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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

積の表し方 ── × は省略する

文字式では、かけ算の × をふつう書きません。「3×x」は 3x と書きます。なぜ省略するのか? どんなルールでスッキリ書くのか? ── このルールを覚えれば、文字式の見た目が一気に整理されます。

なぜ × を省略する?

文字 x と数字 3 をかける場合、「3×x」と書くと、文字 x と記号 × が 見間違いやすいのです。さらに、×をいちいち書くと式が長くなる。だから数学では、文字と数のかけ算では × を書かない という約束になっています。

「3×x = 3x」と書けば、見やすくて短い。これが世界共通の慣習です。

x と × を区別するための約束

教科書でも、文字 x と乗法の記号 × を区別するために、文字の混じった乗法では × を省くと説明します。省略は手抜きではなく、式を読みやすくするための正式なルールです。

4つのルール

積の書き方
4つのルール
  1. × を省略する 例:3×x → 3x、a×b → ab
  2. 数を文字の前に書く 例:x×3 → 3x(x3とは書かない)
  3. 同じ文字の積は累乗で 例:a×a → a2、x×x×x → x3
  4. 1や−1の係数は1を省略 例:1×a → a、(−1)×a → −a
積の書き方の例 元の式 省略後 使ったルール 5 × x 5x ①× 省略 y × 7 7y ②数を前に a × a × a a³ ③累乗 1 × b b ④1を省略 (−1) × c −c ④−1も1を省略
図1:積の書き方ルールの例

少し複雑な例

複数のルールを組み合わせる

例1:3 × x × y → 3xy (数を前、文字はアルファベット順)

例2:x × y × x → x2y (同じ x を累乗にまとめる)

例3:5 × a × a × b → 5a2b

例4:(−4) × x × y → −4xy

例5:x × 0.1 → 0.1x

例6:2 × 3 × x → 6x (数どうしを先に計算)

つまずきポイント
  • 数と数の積はそのまま:2 × 3 = 6 のように、数どうしのかけ算は計算結果を書く(× を省略するのは「数 × 文字」「文字 × 文字」のとき)。
  • 文字の順序:abやba と書く違いは答えに影響しないが、習慣として アルファベット順に書く(ab、xy、abc)と読みやすい。
  • 1の省略を忘れない:1×a を「1a」と書くのは × 。「a」 と書く。同様に −1×a は 「−a」。
  • 0の積は0:0 × x = 0(文字との積でも0なら0)。
  • 数どうしは先に計算:2×3×x は 23x ではなく、2×3を先に計算して 6x。

係数(けいすう)── 文字の前の数

用語
係数(けいすう)
文字式で、文字の前についている数。
例:3x の係数は 3 / −5y の係数は −5 / a の係数は 1(省略されている) / −x の係数は −1

後で出てくる「項をまとめる」計算では、係数の足し算・引き算がカギになります。

累乗の書き方の注意

累乗の指数は 右上に小さく書きます。1章で学んだ通りです。

  • x × x → x2(x の2乗)
  • a × a × a → a3(a の3乗)
  • 3 × a × a → 3a2(係数3 + a²)
  • (−2) × x × x × x → −2x3
(2x)2 と 2x2 は別物
  • (2x)2 = 2x × 2x = 2 × 2 × x × x = 4x2
  • 2x2 = 2 × x × x = 2x2
  • カッコがあれば 中身全体が累乗される。1章の (−3)2 と −32 の違いと同じロジック。

この章でつまずきやすいところ

積の表し方では「×を省く」「数を前に」「同じ文字は累乗」「1や-1は省略」の4つのルールが一気に出てきます。本文を追っている途中で混ざりやすいポイントを場面ごとに整理し、書き直すときの迷いをほどきます。

「2a」を「2+a」のような和だと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の「2aは2×aであり、20+aではない」を読み、急に「数と文字をくっつけて書く」表記に出会って、これは足し算なのかかけ算なのか迷う場面。abとa+bの違いも同時に出てきて頭の中が混ざる。
  • 克服のコツ:見分け方で整理する。数と文字がすき間なく並んでいたら積、間に+や-があれば和や差。文字式では×が省略されるルールがあるので、何も書いていない=かけ算、と読み替えるクセをつけると本文の式が一気に読めるようになる。
  • ミニ例:2a は 2×a(積)で、a=5なら10になる。2+a は 2 と a の和で、a=5なら7になる。同じ「2」と「a」でも、間に何もなければ積、+があれば和、と読み分ける。

「a×a」を「2a」と書いてよいと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の「同じ文字の積は累乗で表す」を読んでいる途中、a+a=2a の場面と a×a の場面が頭の中で混ざり、a×a も「aが2つだから2a」と書きたくなってしまう場面。加法と乗法の表記が同居していて混乱する。
  • 克服のコツ:因果関係で整理する。「同じものを足した回数」が前の数(係数)になり、「同じものをかけた回数」が右上の数(指数)になる。足し算は係数に乗り、かけ算は指数に乗る、と役割を分けて覚えると書き間違いが消える。
  • ミニ例:a+a=2a(aを2回足した→係数2)。a×a=a2(aを2回かけた→指数2)。同じ「2」でも、前に出るか右上に上がるかで意味がまったく違う。

