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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

遺伝とメンデルの法則 ── 顕性と潜性

「父親に似ている」「祖母譲りの目の色」。これらすべて 遺伝のしくみで説明できます。1856年からエンドウを使った実験で メンデルが発見した遺伝の法則は、現代生物学の出発点。顕性と潜性、3:1 の比を理解しましょう。

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メンデルの格子図:Aa × Aa → 孫世代(F₂) 親(P):AA(丸)× aa(しわ)→ 子(F₁)はすべて Aa(丸) 父 → ↓ 母 A a A a AA 丸 Aa 丸 Aa 丸 aa しわ たて・よこ=親の生殖細胞(A・a) 遺伝子型(遺伝子の組合せ) AA : Aa : aa = 1 : 2 : 1 表現型(見た目の形質) 丸 : しわ = 3 : 1 丸(AA・Aa)=3、しわ(aa)=1 F₁どうし(Aa×Aa)から生まれる比
Aa×Aa の格子図。遺伝子型 AA:Aa:aa=1:2:1、表現型 丸:しわ=3:1 になる

父と母の生殖細胞(A・a)を格子図のたてよこに並べると、孫世代(F₂)は遺伝子型 AA:Aa:aa=1:2:1、見た目(表現型)は丸:しわ=3:1 になります。A が1つでもあれば丸になる点がポイントです。

遺伝子と形質

用語
遺伝子・形質

遺伝子:染色体上にあり、親から子に伝わる「設計図」(DNA)

形質:遺伝子により現れる特徴(花の色、種子の形、目の色など)

顕性(優性)と潜性(劣性)

用語
顕性・潜性

顕性形質(優性):両親が違う遺伝子を持つときに 子に現れる方の形質

潜性形質(劣性):両親が違う遺伝子を持つときに 子に現れない方の形質

メンデルの実験(エンドウ)

親:丸い種子(純系)× しわのある種子(純系)

→ 子(F₁):すべて 丸い種子

→ 「丸」が顕性、「しわ」が潜性

遺伝子の記号 ── 大文字と小文字

  • 大文字 A:顕性遺伝子(例:丸い種子の A)
  • 小文字 a:潜性遺伝子(例:しわのある種子の a)
  • 親から1個ずつもらうので、子は AA、Aa、aa のいずれか
遺伝子型と表現型

AA(純系・顕性):丸い

Aa(雑種):丸い(A が表に出る)

aa(純系・潜性):しわ

メンデルの実験を追う

親世代 → 子世代(F₁)

親:AA × aa

減数分裂で、AA からは A の遺伝子のみ、aa からは a のみ

受精:子は全員 Aa(雑種、丸い種子)

子世代どうしの交配 → 孫世代(F₂)

Aa × Aa を考える

Aa の生殖細胞:A または a(半分ずつ)

組合せ表:

   A   a

A  AA  Aa

a  Aa  aa

→ AA:Aa:aa = 1:2:1

→ 表現型は 丸(AA + Aa):しわ(aa)= 3:1

分離の法則

法則
分離の法則
対になっている遺伝子は、生殖細胞ができるときに 1個ずつ分かれて別々の生殖細胞に入る。

遺伝の計算問題のコツ

手順

① 親の遺伝子型を書く(例:AA × aa、または Aa × Aa)

② 各親が作る生殖細胞を書く(AA → A のみ、Aa → A と a)

③ 組合せ表で子の遺伝子型を求める

④ 表現型の比を答える

メンデルとエンドウマメの実験

メンデルの偉業

グレゴール・ヨハン・メンデル(オーストリアの修道士・1822-1884)

1856-1863年:エンドウマメを使った交配実験

1865年:「植物雑種に関する研究」を発表

1900年:3人の科学者により 再発見される

→ 遺伝学の 父と呼ばれる

→ エンドウマメ7つの形質で実験:種子の形・色・花の色・サヤの形など

DNAと遺伝子

遺伝子の正体

DNA(デオキシリボ核酸):遺伝情報を担う物質

染色体:DNAがヒストンに巻きついた構造

遺伝子:DNAの一部、特定のタンパク質の設計図

ゲノム:1つの生物が持つすべての遺伝情報

→ ヒトゲノムは約30億塩基対、約2万個の遺伝子

→ 1953年 ワトソン&クリックがDNA二重らせん構造を発見

遺伝の応用:品種改良・遺伝子組換え

  • 品種改良:望ましい形質を持つ生物を交配で作る
  • 例:甘いトウモロコシ、収穫量の多いコメ
  • 遺伝子組換え:直接遺伝子を加える
  • 例:除草剤に強い大豆、寒さに強い作物
  • クローン:同じ遺伝子を持つ個体(クローン羊ドリー、1996年)
  • ゲノム編集:CRISPR-Cas9 で特定の遺伝子を編集

