具体例:マッチ棒のパズル
マッチ棒で正方形をつくることを考えます。1個めの正方形にはマッチ4本必要。続きで横に並べると、2個めには3本足せばOK、3個めにも3本…。
規則を見ると、最初の1本に 3本ずつ追加 されています。x個のときは何本でしょうか?
- 1個:1 + 3×1 = 4 本
- 2個:1 + 3×2 = 7 本
- 3個:1 + 3×3 = 10 本
- x 個:1 + 3×x = 1 + 3x 本
「x個」と書くだけで、どんな個数のときにも当てはまる答え が1つの式で書けてしまう ── これが文字を使う最大のメリットです。
なぜ文字を使う? 3つのメリット
例:マッチ棒の本数 = 1 + 3x
品物の値段 a が変わっても、「2個分」という関係は 2a のまま。
文字に使うアルファベット
使う文字は何でも構いませんが、慣習的によく使われるのは:
- x, y, z:未知の数(これから求める数)
- a, b, c:与えられた数(決まっている定数)
- n:自然数や個数(number から)
- m:個数(n と並んで)
あくまで慣習なので、「文字は何を意味してもよい」のが原則。問題で「○○を x とする」と言われたら、その指定に従えばOK。
- 正方形の個数 x:1、2、3、… のような自然数を表す。
- テープの長さ a cm:0.5 や 12.3 のような小数も表すことがある。
- 気温の変化 x ℃:+3 だけでなく −4 のような負の数も表すことがある。
文字そのものに「必ず正」「必ず整数」という意味はありません。問題の場面から、どんな数を表すかを判断します。
文字を使った式の例
身近な例で、数量を文字式で表してみましょう。
例1:1個 100円のリンゴを x 個 買ったときの代金
→ 100 × x(円)
例2:縦 a cm、横 b cm の長方形の面積
→ a × b(cm²)
例3:時速60kmで t 時間 進んだときの距離
→ 60 × t(km)
例4:ある自然数 n に2を足した数
→ n + 2
例5:9時の気温が x ℃で、10時に3℃高くなったときの10時の気温
→ x + 3(℃)
- 文字式の 書き方のルール(× の省略、÷ の書き方)── 次回・次々回で詳しく
- 文字に数を 代入して値を求める方法
- 文字式どうしの 計算(加法・減法・乗法・除法)
- 関係を 等式・不等式で表す
これがそのまま3章「方程式」、4章「比例と反比例」へつながります。
この章でつまずきやすいところ
文字式は「数の代わりの記号」ですが、読みながら頭の中で具体的な数に置きかえようとして迷いが出ます。ここでは、本文を読み進める途中や、マッチ棒の規則を式にしようとしている途中で生じる、よくある引っかかりを取り上げます。
xには最初から特定の数が入っていると思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「マッチ棒 x 個のとき 1+3x 本」と出てきた瞬間、頭の中で「x=5かな?10かな?」と勝手に数を当てはめて、式の意味がぼんやりしてしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理します。「x は決まった数ではなく、これから変わる数の入れ物」。式は「x が何になっても成り立つ関係」を書いたものなので、まず関係そのものを読む、数を入れるのはそのあと、という順番を意識します。
- ミニ例:1+3x は「最初の1本に、3本ずつをx回足す」という関係。x=2 なら 1+3×2=7、x=5 なら 1+3×5=16 と、後から数を入れると本数が出ます。
3x を「3とxを並べただけ」と読んでしまう
- つまずく場面:マッチ棒の規則を式にする途中、「1+3x」を見て「1のうしろに3とxが続いているだけ」と感じ、何の計算なのかピンと来ず、x に数を入れる手が止まってしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で整理します。数と文字がくっついて書かれていたら、その間には「×」が省略されています。「3x」は「3 × x」、「2a」は「2 × a」。本文を読む途中で文字式が出てきたら、頭の中で一度「×」を入れて読み直すクセをつけます。
- ミニ例:1+3x は 1+3×x の意味。x=4 のときは 1+3×4=13 本。「3x」を「サンエックス」と読むと、3とxのかけ算であることが意識しやすくなります。
文字は必ず自然数や正の数を表すと決めつけてしまう
- つまずく場面:本文の例で「気温 x ℃」「テープの長さ a cm」と出てきても、頭の中で x=1,2,3… のような整数だけを想像してしまい、小数や負の数が入る場面にうまく対応できない場面。
- 克服のコツ:見分け方で整理します。文字が表す数の範囲は「文字そのもの」ではなく「問題の場面」が決めます。「個数なら自然数」「長さなら小数も」「気温の変化なら負の数も」と、その文字が何を表しているかを毎回確認してから値を考えます。