「x×3」を「x3」と書いてもよいと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の例で 3×x=3x は素直に書けるが、順番が逆の x×3 に出会ったとき「順序を変えていいのかな」「x3って書いていいのかな」と一瞬手が止まる場面。かけ算は順序を入れ替えてよい、という算数の感覚と表記ルールがぶつかる。
  • 克服のコツ:位置関係で整理する。かけ算の順序は値を変えないので入れ替えてよい。ただし書くときは必ず「数を前、文字を後」に並べる。x3だと「xの3乗かな」「変数x3かな」と読み違えられるので、標準形にそろえる、と覚える。
  • ミニ例:x×3 は計算しても値は同じだが、書くときは 3x。2×3×x も数どうしを先にまとめて 6x と書く。「23x」と並べて書くのは禁止。

「-1×a」を「-1a」と書いてもよいと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の「1×a=a」は素直に納得できるが、続けて出てくる「-1×a=-a」で「1は省略するけどマイナスはどうする?」と迷う場面。1の省略ルールと符号の扱いが同時に出てきて、どこまで省くのかが分からなくなる。
  • 克服のコツ:見分け方で整理する。係数の「1」だけを省き、符号は必ず残す。プラスの1は丸ごと消えるが、マイナスの1は「1」だけ消えて「-」が文字の前に残る、と手順を分ける。-aを見たら「係数は-1」と読み戻す練習も効く。
  • ミニ例:1×a=a(1は消える)。(-1)×b=-b(1は消えるが - は残る)。-x の係数を聞かれたら -1 と答える。

練習問題

問題1(基本)
次の式を、文字式の表し方にしたがって書き直しなさい。
  1. 4 × x
  2. x × 7
  3. 1 × a
  4. (−1) × b
  5. a × b × c
  6. 2 × 3 × x
答えを見る

(1) 4x (2) 7x (3) a (4) −b (5) abc (6) 6x

問題2(累乗)
次の式を、累乗を使って書き直しなさい。
  1. x × x × x × x
  2. 3 × a × a
  3. 5 × x × y × x
  4. (−2) × a × a × a
答えを見る

(1) x4 (2) 3a2 (3) 同じxは累乗にまとめる → 5x2y (4) −2a3

問題3(係数を答える)
次の式の文字部分の係数を答えなさい。
  1. 5x
  2. −7a
  3. y
  4. −x
  5. (2/3)a
答えを見る

(1) 5 (2) −7 (3) 1(省略されている) (4) −1 (5) 2/3

まとめ

  • 文字式の積では × を省略する。
  • 4つのルール:①× を省略 / ②数を文字の前に / ③同じ文字は累乗 / ④1と−1の係数は1を省略。
  • 係数=文字の前についている数。a なら係数は1、−x なら係数は−1。
  • カッコの有無で意味が変わる:(2x)2 = 4x2、2x2 = 2x2。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

「×」の記号は約400年前に生まれた発展

かけ算の記号「×」は、イギリスの数学者ウィリアム・オートレッドが1631年に出版した著書『数学の鍵(Clavis Mathematicae)』で広めたとされます。文字式の歴史から見ると、×は決して大昔からあった記号ではなく、比較的新しい工夫なのです。

出典:MacTutor History of Mathematics (セント・アンドルーズ大学)

「×」を省くアイデアはライプニッツの不満から発展

微分・積分でも有名な数学者ライプニッツは、かけ算の「×」が文字のx(エックス)と見分けにくいと不満を書き残しました。教科書で『xと×を区別するために×を省く』と習うのは、約300年以上前から指摘されていた本物の理由なのです。

出典:MacTutor History of Mathematics (セント・アンドルーズ大学)

x や y を未知数に使うのはデカルトが決めた発展

「文字と式」で未知の数にx・y・zを使い、決まった数にa・b・cを使う習慣は、哲学者でもあった数学者デカルトが1637年の著書『幾何学(La Géométrie)』で広めたものです。同じ本で、くり返しのかけ算を右上の小さな数(指数)で表す累乗の書き方も整えられました。

出典:Wikipedia『La Géométrie』(英語版・出典付き)

表計算ソフトでは「×」を省略できない実生活

ExcelなどのコンピュータではA1×B1のように×を省いて書くことはできず、必ず「*」(アスタリスク)を使って=A1*B1と書く決まりです。手書きの文字式では×を省くのに、機械では逆に記号をはっきり書かないと計算してくれない、という違いが面白いところです。

出典:Microsoft サポート(Excelで掛け算・割り算をする)

並べて書く=かけ算、は世界共通のルール発展

3xのように数や文字をすき間なく並べてかけ算を表す方法は古くから使われ、ヨーロッパではドイツの数学者ミヒャエル・シュティーフェルが1544年の著書で用いたのが早い例とされています。その後、近代代数の記号化が進むなかで世界中の数学で共通のルールになりました。だから3xと書けば、どの国の人が見ても『3とxをかけた数』だと伝わるのです。

出典:Earliest Uses of Symbols of Operation (数学記号史データベース)