ヒトの遺伝

ヒトの形質と遺伝

耳あか:乾型・湿型には遺伝子が関係する

血液型:A・B・O 型は複数の対立遺伝子の組み合わせで決まる

性別:X 染色体と Y 染色体(XX が女性、XY が男性)

耳あかや血液型のように遺伝が関係する形質もあるが、ヒトの形質は複数の遺伝子や環境が関わることも多い

→ エンドウの例のように単純な比で表せる形質と、そうでない形質を区別する

つまずきポイント①:3:1 の比はあくまで「予想」
  • F₂ で 3:1 はあくまで 確率的な比。実験で 1000 粒中 750:250 とぴったりにはならない。
  • 例:750:250 が出れば「3:1」として正解扱い。
  • 少数では当然ずれる。大量に観察するほど 3:1 に近づく(大数の法則)。
つまずきポイント②:遺伝子型と表現型
  • 遺伝子型:遺伝子の組合せ(AA, Aa, aa)
  • 表現型:見た目の形質(丸・しわ)
  • AA と Aa は表現型が同じ(どちらも丸)
  • 遺伝子型 1:2:1 → 表現型 3:1 になる
つまずきポイント③:「優性」「劣性」から「顕性」「潜性」へ
  • 2017年から学術用語が変更
  • 優性 → 顕性(あらわれやすい)
  • 劣性 → 潜性(隠れている)
  • 古い教科書では「優性」「劣性」と書かれている場合もある
  • 「劣っている」という誤解を避けるための変更

この章でつまずきやすいところ

メンデルの法則は本文を読むだけだと「3:1」「Aa」など記号がすらすら入ってきてしまい、いざ問題に向かうと迷うことが多い章です。読みながら止まりやすい4つの場面を、整理のコツとセットで先回りしておきましょう。

「顕性=優れている」と読み替えてしまう

  • つまずく場面:本文で「丸が顕性、しわが潜性」と出てきた瞬間、なんとなく丸の方が遺伝子として強い・優れていると読み替えて先に進んでしまう。古い教科書の「優性・劣性」の語感が頭に残っている人ほど起きやすい場面。
  • 克服のコツ:見分け方で整理。顕性・潜性は「子に現れるかどうか」の表れ方のラベルであり、遺伝子の優劣ではない。本文の「2017年から優性→顕性、劣性→潜性に変更」「『劣っている』という誤解を避けるための変更」を根拠にして、価値の上下に読み替えないようブレーキをかける。
  • ミニ例:Aaの個体は表に丸しか出ないが、aもちゃんと染色体に乗って次の世代に伝わる。だから孫世代でしわが復活する。潜性は「隠れているだけ」と読むのが教科書の整理。

AAとAaを別の見た目だと思い込んでしまう

  • つまずく場面:組合せ表でAA・Aa・aaの3種類を書き出したあと、表現型の比を答える段で「丸が2種類あるから2:1:1かな」と書きそうになる。遺伝子型の種類数と見た目の種類数が頭の中で混ざってしまう典型の迷い。
  • 克服のコツ:因果関係で整理。顕性遺伝子Aが1つでもあれば表現型は丸になる、というルールが先にある。だからAAもAaも見た目は同じ丸。表現型を数えるときは「Aを含むかどうか」だけを基準にし、遺伝子型1:2:1を表現型3:1に畳む手順を必ず通す。
  • ミニ例:Aa×Aaの孫世代はAA:Aa:aa=1:2:1。丸はAA+Aa=3、しわはaa=1なので3:1。表現型を答えるときは遺伝子型の比をそのまま書かない、と決めておく。

3:1をぴったりの実測値だと思い込んでしまう

  • つまずく場面:問題文に「F₂で800粒の種子を得たとき、しわはおよそ何粒か」と出てくると、3:1は実験すれば必ずぴったり出る値だと思って「200粒ちょうどでなければ間違い」と詰まる。本文の「予想」「目安」という言い回しを読み飛ばしている場面。
  • 克服のコツ:見分け方で整理。本文には「3:1の比は大量の個体での目安であり、少数では必ずその通りに分かれるとは限らない」「大量に観察するほど3:1に近づく」とある。問題で出てくる「およそ」「予想」「約」の語があれば、それは確率的な比のサインだと反応する。
  • ミニ例:800粒ならしわは1/4でおよそ200粒と答えるのが教科書の整理。実際の実験で750:250や780:220になっても、3:1の予想と矛盾しないと読む。

