なぜ「負の数」を考えるの?
小学校では、3 − 5 のような計算は「できない」と習いました。引かれる数より引く数のほうが大きいからです。でも、現実の世界では「マイナス」の場面はたくさんあります。
- 気温:今朝はマイナス3℃だった。
- 標高・水深:山頂は1000m、海底は−500m。
- 金銭:1000円借りた → −1000円の収支。
- 得点:ゲームで100点失った → −100点。
こういった 「0より小さい状態」 をきちんと数で表すために、中学では数の世界をひろげます。
正の数と負の数:記号で表す
※ +は省略してもよい(「3」と書けばそれは+3を意味する)。
※ こちらは 必ず − を書く(省略不可)。
- 0は 正の数にも負の数にも含まれません。プラスでもマイナスでもない、特別な数。
- 「正の数・0・負の数」の3つで、すべての数をカバーすると考えてください。
反対の性質を1つの式で
負の数の威力は、反対の性質をもつ2つの量を、1つの数として表せる こと。
たとえば「東への移動を正、西への移動を負」と決めれば、「東へ5m進んでから西へ3m戻った」という動きを (+5) + (−3) = +2 という1つの式で表せます。これが、これから学ぶ 正負の数の計算のテーマです。
「基準とのちがい」を表すのにも便利
もう一つ大事な使い方が、「基準からどれだけ離れているか」 を表すこと。
- テストの平均点が60点。Aさんが65点なら、平均より +5点。Bさんが55点なら −5点。
- 製品の重さが平均500g。出荷時の表示で +2、−1 のように、平均からのズレを記録する。
「基準=0」と置いて、そこから上か下かを正負で表す ── これは中学・高校の数学・理科でずっと使う考え方です。
- 「東へ進む」⇔「西へ進む」のような 反対の性質は、片方を正、もう片方を負で表せる。
- どちらを正にするかは 自由に決めてよい(問題ごとに決める)。
- 「基準より大きい/小さい」も正負で表せる。
この章でつまずきやすいところ
負の数は読みながら一瞬で理解できる単元ではなく、数直線のどちら向きか・絶対値と数そのものはどう違うかなど、本文を読んでいる途中で迷う場面が必ず出てきます。ここでは、説明文を読み進めるその場で起きやすい4つの迷いを取り上げます。
「−5は−2より大きい」と思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「数直線では右に行くほど大きい」を読んだ直後でも、いざ−5と−2を比べると「5の方が大きいから−5の方が大きいのでは?」と一瞬迷う場面。数字の見た目に引きずられて、符号付きの大小が逆転して見えてしまう。
- 克服のコツ:位置関係で判断するのがコツ。符号付きの数は「数直線のどこに置くか」で決まる。数直線では右に行くほど大きい、左に行くほど小さい。だから−5は−2より左にあるので−5の方が小さい。数字の見た目ではなく、数直線のどちら側にあるかで判断する。
- ミニ例:数直線をイメージして、−5、−2、0、+2、+5 を左から順に並べる。右にあるほど大きいので、−5 < −2 < 0 < +2 < +5。「数字の見た目」ではなく「位置」で判断する。
絶対値と数そのものを同じだと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「絶対値は0からどれだけ離れているか」を読んだあと、|−5|=5 という式を見て「じゃあ −5 = 5 でいいのかな?」と読み進めながら迷う場面。符号を外していい場面と外してはいけない場面が混ざって見える。
- 克服のコツ:見分け方は、絶対値の記号 | | が付いているかどうか。| | の中身は「0からの距離」だけを取り出すので符号が消える。一方、記号がない −5 は位置を表す数そのものなので、符号を消したら別の数になってしまう。距離と位置は別物、と整理する。
- ミニ例:|−5|=5 は「−5は0から5だけ離れている」という意味で、距離の話。−5=5 ではない。−5と+5は数直線上で別の場所にあり、|−5|=|+5|=5 だけが等しい。
負の数を「存在しない数」「計算できない数」と思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の負の数の導入を読んだ直後、「小学校では大きい数から小さい数しか引けないと習ったのに」という前提が頭にあり、3−5=−2 という結果を見て「やっぱり本当はおかしいのでは?」と立ち止まってしまう場面。負の数が抽象的に見えて、現実に何を表しているのか結び付かない。
