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因数分解① 共通因数 ── 最初の一手

展開の逆が 因数分解。「足し算の形」を「掛け算の形」に書き直す操作です。最初にやるべき一手は 共通因数のくくり出し。すべての項に共通する数や文字を見つけて、外に出します。因数分解はこの一手から始まる、と覚えておきましょう。

因数分解とは

用語
因数分解
多項式を、1つ以上の式の積 の形に書き直すこと。展開の逆の操作。

(x + 2)(x + 3) ────(展開)────→ x² + 5x + 6

(x + 2)(x + 3) ←─(因数分解)─── x² + 5x + 6

共通因数のくくり出し

すべての項に共通する 因数(かけ算の部品) を見つけ、分配法則の逆でかっこの外に出す。

教科書の言い方では、多項式を いくつかの因数の積として表すのが因数分解です。だから答えは、できるだけ かっこの積の形で終わらせます。

例1:3x + 6

3x = 3·x、6 = 3·2 → 共通因数は 3

3x + 6 = 3·x + 3·2 = 3(x + 2)

共通因数でくくる = 長方形を1つにまとめる 3x + 6 x 3 3x + 2 3 6 高さ(たて)はどちらも 3 3でくくる 3(x + 2) x 2 3 3x 6 たて 3 ・ よこ(x+2)→ 3(x+2)
3x+6 を、高さ3・横xの長方形(面積3x)と高さ3・横2の長方形(面積6)と見て、共通の高さ3でくくると、1つの長方形 3×(x+2)=3(x+2) にまとまります。
例2:4a² − 8a

4a² = 4a·a、8a = 4a·2 → 共通因数は 4a

= 4a(a − 2)

例3:6x² + 9x

6 と 9 の最大公約数 3、文字は両方に x → 共通因数 3x

= 3x(2x + 3)

共通因数の取り方 ── 数と文字、それぞれの最大

共通因数を見つけるコツは2つに分けて考えること:

  • 数の部分:係数の 最大公約数(GCD) をとる。
  • 文字の部分:すべての項に共通して含まれる文字を、最も少ない次数でとる。
例4:12x²y − 8xy² + 4xy

数:12, 8, 4 の GCD は 4

x:x², x, x → 最低次数 x

y:y, y², y → 最低次数 y

共通因数 = 4xy

12x²y − 8xy² + 4xy = 4xy·3x − 4xy·2y + 4xy·1

= 4xy(3x − 2y + 1)

つまずきポイント①:「1」を書き忘れる
  • 4xy(3x − 2y + 1) で、最後の +1 を書き忘れる人が多発。
  • くくり出した後、項の数は変わらない。元が3項なら、かっこの中も3項。
  • 確認は 展開して元に戻るかでチェック。展開して 4xy·3x − 4xy·2y + 4xy = 12x²y − 8xy² + 4xy ◯。

マイナスを共通因数に含める

最初の項がマイナスのときや、全体を整えたいときは、マイナスごと外に出す。

例5:−6a² − 9a

共通因数として −3a を取る

= −3a(2a + 3)

かっこの中の符号がすべて反転する点に注意。

共通する「式」をくくり出す

共通因数は数や文字だけでなく、かっこを含む式のこともある。

例6:a(x + 1) + b(x + 1)

両方の項に共通の (x + 1) を外に出す

= (x + 1)(a + b)

例7:(x − 3)·x − (x − 3)·4

共通因数 (x − 3) をくくる

= (x − 3)(x − 4)

つまずきポイント②:共通因数は最後まで取り切る
  • 6x² + 12x → 2(3x² + 6x) で止めず、もう一歩 → 6x(x + 2) まで取り切る。
  • 共通因数を見つけたら「これより大きい共通部分はないか?」と確認する習慣を。
  • 因数分解は 最後までやって完成。途中で止めると次の操作(公式の適用)が見えない。

共通因数を先に見る理由

  • 因数分解では、すべての項に共通してかかっている数や文字を最初に取り出す。
  • 共通因数を取り出すと、残りの式が公式の形になることが多い。
  • 係数の最大公約数、文字の最小指数をセットで見る。
  • 取り出したあとは、展開して元に戻るか確認する。
例:6x²y−9xy²

係数の共通因数は3、文字はxとyが共通。したがって 3xy(2x−3y)。

この章でつまずきやすいところ

因数分解は「足し算の形を掛け算の形に直す」操作で、最初の一手は共通因数のくくり出し。ここでは本文や問題を見ている途中に起きやすい「迷いの場面」を取り上げ、判断のコツを整理します。

全項に共通する因数を一部しか取り出せていない

  • つまずく場面:「6x² + 9x」を見ているとき、数だけ気にして3(2x² + 3x)と書いて手が止まる。文字のxも全項にあるのに、数と文字をまとめて取る発想が出ず、最後まで取り切れているか判断できない。
  • 克服のコツ:見分け方として、数と文字を別々にチェックする。①係数の最大公約数を取る、②全項に共通する文字を最低次数で取る、の順で当てはめる。両方そろえて初めて「共通因数を取り切った」と言える。
  • ミニ例:6x² + 9x → 係数のGCDは3、文字は両方にx → 共通因数は3x → 3x(2x + 3)。3だけで止めると未完成。

