新ルール:減法は加法に直す
a − b = a + (−b)
具体的には:
- +□ を引く → −□ を足す に書き換え
- −□ を引く → +□ を足す に書き換え
つまり 減法専用の複雑な計算を作る必要はありません。「ひき算 → ひく数の符号を変える → たし算」というワンステップで、前回の加法に持ち込めます。
減法は「差」を求める計算
小学校のひき算 5−3 は、「何に3をたすと5になるか」を求める計算とも考えられます。
□ + 3 = 5
この □ に入る数が 5−3 の答え。
だから 5−3 = 2。
正負の数でも同じです。たとえば (+5)−(+3) は、□+(+3)=+5 の □ を求める計算です。+3 と逆向きで同じ大きさの移動は −3 なので、□ は (+5)+(−3) で求められます。
- a−b は「bをたすとaになる数」を求める計算。
- そのため、bを打ち消すには bと反対の符号の数を使う。
- だから「bを引く」は「−bを足す」と同じになる。
具体例で見る
ひく数 +3 の符号を反対にして −3、減法を加法に変える
= (+5) + (−3)
異符号の加法、絶対値の差5−3=2、符号は+
答え:+2 (小学校のひき算と同じ結果)
ひく数 +5 の符号を反対にして −5
= (+3) + (−5)
異符号の加法、絶対値の差5−3=2、符号は−
答え:−2 (小さい数から大きい数を引けるように!)
ひく数 −3 の符号を反対にして +3
= (+5) + (+3)
同符号の加法、絶対値の和5+3=8、符号は+
答え:+8 (負の数を引くと「増える」!)
ひく数 −7 の符号を反対にして +7
= (−4) + (+7)
異符号、絶対値の差7−4=3、符号は+(+7のほうが絶対値大)
答え:+3
「マイナスを引くと増える」のイメージ
例3の (+5) − (−3) = +8 は、初見だと違和感があるかもしれません。「マイナスを引くのに、なぜ大きくなる?」と。
つまり「引き算 = 反対の向きの数を足す」と読み替えると、ピタッとはまります。
- +3 を「引く」= −3 を「足す」
- −3 を「引く」= +3 を「足す」 ← ここがポイント
- 符号を変えるのは「引かれる方ではなく、引く方」。 (+5) − (−3) なら、−3 のほうの符号を変えて +3 にする。+5 はそのまま。
- たし算に直してから計算する:いきなり暗算せず、「引く → 符号を反対にして足す」と1行書くと間違いにくい。
- 0 を引く:a − 0 = a(変わらない)/0 から引く:0 − a = −a(符号が逆になる)
練習:ひき算を加法に書き換える
慣れるまでは、計算する前に 必ず加法のかたちに書き換えるのがおすすめです。
(+8) − (+3) = (+8) + (−3) = +5
(+8) − (−3) = (+8) + (+3) = +11
(−8) − (+3) = (−8) + (−3) = −11
(−8) − (−3) = (−8) + (+3) = −5
この章でつまずきやすいところ
正負の数の減法は、計算の途中で「どの符号を変えるんだっけ」「マイナスを引くと増えるのはなぜ」と手が止まりやすい単元です。問題を見ている最中に起こる典型的な迷いを、判断ポイントとセットで整理します。
符号を変えるのは引く数なのに引かれる数まで変えてしまう
- つまずく場面:(+5)−(−3) を見て「マイナスがあるから両方ひっくり返す」と思い、(−5)+(+3)=−2 と書いてしまう。式を写した直後に、どちらの数の符号を変えるべきか迷って手が止まる場面。
- 克服のコツ:減法記号と数の符号を区別する。真ん中の「−」が減法の記号で、その右にある括弧の中の数が引く数。引く数の符号(+か−か)だけを反対にする。左側の引かれる数は、符号も含めて最後まで触らない。
- ミニ例:(+5)−(−3) では、引く数は括弧の中の −3。その符号だけを反対にして +3、左の +5 はそのまま。だから (+5)+(+3)=+8。
「マイナスを引く」を必ず小さくなる操作だと思い込む
- つまずく場面:本文の (+5)−(−3) を見て、「ひき算なんだから答えは +5 より小さくなるはず」と感じる。5−3=2 だから答えは +2、もしくは「マイナスを引く」のだから −2 だと考えて手が止まる場面。小学校のひき算のイメージが残り、結果が増えることに違和感を持って先に進めない。
- 克服のコツ:因果関係でとらえ直す。「引く」は反対向きの数をたすと読み替える。−3 を引くということは、−3 を打ち消す動きなので、結果として +3 をたすのと同じ。「ひき算=必ず減る」は小学校までのルールだと意識する。
- ミニ例:(+5)−(−3) は (+5)+(+3) と書き換えてから計算する。同符号の加法で 5+3=8、符号は +、答えは +8 となる。
減法を加法に直す前に暗算して符号の連続を読み違える
- つまずく場面:(−4)−(−7) を見て、加法に直さずに「マイナスとマイナスをそのまま足して」−4−7=−11 としてしまう。引く数 −7 を負のまま足してしまい、なぜそうなるか説明できないまま次の問題に進もうとする場面。
