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正負の数の乗法 ── 符号のルールはなぜそうなる?

「マイナスとマイナスをかけるとプラス」── ピンとこないこのルール、丸暗記じゃなくて理由から納得しましょう。符号は別、絶対値は別に計算するというシンプルな手順を身につければ、3つ以上の積もスラスラ解けます。

乗法の符号ルール

教科書では、東西にのびる道を歩く場面で乗法を考えます。東への速さを正、西への速さを負、また 現在より後の時間を正、現在より前の時間を負 と決めます。

速さ × 時間として読む

(+4)×(+2):東へ時速4kmで、現在より2時間後 → 東へ8km → +8

(+4)×(−2):東へ時速4kmで、現在より2時間前 → 西へ8km → −8

(−4)×(+2):西へ時速4kmで、現在より2時間後 → 西へ8km → −8

(−4)×(−2):西へ時速4kmで、現在より2時間前 → 東へ8km → +8

このように見ると、符号の4パターンはただの暗記ではありません。向きが同じ性質なら正、反対の性質なら負になると考えられます。

乗法のルール
符号は2段階で決める

2つの数のかけ算で:

  • 同符号どうし(+×+ または −×−) → 答えの符号は +
  • 異符号どうし(+×− または −×+) → 答えの符号は −
  • 絶対値は普通にかけ算
乗法の符号は4パターン 符号の組み 例 答えの符号 (+) × (+) (+3)×(+4)=+12 +(プラス) (−) × (−) (−3)×(−4)=+12 +(プラス) (+) × (−) (+3)×(−4)=−12 −(マイナス) (−) × (+) (−3)×(+4)=−12 −(マイナス)
図1:乗法の符号は同符号→+、異符号→−

なぜ「マイナス×マイナス=プラス」?

もっとも納得しづらいのが (−3) × (−4) = +12。1つの説明として:

パターンで考える

(+3) × (+4) = +12

(+2) × (+4) = +8 (−4ずつ減る)

(+1) × (+4) = +4

(0) × (+4) = 0

(−1) × (+4) = −4

(−2) × (+4) = −8

(−3) × (+4) = −12 ← 異符号 → −

次は かける数を変える方向で考える:

(−3) × (+4) = −12

(−3) × (+3) = −9 (+3ずつ増える)

(−3) × (+2) = −6

(−3) × (+1) = −3

(−3) × (0) = 0

(−3) × (−1) = +3

(−3) × (−2) = +6

(−3) × (−3) = +9

(−3) × (−4) = +12 ← 同符号 → +

「+3ずつ増える」という規則性を 負の数まで続けるとそうならざるを得ない、というわけです。

−1をかけると符号が変わる

乗法でよく使う見方が、−1をかけることは符号を反対にすることです。

重要
−1倍は符号を反対にする
  • (−1)×(+6) = −6
  • (−1)×(−6) = +6
  • −(−3) は、(−1)×(−3) の意味なので +3

「マイナスが前につくと符号が反対になる」という感覚は、この −1倍の考え方で説明できます。

計算手順:符号を先に決める

正負の数の乗法は 2段階で:

  1. 符号を決める ── 同符号なら+、異符号なら−
  2. 絶対値をかける ── 普通のかけ算

例:(+6) × (−7) → 異符号なので − / 絶対値の積 6×7=42 → −42

例:(−9) × (−5) → 同符号なので + / 絶対値の積 9×5=45 → +45

例:(−3) × (+8) → 異符号なので − / 絶対値の積 3×8=24 → −24

0 があるとき

どんな数でも 0 をかけると積は 0 です。符号を考える前に、式の中に0があれば答えは0になります。

3つ以上の数の積:負の符号の数を数える

3つ以上の数をかけるときも、ルールは「同符号ペアごとに+、異符号ペアごとに−」なのですが、もっと簡単な方法があります。

3つ以上の積の符号ルール
負の数の個数で決まる
  • 負の数が 偶数個(0個・2個・4個…) → 答えは +
  • 負の数が 奇数個(1個・3個・5個…) → 答えは −

例1:(+2)×(−3)×(+4) ── 負の数1個(奇数)→ − / 絶対値積 2×3×4=24 → −24

例2:(−2)×(−3)×(+4) ── 負の数2個(偶数)→ + / 絶対値積 2×3×4=24 → +24

例3:(−2)×(−3)×(−4) ── 負の数3個(奇数)→ − / 絶対値積 2×3×4=24 → −24

3つの法則(小学校から続く)

