4つの公式(逆向き)
① a² + 2ab + b² = (a + b)²
② a² − 2ab + b² = (a − b)²
③ a² − b² = (a + b)(a − b)
④ x² + (a + b)x + ab = (x + a)(x + b)
① ② 平方の形 ── (a ± b)²
3項式で、両端が2乗、真ん中が ±2ab のとき、(a ± b)² の形になる。
両端:x² = x²、9 = 3²
真ん中:6x = 2·x·3 ◯(合致)
= (x + 3)²
両端:x²、25 = 5²
真ん中:−10x = −2·x·5 ◯
= (x − 5)²
両端:4a² = (2a)²、9 = 3²
真ん中:12a = 2·(2a)·3 ◯
= (2a + 3)²
③ 2乗の差 ── a² − b²
項が2つで 引き算、両方とも 2乗の形 のとき。
x² = x²、16 = 4²
= (x + 4)(x − 4)
9a² = (3a)²、25b² = (5b)²
= (3a + 5b)(3a − 5b)
- x² + 16 のような「2乗の和」は中3範囲では 因数分解できない(高校で複素数を使う)。
- 「+」だけ見て安易に (x + 4)(x + 4) としない。(x+4)² = x² + 8x + 16 なので不一致。
④ x² + (a + b)x + ab の分解 ── 和と積を探す
「x² + (係数)x + (数)」の形で、かけて定数項、足して x の係数 になる2数を探す。
見つからないときは、無理に作らない。教科書でも、整数の組で条件を満たすものがない場合は、この形では因数分解できないものとして扱います。
x² + 5x + 6 の場合:
① 定数項 6 = 1·6 = 2·3 = (−1)·(−6) = ...
② そのうち和が 5 になる組合せ:2 + 3 = 5 ◯
→ (x + 2)(x + 3)
積 12、和 7 になる2数 → 3, 4
= (x + 3)(x + 4)
積 6、和 −5 → −2, −3
= (x − 2)(x − 3)
積 −8(異符号)、和 2 → +4, −2
= (x + 4)(x − 2)
積 −12(異符号)、和 −1 → −4, +3
= (x − 4)(x + 3)
符号のルール ── 一目で見抜く
| 定数項 | x の係数 | 2数の符号 |
|---|---|---|
| + | + | 両方 + |
| + | − | 両方 − |
| − | + | 絶対値の大きい方が + |
| − | − | 絶対値の大きい方が − |
- 定数項が大きいほど候補が増える。素因数分解で組み合わせをすべて出す習慣を。
- x² + 7x + 12 → 12 = 1·12 / 2·6 / 3·4 → 和が 7 になるのは 3+4。
- 正負の組合せが必要なときは、絶対値で考えてから符号を決める。
この章でつまずきやすいところ
因数分解の4公式は、形を見抜けば一瞬で積に直せる便利な道具。でも本文を読み進める途中で「これはどの型?」「+と−どっちで使う?」と迷うことが多いところ。問題を解いている途中で手が止まる場面を整理しておこう。
2乗の和も因数分解できると思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で a²−b²=(a+b)(a−b) を読んだ直後、問題で x²+16 が出てくると「同じように (x+4)(x+4) にできそう」と書きかけて手が止まる場面。
- 克服のコツ:見分け方:項が2つで、間が引き算のときだけ「差の平方」が使える。+でつながる x²+16 のような「2乗の和」は、中3範囲では因数分解できない形として扱う。検算で (x+4)²=x²+8x+16 となり中央項が出るので不一致と分かる。
- ミニ例:x²−16 は (x+4)(x−4)。一方 x²+16 はこのままで因数分解しない、と教科書では整理する。
平方の形を真ん中の項だけで判断してしまう
- つまずく場面:4a²+12a+9 を読みながら「12a があるから平方公式の逆かな」と思うが、両端が a² ではなく 4a² で、本当に (a+□)² の型に合うのか自信が持てなくなる場面。
- 克服のコツ:見分け方:3項式なら両端が2乗かをまず確かめ、その2乗の中身を取り出して真ん中が ±2ab に一致するかを見る。両端→中央の順で確認すれば、係数が1でない式でも迷わない。中央項の符号で +か− かが決まる。
- ミニ例:4a²+12a+9:両端は (2a)² と 3²、真ん中は 2·(2a)·3=12a で合致 → (2a+3)²。
和と積の2数を定数項だけで決めてしまう