くくった後のかっこ内に「1」を残さず項を消してしまう

  • つまずく場面:「12x²y − 8xy² + 4xy」を4xyでくくる途中、最後の +4xy を 4xy·1 と見られず、4xy(3x − 2y) と書いて項を一つ消してしまう。元が3項なのにかっこ内が2項になり、合っているか不安になる。
  • 克服のコツ:位置関係で覚える。くくり出しても項の数は変わらない。元が3項ならかっこ内も3項。共通因数そのものを取り出した項は、商として+1が残ると意識する。展開して元に戻るかで検算する。
  • ミニ例:12x²y − 8xy² + 4xy = 4xy·3x − 4xy·2y + 4xy·1 = 4xy(3x − 2y + 1)。+1 を書けば3項のまま。

マイナスを外に出した後にかっこの中の符号を直し忘れる

  • つまずく場面:「−6a² − 9a」を見て、共通因数に −3a を取ろうとした瞬間、かっこの中をどう書けばよいか迷う。−3a でくくった後、中身の符号をそのまま「−2a − 3」と書いてしまい、展開すると元に戻らない。
  • 克服のコツ:因果関係で押さえる。マイナスを外に出すのは分配法則の逆なので、外に −1 を出した分だけかっこ内の符号がすべて反転する。外に出した符号と中身の符号は連動する、と理解しておく。
  • ミニ例:−6a² − 9a = −3a(2a + 3)。展開すると −3a·2a + (−3a)·3 = −6a² − 9a で元に戻る。

共通因数は数や文字だけだと思い込み、かっこを含む式を見落とす

  • つまずく場面:「a(x + 1) + b(x + 1)」を見ている途中、共通しているのは数か文字だけと思い込み、aやbをくくろうとして手が止まる。両方の項に同じ (x + 1) があるのに、それを「因数」として扱っていいのか判断できない。
  • 克服のコツ:見分け方として、共通因数の正体は「全項にかかっている部品」であると押さえる。それが数・文字・かっこを含む式のどれでもよい。同じ形のかっこが全項にあれば、そのかっこごと外に出してよい。
  • ミニ例:a(x + 1) + b(x + 1) = (x + 1)(a + b)。(x − 3)·x − (x − 3)·4 = (x − 3)(x − 4) も同じ要領。

練習問題

問題1(基本)
次の式を因数分解しなさい。
  1. 2x + 6
  2. 5a² − 10a
  3. 3y + 9
  4. 6m² − 8m
答えを見る

(1) 2(x + 3) (2) 5a(a − 2) (3) 3(y + 3) (4) 2m(3m − 4)

問題2(2変数)
次の式を因数分解しなさい。
  1. 4xy + 8x
  2. 6a²b − 9ab²
  3. 12x²y − 18xy² + 6xy
答えを見る

(1) 4x(y + 2)

(2) 3ab(2a − 3b)

(3) 6xy(2x − 3y + 1) ← 最後の +1 を忘れない

問題3(マイナス・式の共通因数)
次の式を因数分解しなさい。
  1. −5x − 10
  2. x(a − 2) + 3(a − 2)
  3. (x + 1)(x − 1) − 2(x − 1)
答えを見る

(1) −5(x + 2)

(2) (a − 2)(x + 3)

(3) (x − 1){(x + 1) − 2} = (x − 1)(x − 1) = (x − 1)²

まとめ

  • 因数分解 = 展開の逆。「足し算 → 掛け算の形」。
  • 最初の一手は必ず 共通因数のくくり出し。
  • 共通因数は 数のGCD × 文字の最低次数。
  • くくり出した後、項の数は変わらない。+1 を忘れない。
  • 共通因数は (x − 3) のような かっこを含む式 でも構わない。
  • 不安なら 展開して元に戻るかで確認。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

最大公約数を素早く求める「ユークリッドの互除法」発展

共通因数をくくり出すとき、係数の最大公約数を見つけますが、数が大きいと探すのが大変です。大きい数を小さい数で割り、その余りでまた割る、という割り算をくり返すと最後の除数が最大公約数になる方法があり、これをユークリッドの互除法といいます。

出典:コトバンク(ユークリッドの互除法)

因数分解の考え方は紀元前300年の本に書かれていた発展

最大公約数を割り算のくり返しで求めるこの方法は、紀元前300年ごろの数学者ユークリッドの『原論』第7巻に記されています。明示的に書かれた最古のアルゴリズム(手順の決まった計算法)として知られ、共通因数を扱う考え方が2000年以上前から受け継がれてきたことがわかります。

出典:ウィキペディア(ユークリッドの互除法)

ネットの安全は「素因数分解の難しさ」に支えられている実生活

因数分解は積の形に書き直す操作で、数の世界では素因数分解にあたります。インターネットの通信を守るRSA暗号は、桁数の大きな合成数を素因数分解するのが現実的な時間では困難であることを安全性の根拠にしています。共通因数を見つける感覚が、暗号技術の土台につながっています。

出典:ウィキペディア(RSA暗号)

政府の暗号リストも素因数分解の困難さを利用している実生活

日本では電子政府で使う暗号を国の機関がCRYPTREC暗号リストとして定めています。そこに含まれるRSA暗号は、2つの大きな素数の積を素因数分解する難しさで安全性を保っており、実際には10進数で300〜1000桁ほどの大きな数が使われます。

出典:CRYPTREC(電子政府推奨暗号リスト)

「掛けるのは簡単、因数分解は難しい」が暗号の正体発展

RSA暗号では2つの大きな素数p、qの積N=pq を公開鍵に使い、Nを素因数分解できれば秘密の素数p、qが分かって暗号が破られてしまいます。つまり「積に戻すのは簡単でも、因数分解は難しい」という非対称性が、暗号の強さを生み出しているのです。

出典:CRYPTREC(注意喚起情報)