正負の乗法でも次の法則が成り立ちます:

  • 交換法則:a × b = b × a
  • 結合法則:(a × b) × c = a × (b × c)
  • 分配法則:a × (b + c) = a × b + a × c

これらを使って計算を楽にできます。例えば計算の 順番を入れ替えてキリの良い数を作る:

例:(+25)×(−7)×(−4) = (+25)×(−4)×(−7) = (−100)×(−7) = +700

  ※ 25×4=100 を先にやれば暗算しやすい

この章でつまずきやすいところ

正負の数の乗法は「符号と絶対値を別に考える」のが鉄則。けれど本文を読み進めるなかで、符号のルールや3つ以上の積、−1倍の意味で立ち止まる人が多い場面です。読みながら迷いやすい4つの場面を整理します。

符号と絶対値を同時に処理しようとしてしまう

  • つまずく場面:(−9)×(−5) を見た瞬間、「マイナス×マイナスだから…えっと9×5は45で、符号は…」と頭の中で符号と数を一緒に動かして混乱し、ペンが止まる場面。
  • 克服のコツ:手順を時系列で分けるのがコツ。①まず符号だけ見る(同符号なら+、異符号なら−)、②そのあと絶対値だけかける、③最後に①の符号を②の数の前につける。本文の例も必ずこの2段階で書かれているので、書き写すときも上下に分けてメモすると迷わない。
  • ミニ例:(−9)×(−5) → ①同符号なので符号は+ ②絶対値は9×5=45 ③答えは+45。符号の判定と数のかけ算を別行に書くだけでミスが減る。

−1倍と「マイナスを前につけること」を別物だと思ってしまう

  • つまずく場面:本文に「−(−3) は (−1)×(−3) と同じ」と出てきたとき、「マイナス記号と×(−1) って同じなの?別の意味じゃない?」と立ち止まり、−(+5) の処理で迷ってしまう場面。
  • 克服のコツ:因果関係で結びつける。数の前のマイナス記号は「符号を反対にする操作」を表していて、その正体が×(−1)。だから「−が前についた」=「(−1)倍した」=「符号がひっくり返った」の3つはすべて同じこと。順番に置き換えて読むと迷いが消える。
  • ミニ例:−(+5) は (−1)×(+5) と読み替え → 異符号なので−、絶対値1×5=5 → −5。−(−8) も同じ手順で(−1)×(−8)=+8 になる。

3つ以上の積を「ペアごとに符号を決める」やり方で進めて迷子になる

  • つまずく場面:(−2)×(+3)×(−4) を解こうとして「最初の2つは異符号で−、次に−と+で…」と1個ずつ符号判定していくうちに、何個目を計算したか分からなくなってしまう場面。
  • 克服のコツ:位置関係でまとめて見るのがコツ。3つ以上の積では、式全体に並んでいる負の数の個数を数えるだけで符号が決まる。偶数個なら+、奇数個なら−。ペアごとに追わず、最初に式全体を眺めてマイナスにマルをつけて数える習慣をつけよう。
  • ミニ例:(−2)×(+3)×(−4) → 負の数は2個(偶数)なので符号は+。絶対値は2×3×4=24 → +24。先に符号を決めてしまえば残りはただのかけ算。

0が混じった式でも、つい符号判定から始めてしまう

  • つまずく場面:(−12)×0 や (−2)×0×(−4) のような問題で、「マイナスが何個あるから…」とまず符号を数えにかかり、絶対値のかけ算まで進めてから「あれ0だった」と気づく場面。
  • 克服のコツ:見分け方の優先順位を意識する。式を見たら、符号より前にまず0が混じっていないかを確認する。0が1つでも因数にあれば、ほかの符号や数に関係なく答えは0と決まる。符号判定はそのあとでよい。チェックの順番を固定すると迷いがなくなる。
  • ミニ例:(−2)×0×(−4) → 因数に0があるので、符号や絶対値を考えるまでもなく答えは0。(−12)×0 も同じ理由で0。

練習問題

問題1(基本)
次を計算しなさい。
  1. (+4) × (+6)
  2. (−5) × (+8)
  3. (+9) × (−3)
  4. (−7) × (−6)
  5. (−12) × 0
答えを見る

