竹取物語ってどんな話?
多くの人が知っているのは 「かぐや姫」のあらすじです。実は『竹取物語』の本来の名前は決まっておらず、「竹取の翁の物語」とも呼ばれます。
あらすじ
- 竹取の翁が竹の中から光る小さな女の子を見つける。
- 女の子はあっという間に成長し、絶世の美女になる。
- 5人の貴公子がプロポーズするが、姫は 難題を出して全員失敗させる。
- 帝(天皇)すら断る。
- 最後、姫は 月の世界に帰っていく。
姫が月から来た存在で、月に帰るというSF的な要素。難題で求婚者を退ける賢さ。「人間ではない存在」と「人間社会」が交差する構造。これらが 後の物語に大きな影響を与えました。
冒頭文を読む
原文今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。
読みいまはむかし、たけとりのおきなというものありけり。
訳今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。
冒頭文を語句ごとに分解
| 語句 | 意味・働き |
|---|---|
| 今は昔 | 物語の語り出しの決まり文句。「今となっては昔のことだが」。 |
| 竹取の翁 | 「たけとりのおきな」と読む。「翁」は老人。 |
| いふ | 動詞「いふ」(言う)。読みは「いう」。 |
| 者 | 人。 |
| ありけり | 「あり」(動詞・存在)+「けり」(過去の助動詞)。「あった」「いた」。 |
「ありけり」── 過去を表す古文の文末
古文では、物語の文末によく 「けり」 が出てきます。意味は「〜た」(過去)。
ありけり → 「あった」「いた」
言ひけり → 「言った」
行きけり → 「行った」
「けり」は 伝聞の過去(聞いた話を語る)にも使われ、物語に独特の語り口を作る。
続く一文:竹の中で出会う
原文野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
読みのやまにまじりてたけをとりつつ、よろずのことにつかいけり。
訳野山に分け入って竹を取っては、いろいろなことに使っていた。
翁の正体がここで明かされる:竹を取って暮らしを立てる老人。「野山にまじりて」は 「野山に分け入って」と訳します。
5人の求婚者と難題
かぐや姫に求婚した5人の貴公子と、姫が出した 難題。これは「ありえないものを持ってこい」という形になっています。
| 求婚者 | 難題 |
|---|---|
| 石作の皇子 | 仏の御石の鉢 |
| 車持の皇子 | 蓬莱の玉の枝 |
| 阿倍の右大臣 | 火鼠の皮衣 |
| 大伴の大納言 | 龍の首の珠 |
| 石上の中納言 | 燕の子安貝 |
全員 失敗します。中には偽物を作ったり、嘘をついたりする人もいて、当時の貴族社会への 皮肉が込められています。
月へ帰る ── 終わりの場面
姫は最後、月の使者が迎えに来て、地上を去ります。翁・嫗(おうな=老婆)が泣きすがり、かぐや姫も翁を「いとほし」「かなし」と思います。しかし天の羽衣を着せられると、地上への物思いが消え、月へ昇ってしまいます。
姫は月へ帰る前に、不死の薬と手紙を残す。
帝は「姫のいない世界で永遠に生きたくない」と、薬を 富士の山で焼かせる。
煙が立ちのぼる山 → 「不死の山」 = 「富士山」の名前の由来として書かれている。
羽衣は「気持ちを消すもの」として描かれる。ここを押さえると、翁と別れる悲しさがより分かる。
「物語の祖」と呼ばれる理由
『竹取物語』は 日本に現存する最古の物語。源氏物語の作者・紫式部は、自著の中で「物語の出で来はじめの祖(おや)なる竹取の翁」と書いており、竹取物語を物語ジャンルの始まりと認めています。
- 成立:平安時代前期(9世紀末〜10世紀初頭ごろ)
- 作者:不明(一説に紀貫之、僧侶など)
- ジャンル:作り物語(伝奇)
- 後への影響:『源氏物語』をはじめとする平安物語の祖
教科書で確認した作品背景
- 『竹取物語』は、かぐや姫の物語として知られる日本最古級の物語文学。
- 冒頭は「今は昔」で始まり、語り手が昔話として物語の世界へ読者を導く。
- 蓬莱の玉の枝など、求婚者への難題は人物の欲や虚栄を映す場面として読む。
- 「ありけり」は昔のことを語る文末だが、物語の始まりの合図でもある。
- 翁が見つける場面、求婚者の場面、月へ帰る場面で、物語の調子が変わる。
この章でつまずきやすいところ
『竹取物語』は古文の語り出しや助動詞、物語の流れがいっぺんに出てくる単元です。本文を読んでいる途中で「これ現代語のまま読んでいいの?」と止まってしまう場面を、つまずきとして整理します。
「いふ」を表記のまま「いふ」と読んでしまう
- つまずく場面:「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。」を音読する途中で、「いふ」の部分でつまずく。歴史的仮名遣いを現代仮名遣いに直す手順を忘れて、そのまま「いふ」と発音し、「ふ」のままでよいのか不安になる。
- 克服のコツ:語中・語尾の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「わ・い・う・え・お」に直すというルールで見分ける。位置関係でいうと、語の頭以外の「ふ」は「う」に変換する。「いふ」→「いう」、「使ひけり」→「使いけり」のように、語中なら必ず置きかえると決めておくと迷わない。
- ミニ例:「いふ者」は読みでは「いうもの」。同じ理屈で「野山にまじりて」の「使ひけり」も「つかいけり」と読む。