- つまずく場面:x²+2x−8 の因数分解で「定数項が−8だから −8=(−1)·8、(−2)·4 …」と候補を書き出した後、どの組を選ぶか迷い、xの係数2を見ないまま (x−1)(x+8) と書いてしまいそうになる場面。
- 克服のコツ:因果関係:定数項=積、xの係数=和の両方を同時に満たす2数でなければならない。手順は①積を素因数分解で全列挙 → ②そのうち和がxの係数になる組を選ぶ。定数項が負のときは絶対値で考えてから符号を決めると整理しやすい。
- ミニ例:x²+2x−8:積−8 の候補のうち、和が+2 になるのは +4 と −2 → (x+4)(x−2)。
共通因数を後回しにして公式に飛びついてしまう
- つまずく場面:2x²−8 を見て「2乗の差っぽい」と感じ、いきなり (√2 x+□)(√2 x−□) のように悩み始めてしまい、本文に書かれた「共通因数があるかをまず見る」という最初の一手を飛ばしてしまう場面。
- 克服のコツ:時系列:因数分解はいつでも①共通因数を取り出す → ②残った式に公式が使えるかの順番で進める。最初に係数や文字の共通部分をくくり出すと、残りが教科書通りの 4公式の形にきれいに収まることが多い。
- ミニ例:2x²−8=2(x²−4)=2(x+2)(x−2)。先に2をくくり出すと差の平方が見える。
練習問題
- x² + 8x + 16
- x² − 12x + 36
- 9a² + 6a + 1
答えを見る
(1) (x + 4)² (2) (x − 6)² (3) (3a + 1)²
- x² − 9
- 4x² − 25
- a² − b²
- 49 − x²
答えを見る
(1) (x + 3)(x − 3) (2) (2x + 5)(2x − 5) (3) (a + b)(a − b) (4) (7 + x)(7 − x)
- x² + 9x + 14
- x² − 7x + 10
- x² + 3x − 10
- x² − 4x − 21
答えを見る
(1) 積14、和9 → 2,7 → (x + 2)(x + 7)
(2) 積10、和−7 → −2,−5 → (x − 2)(x − 5)
(3) 積−10、和3 → 5,−2 → (x + 5)(x − 2)
(4) 積−21、和−4 → −7,3 → (x − 7)(x + 3)
- x² + 14x + 49
- x² − 100
- x² + x − 6
- x² − 16x + 64
答えを見る
(1) ①:(x + 7)² (2) ③:(x + 10)(x − 10) (3) ④:(x + 3)(x − 2) (4) ②:(x − 8)²
まとめ
- 因数分解の4公式は 乗法公式の逆向き。展開公式を確実にしてから入る。
- (a ± b)² の見分け:両端が2乗、真ん中が ±2ab。
- a² − b² の見分け:2項・引き算・両方2乗。和(+)は分解できない。
- x² + (a+b)x + ab:かけて定数、足して係数の2数を探す。
- 符号は 定数項の符号 × x の係数の符号から判別できる。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
「代数(algebra)」という名前の由来発展
式を積の形に直したり項を移したりする計算は、9世紀のフワーリズミーという数学者が二次方程式の解法とともに体系化しました。彼の著書名の一部「アル・ジャブル(al-jabr)」が、いまの「代数(algebra)」という言葉の語源になっています。
「アルゴリズム」も同じ人の名前から発展
因数分解のように決まった手順で答えを出すやり方を「アルゴリズム」と呼びます。この言葉は、代数学の語源にもなったフワーリズミー(al-Khwarizmi)の名前がラテン語化したものが由来です。
因数分解のむずかしさが暗号を守っている発展
2つの大きな素数をかけ算するのは簡単ですが、その答えを逆にもとの素数へ「因数分解」するのはとても大変です。インターネットで広く使われるRSA暗号は、この素因数分解の難しさを安全性のよりどころにしています。
未来のコンピュータと新しい暗号実生活
量子コンピュータを使うと素因数分解を速く解ける方法(ショアのアルゴリズム)が理論的に示され、RSA暗号がいつか破られる心配があります。そこで、量子コンピュータでも解読が難しい「耐量子計算機暗号」の研究が世界で進められています。
投げたボールの軌道は二次式実生活
空気の影響を無視すると、投げたボールは時間に対して二次式で表される放物線をえがきます。JAXAでは航空機をわざと放物線の軌道で飛ばし、機内に約20秒間の無重量(微小重力)状態をつくって実験に使っています。