(1) 同符号 → +、絶対値積24 → +24

(2) 異符号 → −、絶対値積40 → −40

(3) 異符号 → −、絶対値積27 → −27

(4) 同符号 → +、絶対値積42 → +42

(5) どんな数でも 0 をかけたら 0

問題2(−1倍)
次を簡単にしなさい。
  1. (−1) × (+9)
  2. (−1) × (−12)
  3. −(−8)
  4. −(+5)
答えを見る

(1) −9

(2) +12

(3) −(−8) は (−1)×(−8) と同じ → +8

(4) −(+5) は (−1)×(+5) と同じ → −5

問題3(3つ以上の積)
次を計算しなさい。
  1. (−2) × (+3) × (−4)
  2. (−1) × (−2) × (−3)
  3. (+5) × (−4) × (−2) × (+3)
答えを見る

(1) 負の数2個(偶数)→ +、絶対値積 2×3×4=24 → +24

(2) 負の数3個(奇数)→ −、絶対値積 1×2×3=6 → −6

(3) 負の数2個(偶数)→ +、絶対値積 5×4×2×3=120 → +120

問題4(応用:交換)
次を、計算しやすい順序に組み替えてから計算しなさい。

(−25) × (+7) × (−4)

答えを見る

(−25)×(−4) を先に計算するとキリが良い。

(−25)×(−4) = +100、それに (+7) をかけて → +700

負の数2個(偶数)なので符号は+、絶対値の積25×7×4=700。

まとめ

  • 2つの数の乗法:同符号→+、異符号→−。絶対値は普通のかけ算。
  • 東西の移動で見ると、正負の乗法は「向き」と「時間の前後」を組み合わせた計算として理解できる。
  • −1をかけることは、符号を反対にすること。
  • 3つ以上の数の積は、負の数の個数で符号が決まる:偶数個→+、奇数個→−。
  • 0が1つでもかかっていれば、積は 0。
  • 交換・結合・分配の3法則は正負の数でも成立。
  • 計算しやすい順序に組み替えて、暗算しやすい数を作るとミスが減る。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

「負の数のかけ算」のルールは中国で生まれた発展

負の数を本格的に計算で使った最古の例の一つが、古代中国の数学書『九章算術』です。その第8章「方程」では負の数を使って連立一次方程式を解く方法が示され、「正負術」という符号のあつかい方の規則が記されています。今みなさんが学ぶ符号のルールは、二千年近く前から積み重ねられてきたものなのです。

出典:ウィキペディア「九章算術」

0や負の数の計算を整理したインドのブラフマグプタ発展

インドの数学者ブラフマグプタは628年の著作で、0や負の数をふくむ計算の方法を、現代の考え方にとても近い形で記しました。負の数を「ありえない数」として避けるのではなく、ふつうの数と同じように計算の対象にしたことが、後の数学を大きく前へ進めました。みなさんが今あつかう負の数の乗法も、この流れの上にあります。

出典:ウィキペディア「ブラフマグプタ」

「2乗するとマイナス」になる数 ── 虚数の世界へ発展

中学では「同じ符号どうしの積は必ず正」なので、ある数を2乗すると答えは0以上になります。ところが高校以上の数学では、2乗すると−1になる新しい数「虚数単位 i」(i²=−1)を考えます。これにより、ふつうでは解けない方程式まで解けるようになり、数の世界が大きく広がります。正負の符号ルールの先に、こんな発展があるのです。

出典:ウィキペディア「虚数単位」

標高の「0m」と海面より低い土地実生活

日本の標高は、国土地理院が東京湾の平均海面を0mと決め、そこからの高さで表します。これより高い場所はプラス、海面より低い土地はマイナスの値で表され、実際に大阪平野や濃尾平野などには海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」があります。基準を0とし、上下を正負で表す考え方は、正負の数そのものです。

出典:国土地理院「小学5年・6年のページ:標高と海抜と水準点」

風がふくと寒く感じる ── 体感温度と負の数実生活

同じ気温でも、風が強い日ほど寒く感じます。これは「体感温度」とよばれ、日本では俗に風速が1m/sふえるごとに体感温度が約1℃下がるといわれます。気温がもともと低い冬には、風によって体感温度がマイナスの大きな値になることもあり、寒さを数で表すときに負の数が役立ちます。

出典:ウィキペディア「体感温度」