光が違う物質に入ると曲がる
透明なコップに水を入れて、ストローを斜めに刺してみてください。水面のところでストローが カクッと折れたよう に見えるはずです。実際にはストローはまっすぐなのに、なぜそう見えるのか。
これは、空気と水の境目で光が曲がっているからです。光が違う物質に入るとき、その境目で進む向きが変わる現象を 屈折(くっせつ) といいます。プールの底が浅く見えたり、水中の魚の位置がずれて見えたりするのも、すべて屈折のせいです。
屈折のルール
屈折を正しく語るには、2つの角度をきちんと区別します。どちらも 境目に垂直に立てた線(法線) から測った角度です。
空気→水・ガラス屈折角 < 入射角(法線に近づくように曲がる)
水・ガラス→空気屈折角 > 入射角(法線から遠ざかるように曲がる)
覚え方:「光が遅くなる側に入ると、法線側に寄る」。光は密な物質(水・ガラス)のなかほどゆっくり進むので、空気から水に入るとブレーキがかかって法線側にぐっと寄ります。
水中のものが浅く見える理由
図1の③を見てください。水底にある石から出た光は、水→空気で 法線から遠ざかるように曲がって 目に届きます。ところが、私たちの脳はそれを知りません。
- 脳は「光は まっすぐ 飛んでくるはず」と思い込んでいる。
- そこで、目に届いた光をそのまま後ろに延ばした位置に「物がある」と判断する。
- その結果、本当の位置よりも 水面に近い(浅い)位置 に物があるように見える。
ストローが折れて見えるのも同じです。水中にあるストローの下半分から出た光は、水→空気で曲がってから目に届きます。脳は曲がる前のまっすぐな道筋を想像するので、水面より下の部分が 本当より浮き上がって 見え、まっすぐなはずのストローが境目でカクッと折れたように映るのです。
全反射 ── ある角度を超えると光が出てこない
水中(やガラス内)から空気に光が出るとき、入射角を 少しずつ大きく していくと、面白いことが起きます。
- はじめは、屈折角は入射角より大きいながらも光は空気に出ていく。
- あるところで 屈折角がちょうど90° になる。光は水面ぎりぎりを這うように進む。
- それ以上、入射角を大きくすると、光は空気側へ出られず、境目で完全に反射してしまう。
・水→空気の臨界角:約 49°(発展)
・ガラス→空気の臨界角:約 42°(発展)
- 全反射は 光が密な物質から疎な物質へ進むとき だけ起きます。
水→空気、ガラス→空気は起きる。 - 逆方向(空気→水、空気→ガラス)では 絶対に起きない。
光ファイバーの仕組み
全反射は実用上もっとも大事な応用が 光ファイバー です。インターネットの大容量回線、医療の内視鏡、家庭の光回線まで、現代社会のあちこちで使われています。
- 髪の毛より細い透明なガラス(または特殊樹脂)の繊維の中を、光が斜めに進む。
- 光がファイバーの内壁に当たるたびに、入射角が臨界角より大きいため 全反射。
- 反射した光は、また反対側の壁に当たって全反射 ── これをくり返して進む。
- 外に光が漏れないので、エネルギーをほとんど失わずに 長い距離を伝わる。
銅線で電気信号を送るのと違い、光ファイバーは電気的なノイズに強く、たくさんの情報を一度に運べます。あなたが今この記事を見るためのデータも、どこかで光ファイバーの中を全反射しながら届いた光だったかもしれません。
色の屈折 ── 虹の正体
実は、太陽の白い光は いろいろな色の光が混ざった ものです。そして、屈折の角度は色(光の波長)によってわずかに違います。赤は曲がりにくく、紫は曲がりやすい。
雨上がりの空に浮かぶ 水滴の粒 に太陽の光が入ると、屈折 → 内側で全反射 → もう一度屈折 という3ステップを通る間に、色ごとに進む向きが少しずつずれて、外に出るときには色が 分かれて しまいます。これが 虹 です。
虹の赤が外側、紫が内側にあるのは、それぞれの色で曲がる量が違うから。きれいに見える日に空を見上げたら、その奥で水滴のなかの全反射が静かに起きていることを思い出してみてください。
この章でつまずきやすいところ
光の屈折と全反射は、空気・水・ガラスのどの向きで進むかで結論が変わります。本文を読み進める途中で「どっちが入射角?」「どっちに曲がる?」と迷いがちな場面を整理して、図を見るときの目の動かし方を身につけましょう。