- 克服のコツ:時系列で1ステップずつ進める。まず「引く数の符号を反対にする」だけを行い、加法の式を1行書く。それから「同符号か異符号か」を判断して計算する。途中式を省くと、符号の連続を逆向きに読みやすい。
- ミニ例:(−4)−(−7) → 引く数 −7 を +7 にして (−4)+(+7)。異符号なので絶対値の差 7−4=3、絶対値の大きい +7 の符号で +3。
0 がからむと「何もしない」と「符号が逆になる」を混同する
- つまずく場面:問題で 0−(−5) と (−8)−0 が並んでいて、「0 が出てきたら答えはそのまま」と思って両方とも 0 や元の数のままにしてしまう。0 を引くのか 0 から引くのかで結果が変わることに気づかず、迷い続ける場面。
- 克服のコツ:位置関係で区別する。0 が引かれる側(左)にあるときは、引く数の符号を反対にして 0 にたすので符号が逆転する。0 が引く側(右)にあるときは、0 を引くことは 0 をたすのと同じだから、元の数は変わらない。左右どちらに 0 があるかを最初に見る。
- ミニ例:0−(−5) は 0+(+5)=+5(引く数 −5 の符号が反対になって +5 になり、それを 0 にたす)。一方 (−8)−0 は (−8)+0=−8(0 をたすので変わらない)。
練習問題
- (+7) − (+4)
- (+3) − (+9)
- (+5) − (−2)
- (−6) − (+4)
- (−7) − (−10)
答えを見る
(1) (+7)+(−4) = +3 → +3
(2) (+3)+(−9) = −6 → −6
(3) (+5)+(+2) = +7 → +7(マイナスを引くと増える)
(4) (−6)+(−4) = −10 → −10
(5) (−7)+(+10) = +3 → +3
- 0 − (+5)
- 0 − (−5)
- (−8) − 0
答えを見る
(1) 0 + (−5) = −5
(2) 0 + (+5) = +5
(3) (−8) + 0 = −8(変化なし)
- (+6) − (+2)
- (+2) − (−4)
- (−3) − (+5)
答えを見る
(1) □+(+2)=+6。□=(+6)+(−2)=+4
(2) □+(−4)=+2。□=(+2)+(+4)=+6
(3) □+(+5)=−3。□=(−3)+(−5)=−8
答えを見る
「最後 − 最初」で変化を求める:(−5) − (+3) = (−5) + (−3) = −8
答え:気温は8℃下がった(変化は −8℃)。
※ 「下がった」と聞かれたら、変化の絶対値8℃でも答えとして正しい。
まとめ
- 減法のルール:ひく数の符号を反対にして、加法に直す(a − b = a + (−b))。
- 減法の結果は 差。a−b は「bをたすとaになる数」を求める計算。
- これだけで、すべての減法は前回学んだ加法のルールで解ける。
- マイナスを引くとプラスを足すと同じ ── 結果は増える。
- 慣れるまでは、計算前に必ず「加法のかたち」に書き換えてから進める。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
気温差は「あとの気温−さきの気温」で求める実生活
天気予報でよく聞く「気温の変化」は、減法そのものです。たとえば朝が +3℃ で夜に −5℃ まで下がったとき、変化は (−5)−(+3)=−8 で「8℃下がった」と分かります。ひく数の符号を変えてたし算に直せば、マイナスをまたぐ気温差も正しく計算できます。
日本の最高気温と最低気温の「差」を引き算する発展
気象庁の観測では、日本の歴代最高気温は2025年8月5日の群馬県伊勢崎の +41.8℃、歴代最低気温は1902年1月25日の北海道旭川の −41.0℃ です。その差は (+41.8)−(−41.0)=82.8℃ で、マイナスを引くと値が大きくなる減法のよい例になります。
標高は海面を0mとした「引き算」で表す実生活
国土地理院は、東京湾の平均海面を 0m の基準として土地の高さ(標高)を決めています。海面より高い場所はプラス、低い場所はマイナスで表され、2地点の高さの差は減法で求められます。基準を0として上下を正負で表す考え方は、数直線上の引き算とまったく同じです。
海面より低い場所と深い海――マイナスの引き算で高低差を測る発展
JAMSTEC(海洋研究開発機構)の探査機「かいこう」は、世界一深いマリアナ海溝チャレンジャー海淵の水深 約10,911m(海面を0mとすると −10,911m)に到達しました。海面より高い山や低い海底の高低差も、(高い方)−(低い方) という減法で求められ、負の数を引く計算が現実の測量で使われています。
富士山の頂上と深海底の高低差を引き算で求める発展
海面を0mとすると、富士山の標高は国土地理院により +3,776m とされています。一方、マリアナ海溝チャレンジャー海淵の海底は約 −10,911m です。両者の高低差は (+3,776)−(−10,911)=14,687m となり、負の数を引くと差がとても大きくなることが実感できます。
