図でつかむ
無性生殖では子は親と同じ遺伝情報(クローン)になります。有性生殖では減数分裂で染色体が46本から23本に半分になり、受精で23+23=46本に戻って、両親の遺伝子が混ざります。
無性生殖 ── 1個体だけで増える
- 分裂:単細胞生物(ゾウリムシ、アメーバ)が2つに割れる
- 出芽:体の一部が芽のように飛び出して新個体に(ヒドラ、酵母)
- 栄養生殖:植物の体の一部から増える(イモ、つる、挿し木)
無性生殖の特徴
- 子は基本的に 親と同じ遺伝情報を持つ(クローン)
- 環境が安定なら効率的
- 環境変化に弱い(多様性がない)
有性生殖 ── 2つの細胞が合体
動物の有性生殖
① 雄が 精子を作る(精巣)、雌が 卵を作る(卵巣)
② 受精:精子と卵が合体 → 受精卵
③ 受精卵が 体細胞分裂を繰り返して胚 → 個体に成長(発生)
植物の有性生殖
① おしべの花粉 → めしべの柱頭に受粉
② 花粉から 花粉管がのびる
③ 花粉管の中の 精細胞が、胚珠の中の 卵細胞に到達して受精
④ 受精卵は 胚になり、胚珠全体が 種子になる
減数分裂 ── 染色体を半分に
ヒトの体細胞:46本。卵と精子が合体すると 46 + 46 = 92本になってしまう!
→ 生殖細胞だけ 23本にしておく(減数分裂)
→ 受精で 23 + 23 = 46本に戻る
受精と発生
- 受精卵:精子と卵が合体した1個の細胞
- 発生:受精卵が体細胞分裂を繰り返し、胚 → 幼体 → 成体に成長すること
- 発生途中の段階を 胚(はい)という
有性生殖と無性生殖の比較
| 無性 | 有性 | |
|---|---|---|
| 子の遺伝情報 | 親と同じ | 両親の混合 |
| 染色体数 | 変わらない | 減数 → 受精で元に |
| 多様性 | 低い | 高い |
| 環境変化への適応 | 弱い | 強い |
発生の段階
受精卵(1細胞)
↓ 体細胞分裂
2細胞期 → 4細胞期 → 8細胞期...
↓ 何度も分裂
胚(はい):分裂が進んで形ができ始める
↓ 組織・器官ができる
幼体・成体
→ ヒトでは受精から出産まで 約280日(10か月)
動物の発生:カエルの例
受精卵 → 2細胞期 → 4細胞期 → 桑実胚(細胞の塊)
→ 胞胚(中央に空洞) → 嚢胚(陥入が始まる)
→ 神経胚(神経系ができ始める) → オタマジャクシ → カエル
→ 教科書で カエルの発生がよく取り上げられる
身近な無性生殖と有性生殖
| 生物 | 方法 | 分類 |
|---|---|---|
| ゾウリムシ | 分裂 | 無性 |
| アメーバ | 分裂 | 無性 |
| ヒドラ | 出芽 | 無性 |
| 酵母菌 | 出芽 | 無性 |
| じゃがいも | 栄養生殖(イモ) | 無性 |
| イチゴ | 栄養生殖(ランナー) | 無性 |
| 桜・リンゴ | 受粉・受精 | 有性 |
| ヒト・動物 | 受精 | 有性 |
- 受粉:花粉が柱頭につくこと(外側のステップ)
- 受精:精細胞と卵細胞が合体すること(内側のステップ)
- 受粉 → 花粉管が伸びる → 受精、の順。
- 体細胞分裂:染色体数 変わらず(46→46)、体の成長や修復
- 減数分裂:染色体数 半分(46→23)、生殖細胞を作る
- 受精で 23+23=46 に戻り、子は親と同じ染色体数
- 利点:速い・効率的、相手が要らない
- 欠点:多様性がない、環境変化に弱い
- 有性生殖は遅いが 多様な子孫で環境変化に対応
- 多くの生物が両方の方式を使い分ける(イチゴは栄養生殖もするし種子も作る)
この章でつまずきやすいところ
生殖の単元では、似た名前の用語が次々に出てきて、本文や問題を読みながら「あれ、どっちだっけ?」と止まりやすい場面が並びます。理解の途中で迷いやすい場面を取り上げ、見分け方と短い具体例で整理します。
受粉と受精を同じ場面だと思い込んでしまう
- つまずく場面:被子植物の流れを本文で追っているうちに「花粉がついた=もう受精した」と読み進めてしまい、花粉管や精細胞の話が出てきたところで頭が止まる場面。
- 克服のコツ:時系列で整理する。①受粉は花粉が柱頭につく「外側」の出来事、②そこから花粉管が胚珠に向かってのび、③管の中の精細胞が卵細胞に届いて初めて受精。受粉と受精の間に必ず「花粉管がのびる」ステップがあると覚える。
- ミニ例:サクラで、花粉がめしべの柱頭についた瞬間は受粉。そこから花粉管がのびて胚珠の卵細胞に精細胞が届いたときに受精が成立する。
減数分裂と体細胞分裂を取りちがえてしまう
- つまずく場面:「染色体が半分になる」という記述を読んだ後、すぐ次の問題で体の成長について問われると、つい「成長のときも半分になる」と答えそうになる場面。
- 克服のコツ:はたらきと結果で見分ける。体細胞分裂は体の成長・修復のための分裂で、染色体の数は変わらない。減数分裂は生殖細胞をつくるとき限定の特別な分裂で、染色体の数がもとの半分になり、受精で再びもとの数に戻る、という流れまでセットで押さえる(例:ヒトなら46本→23本になる)。