「今は昔」を「今の話」だと思い込んでしまう
- つまずく場面:冒頭の「今は昔」を見て、「今」という字につられて現代の話だと感じてしまう。次の「竹取の翁」と合わせて読むと話がかみ合わず、「えっ、今なのに昔の人?」と読みが止まってしまう場面。
- 克服のコツ:「今は昔」は昔語りを始めるときの決まり文句と覚える。時系列でいうと、語り手が立っているのは「今」だが、これから語る出来事は「昔」に置かれている。「今となっては昔のことだが」と訳す合図だと押さえれば、現代の話と読み違えない。
- ミニ例:「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。」=「今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた」。物語の入り口を示すサインとして読む。
「ありけり」を「ある」とだけ訳してしまう
- つまずく場面:「竹取の翁といふ者ありけり」を訳す途中で、「あり」までは「ある」と気づくが、後ろの「けり」を訳に入れ忘れる。結果として「竹取の翁という者がある」と現在形で訳してしまい、昔話の雰囲気が出ない。
- 克服のコツ:「けり」は過去・伝聞を表す助動詞で、物語の文末に多く出ると整理する。因果関係でいえば、「けり」が付くから昔の出来事として語られる、という関係。「あり+けり」=「いた・あった」とセットで覚え、文末の「〜けり」を見たら過去で訳すクセをつける。
- ミニ例:「ありけり」→「いた/あった」、「言ひけり」→「言った」、「使ひけり」→「使っていた」。文末のけりを見つけたら過去のサインと判断する。
かぐや姫を普通の人間として読んでしまう
- つまずく場面:あらすじを追う途中で、かぐや姫が竹から生まれ、急に成長し、最後に月へ帰るという流れに違和感を持ち、「ふつうの女の人の話」として読み進めてしまう。すると終盤の「月の使者」「天の羽衣」の場面で意味がつながらなくなる。
- 克服のコツ:かぐや姫は最初から月の世界の存在として描かれていると押さえる。因果関係で読むと、〈月から来た→人間社会で育つ→難題で求婚を断る→月へ帰る〉とつながる。教科書では「人間ではない存在と人間社会が交差する物語」と整理されることが多い。
- ミニ例:終盤で姫は「天の羽衣」を着せられると地上への物思いが消え、月へ昇る。普通の人間ではなく月の世界の住人として描かれていると読むと、別れの場面の意味がつながる。
練習問題
答えを見る
いまはむかし、たけとりのおきなというものありけり。
変換ポイント:「いふ」→「いう」(語中「ふ」→「う」)。他はそのまま。
- 翁
- あり
- けり
- よろづ
答えを見る
(1) 老人(男性)
(2) ある/いる(存在)
(3) 〜た(過去・伝聞の助動詞)
(4) いろいろ・万(よろず)
答えを見る
どれも実在しない、または手に入らない品ばかりだった。だから5人とも失敗するか、偽物を作って暴かれることになった。これによって姫は 結婚を断る意図だった。
まとめ
- 『竹取物語』は日本に現存する 最古の物語。平安時代前期に成立、作者不明。
- 冒頭は「今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。」── 古文の語り出しの典型。
- 「けり」は過去・伝聞を表す助動詞。物語の文末によく出る。
- 5人の求婚者に 難題を出して断る構造、月へ帰る終末は、当時としても新鮮な物語の型。
- 富士山の名の由来(不死の山)が物語に書かれている。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
月へ行った探査機の名は「かぐや」発展
JAXA(宇宙航空研究開発機構)が2007年に打ち上げた月周回衛星SELENEには、月へ帰るかぐや姫にちなんで「かぐや」という愛称がつけられました。月の起源と進化を調べるのが目的で、2機の子衛星は翁・嫗にちなみ「おきな」「おうな」と名づけられています。
富士山の名と世界文化遺産実生活
『竹取物語』では、不死の薬を山頂で焼いたことが「不死(ふじ)の山」の由来として語られます。その富士山は2013年、信仰と芸術の源として「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」の名でユネスコ世界文化遺産に登録されました。物語の中の山が、今も日本の象徴であり続けています。
「かぐや」「竹取の翁」は物語より古い書物にも発展
「かぐや」の名は奈良時代の『古事記』に「迦具夜比売命」として、「竹取の翁」の名は『万葉集』巻第十六にも登場します。これらは『竹取物語』より古く、直接のつながりは不明ですが、物語が生まれる土台にこうした古い伝えがあったことがうかがえます。
「物語の祖」と呼ばれた理由発展
『竹取物語』は9世紀末から10世紀初めごろに成立し、現存する限り日本最古の物語文学とされます。『源氏物語』の中でも「物語の出で来はじめの祖(おや)」と書かれており、紫式部の時代から、これが物語というジャンルの始まりだと認められていたことが分かります。
海外のそっくりな話とSFのような世界観発展
中国・四川省のチベット族には、竹から女の子が生まれ、求婚者に難題を出す『斑竹姑娘』というよく似た話が伝わっています。また、月から来て月へ帰る設定は「宇宙人説」が語られるほどSF的で、その世界観は映画や演劇など現代の作品にも受け継がれています。