- 克服のコツ:因果関係で整理するのがコツ。0を基準にして「反対向きの量」を表すために負の数が必要になった、という流れ。気温・標高・収支のように反対の性質が現実にあるから、負の数を使うと1つの式で書ける。「存在しない」ではなく「基準より下を表すための数」と捉える。
- ミニ例:今朝の気温が0℃より3℃低ければ −3℃、海面より500m低ければ −500m。3−5=−2 も「基準より2だけ下」を表していて、現実の場面にきちんと対応している。
正の符号「+」を必ず書かないといけないと思い込んでしまう
- つまずく場面:正の符号は省略してよいという説明を読んだ直後、答えとして数を書くときに「+を省くとバツになるのでは?」と手が止まる場面。正と負で扱いが違うことが、読みながらだとつかみにくい。
- 克服のコツ:見分け方は、符号が「省略できる側」か「省略できない側」か。数学の表記規則として+(正)は省略可、−(負)は省略不可と整理する。「3」と書けば自動的に+3の意味になるが、「5」と書いて−5の意味にすることはできない。負だけは必ず−を付ける、と覚える。
- ミニ例:文章題で「収入を正・支出を負」と決めたとき、「3000円の収入」は +3000 でも 3000 でも正解。一方「1500円の支出」は −1500 と書く必要があり、「1500」とだけ書くと+1500の意味になり「収入1500円」と読まれてしまう。
練習問題
- 0℃より7℃低い温度
- 海面より50m低い場所
- 3000円の収入
- 1500円の支出(収入の反対)
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(1) −7℃
(2) −50m
(3) +3000円(または 3000円。+は省略可)
(4) −1500円(収入を正としたので、その反対は負)
- Aさん:72点
- Bさん:53点
- Cさん:60点
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(1) Aさんは平均より12点高いので +12
(2) Bさんは平均より7点低いので −7
(3) Cさんは平均そのものなので 0(正でも負でもない)
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解答例:0は正の数でも負の数でもない、特別な数である。正の数は0より大きい数、負の数は0より小さい数と定義されているため、0自身はそのどちらにも当てはまらない。すべての数は「正の数・0・負の数」の3つに分けられる。
まとめ
- 0より大きい数を 正の数(+をつけるが省略可)、0より小さい数を 負の数(必ず−をつける)と呼ぶ。
- 0は正でも負でもない。
- 負の数を使うと、反対の性質(東⇔西、上⇔下、収入⇔支出)や 基準とのちがい(平均よりプラス/マイナス)を1つの式で表せる。
- どちらを正にするかは問題ごとに自由に決める。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
日本一の寒さ「−41.0℃」は負の数実生活
気象庁の観測記録では、日本の最低気温は1902年1月25日に北海道の旭川で観測された−41.0℃です。0℃を基準に、それより41度も低い寒さを「−」をつけた負の数で表しています。100年以上たった今もこの記録は更新されていません。
海より低い土地「海抜ゼロメートル地帯」実生活
海面の高さを0mと決めると、それより低い土地は標高を負の数で表せます。愛知県の濃尾平野などには、地面が海面より低く、一部は海面より3mも低い「海抜ゼロメートル地帯」が広がっています。だからこそ、ふだんから排水ポンプや堤防で水害に備えています。
世界で一番低い陸地・死海は海抜−422m実生活
標高は海面を0mとした基準からの高さなので、海より低い場所は負の数になります。中東にある湖「死海」の湖面は海抜−422mで、世界で最も低い場所として知られています。山の高さ(正の数)も谷の低さ(負の数)も、同じ0mを基準にして1つの数直線で表せます。
深さ約1万mの海底も負の数で表せる実生活
海の深さも、海面を0mとすれば下向きに負の数で表せます。世界一深いマリアナ海溝の最深部はおよそ−10,983mで、2017年にはJAMSTEC(海洋研究開発機構)が水深8,178mで魚の撮影に成功しました。標高+800mと深海−8,178mのように、上下の量を同じ基準でくらべられます。
負の数には「これ以上下がれない下限」がある発展
気温の負の数はどこまでも小さくできそうですが、実は−273.15℃(絶対零度)より低い温度は存在しないと考えられています。これは物質の熱運動(原子の動き)が最小になった状態だからです。数直線では負の数はかぎりなく続きますが、現実の量には下限がある場合もある、という発展的な見方です。
