3つの移動
1. 平行移動
性質:対応する点を結ぶ線分は すべて平行で同じ長さ。
性質と作図
- 図形の 形と大きさは変わらない
- 対応する点を結ぶ線(移動の方向)はすべて 同じ向き、同じ長さ
- 1点の動き方が決まれば、すべての点の動き方が決まる
2. 対称移動
性質:対応する点を結ぶ線分は、対称の軸によって 垂直に2等分される。
性質と作図
- 図形の形と大きさは変わらない(鏡うつしのイメージ)
- 対応する点 A, A' は、対称の軸に対して 垂直の位置にあり、軸からの距離が同じ
- 対称の軸は、対応する2点を結ぶ線分の 垂直二等分線になる
3. 回転移動
性質:対応する点と中心を結ぶ線分の 長さは変わらず、回した角度がすべて同じ。
性質と作図
- 形と大きさは変わらない
- 対応する点 A, A' から中心 O への距離は同じ:OA = OA'
- 角 ∠AOA' は、すべての対応する点で同じ(=回転角)
回転角を 180° にした回転移動。中心を 対称の中心と呼ぶ。
点対称な図形:平行四辺形、円、長方形、ひし形、正方形、正六角形など。
3つの移動の特徴比較
移動しても変わらないもの
平行移動、対称移動、回転移動は、どれも図形の形と大きさを変えません。変わるのは位置や向きです。だから、移動前後の図形は合同です。辺の長さ、角の大きさ、面積は同じままです。この「変わるもの」と「変わらないもの」を分けると、図形の移動はかなり見やすくなります。
- 変わらない:辺の長さ、角の大きさ、面積、図形の形。
- 変わることがある:位置、向き、頂点の座標。
- 対称移動では、左右が反転する。
- 回転移動では、中心・角度・向きが重要になる。
作図で見るポイント
平行移動では、対応する点がすべて同じ方向に同じ距離だけ動きます。対称移動では、対応する点を結ぶ線分が対称の軸に垂直で、軸によって二等分されます。回転移動では、中心から対応する点までの距離が等しく、回転した角度も等しくなります。図を見たら、まず対応する点を1組決めて、その動き方を調べるのがコツです。
この章でつまずきやすいところ
図形の移動を読んでいると、「点ごとに動かし方が違うのでは?」と途中で迷いやすい場面が出てきます。平行・対称・回転の三つは「何を固定し、何を保つか」が異なるだけ。読みながら詰まりやすいポイントを整理します。
平行移動を「形だけそろえれば近くに置いてよい」と思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「すべての点を同じ方向に同じ距離だけ動かす」を読んでいる途中で、図の頂点ごとに違う矢印を引いてしまい、「形は同じだから平行移動でいい」と納得して先に進んでしまう場面。
- 克服のコツ:見分け方は対応点を結ぶ矢印が全部そろうかで判断する。1つの頂点が右に3・上に2動いたなら、他の頂点も同じ「右3・上2」で動かす。矢印が点ごとに違ったら平行移動ではないと気づく。
- ミニ例:三角形ABCのAが右3マス・上2マス動いたなら、BもCも右3マス・上2マス動かす。1点でも違う動きをしたら平行移動とは呼べない。
対称移動を「ただ裏返せばいい」と単純化してしまう
- つまずく場面:「対称の軸を折り目として折り返す」を読んでいる途中で、頭の中で図形をぱたんと裏返すイメージだけが残り、軸からの距離を測らずに「だいたいこの位置」と感覚で点を打ってしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で押さえる。点から対称軸へ垂線を下ろし、軸までの距離と同じだけ反対側へ進む。「垂直」と「等距離」の2つがそろって初めて対応点になる。どちらか欠けたら対称移動になっていない。
- ミニ例:点Aから軸までの距離が2マスなら、対応点A'は軸の反対側に同じ2マス、しかも軸に垂直な向きにある位置。斜めに2マスではない。
回転移動で「中心からの距離」より「回した角度」だけに目が行ってしまう
- つまずく場面:「回転の中心を固定し、同じ角度だけ回す」を読んでいる途中で、角度ばかり気にして点を動かし、中心から点までの距離がいつのまにか変わった位置に新しい点を置いてしまう場面。
- 克服のコツ:位置関係で確認する。回転移動では中心Oから点Aまでの長さOAと、回転後のOA'は必ず等しい。角度をそろえる前に、まずコンパスのように「中心からの距離が同じ円の上」に対応点が乗るかを意識する。
- ミニ例:中心Oから点Aまでが4マスなら、90°回した先のA'もOから4マスの位置にある。距離が3マスや5マスになっていたら、それは回転移動ではない。