減数分裂で「親の遺伝子が両方とも入る」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:Aa×Aaの組合せ表を書くとき、Aaという親が作る生殖細胞を「Aa」とそのまま1マスに書いてしまう。受精で子がまたAaになると思って組合せ表が組めず、3:1がどこから出るのか分からなくなる場面。
  • 克服のコツ:時系列で整理。①減数分裂で対の遺伝子は1個ずつ別の生殖細胞に分かれる(分離の法則)→ ②受精で両親から1個ずつもらって対に戻る、という順番を必ず先に確認する。生殖細胞の段階では遺伝子は1個、というルールを通すと組合せ表が自動で埋まる。
  • ミニ例:Aaの親が作る生殖細胞はAとaが半分ずつ。Aa×Aaの組合せ表はA・aを縦横に並べて、AA/Aa/Aa/aaの4マスを書く。これで1:2:1が出る。

練習問題

問題1(顕性と潜性)

丸い種子(AA)としわのある種子(aa)を掛け合わせた。子(F₁)の遺伝子型と表現型は。

答えを見る

遺伝子型:Aa、表現型:すべて丸い種子(顕性形質)

問題2(F₂ の比)

F₁(Aa)どうしを交配したときの孫世代(F₂)の表現型の比を求めよ。

答えを見る

丸:しわ = 3:1

問題3(応用)

Aa と aa を交配したときの子の表現型の比は。

答えを見る

Aa:a×A、a×a → Aa:aa = 1:1 → 丸:しわ = 1:1

問題4(数)

F₂ で全部 800 粒の種子を得たとき、しわのある種子はおよそ何粒か。

答えを見る

3:1 → しわは 1/4 → 800 × 1/4 = 200 粒(予想)

まとめ

  • 遺伝子:親から子へ受け継がれる「設計図」。染色体上にある。
  • 顕性(A)と潜性(a):両親が違うとき 表に出る方が顕性。
  • 遺伝子型:AA、Aa、aa。表現型:AA = Aa は同じ(顕性)、aa は潜性。
  • F₁:純系どうし → すべて雑種(Aa)。
  • F₂:F₁ どうし → 表現型 3:1 の比。
  • 分離の法則:対の遺伝子は生殖細胞で 1個ずつに分かれる。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

「優性・劣性」から「顕性・潜性」へ変わった理由発展

遺伝子そのものに優れている・劣っているという差はないのに、「優性・劣性」という言葉は遺伝子に優劣があるかのような誤解を生んでいました。そこで日本遺伝学会は2017年、用語集『遺伝単』で、現れやすい形質を「顕性」、隠れている形質を「潜性」と呼ぶよう用語を改めることを提案し、その後教科書でも使われるようになりました。

出典:日本遺伝学会「遺伝学用語改訂について 2017.9.11」

メンデルがエンドウを選んだわけ発展

メンデルは、丸・しわや種子の色など、はっきり区別できる7つの対立形質を持つエンドウを実験に選びました。エンドウは自家受粉で純系をつくりやすく、たくさんの種子が得られるため、子や孫の形質の比を数で確かめるのに適していたのです。

出典:NHK for School「遺伝の法則の発見」

ABO式血液型は3種類の遺伝子で決まる実生活

ヒトのABO式血液型は、A・B・Oの3種類の遺伝子(対立遺伝子)の組み合わせで決まります。A・BはOに対して顕性ですが、AとBの間には顕性・潜性の関係がないため、両方を持つとAB型として両方の性質が現れます。エンドウのように2種類だけでなく、3種類以上の遺伝子が関わる例もあるのです。

出典:早稲田大学 講義資料「ABO血液型遺伝子」

ゲノム編集でつくられたトマトが日本で実用化実生活

血圧の上昇をおさえる働きがあるとされるGABAという成分を多く含むトマトが、ゲノム編集技術を使って開発され、2020年12月11日に国内で初めて厚生労働省などへ届け出されました。GABAをつくる働きをおさえる遺伝子の一部を壊すことで、含有量を増やしています。遺伝のしくみの研究が、私たちの食卓にもつながっています。

出典:厚生労働省「ゲノム編集技術応用食品及び添加物の食品衛生上の取扱要領に基づき届出された食品及び添加物一覧」

ヒトの設計図ゲノムには遺伝子が約2万個発展

ヒト1人が持つすべての遺伝情報(ゲノム)は約30億塩基対のDNAからなり、その中にタンパク質の設計図となる遺伝子が約2万個あると考えられています。同じヒトでもこの遺伝子の組み合わせのわずかな違いが、一人ひとりの形質の個性を生み出しています。

出典:国立遺伝学研究所 DDBJ「遺伝子とゲノム」

世界初のクローン羊「ドリー」発展

1996年、イギリスのロスリン研究所で、おとなの羊の体細胞の核を使って、その羊とほぼ同じ遺伝子を持つ羊「ドリー」がつくられました。受精によらず同じ遺伝情報を持つ個体をつくり出せることを示した実験で、生命や遺伝のしくみについて多くの議論を呼びました。

出典:理科年表オフィシャルサイト「クローン羊『ドリー』の誕生」