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金融と財政 ── お金の流れ

お金がぐるぐる回る社会で、それを 調整する役割を担うのが日本銀行と政府。日銀の 金融政策、政府の 財政政策を理解すると、ニュースの経済記事が読めるようになります。

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景気を調整する2つの政策 ── 日銀の金融政策と政府の財政政策 日本銀行の金融政策 発券銀行・銀行の銀行・政府の銀行 政府の財政政策 税金と公共事業(歳入・歳出)を動かす 不況のとき 景気を 上げたい 国債を買う(公開市場操作) → 市場に出回るお金が増える → 金利が下がり借りやすくなる → 消費・投資が活発に(景気刺激) 公共事業を増やす・減税する → 世の中に仕事とお金が回る → 景気を刺激する (拡張的財政政策) 好況のとき 物価上昇を おさえたい 国債を売る(公開市場操作) → 市場に出回るお金が減る → 金利が上がり借りにくくなる → 消費・投資をおさえる 公共事業を減らす・増税する → 世の中に回るお金をしぼる → 景気の過熱をおさえる (緊縮的財政政策) 「お金と金利を動かすのは日銀、税と公共事業を動かすのは政府」── 主語で見分ける
不況・好況それぞれの場面で、日本銀行(金融政策=国債の売買)と政府(財政政策=公共事業と税)が行うことの対比

不況のときに国債を買って金利を下げるのは日銀、公共事業や減税で景気を刺激するのは政府です。「主語がどちらか」に注目して見比べてください。

金融とは

用語
金融
資金が必要な人に お金を融通すること。銀行などの金融機関が仲介する。会社が株式や債券を発行して資金を調達する方法を直接金融という。銀行が預金を集めて必要な人や企業に貸し出す方法を間接金融という。

日本銀行(日銀)の役割

用語
中央銀行
日本銀行は日本の 中央銀行。普通の銀行とは違う特別な役割を持つ。
  • 発券銀行:日本銀行券(お札)を発行
  • 銀行の銀行:他の銀行に貸し付け・預け
  • 政府の銀行:税金などの政府の資金を管理

金融政策 ── 景気を調整

公開市場操作

不況時(経済を活性化したい)

日銀が国債を 買う → 市場のお金が増える → 金利低下 → 借りやすく → 消費・投資活発

好況時(インフレを抑えたい)

日銀が国債を 売る → 市場のお金が減る → 金利上昇 → 借りにくく → 消費・投資抑制

財政とは

用語
財政
政府による 収入と支出。税を集めて公共サービスを行う。

国の歳入と歳出

  • 歳入:税金(所得税・消費税・法人税など)+公債(国の借金)
  • 歳出:社会保障費・地方交付税・公共事業費・教育費・防衛費・国債費
  • 日本の歳出のうち 社会保障費が最大(高齢化)
  • 歳出が歳入を上回る状態を財政赤字といい、不足分は公債(国債)でまかなわれるため、財政赤字が続くと国債残高が増え続ける課題がある

税の種類

直接税間接税
定義納める人=負担する人納める人 ≠ 負担する人
国税所得税・法人税・相続税消費税・酒税・たばこ税
地方税住民税・固定資産税地方消費税

累進課税

所得税の累進課税

所得が多いほど 高い税率がかかる仕組み

→ 所得の 再分配(格差是正)

所得税率:5% 〜 45%(段階的)

財政政策 ── 政府の景気調整

不況時:拡張的財政政策

公共事業を増やす、減税

→ 景気を刺激

好況時:緊縮的財政政策

→ 公共事業を減らす、増税

銀行の役割

銀行の3つの機能

預金:人々のお金を預かる

貸出:必要な人や企業に貸す

為替:お金の送金(振込)

→ 預金の利子<貸出の利子の 差額が銀行の収益

→ 銀行は社会の 金融の心臓

株式会社と株式市場

  • 株式:会社の所有権を細かく分けた証券
  • 株主:株式を持つ人。配当と議決権を持つ
  • 株式市場:株式を売買する場所(東京証券取引所など)
  • 株価:会社の業績・将来性などで決まる
  • 会社は株式を発行して 資金を集める