入射角を光線と境目の間の角だと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の図1で「入射角」を見つけようとしたとき、つい光線と水面(境目)の間にできる角を入射角だと数えてしまい、屈折のルールに当てはめても答えが合わなくなる場面で迷いやすい。
- 克服のコツ:位置関係で整理:入射角は必ず境目に立てた法線と入射光線の間の角。図を見るときはまず境目に垂直な点線(法線)を探し、その点線と光線の間を測ると決める。屈折角も同じく法線から測る。境目と光線の間の角ではない点を最初に確認すると、以降の比較がぶれない。
- ミニ例:図1の①で、空気から水へ斜めに入る光を見るとき、水面に垂直な法線と入射光の間が入射角。水面と光線の間の角ではないので、最初に法線を引いてから測る。
曲がる向きを「水へ入るほど大きく曲がる」と一律に思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「空気→水・ガラスでは法線に近づき、水・ガラス→空気では法線から遠ざかる」を読んだ直後、図②を見て「水から空気でも法線に近づくはず」と思い込み、屈折角と入射角の大小がごちゃごちゃになる場面。
- 克服のコツ:物質の組み合わせで整理:向きを決めるのは「どこからどこへ進むか」。空気→水・ガラスに入るときは法線に近づくように曲がり、屈折角<入射角。水・ガラス→空気に出るときは法線から遠ざかるように曲がり、屈折角>入射角。図を見たらまず「どちら向きに進む光か」を確かめ、この2パターンのどちらに当てはまるかを判定する。
- ミニ例:図1の②で、水中から空気へ出る光は法線から遠ざかるように曲がる。だから屈折角の方が入射角より大きく描かれている。
ストローが実際に折れていると感じてしまう
- つまずく場面:本文の冒頭でコップに刺したストローが水面で折れて見える話を読むと、つい「水中でストローが本当に曲がっているのか?」と感じ、屈折の話と「物体が変形している」イメージが頭の中で混ざってしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理:曲がっているのはストローではなく光の道筋。水中のストローから出た光が水→空気で法線から遠ざかるように屈折する。目(観察者)は光がまっすぐ進んできたものとして見るため、光の道筋を延長した先にストローの下半分があるように見える。だから境目で折れたように映る。
- ミニ例:水中の魚が実際より浅い位置に見えるのも同じしくみ。魚から出た光が水面で屈折し、その光の道筋をまっすぐ延長した先に魚があるように見える。
全反射が空気→水でも起きると思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の臨界角・全反射のところを読んでいる途中で「入射角を大きくすれば全反射が起きる」とだけ覚えてしまい、空気から水・ガラスへ斜めに強く入れた場合も全反射が起きるのでは、と迷う場面。
- 克服のコツ:物質の向きで整理:全反射は水→空気、ガラス→空気のときだけ起きる。逆向きの空気→水、空気→ガラスでは起きない。判断手順は①光がどちら向きに進むかを確認 ②水→空気・ガラス→空気なら入射角が一定の角度(臨界角)を超えるかで全反射か屈折かが決まる ③空気→水・空気→ガラスならその時点で全反射の候補から外す、の順。
- ミニ例:水→空気では、入射角がある一定の角度(臨界角)を超えると全反射が起き、光は水中に跳ね返される。一方、空気→水では入射角をいくら大きくしても全反射は起きず、必ず屈折光が水中に進む。
練習問題
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屈折角は入射角より小さい。
光は密な物質である水のなかほどゆっくり進むため、空気→水のように密な側に入るときは、法線に近づく向きに曲がる。よって、屈折角は入射角より小さくなる。
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解答例:魚から出た光は、水から空気に出るときに境目で 屈折 し、法線 から遠ざかる向きに曲がってから目に届く。しかし脳は、光がまっすぐ飛んできたと思い込み、目に届いた光をそのまま後ろに延ばした位置に魚がいると判断する。そのため、本当の魚の位置よりも水面に近い、浅いところに魚がいるように見える。