- ミニ例:正方形の個数 x は 1,2,3… の自然数。テープの長さ a cm は 12.3 のような小数もあり。気温の変化 x ℃ なら −4 のような負の数も入ります。
文字を使う必要性が分からず、具体的な数で書きたくなってしまう
- つまずく場面:本文を読みながら「マッチ棒の本数なら、1個4本、2個7本、3個10本と書けばよいのでは?」と感じ、わざわざ 1+3x という式にする意味が腑に落ちないまま読み進めてしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理します。「x 個のとき」と一言書けば、1個でも100個でも同じ式が当てはまるのが文字式の利点です。数字だけだと場合ごとに書き直しが必要ですが、文字を使うと関係そのものを1つの式に固定でき、後の代入・方程式につながります。
- ミニ例:100円のリンゴを買う代金は、3個なら 100×3、5個なら 100×5 と毎回書き直しが必要。x 個なら 100×x と書けば、x にどんな個数を入れても代金が出せます。
練習問題
- 1冊 a 円のノートを 5冊 買ったときの代金
- 底辺 x cm、高さ y cm の三角形の面積
- 時速 60 km で x 時間 走ったときの距離
- ある数 n の3倍より2小さい数
答えを見る
(1) a × 5(円)
(2) x × y ÷ 2(cm²) ※ 三角形の面積=底辺×高さ÷2
(3) 60 × x(km)
(4) n × 3 − 2 (または 3 × n − 2)
※ 次の記事からは、かけ算の記号を省略して 5a、xy/2、60x、3n−2 のように書きます。
答えを見る
1個目に4本、その後は1個増えるごとに3本ずつ増える。
1個:4本=1+3×1
2個:7本=1+3×2
3個:10本=1+3×3
x 個のとき:1 + 3 × x(本)
答えを見る
解答例:文字を使うと、いろいろな数のときに同じ計算が成り立つことを1つの式で表せる。たとえば、リンゴをx個買ったときの代金を「100 × x」と書けば、xが何個でもこの式が当てはまる。また、まだ分からない数を文字で置いておけば、それを使って計算を進めることができる。数量どうしの関係を、数字をいちいち変えずに、関係そのものとしてとらえられる点が大きな利点である。
まとめ
- 文字を使う3つのメリット:いろいろな数をまとめて表せる/関係を簡潔に書ける/未知の数を扱える。
- 慣習的によく使われる文字:x, y, z(未知数)/a, b, c(定数)/n, m(自然数・個数)。
- 「○個のとき」「ある数」のような 変わる量を文字に置いて、規則を1つの式で表す。
- これから学ぶ書き方のルール(× の省略、÷ の分数化)で、文字式はもっとスッキリ書けるようになる。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「代数」という言葉は1200年前のアラビアの本から生まれた発展
9世紀のバグダードで活躍した数学者アル=フワーリズミーが、未知の数を求める方法を書いた本のタイトル「アル・ジャブル」が、英語の代数(algebra)の語源になりました。さらに彼の名前そのものが、計算の手順を意味する「アルゴリズム(algorithm)」の語源にもなっています。文字を使って数を一般的にあつかう考え方には、こんなに長い歴史があるのです。
x が「分からない数」、a が「決まった数」になったわけ発展
未知の数を x・y・z、すでに分かっている数を a・b・c で表す習慣は、17世紀のフランスの数学者デカルトの書き方にならったものだと言われています。教科書で「未知数は x、定数は a」と紹介される慣習は、今からおよそ400年前に広まった約束ごとなのです。
文字には「とれる値の範囲」がセットでついてくる発展
数学では、変数には「変域(その文字がとりうる値の集合)」がいつも決まっていると考えます。正方形の個数なら1、2、3…の自然数、気温の変化なら負の数も含む、というように、文字そのものではなく問題の場面が範囲を決めます。文字を見たら「この文字はどんな数を表せるのか」を考える習慣が、上の学年でも役立ちます。
健康診断のBMIも「文字を使った式」そのもの実生活
肥満度を表すBMIは、体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求めます。体重を a、身長を b とすれば a÷(b×b) という1つの式で、だれの体重・身長を入れても計算できます。これはまさに「数量どうしの関係を文字でまとめて表す」例で、厚生労働省のサイトでもこの式が使われています。
表計算ソフトのセルの式は「文字式」とそっくり実生活
ExcelなどでC5やC10のようなセル番地を使って数式を書くと、数字を直接書く代わりに「どのセルの値か」という文字のような記号で計算できます。元の数を変えると答えが自動で計算し直される仕組みも、xに数を代入して値を求める文字式の考え方と同じです。仕事や研究で大量の計算をするときに欠かせない技術です。