インフレとデフレ

物価の変動

インフレ(インフレーション):物価が 上がる、お金の価値が下がる

 例:100円のパンが200円になる

 → 景気が良いときに起こることが多い

デフレ(デフレーション):物価が 下がる、お金の価値が上がる

 例:200円のパンが100円になる

 → 不景気のときに起こりやすい(消費が減る悪循環)

消費税の歴史

  • 1989年:消費税3% で導入
  • 1997年:5%に増税
  • 2014年:8%に増税
  • 2019年:10%に増税(食品など軽減税率8%)
  • 増税の理由:少子高齢化による 社会保障費の増大
つまずきポイント①:日銀と政府の役割を区別
  • 金融政策:日本銀行の仕事(金利・国債売買)
  • 財政政策:政府の仕事(税・公共事業)
  • 2つは別々の機関が行う。
つまずきポイント②:直接税と間接税
  • 直接税:税を 納める人=負担する人(所得税・住民税)
  • 間接税:税を 納める人 ≠ 負担する人(消費税は消費者が払うが、店が納める)
  • 「直接」と「間接」がどちらかを誰の視点から見るかで決まる
つまずきポイント③:累進課税と消費税の比較
  • 累進課税(所得税):所得が多い人ほど高い税率 → 格差是正
  • 消費税:全員同じ税率 → 低所得者の負担割合が高い(逆進性)
  • 所得税と消費税の バランスが政治の争点になる

この章でつまずきやすいところ

「金融と財政」の章は、日銀と政府、金融政策と財政政策、直接税と間接税…と似た用語が次々に出てきて、本文を読み進める途中で「あれ、どっちがどっちだっけ」と止まりがちです。読みながら迷いやすい場面を先取りしておきましょう。

金融政策と財政政策の主体を混ぜてしまう

  • つまずく場面:本文で「不況時は国債を買って金利を下げる」「不況時は公共事業を増やす」と続けて出てきた瞬間、どちらが日銀の仕事でどちらが政府の仕事か分からなくなり、ノートに写す主語が止まってしまう場面。
  • 克服のコツ:主体で見分けるのがコツです。「お金そのものを動かす(国債売買・金利)」のは日銀=金融政策、「税と支出を動かす(減税・公共事業)」のは政府=財政政策。本文の動詞の前に必ず「日銀が」か「政府が」を補って読むと取り違えにくくなります。
  • ミニ例:本文の「不況時に国債を買う」は主語が日銀なので金融政策。「不況時に公共事業を増やす」は主語が政府なので財政政策、と読み分けます。

「直接税/間接税」を税の重さや大きさのことだと思い込む

  • つまずく場面:本文で消費税と所得税の話が並んで出てきたとき、「直接税は直接的に重い税」「間接税は軽い税」のようなイメージで読んでしまい、どちらが直接税か区別がつかなくなる場面。
  • 克服のコツ:「誰が納め、誰が負担するか」という関係で見分けるのがコツです。納める人=負担する人なら直接税(所得税・住民税)、納める人と負担する人がずれたら間接税(消費税)。税の重さではなく、お金の流れの矢印の数で判定すると安定します。
  • ミニ例:コンビニで払う消費税は、負担するのは客だが税務署に納めるのは店。負担と納付がずれているので間接税、と整理できます。

累進課税と消費税を「どちらが公平か」で迷ってしまう

  • つまずく場面:本文で「累進課税は格差是正」「消費税には逆進性がある」と出てきたとき、どちらが低所得者に重いのか頭の中で逆になり、所得税と消費税の役割を書き分ける手が止まる場面。
  • 克服のコツ:税率と所得の関係(因果)で整理します。累進課税は「所得が増える→税率も上がる」ので所得の再分配に働く。消費税は「所得に関わらず税率は同じ」だから、所得が低い人ほど収入に占める負担割合が大きくなる=逆進性。教科書ではこの2つのバランスが論点と整理します。
  • ミニ例:本文の「所得税率5%〜45%」は累進課税の例。一方、消費税10%は誰でも同じ率で、結果として低所得者の家計に占める割合が大きくなりやすい、と読みます。

