形容詞 ── 言い切りが「い」
形容詞は 用言の1つで、述語になれます。「空が 青い。」「この本は おもしろい。」
形容詞の活用
形容詞には 命令形がないのが特徴です。動詞は6つの活用形がありましたが、形容詞は5つ(うち命令形なし)。
未然:高かろ(う)
連用:高かっ(た)/高く(なる・ない)
終止:高い(。)
連体:高い(とき)
仮定:高けれ(ば)
命令:なし
- 「高く ない」── 「高く」は形容詞の連用形、「ない」は 補助形容詞。
- 「ない」は補助形容詞だが、品詞分類上は形容詞の仲間。
形容動詞 ── 言い切りが「だ」
形容動詞の活用
未然:静かだろ(う)
連用:静かだっ(た)/静かで(ある)/静かに(なる)
終止:静かだ(。)
連体:静かな(夜)
仮定:静かなら(ば)
命令:なし
形容動詞も命令形はありません。連体形が 「〜な」になるのが大きな特徴です。
形容詞と形容動詞の見分け
判定は 言い切りの形 で簡単に決まります。
①美しい(。) → 形容詞(「い」で終わる)
②きれいだ(。) → 形容動詞(「だ」で終わる)
③正直だ(。) → 形容動詞
④かわいい(。) → 形容詞
- 「きれい」の言い切りは 「きれいだ」 ── 形容動詞。
- 「い」で終わって見えるのは 偶然。「きれくない」「きれかった」とは言えないのが証拠。
- 同類:「ていねい」「きらい」── すべて形容動詞。
形容動詞 vs 名詞+助動詞「だ」
「学生だ」と「静かだ」── どちらも「だ」で終わりますが、片方は形容動詞、片方は 名詞+助動詞です。
①「静かな夜」 ○ → 形容動詞
②「学生な夜」 × → 名詞「学生」+助動詞「だ」
③「平和な世界」 ○ → 形容動詞
④「教師な世界」 × → 名詞+助動詞
連体詞「大きな」と形容詞「大きい」
「大きな」は 形容詞ではない。これも要注意ポイントです。
- 「大きい」── 形容詞。活用する(大きい・大きかった・大きく)。
- 「大きな」── 連体詞。活用しない。「大きな家」のように名詞だけを修飾する形でしか使えない。
- 同じく「小さい」(形容詞)/「小さな」(連体詞)も別単語。
形容詞・形容動詞のはたらき
両方とも用言なので、文の中で次の2つの役割を持ちます。
- 述語になる。「空が 青い。」「庭が 静かだ。」
- 連体修飾語になる。「青い 空」「静かな 庭」
- 連用形にして 連用修飾語にもなる。「美しく 歌う」「静かに 歩く」
教科書で確認した用言の見分け
- 形容詞は「美しい」のように、言い切りがいで終わる。
- 形容動詞は「静かだ」のように、言い切りがだになる。
- ただし「きれい」「ていねい」のように、語の見た目だけでは判断できないものがある。
- 「静かだ」は形容動詞の語尾として扱う。
- 「学生だ」は名詞「学生」+助動詞「だ」。名詞を修飾して「学生な人」とはふつう言えない。
この章でつまずきやすいところ
形容詞と形容動詞は、どちらも様子を表す用言ですが、本文を読んでいる途中に「これはどっち?」と手が止まる単語が必ず出てきます。見た目に引きずられた瞬間に判定をミスしやすい場面を、言い切りの形と活用に立ち返って整理します。
「きれい」を形容詞だと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文に出てきた「きれいな花」を品詞分けするとき、語の最後が「い」に見えるので形容詞だと判断しかけて手が止まる場面。「うれしい」「美しい」と同じ仲間に見えてしまい、判定の根拠があいまいになる。
- 克服のコツ:見分け方は言い切りの形に直してから「い」か「だ」かを確かめること。「きれい」は言い切ると「きれいだ」となり、「だ」で終わるので形容動詞。語の最後が「い」に見えるだけで形容詞と決めつけず、必ず言い切りの形に直してから判定する。
- ミニ例:本文中の「きれいな水」を判定するとき、言い切りは「きれいだ」。連体形は「きれいな水」。同じ仲間に「ていねい」「きらい」があり、これらも形容動詞として扱う。
「大きな家」の「大きな」を形容詞と読んでしまう
- つまずく場面:本文を読んでいて「大きな家」が出てきたとき、「大きい」と同じ単語のつもりで形容詞として処理してしまう場面。活用するかどうかを確かめずに、名詞を飾っているという見た目だけで判断してしまう。
- 克服のコツ:活用するかどうかで見分ける。「大きい・大きかった・大きく」と形が変わるなら形容詞。「大きな」は形を変えられず、いつも「大きな+名詞」の形でしか使えない(活用しない)ので連体詞。同じく「小さな」も連体詞で、「小さい」とは別単語として扱う。
- ミニ例:「大きな家が建つ」では「大きな」は連体詞。一方「家が大きい」「大きく育つ」と形が変わるときは形容詞「大きい」。形が変わるかどうかで線を引くと迷わない。
「学生だ」と「静かだ」の「だ」を同じものと思ってしまう
