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代入と式の値 ── 文字に数を入れて値を出す

「文字式 3x + 1 で、x = 4 のときの値は?」── これに答えるのが 代入です。文字を具体的な数字に置き換えて、式の値を計算する作業。一見かんたんですが、負の数を代入するときカッコを忘れるのが定番のミス。今回はそこを丁寧に押さえます。

代入とは:文字を数に置き換える

用語
代入(だいにゅう)
文字式の文字を、具体的な数で置き換えること。
例:3x + 1 で x = 4 を代入 → 3 × 4 + 1 = 13
用語
式の値(しきのあたい)
代入して計算した 結果の数値のこと。上の例で、式 3x + 1 の x = 4 のときの式の値は 13。

代入の手順:3ステップ

手順
代入の3ステップ
  1. 省略された × を戻す 例:3x → 3 × x
  2. 文字を数で置き換える(負の数なら必ずカッコをつける)
  3. 計算順序のルール(カッコ→累乗→乗除→加減)にしたがって計算

例題:x = 5 のとき

例1:x = 5 のとき、3x + 1 の値

①3x → 3 × x

②x = 5 を代入 → 3 × 5 + 1

③計算 → 15 + 1 = 16

例2:x = 2 のとき、x2 + 5x の値

①x2 → x × x、5x → 5 × x

②x = 2 を代入 → 2 × 2 + 5 × 2

③計算 → 4 + 10 = 14

負の数を代入するとき:カッコを忘れない

ここが最大のつまずきポイント。例として「x = −3 のとき、x2 の値」を考えてみます。

カッコを忘れると答えが変わる
  • 正しい:x2 = (−3)2 = (−3) × (−3) = +9
  • 間違い:x2 = −32 = −(3 × 3) = −9 ← マイナス × 別物
  • 1章で見た「(−3)2 と −32」の違いと同じ。負の数を代入するときは必ずカッコ。
例3:x = −2 のとき、3x − 4 の値

3x → 3 × x、x = −2(カッコをつけて代入)

3 × (−2) − 4 = −6 − 4 = −10

例4:x = −3 のとき、x2 + 2x の値

x2 → x × x、2x → 2 × x、x = −3(カッコ)

(−3)2 + 2 × (−3)

= 9 + (−6) = 3

2つ以上の文字に代入

文字が複数あっても、それぞれの値を代入するだけ。

例5:x = 2、y = −1 のとき、3x − 2y の値

3x → 3×x、2y → 2×y

3 × 2 − 2 × (−1) = 6 − (−2) = 6 + 2 = 8

例6:a = 4、b = 3 のとき、(a + b)/2 の値

a = 4、b = 3 を代入

(4 + 3)/2 = 7/2 = 3.5 (または 7/2)

もうひとつの落とし穴:分数係数の代入
  • 「x/3」に x = 6 を代入 → 6/3 = 2 (OK)
  • でも「x/3」に x = 5 を代入 → 5/3 ← 割り切れない場合は 分数のままでOK
  • 無理に小数にしない(むしろ分数のほうが正確)

この章でつまずきやすいところ

代入は「文字を数に置き換えて計算する」だけの単純な操作に見えますが、本文や問題を読み進める途中で、意外な場所に落とし穴があります。ここでは、式を見た瞬間に頭の中で起こりがちな迷いを4つ取り上げます。

2aにa=5を入れて「25」と書いてしまう

  • つまずく場面:本文の「2aにa=5を代入すると?」を見たとき、2と5を並べて書いてしまい「25」と答えそうになる迷い。省略されている×が見えていないため、文字の左の数字をそのまま隣にくっつけてしまう。
  • 克服のコツ:見分け方として、文字の前の数字は必ず「掛け算」と読み替える習慣をつけよう。代入の前に、まず式の中の省略された×を全部書き戻すこと。2aは2×a、3xは3×x、と「×」を補ってから数を入れれば、25のような並べ書きは起きない。
  • ミニ例:2aにa=5を代入する前に、まず2a = 2×aと書き直す。そのうえでaを5に置き換えると2×5となり、計算して10。書き戻すひと手間で並べ書きを防げる。

x²にx=−3を入れるとき、カッコをつけるか迷う

  • つまずく場面:本文の例「x=−3のとき、x²の値」を読んでいる途中で、xの場所に−3をそのまま書くべきか、(−3)と書くべきか迷う場面。とくにマイナスがついた瞬間に、どこまでが「代入された数」なのかが見えにくくなる。
  • 克服のコツ:因果関係で整理しよう。カッコを忘れると、マイナスが指数のかかる範囲から外れてしまう。(−3)²なら−3全体を2回かけて+9、−3²ならマイナスは指数の外にあって−(3×3)=−9となり、別の式に変わってしまう。だから負の数を代入するときは必ずカッコをつける。
  • ミニ例:x=−3をx²に入れるときは、(−3)²と書く。これで(−3)×(−3)=+9。カッコを省くと−3²となって−9になり、答えがまるごと変わってしまう。