日本銀行を「自分も口座を開ける普通の銀行」だと思ってしまう

  • つまずく場面:本文で「銀行の銀行」「政府の銀行」と出てきたとき、日銀のATMで自分も預金できるイメージのまま読み進め、なぜ国債売買で景気が動くのかが結びつかなくなる場面。
  • 克服のコツ:取引相手という位置関係で見分けるのがコツです。一般の人や会社の相手は市中銀行、その市中銀行と政府の相手が日銀。だから日銀が国債を売買する相手も市中銀行で、結果として市場に出回るお金の量が変わり金利が動く、という因果がつながります。
  • ミニ例:「日銀が国債を買う」とは、市中銀行から国債を買い取って代金を渡すこと。市中銀行に資金が増えるので、企業や家計への貸し出しがしやすくなる、と読みます。

練習問題

問題1(日銀の役割)

日本銀行の3つの役割を答えよ。

答えを見る

発券銀行・銀行の銀行・政府の銀行

問題2(金融政策)

不況のとき、日銀は国債をどうするか。その効果は。

答えを見る

国債を買う → 市場のお金が増える → 金利低下 → 借りやすく → 景気刺激

問題3(税)
  1. 所得税は直接税か間接税か
  2. 消費税は直接税か間接税か
  3. 所得が多いほど税率が高くなる仕組み
答えを見る

(1) 直接税 (2) 間接税 (3) 累進課税

まとめ

  • 金融:お金を融通する仕組み。中央銀行は 日本銀行。
  • 日銀の役割:発券銀行・銀行の銀行・政府の銀行。
  • 金融政策:国債売買で景気調整。
  • 財政:政府の歳入(税)と歳出(公共サービス)。
  • 税の種類:直接税(所得税)/間接税(消費税)。
  • 累進課税で所得を再分配。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

日本銀行が「マイナス金利」をやめた(2024年)時事

日本銀行は2024年3月、長く続けてきたマイナス金利政策をやめ、約17年ぶりに金利を引き上げました。その後も段階的に利上げを進め、「金利のある世界」へと金融政策を切りかえています。これは教科書で学ぶ金融政策(金利の調整)が、今まさに動いている実例です。

出典:日本銀行「金融政策の枠組みの見直しについて」

新しいお札が発行された(2024年)時事

2024年7月3日、日本銀行は一万円・五千円・千円の新しいお札を発行しました。一万円札の肖像は、約500社の会社設立に関わり「近代日本経済の父」とよばれる渋沢栄一です。新札にはホログラムなど最新の偽造防止技術が使われており、お札を発行するのが「発券銀行」である日本銀行の役割だとわかります。

出典:日本銀行 植田総裁挨拶(新しい日本銀行券の発行開始)

キャッシュレス決済が4割を超えた時事

経済産業省によると、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%(約141兆円)となり、政府が目標としていた「4割」を達成しました。現金を使わずカードやスマホのコード決済でお金を払う仕組みが広がり、私たちのまわりのお金の流れが変わってきています。

出典:経済産業省「2024年のキャッシュレス決済比率を算出しました」

国の借金(国債残高)は1100兆円を超える発展

財務省によると、令和7年度末の普通国債(国の借金)の残高は約1136兆円となりました。令和8年度末にはさらに1145兆円に増える見込みです。国債は今の財源を補えますが、将来世代が利子をつけて返す負担になります。だからこそ国債は「使い道と返済できるか」で判断することが大切です。

出典:財務省主計局「我が国の財政事情(令和8年度予算政府案)」(令和7年12月)

国の予算で最も多い支出は「社会保障費」発展

財務省の令和7年度予算では、社会保障関係費が約38兆円と歳出のなかで最大で、借金の返済にあてる国債費も約28兆円にのぼります。社会保障費が増え続ける主な理由は少子高齢化で、消費税が引き上げられてきた背景ともつながっています。

出典:財務省「特集 令和7年度 社会保障関係予算のポイント」