- 全反射が起きる条件を、光が進む向き(密→疎、疎→密のどちらか)と、入射角の大きさという2つの観点から説明しなさい。
- 臨界角とは何か、簡単に説明しなさい。
- 光ファイバーが、長い距離を光で情報を運べるのはなぜか。「全反射」という言葉を使って説明しなさい。
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(1) 光が 密な物質から疎な物質 へ進むとき(例:水→空気、ガラス→空気)に、入射角が臨界角より大きい 場合に起きる。逆方向(空気→水など)では起きない。
(2) 屈折角がちょうど90°になるときの入射角。これを超えて入射角を大きくすると全反射が起きる。水→空気では約49°、ガラス→空気では約42°(いずれも発展的な数値)。
(3) 光ファイバーは細いガラスの中を光が斜めに進み、内壁に当たるたびに入射角が臨界角より大きいため 全反射 をくり返す。反射した光がほとんどエネルギーを失わずに進むため、長距離でも光で情報を運ぶことができる。
まとめ
- 光が違う物質に入ると境目で曲がる。これを 屈折 という。入射角・屈折角はどちらも 法線 から測る。
- 空気→水(ガラス):屈折角 < 入射角(法線に寄る)。水(ガラス)→空気:屈折角 > 入射角(法線から離れる)。
- 水中の物が浅く見えるのは、屈折した光を脳がまっすぐ来たと勘違いするから。
- 密→疎の向きに進むとき、入射角が 臨界角 を超えると 全反射(水→空気で約49°、ガラス→空気で約42°。数値は発展)。
- 全反射の応用が 光ファイバー。虹は水滴中の屈折と全反射によって色が分かれて見える現象。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
逃げ水と蜃気楼 ── 空気の温度差で光が曲がる実生活
夏の道路の遠くに水たまりのようなものが見えて、近づくと消える「逃げ水」は、地面に近い熱い空気と上の冷たい空気で光の曲がり方が変わって起こる蜃気楼の一種です。温度の違う空気は密度が違うため屈折のしかたが変わり、空や遠くの景色がゆがんだり反転したりして見えます。海面が冷たいと景色が上にのびて見える上位蜃気楼、地面が熱いと下に反転して見える下位蜃気楼が知られています。
光ファイバーはコアとクラッドの二重構造で光を閉じ込める実生活
光ファイバーは、屈折率の高い中心の「コア」を、屈折率の低い「クラッド」が囲む二重構造になっていて、その境界で全反射が連続して起こるように設計されています。これによって光がほとんど外へ漏れず、長い距離を低い損失で進めるため、インターネットの大容量通信に使われます。送るときは電気信号を半導体レーザーで光に変え、受け取るときはフォトダイオードで光を電気信号にもどします。
二重の虹 ── 主虹と副虹はなぜ色の順が逆?発展
ふだん見える明るい虹(主虹)は水滴の中で光が屈折→反射→屈折と進み、赤が外側・紫が内側に見えます。その外側にうすく見えることがある副虹は、水滴の中で反射が1回多い(屈折→反射→反射→屈折)ため、色の順が逆で赤が内側・紫が外側になります。反射のたびに光が一部もれて弱くなるので、副虹は主虹より暗く見つけにくいのです。
ダイヤモンドが強く輝くのは高い屈折率と全反射のおかげ発展
ダイヤモンドは屈折率がとても高いため臨界角が小さく、内部に入った光が外へ抜けにくく、底の面で全反射をくり返してから上面へ強く返ってきます。さらに色(波長)ごとに曲がり方が違う分散が大きいので、虹のように七色のきらめき(ファイア)も生まれます。正確なカットは、この全反射と分散を最大限に引き出すために計算された形です。
胃カメラ(ファイバースコープ)も全反射で体の中を映す実生活
1960年代に開発されたファイバースコープは、細いガラス繊維(光ファイバー)を数多く束ねたもので、体の外から送った光を全反射で先端まで届け、臓器で反射した像を全反射でくり返し伝えて手元まで運びます。これにより、手術をせずに胃や腸の内部を直接観察できるようになりました。現在は先端に小型カメラを付けたビデオスコープも広く使われています。
