デジタルこどもBASEのロゴ特定非営利活動法人デジタルこどもBASE
中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

細胞分裂と生物の成長 ── 体細胞分裂

小さな卵から、ぼくたちは何兆個もの細胞の集まりに成長します。その秘密は 細胞分裂。1つの細胞が2つに、2つが4つに、と倍々に増えていく。同じ自分の細胞を増やすのが 体細胞分裂です。

図でつかむ

体細胞分裂の5段階 ── 染色体の動き ① 間期 ② 前期 ③ 中期 ④ 後期 ⑤ 終期 糸状・複製 太く短く凝集 中央に整列 両端へ移動 2つに分裂 分裂前に各染色体が複製されるので、分かれた娘細胞も 親と同じ46本の染色体をもちます。
体細胞分裂の5段階と、各段階での染色体の動き

間期に複製された染色体が、前期で太く短くなり、中期に中央(赤道面)へ整列、後期に両端へ引き離され、終期に2つの細胞へ分かれます。娘細胞の染色体数は親と同じ46本のままです。

生物の成長 ── 細胞分裂と細胞の成長

  • 細胞が 分裂して数を増やす
  • 分裂直後の細胞が 大きく成長する
  • この2段階で生物全体が大きくなる

体細胞分裂とは

用語
体細胞分裂
体を作る細胞が分裂すること。1つの細胞から 同じ遺伝情報を持つ2つの細胞ができる。

染色体 ── 細胞分裂中だけ見える糸状のもの

用語
染色体
細胞の核の中に普段は 糸状にほどけているが、分裂中だけ 太く短く凝集して見える。遺伝情報(DNA)を含む。
  • ヒトの体細胞:染色体は 46本(22対の常染色体 + 1対の性染色体)
  • 分裂前に 各染色体が複製され、X字型になる
  • 分裂で2つに分かれて、それぞれの娘細胞へ

体細胞分裂の過程

5段階(教科書順)

① 間期:染色体は糸状、複製される

② 前期:染色体が太く短く凝集

③ 中期:染色体が中央(赤道面)に並ぶ

④ 後期:染色体が両端に引き離される

⑤ 終期:細胞質が分かれ、2つの細胞に

細胞分裂の観察 ── タマネギの根

標準的な観察手順

① タマネギの根の 先端(成長点)を切り取る

② うすい塩酸に浸す(細胞をばらけさせる)

③ プレパラートに乗せ、酢酸オルセインまたは カルミンで染色

④ カバーガラスをかけ、上から ろ紙で押しつぶす

⑤ 顕微鏡で観察

→ 染色体が 赤紫に染まって見える

植物と動物の細胞分裂の違い

  • 植物細胞:終期に細胞板ができて2つに分かれる
  • 動物細胞:終期に細胞質がくびれて2つに分かれる

細胞分裂が活発な場所

  • 植物:成長点(根の先端、茎の先端、葉の付け根)
  • 動物:骨髄(血液細胞)、皮膚(表皮)、消化管(粘膜)
  • 成長期の動物は全身で活発
  • 大人になると、組織の修復や交換のために続く
  • がん細胞は 無制限に分裂する異常細胞

細胞周期

細胞周期の概念

細胞は 分裂と分裂の間に長い期間がある

分裂期(M期):細胞分裂をしている期間(短い)

間期:分裂していない期間(長い、染色体は糸状)

→ 顕微鏡で見ると、大部分は間期の細胞

分裂中の細胞は数が少ないが、染色体がはっきり見える

つまずきポイント①:体細胞分裂と減数分裂
  • 体細胞分裂:体を作る細胞が増える → 同じ染色体数の細胞2つ
  • 減数分裂(次回):生殖細胞を作るときに起こる → 染色体数が半分
  • 今は体細胞分裂、次回は減数分裂、と区別する
つまずきポイント②:分裂前の染色体複製
  • 分裂前に染色体の中の DNA が 複製され、同じ情報を2組用意する
  • 分裂後に2つの細胞へ同じ情報が分配され、染色体数は親細胞と同じになる
  • だから親細胞と子細胞は 同じ染色体数
つまずきポイント③:観察の手順
  • 塩酸で細胞をばらけさせる(解離)
  • 染色液(酢酸オルセイン)で染色体を染める
  • カバーガラスを乗せて押しつぶす(押しつぶし)
  • 顕微鏡で観察