180°回転(点対称)を「対称移動の一種」と混同してしまう
- つまずく場面:本文の「特別な回転:点対称」を読んでいる途中で、「軸ではなく中心を使う」「裏返らない」という違いを取りこぼし、対称移動と同じ扱いで考え進めてしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。軸で折り返す対称移動は図形を裏返すのに対し、点対称(180°回転)は点Aと中心Oと対応点A'が一直線上に並び、OA=OA'となる位置に移す動きで、裏返さずに半回転させるだけ。だから向きは変わるが鏡文字にはならず、使う情報も「軸」か「中心」かで違う。
- ミニ例:△ABCを対称軸で折り返すと裏返って鏡映しの三角形になるが、点対称(180°回転)で動かすと裏返らずに半回転した向きの三角形になる(中心Oを基準にA→A'、B→B'、C→C'がそれぞれ一直線で等距離)。
練習問題
- 図形を同じ向きに同じ距離だけずらす移動
- 1点を中心に、図形を一定の角度だけ回す移動
- 1本の直線を境に、図形を折り返す移動
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(1) 平行移動 (2) 回転移動 (3) 対称移動
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解答:対応する2点を結ぶ線分は、対称の軸によって 垂直に2等分される。
言いかえると、対称の軸は対応する2点を結ぶ線分の 垂直二等分線になる。
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解答例:平行移動は、図形を一定の方向に一定の距離だけずらす移動で、図形の向きは変わらない(すべての点が同じ動き方をする)。回転移動は、ある1点(回転の中心)を中心にして、図形をある角度だけ回す移動で、各点と中心との距離は変わらないが、点ごとに動く方向は異なる。平行移動は「全体が同じように動く」、回転移動は「中心の周りで角度ごとに動く」と区別できる。
まとめ
- 3つの移動:平行移動(スライド)/対称移動(折り返し)/回転移動(回す)。
- どれも 形と大きさは変わらない。違いは対応点の動き方。
- 平行移動:対応点を結ぶ線が同じ向き・同じ長さ。
- 対称移動:軸が対応点を結ぶ線分の垂直二等分線。図形は裏返る。
- 回転移動:中心からの距離が一定、回転角がすべての点で同じ。180°回転は 点対称。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
図形を動かす方法は全部で5種類発展
教科書で習う平行移動・回転移動・対称移動(鏡映)に「恒等変換(動かさない)」と「すべり鏡映(鏡映と平行移動を同時に行う)」を加えると、平面で図形を形も大きさも変えずに動かす方法はちょうど5種類に整理できます。大学ではこれらをまとめて『合同変換』と呼び、図形の対称性を調べる土台になります。
180°回転がつくる「点対称」発展
回転移動の回転角をちょうど180°にすると、図形は1つの中心の周りでひっくり返り、これを『点対称』といいます。平行四辺形は対角線の交点を中心に180°回すとぴったり重なるので、点対称な図形の代表例です。回転移動の特別な場合として点対称をとらえると、両者が同じ仲間だと分かります。
壁紙の模様は対称性で17種類に分けられる発展
平行移動・回転・鏡映・すべり鏡映の組み合わせ方を数え上げると、繰り返し模様(壁紙模様)の対称性はちょうど17通りしかないことが証明されています。これは1891年にフェドロフが示したもので、3つの移動の発想が『模様を分類する数学』へとつながっていきます。
出典:ウィキペディア「文様群」
日本の伝統文様にも3つの移動がかくれている実生活
市松・麻の葉・雲立涌(くもたてわく)といった日本の伝統文様は、同じ単位を平行移動・回転・鏡映で繰り返して作られています。卜部東介氏の研究では、これら伝統文様の中に17種類の対称パターンがすべて現れることが確かめられました。身近な和柄も図形の移動の組み合わせで読み解けます。
ゲームやCGは図形の移動を計算でやっている実生活
コンピュータグラフィックスでは、キャラクターや物体の位置・向き・大きさを変えるとき、平行移動・回転・拡大縮小といった『座標変換』を計算しています。中学で習う平行移動や回転移動の考え方が、ゲームやアニメーションで画面の中の図形を動かす仕組みの基礎になっています。
