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1次式と数の乗法・除法 ── 分配法則と逆数の活用

「3(x − 2)」を計算するには、1章の 分配法則 がそのまま使えます。「(6x − 9) ÷ 3」なら、1章で学んだ 逆数 を使ってかけ算に変身。今回はこの2つの計算を、文字式版として整理します。

1次式 × 数:分配法則を使う

分配法則(文字式版)
カッコの中の各項に、外の数をかける

a × (b + c) = ab + ac

1章の分配法則をそのまま文字式に適用。カッコの中の各項に1つずつ外の数をかける。

分配法則:3(x − 2) を展開する 3 (x − 2) = 3 × x − 3 × 2 = 3x − 6 外の3を、カッコの中のxにも、−2にもかける
図1:3(x − 2) = 3x − 6

例題

例1:4(x + 5) = 4×x + 4×5 = 4x + 20

例2:5(2a − 3) = 5×2a − 5×3 = 10a − 15

例3:−2(x + 7) = −2×x + (−2)×7 = −2x − 14

例4:−3(2y − 4) = (−3)×2y + (−3)×(−4) = −6y + 12

マイナスでくくるときの符号
  • 外の数が負の数のとき、カッコ内すべての符号が反転すると覚えてもよい。
  • 例:−3(2y − 4) = −6y + 12 ← 2y は −6y、 −4 は +12 になる。
  • カッコのはずし方(前回)の「−( ) は符号反転」と同じロジック。

1次式 × 数:かける数が後ろにある場合

(x + 5) × 3 のように、数がカッコの後ろにあっても、ルールは同じ(交換法則)。

例:(2a − 3) × 5 = 5(2a − 3) = 10a − 15

1次式 ÷ 数:逆数の乗法に直す

(6x − 9) ÷ 3 のような割り算は、1章のルール「割る = 逆数をかける」を使ってかけ算に変身させます。

1次式の除法
逆数を使ってかけ算に変える

(2a + 6) ÷ 2 = (2a + 6) × (1/2)

分配法則で各項に 1/2 をかける = 各項を 2 で割る、と考えてもよい。

例1:(6x − 9) ÷ 3

= (6x − 9) × (1/3)

= 6x×(1/3) − 9×(1/3)

= 2x − 3 (各項を3で割っただけ)

例2:(8a + 12) ÷ 4

= (8a)/4 + 12/4 = 2a + 3

例3:(10x − 5) ÷ (−5)

= (10x)/(−5) + (−5)/(−5)

= −2x + 1 = −2x + 1 (負の数で割ると符号が逆転)

分数係数の式 × 数

係数が分数のときも、分配法則は同じ。

例:6 × ((1/2)x − (1/3))

= 6×(1/2)x − 6×(1/3)

= 3x − 2 = 3x − 2

* 分母を払うように外の数を選ぶと、分数を整数にできる。3章の方程式で頻出のテクニック。

計算の混合

加法・減法と乗法・除法が混ざった式は、カッコをはずして同類項をまとめるの流れで。

例:3(2x − 1) − 2(x + 4)

分配法則でカッコをはずす

= 6x − 3 − 2x − 8

同類項をまとめる

= (6x − 2x) + (−3 − 8)

= 4x − 11

この章でつまずきやすいところ

1次式に数をかけたり割ったりする計算は、分配法則と逆数という1章の道具をそのまま使うのが核心です。けれど解いている途中、「外の数を全部にかけたっけ?」「マイナスの符号はどう動く?」と手が止まりがちです。よく出る迷いの場面を、見分け方の視点で整理します。

外の数を最初の項にだけかけて止まってしまう

  • つまずく場面:3(x + 2) を見て、まず 3×x = 3x と書いた瞬間、「あれ、+2 はどうするんだっけ?」と手が止まり、3x + 2 のままにしてしまう場面。外の数とカッコ内の最初の項だけが結びついて見えてしまう迷いです。
  • 克服のコツ:位置関係で見分けるのがコツです。外の数は「カッコの中のすべての項に同じだけ届く」とイメージし、項の数だけ矢印を引いてからかけ算を始めると抜けません。項が2つなら矢印も2本、3つなら3本、と本数を先に決めてから書くのが安全です。
  • ミニ例:3(x + 2) なら、まず 3→x と 3→+2 の2本の矢印を引く。そこから 3×x + 3×2 = 3x + 6 と進めれば、+2 を置き忘れません。

割り算は最初の項だけ割ればよいと思い込んでしまう

  • つまずく場面:(6x + 3) ÷ 3 を見て、(6x)÷3 = 2x までは出るものの、「あとの +3 はそのままでいいかな」と迷い、2x + 3 と書きたくなる場面。割り算だと外の数が「届く」感覚が薄れて、最初の項だけで満足してしまう迷いです。
  • 克服のコツ:因果関係で整理します。÷3 は ×(1/3) と書き直せる、と本文で学んだ通り、いったん逆数のかけ算に変身させると、自動的に「全項にかける」分配法則の形になります。割り算のままだと忘れがちな項も、かけ算に直せば矢印が引きやすくなります。
  • ミニ例:(6x + 3) ÷ 3 を (6x + 3) × (1/3) に直す。すると 6x×(1/3) + 3×(1/3) = 2x + 1 となり、+3 を割り忘れることがありません。