この章でつまずきやすいところ

細胞分裂の単元は、染色体の動きや観察手順が次々に出てきて、本文を読む途中で「あれ、いまどの段階?」と迷いやすい場所です。読みながら起きがちな思い込みを、見分け方と短い具体例で整理します。

分裂後に染色体が半分になると思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の「分裂前に染色体が複製される」というところを読んでいる途中、「分裂したのだから数は減るのでは?」と感じて、親細胞と子細胞の染色体数の関係が分からなくなる場面。
  • 克服のコツ:時系列で整理するのがコツ。①分裂前に各染色体が複製されてX字型になる→②分裂で2つに分かれる、という順番で考える。複製してから分けるので、結果として子細胞の染色体数は親細胞と同じになる。減るのは次回の減数分裂の話。
  • ミニ例:ヒトの体細胞は46本。分裂前に46本がそれぞれ複製されてX字型になり、分裂で2つの娘細胞へ分配される。だから娘細胞も46本のまま。

染色体は普段から太く短く見えると思い込んでしまう

  • つまずく場面:教科書の図で太く短い染色体ばかり見ているうちに、「染色体は核の中でいつもこの形をしているもの」と思い込み、間期の説明を読むと「なぜ今は糸状なの?」と引っかかる場面。
  • 克服のコツ:時期ごとの見え方で見分ける。間期は糸状にほどけている状態で、顕微鏡でも普通の核に見える。分裂中(前期〜終期)だけ太く短く凝集して、私たちが図で見るあの形になる。「ずっとあの形」ではなく「分裂中だけあの形」と覚える。
  • ミニ例:プレパラートを見ると、大部分の細胞は間期で核がただの丸に見える。たまに太く短い染色体がはっきり見える細胞があり、それが分裂中の細胞。

中期と後期の染色体の位置を取り違えてしまう

  • つまずく場面:前期→中期→後期→終期の順を本文で確認している途中、「染色体が並ぶ」と「染色体が引き離される」のどちらが先か分からなくなり、問題1の並べ替えで手が止まる場面。
  • 克服のコツ:位置関係で見分ける。中期は染色体が細胞の中央(赤道面)に1列に並ぶ段階。後期はそこから両端に引き離される段階。「中央に集合してから両端へ移動」と動きの順で押さえると、用語の順番に迷わなくなる。
  • ミニ例:練習問題1では、(ウ)太く短くなる=前期→(ア)中央に並ぶ=中期→(イ)両端に引き離される=後期→(エ)2つに分かれる=終期、の順になる。

動物細胞と植物細胞の分かれ方を逆にしてしまう

  • つまずく場面:終期の説明を読んでいる途中で「くびれる」と「細胞板ができる」が出てきて、「タマネギの根は動物っぽくくびれる?」と迷い、どちらがどちらだったか分からなくなる場面。
  • 克服のコツ:つくりとの因果関係で見分ける。植物細胞には細胞壁があるため外からくびれにくく、内側に細胞板を作って仕切る。動物細胞には細胞壁がないので、外からくびれて2つに分かれる。「壁があるから板を作る/壁がないからくびれる」とつなげて覚える。
  • ミニ例:観察に使うタマネギの根は植物なので、終期に細胞板ができて2つに分かれる。一方、ヒトの皮膚や骨髄の細胞は動物なのでくびれて分かれる。

練習問題

問題1(細胞分裂の順序)

次を分裂の順に並べよ。
(ア) 染色体が中央に並ぶ (イ) 染色体が両端に引き離される (ウ) 染色体が太く短くなる (エ) 細胞が2つに分かれる

答えを見る

(ウ) 前期 → (ア) 中期 → (イ) 後期 → (エ) 終期

問題2(染色体)

染色体は何を含んでいるか。また、ヒトの体細胞の染色体数。

答えを見る

遺伝情報(DNA)。ヒトの体細胞:46本。

問題3(観察)