- ミニ例:ヒトでけがをした皮ふがふさがるのは体細胞分裂。一方、精巣で精子がつくられるときに起きるのは減数分裂で、染色体の数はもとの半分になる。
栄養生殖を「種子で増える有性生殖」だと思い込んでしまう
- つまずく場面:「じゃがいものイモから芽が出る」「イチゴがランナーで増える」と本文に出てきたとき、植物だから有性生殖と考えてしまい、無性生殖の例として答えられない場面。
- 克服のコツ:受精があるかないかで判断する。栄養生殖は植物の体の一部(イモ・ランナー・挿し木など)からそのまま新しい個体ができる増え方で、受精をしないので無性生殖に分類される。花が咲き種子ができるルートとは別物だと意識する。
- ミニ例:じゃがいもをイモから育てた株は無性生殖(栄養生殖)。同じ株が花を咲かせ種子をつくった場合は有性生殖にあたる。
受精卵・胚・幼体の段階をひとまとめにしてしまう
- つまずく場面:カエルの発生の図を見ながら、「桑実胚」「胞胚」など似た名前が並ぶうちに、どこまでが胚でどこからが幼体なのか分からなくなり、本文の発生の説明が頭に入らない場面。
- 克服のコツ:時系列の段階で並べ直す。受精卵(1細胞)→ 体細胞分裂をくり返して2細胞期・4細胞期…→ 形ができ始めた段階が胚(桑実胚・胞胚・神経胚など)→ 自分で動き食べ始めると幼体(オタマジャクシ)→ 成体(カエル)。「受精卵が胚を経て個体に育つこと」を発生と呼ぶ、と整理する。
- ミニ例:カエルでは、受精卵から神経胚までが胚の段階、そこからふ化して泳ぎ始めたオタマジャクシが幼体、変態を終えたカエルが成体にあたる。
練習問題
次は無性生殖か有性生殖か。
- イモを土に埋めて増やす
- サクラの花が実をつける
- ゾウリムシが2つに分裂する
- ヒトが子を生む
答えを見る
(1) 無性(栄養生殖) (2) 有性 (3) 無性(分裂) (4) 有性
被子植物の有性生殖の流れを次の中から選び正しい順に並べよ。
(ア) 受精 (イ) 受粉 (ウ) 種子の形成 (エ) 花粉管が伸びる
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(イ) 受粉 → (エ) 花粉管が伸びる → (ア) 受精 → (ウ) 種子形成
ヒトの体細胞の染色体数は 46 本である。卵と精子の染色体数は。受精卵の染色体数は。
答えを見る
卵と精子:23 本(減数分裂で半分)。受精卵:46 本(合体で元に戻る)。
まとめ
- 無性生殖:1個体だけで増える。子は 親と同じ遺伝情報。
- 有性生殖:精子+卵 → 受精卵 → 発生。子は 両親の遺伝情報を持つ。
- 減数分裂:生殖細胞は 染色体数が半分。受精で元に戻る。
- 受粉(花粉 → 柱頭)と受精(精細胞 → 卵細胞)は別物。
- 有性生殖は 多様性を生み、環境変化に強い。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
全国のソメイヨシノはすべてクローン実生活
お花見でおなじみのソメイヨシノは種では増やせず、接ぎ木や挿し木という栄養生殖だけで増やされてきました。そのため日本中の木が遺伝的にほぼ同じクローンで、同じ気候の地域では同時期に一斉に咲きます。これは無性生殖でできた子が親と同じ遺伝情報を持つという学習内容の身近な実例です。
ジャガイモの種いもは栄養生殖を利用している実生活
ジャガイモは花から種子もできますが、畑では「種いも」を植えて増やすのがふつうです。これはいも(茎の一部)から育てる栄養生殖で、親と同じ性質のいもを安定して収穫できるからです。無性生殖は形質が変わりにくいという特徴を農業に活かした例といえます。
体細胞クローン技術は人工的な無性生殖発展
体細胞クローン技術では、ある個体の体細胞の核を、核を取り除いた未受精卵に移植して新しい個体をつくります。受精を経ないため、生まれる個体は核を提供した親と同じ遺伝子を持つクローンになり、無性生殖の一種といえます。家畜の改良などを目的に研究が進められていますが、技術には改善の余地が多く、まだ研究段階です。
iPS細胞から卵や精子のもとをつくる研究発展
iPS細胞は、体の細胞に少数の遺伝子を入れて、さまざまな細胞になれる能力を取りもどさせた細胞です。近年、京都大学の研究でヒトのiPS細胞から卵や精子のもとになる細胞を大量につくる技術が開発され、有性生殖や不妊のしくみの解明につながると期待されています。生殖細胞の研究が新しい段階に入っていることがわかります。
体外受精は受精を体の外で行う医療実生活
体外受精は、体から取り出した卵と精子を体の外で受精させ、できた受精卵(胚)を子宮にもどす不妊治療です。日本では2022年から保険が適用されるようになりました。教科書で学ぶ「卵と精子が受精して受精卵ができる」というしくみが、医療の現場でも応用されています。
メダカの卵で発生のようすを観察できる発展
メダカの卵は直径約1.5mmで透明なため、受精卵が分裂をくり返して体ができていく発生のようすを生きたまま観察できます。卵には卵門という小さな穴があり、そこを1個の精子が通って受精が成立します。受精から約9日でふ化し、発生の段階を順に追うことができます。