外の数がマイナスのとき、符号を一部だけ反転してしまう

  • つまずく場面:−2(x − 5) を解こうとして、−2×x = −2x までは書けたのに、「カッコの中の −5 にマイナスをかけると、結局プラスとマイナスのどっちだっけ」と迷い、−2x − 10 と書きたくなる場面。符号が二重に絡む瞬間に手が止まります。
  • 克服のコツ:見分け方として、外の数の符号を「カッコ内の各項の符号と、毎回かけ合わせる」と決めておきます。外が負で項も負なら正、外が負で項が正なら負、というルールを項ごとに1回ずつ適用するのが安全です。一気に頭の中で処理せず、項ごとに分けて書くのがコツです。
  • ミニ例:−2(x − 5) は (−2)×x + (−2)×(−5) と並べて書くと、−2x + 10 と落ち着いて出せます。「マイナス×マイナス=プラス」を項単位で確認するのがポイントです。

カッコをはずした後の同類項整理を後回しにしてしまう

  • つまずく場面:3(2x − 1) − 2(x + 4) のような混合式で、分配法則は終わって 6x − 3 − 2x − 8 まで書けたのに、「ここからどう並べ直せばよかったか」と止まり、答えに 6x − 2x をそのまま残してしまう場面。前半で力尽きて整理が抜ける迷いです。
  • 克服のコツ:時系列で整理します。手順は「① カッコをはずす → ② 文字の項どうし、数の項どうしを集める → ③ 同類項をまとめる」の三段。①で終わらせず、必ず②と③まで進めると決めておきます。文字と数を色分けして印を付けると、まとめ忘れが減ります。
  • ミニ例:3(2x − 1) − 2(x + 4) は、まず 6x − 3 − 2x − 8、次に (6x − 2x) + (−3 − 8) と並べ替え、最後に 4x − 11 までを一気通貫で書くと安心です。

練習問題

問題1(乗法)
次を計算しなさい。
  1. 3(x + 4)
  2. 5(2a − 1)
  3. −2(y + 7)
  4. −4(3x − 2)
答えを見る

(1) 3x + 12

(2) 10a − 5

(3) −2y − 14

(4) −12x + 8

問題2(除法)
次を計算しなさい。
  1. (8x + 12) ÷ 4
  2. (15a − 10) ÷ 5
  3. (6x − 9) ÷ (−3)
答えを見る

(1) (8x)/4 + 12/4 = 2x + 3

(2) (15a)/5 − 10/5 = 3a − 2

(3) (6x)/(−3) − 9/(−3) = −2x + 3

問題3(混合)
次を計算しなさい。
  1. 2(x + 3) + 5(x − 1)
  2. 4(3a − 2) − 3(a + 1)
答えを見る

(1) 2x+6+5x−5 = (2x+5x)+(6−5) = 7x + 1

(2) 12a−8−3a−3 = (12a−3a)+(−8−3) = 9a − 11

まとめ

  • 1次式 × 数:分配法則で、カッコの中の各項に外の数をかける。
  • 外の数が負の数のときは すべての項の符号が反転する。
  • 1次式 ÷ 数:各項を割る数で割る(または逆数をかける)。
  • 加減と乗除が混ざった式:カッコをはずす → 同類項をまとめるの流れで。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

「3(x−2)」はなぜ役に立つ?──法則を一般的に書くための文字発展

中学校学習指導要領(数学)は、文字を使う目的を「数量の関係や法則などを一般的にかつ簡潔に表現して処理する」ことだと示しています。3(x−2)=3x−6 のように分配法則を文字で書くと、x がどんな数でも成り立つ計算のきまりを、ひとつの式で言い切ることができます。

出典:文部科学省 中学校学習指導要領(数学)

数の代わりに文字を置く工夫は16世紀に整えられた発展

計算の対象を文字で表す書き方は、16世紀のフランスの数学者フランソワ・ビエト(ヴィエト)が体系的に整備したと考えられています。それ以前は言葉で書かれていた式が、文字を使うことで a(b+c)=ab+ac のように短く正確に書けるようになり、今みなさんが使う分配法則の表し方につながっています。

出典:ウィキペディア(日本語版)「代数学」

プログラミングの「変数」は文字式とそっくり実生活

コンピュータのプログラムでは、数を入れておく場所に名前(変数)を付けて計算します。変数とは、扱うデータを読み書きする記憶域で、固有の名前で区別されるものです。x に値を入れて 3(x−2) を計算させるのは、文字式の x に数を当てはめるのと同じ考え方です。

出典:ウィキペディア(日本語版)「変数 (プログラミング)」

レシートの税込価格と分配法則実生活

値札には消費税を含めた支払総額を示す「総額表示」が義務づけられています。税抜きの値段を a 円とすると税率10%の税込価格は a×(1+0.1)=a+0.1a となり、これはまさに分配法則の形です。逆に税込総額から税の分を求めるときは「税込価格×10/110」で計算されます。

出典:財務省「総額表示に関する主な質問」

表計算ソフトのセルは文字式で計算している実生活

ExcelやスプレッドシートなどのアプリはセルにA1やB2のような名前が付いていて、=A1*3-6 のように数式を入れると自動で計算してくれます。これは A1 を文字とみなして 3×A1−6 を求めているのと同じで、A1 の数を変えるだけで何通りもの計算が一度にできるのが文字式の便利さです。

出典:ウィキペディア(日本語版)「表計算ソフト」