポイント③:水素イオン H⁺ の特殊性
  • 水素原子は電子1個だけ持つ
  • 電子を失うと 陽子だけになる(H⁺)
  • 水中では水分子と結合して H₃O⁺(オキソニウムイオン)になっている
  • 中学では H⁺で書く(簡略表現)

この章でつまずきやすいところ

イオンの単元は、本文をなぞるだけでは「電子のやり取り」と「電気を帯びる向き」が頭の中で入れ替わりがちです。読み進めている途中で迷いやすい場面を、見分け方と短い例で整理します。

「陽イオンは陽極へ動く」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の「陽イオンは陰極(−極)へ、陰イオンは陽極(+極)へ移動する」を読むときに、名前が同じ「陽」だから陽極へ動くのでは、と引っかかってしまう場面。
  • 克服のコツ:位置関係で覚えるのがコツです。電気の世界では異なる符号どうしが引き合うので、+の電気を帯びた陽イオンは−極(陰極)に引かれます。名前の「陽」と移動先の極は逆になると意識しておくと迷いません。
  • ミニ例:食塩水に電極を入れると、Na⁺は陰極(−極)へ、Cl⁻は陽極(+極)へ移動します。+と−が引き合う、と確認しましょう。

イオンを「原子が壊れたもの」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:「原子は電子を失ったり受け取ったりして電気を帯びる」と読んだとき、原子核が割れたり粒が砕けたりするイメージを持ってしまい、Na⁺とNaを別物として捉えてしまう場面。
  • 克服のコツ:因果関係でとらえ直しましょう。変わるのは外側の電子の数だけで、原子核(陽子+中性子)はそのまま。陽子数>電子数になれば+、陽子数<電子数になれば−の電気を帯びる、というのが「イオンになる」ということです。
  • ミニ例:Na → Na⁺ + e⁻ では、陽子は11個のままで電子が1個減るだけ。原子核は壊れていません。

電離の式で「電荷のつり合い」を見落としてしまう

  • つまずく場面:CuCl₂ → Cu²⁺ + Cl⁻ のように書いて先へ進もうとしたところで、左右の電荷が合っているか自信が持てず、係数を付けるべきか迷う場面。
  • 克服のコツ:見分け方は「左辺は全体で電気的に中性、右辺の+と−の合計も0になるか」を確かめること。係数は粒子の数、右上の数字は1粒の電荷と役割が違うので、両方をかけ算して合計をチェックします。
  • ミニ例:CuCl₂ → Cu²⁺ + 2Cl⁻。右辺は (+2) + (−1)×2 = 0 となり、左辺の中性とつり合います。

「水に溶ければ電気を通す」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:食塩水が電流を通す実験を読んだ直後に、砂糖水も水に溶けているのだから同じように電流を通すはず、と感じてしまう場面。
  • 克服のコツ:見分け方は「水中でイオンに分かれているか」だけです。電解質はイオンに分かれて電気を運べますが、非電解質は分子のまま溶けるので運び手がいません。溶ける/溶けないと、電気を通す/通さないは別の話だと整理しましょう。
  • ミニ例:食塩(NaCl)は水中でNa⁺とCl⁻に分かれて電流が流れますが、砂糖やエタノールは分子のままなので流れません。

練習問題

問題1(電解質と非電解質)

次のうち電解質はどれか。砂糖、塩化ナトリウム、エタノール、塩酸、水酸化ナトリウム。

答えを見る

塩化ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム

問題2(電離の式)

次の電離を化学式で表せ。

  1. 塩化ナトリウム
  2. 塩酸
  3. 水酸化ナトリウム
  4. 硫酸
  5. 塩化銅
答えを見る

(1) NaCl → Na⁺ + Cl⁻

(2) HCl → H⁺ + Cl⁻

(3) NaOH → Na⁺ + OH⁻

(4) H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻

(5) CuCl₂ → Cu²⁺ + 2Cl⁻

問題3(イオン記号)
  1. 水素イオン
  2. 銅イオン
  3. 水酸化物イオン
  4. 硫酸イオン
答えを見る

(1) H⁺ (2) Cu²⁺ (3) OH⁻ (4) SO₄²⁻

まとめ

  • 電解質:水に溶けて電気を通す。非電解質:通さない。
  • イオン:電子のやり取りで電気を帯びた粒子。陽イオン+、陰イオン−。
  • 電離:電解質が 水中でイオンに分かれる。
  • 主なイオン記号:H⁺、Na⁺、Cu²⁺、Cl⁻、OH⁻、SO₄²⁻ など。
  • 電離の式は 電荷のバランスを取って書く。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

体の中ではたらくイオン(ナトリウムとカリウム)実生活

わたしたちの体液にはナトリウムイオン(Na⁺)やカリウムイオン(K⁺)が溶けていて、体液の浸透圧を保ったり、神経や筋肉が信号を伝えたりするのに役立っています。食塩水が電気を通すのと同じように、体の中でもこれらのイオンが電気的なはたらきを支えています。授業で学ぶイオンは、じつは自分の体の中でも毎日活躍しているのです。

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「ナトリウム」「カリウム」

経口補水液はなぜ水よりも体に吸収されやすい?実生活

経口補水液は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質(イオンになる物質)とブドウ糖を適切な割合で含むように作られた飲み物です。汗を大量にかいたときや下痢・嘔吐のときは水分と一緒にイオンも失われるため、イオンを補える経口補水液が水よりも効率よく体を回復させます。熱中症の予防にもこの考え方が役立っています。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「熱中症を防ごう」

食塩水の電気分解で日用品の原料を作る(ソーダ工業)発展

食塩水(塩化ナトリウム水溶液)に電流を流すと、陽極では塩化物イオン(Cl⁻)が電子を失って塩素になり、陰極では水が電子を受け取って水素が発生し、同時に水酸化物イオン(OH⁻)が残ります。これが陽極側から移動してきたナトリウムイオン(Na⁺)と合わさって水酸化ナトリウムができます。こうして得られる塩素・水酸化ナトリウム・水素は、せっけん・紙・水道水の消毒など身近な製品の原料になります。現在の日本では、イオンだけを選んで通す「イオン交換膜法」が使われ、省エネで高純度の製品が作られています。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「ソーダ工業における非化石エネルギー転換への取り組み」

スマホを動かすリチウムイオン電池とイオンの移動発展

スマートフォンや電気自動車に使われるリチウムイオン電池は、正極と負極の間の電解質の中をリチウムイオン(Li⁺)が行き来することで充電と放電をくり返します。イオンが電気を運ぶという中3で学ぶ考え方が、最先端の電池の心臓部にもそのまま使われています。この電池を開発した吉野彰さんらは、2019年にノーベル化学賞を受賞しました。

出典:科学技術振興機構(JST)サイエンスポータル「リチウムイオン電池開発の旭化成・吉野彰氏ら3人にノーベル化学賞」

海水の塩分は「電気の通しやすさ」で測れる発展

海水には塩化物イオンやナトリウムイオンなどがたくさん溶けているため電気をよく通します。海洋の研究では、海水がどれくらい電気を通すか(電気伝導度)を測ることで、溶けている塩分の量を正確に求めています。これは「イオンが多い水溶液ほど電気を通しやすい」という性質を応用した、実際の科学観測の例です。

出典:海洋研究開発機構(JAMSTEC)国際海洋環境情報センター「観測作業」