タマネギの根の細胞分裂を観察するときの染色液は。

答えを見る

酢酸オルセインまたは酢酸カルミン

動物と植物の細胞分裂の違い

動物細胞植物細胞
細胞質分裂くびれて2つに細胞板ができて2つに
細胞壁なしあり(あとから作られる)
分裂の場所体のあらゆる場所成長点に集中

ヒトの細胞の特徴

体細胞のしくみ

ヒトの体細胞 = 46本の染色体(23対)

うち22対が 常染色体、1対が 性染色体(XX または XY)

体内には約 37兆個の細胞

1日に 数百億個の細胞が分裂・新生

受精卵1個から細胞分裂を繰り返して個体が完成

まとめ

  • 生物の成長 = 細胞分裂で 数を増やす + 細胞が 大きくなる。
  • 体細胞分裂:同じ染色体を持つ 2つの娘細胞を作る。
  • 染色体:分裂中だけ見える 太く短い形。遺伝情報を含む。
  • 過程:間期 → 前期 → 中期 → 後期 → 終期。
  • 観察:タマネギの根 + 塩酸処理 + 酢酸オルセイン染色。
  • 動物:くびれ/植物:細胞板。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

私たちの体は約37兆個の細胞でできている発展

1個の受精卵が体細胞分裂をくり返した結果、おとなの体は約37兆個もの細胞でできていると推定されています。かつては「60兆個」とよく言われていましたが、近年に各臓器の細胞をていねいに数え直した研究によって、約37兆個という数が示されました。たった1個の細胞からこれほど多くの細胞が生まれることが、細胞分裂のすごさを表しています。

出典:JT生命誌研究館「一人であり37兆個である」

細胞には分裂できる回数の限界がある(テロメア)発展

染色体の両端には「テロメア」という部分があり、細胞分裂のたびに少しずつ短くなっていきます。テロメアがある長さまで短くなると、正常な体細胞はそれ以上分裂できなくなり、これが細胞の分裂回数の限界(分裂寿命)になると考えられています。体細胞分裂は無限にくり返せるわけではない、というのが研究で確かめられている点です。

出典:理化学研究所「世代を超えてテロメアDNAを維持する新たな仕組み」

がん細胞は分裂のブレーキが効かなくなった細胞実生活

正常な細胞では、細胞を増やす遺伝子と増えすぎを抑える遺伝子がはたらき、分裂が適切に調節されています。これらの遺伝子に変異が積み重なって調節がきかなくなると、細胞が止まらずに分裂し続けてかたまり(腫瘍)をつくり、がんになります。つまりがんは、体細胞分裂のしくみが乱れてしまう病気だと理解できます。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がんという病気について」

皮膚は細胞分裂でつねに新しく生まれ変わっている実生活

皮膚の表面(表皮)では、いちばん下の層で細胞分裂によって新しい細胞がつくられ、上へ押し上げられながら最後にあかとしてはがれ落ちます。この入れかわり(ターンオーバー)はおよそ4週間(約28日)の周期で続いています。けがをしてもやがて皮膚がもとに戻るのは、体細胞分裂が体の修復にもはたらいているからです。

出典:花王 スキンケアナビ「表皮の構造と働き」

iPS細胞はほぼ無限に分裂できる細胞発展

皮膚や血液などの体細胞に数種類の遺伝子をはたらかせると、さまざまな細胞に変化でき、しかもほぼ無限に増える能力をもつiPS細胞をつくることができます。ふつうの体細胞には分裂回数の限界がありますが、iPS細胞はそれをこえて増やせるため、再生医療や薬の研究に役立つと期待されています。日本の京都大学で開発された技術です。

出典:京都大学iPS細胞研究所 CiRA「iPS細胞とは?」

観察にタマネギの根の先端を使う理由と分裂のリズム発展

タマネギの根の先端(成長点)は細胞分裂がさかんなため、分裂中の染色体を観察する教材としてよく使われます。研究では、植物の体細胞分裂は一日の中で起こりやすい時間帯にかたよる、概日リズムのような性質をもつことも報告されています。だから観察では、分裂中の細胞が多く見つかりやすい先端部分を選ぶことが大切です。

出典:化学と生物(日本農芸化学会, J-STAGE)「タマネギの体細胞分裂にリズムはあるか」