- つまずく場面:本文の「彼は学生だ。」と「教室は静かだ。」を見比べているとき、文末がどちらも「だ」で終わるため、両方とも形容動詞ではないかと迷う場面。「だ」の正体を確かめないまま品詞を決めかけてしまう。
- 克服のコツ:見分け方は「〜な+名詞」テスト。「静かな夜」は自然につながるので形容動詞。「学生な夜」はふつう言わないので、これは名詞「学生」+断定の助動詞「だ」。語尾の「だ」が活用語尾なのか、断定の助動詞なのかが分かれ目になる。
- ミニ例:「あれは犬だ」→「犬な○○」とは言えない。名詞「犬」+断定の助動詞「だ」。「道が静かだ」→「静かな道」と自然。形容動詞「静かだ」の一部。
「高くない」の「ない」を打ち消しの助動詞と思ってしまう
- つまずく場面:問題で「この山は高くない」の品詞を分けるとき、「ない」を動詞のあとにつく打ち消しの助動詞と同じものとして処理しかけ、形容詞の連用形「高く」との関係があいまいになる場面。
- 克服のコツ:「ない」の直前の語が何かで見分ける。形容詞の連用形「高く」「美しく」のあとにつく「ない」は形容詞「ない」として扱い、動詞「行く」のあとにつく「行かない」の「ない」は打ち消しの助動詞で、両者は別物。
- ミニ例:「高くない」── 「高く」は形容詞「高い」の連用形、「ない」は形容詞「ない」。一方「走らない」の「ない」は動詞「走る」につく助動詞。直前の語の品詞をまず確かめる。
練習問題
- 赤い
- すなお
- 桜
- きれい
- うれしい
- 春
答えを見る
(1) 形容詞(言い切り「赤い」)
(2) 形容動詞(言い切り「すなおだ」)
(3) 名詞
(4) 形容動詞(言い切り「きれいだ」、「きれくない」とは言わない)
(5) 形容詞(言い切り「うれしい」)
(6) 名詞
- とても美しかった。
- 静かな朝。
- もっと高ければ買わない。
- 道を静かに歩く。
答えを見る
(1) 形容詞「美しい」の 連用形(「た」に続く)
(2) 形容動詞「静かだ」の 連体形(体言「朝」に続く)
(3) 形容詞「高い」の 仮定形(「ば」に続く)
(4) 形容動詞「静かだ」の 連用形(「歩く」に続く)
- あれは犬だ。
- 道が静かだ。
答えを見る
(1) 助動詞「だ」。「犬な夜」とは言えない → 形容動詞ではない。「犬」(名詞)+「だ」(助動詞)。
(2) 形容動詞「静かだ」の一部。「静かな道」と自然 → 形容動詞。
まとめ
- 形容詞は言い切りが「い」、形容動詞は言い切りが「だ」。
- どちらも 用言で、述語になれる。命令形はない(活用形は5つ)。
- 形容動詞か名詞+助動詞「だ」かは 「〜な+名詞」テスト で見分ける。
- 「きれい」「きらい」「ていねい」は 形容動詞(「い」で終わって見えるだけ)。
- 「大きな」「小さな」は 連体詞(活用しない別単語)。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「美しいです」「大きいです」は正しい言い方実生活
形容詞を「です」で結ぶ言い方は、昔の文法書では誤りとされていました。しかし国の国語審議会が建議した「これからの敬語」(1952年)で、これを平明・簡素な言い方として認めてよいと示し、今では教科書でも標準的な丁寧表現とされています。
日本語を学ぶ外国人には「い形容詞」「な形容詞」発展
学校の国語で習う「形容詞」「形容動詞」という呼び方は、日本語を学ぶ外国人向けの教え方とは違います。日本語教育では、名詞につくとき「〜い」になるものを「イ形容詞」、「〜な」になるものを「ナ形容詞」と呼び、活用の形に注目して整理します。同じ言葉でも、学ぶ目的によって分類の名前が変わるのです。
「違くて」「違かった」が広がる理由実生活
「違う」は動詞なのに、「違くて」「違かった」「違くない」のように形容詞のような活用で使う人がいます。国立国語研究所は、これを「高くて・高かった・高くない」という形容詞の活用にならってできた言い方だと説明しています。「違う」が状態を表す形容詞に近い意味をもつことが背景にあります。
新しい言葉に「い」をつけて形容詞ができる発展
形容詞の語尾「い」は独立性が高く、名詞や外来語にくっついて新しい形容詞を作る働きがあります。たとえば「ナウ(now)」に「い」をつけた「ナウい」が流行語になりました。形容詞は今も生まれ続けている、生きた品詞だといえます。
古文の形容詞には性質と心情の二種類があった発展
高校で学ぶ古文の形容詞には「ク活用」と「シク活用」があります。研究では、ク活用は「高し」「白し」のように物の性質・状態を表す語が多く、シク活用は「うれし」「悲し」のように人の心情を表す語が多いと整理されています。現代語の形容詞のルーツをたどると、意味の違いが活用に表れていたのです。
出典:村田菜穂子「両活用(ク活用・シク活用)形容詞について」甲南国文 第41号(甲南女子大学日本語日本文化学会, 1994年)