同じ文字が2回出ているとき、別の数を入れてしまう

  • つまずく場面:x²+2xのような式を見ていると、x²のxと2xのxを別物のように感じて、片方だけ代入したり違う値を入れたりしそうになる迷い。本文の「同じ文字が2回出たら?」のところでつまずきやすい。
  • 克服のコツ:位置関係ではなく「文字の名前」で判断する。式の中で同じ名前の文字(xならx)が何回出てきても、それは全部「同じ値を表す入れもの」。だからx=−3と決めたら、x²の中のxも、2xの中のxも、すべて(−3)に置き換える。
  • ミニ例:x=−3をx²+2xに代入するときは、両方のxを(−3)に置き換えて(−3)²+2×(−3)=9+(−6)=3。片方だけ代入したり、別の数を入れてはいけない。

代入したあと、分数になると小数に直したくなる

  • つまずく場面:x/3にx=5を代入する場面を読んでいる途中で、答えが5/3になることに違和感を覚え、「割り切れないから計算が間違っているのでは」と迷い、無理に小数(1.666…)に直そうとしてしまう。
  • 克服のコツ:見分け方として、割り切れない場合は分数のままが正しい答えと覚えておこう。代入は「文字を数に置き換えて式の値を求める」操作で、必ず整数や小数で表せるとは限らない。むしろ5/3のような分数のほうが、1.666…より正確な値を表している。
  • ミニ例:x/3にx=5を代入すると5/3。これがそのまま式の値で、小数に直す必要はない。一方でx=6なら6/3=2と整数になる。分母で割り切れるかどうかは、代入する数しだいで決まる。

練習問題

問題1(基本)
x = 3 のとき、次の式の値を求めなさい。
  1. 2x
  2. x + 5
  3. 4x − 7
  4. x2
答えを見る

(1) 2×3 = 6

(2) 3+5 = 8

(3) 4×3−7 = 12−7 = 5

(4) 32 = 3×3 = 9

問題2(負の数)
x = −4 のとき、次の式の値を求めなさい。
  1. 3x
  2. x + 6
  3. x2
  4. −x
  5. 2x2 − 5
答えを見る

(1) 3×(−4) = −12

(2) (−4)+6 = +2

(3) (−4)2 = (−4)×(−4) = +16

(4) −(−4) = +4

(5) 2×(−4)2 − 5 = 2×16 − 5 = 32−5 = 27

問題3(複数の文字)
a = 5、b = −3 のとき、次の式の値を求めなさい。
  1. a + b
  2. 2a − b
  3. ab
  4. a2 + b2
答えを見る

(1) 5 + (−3) = +2

(2) 2×5 − (−3) = 10 + 3 = +13

(3) ab = 5×(−3) = −15

(4) 52 + (−3)2 = 25 + 9 = +34

まとめ

  • 代入=文字を具体的な数で置き換えること。式の値=代入して計算した結果。
  • 手順:① × を戻す ② 数で置き換える ③ 計算する。
  • 負の数を代入するときはカッコをつける(特に累乗のとき重要)。
  • 計算順序は1章と同じ:カッコ → 累乗 → 乗除 → 加減。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

体型をはかるBMIは、身長と体重を代入して求める実生活

BMIは「体重(kg)÷身長(m)の2乗」という式で計算します。たとえば身長1.6m・体重56kgの人なら 56÷1.6^2=56÷2.56=約21.9 と、文字に数を入れて値を出す代入そのものです。日本では25以上を肥満、18.5未満を低体重と判定します。

出典:厚生労働省 健康日本21アクション支援システム e-ヘルスネット「BMI」

熱中症予防の「暑さ指数(WBGT)」も式への代入で決まる実生活

環境省が出す暑さ指数(WBGT)は、屋外では「0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度」という式で計算されます。3つの温度の値を式に代入して1つの数値を出すしくみで、求めた値が高いほど熱中症の危険が大きいと判断されます。

出典:環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について」

運動の目安になる最大心拍数は「220−年齢」で計算実生活

運動するときの心拍数の目安は、まず最大心拍数を「220−年齢」という式で求めます。年齢という文字に自分の数を代入するだけで、たとえば14歳なら 220−14=206(回/分) と出せます。年齢を変えれば値も変わる、代入の身近な例です。

出典:健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「心拍数と運動強度」

温度の単位「摂氏→華氏」も代入の計算で変換できる発展

日本で使う摂氏(℃)を、アメリカなどで使う華氏(°F)に直す式は「°F=1.8×℃+32」です。たとえば25℃なら ℃に25を代入して 1.8×25+32=45+32=77(°F) となります。1つの文字に数を入れて値を出す、まさに代入の計算です。

出典:国立国会図書館 レファレンス協同データベース(出典:理科年表/国立天文台)

天気予報の暑さ指数は、たくさんの文字に同時に代入している発展

観測機器がない場所のWBGTは、気温Ta・湿度RH・日射量SR・風速WSなど複数の文字を1つの式にまとめ、それぞれの観測値を代入して推定します(式の一部:0.735×Ta+0.0374×RH+…)。文字が複数あっても、それぞれの値を順に入れていく点は教科書の代入と同じです。

出典:環境省 熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について」