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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

中和 ── 酸+アルカリ→塩+水

酸とアルカリを混ぜると、お互いの性質を 打ち消し合う。これが 中和です。胃酸過多を抑える制酸剤、酸性土壌にまく消石灰、工場排水の処理など、身近な場面でも使われます。仕組みを H⁺ と OH⁻ の出会いで理解しましょう。

図でつかむ

中和の粒子モデル ── HCl + NaOH → NaCl + H₂O 塩酸から H⁺ + NaOHから OH⁻ H₂O 水になる(中和の本体) たがいの性質を打ち消し合う NaOHから Na⁺ + 塩酸から Cl⁻ NaCl 塩(えん)になる 水を蒸発させると結晶として残る BTB液で見る中和の進行(塩酸にNaOHを少しずつ加える) 黄(酸性) H⁺がまだ余っている 緑(中性) H⁺とOH⁻がちょうど同数 青(アルカリ性) OH⁻が余り始める 加えたNaOH水溶液の量 緑になった瞬間が完全中和 ── そこで止めずに加えると青(アルカリ性)に
中和の粒子モデル ── H⁺+OH⁻→H₂O(水)、Na⁺+Cl⁻→NaCl(塩)。BTB液は黄→緑→青と変化

中和の本体は、塩酸のH⁺とNaOHのOH⁻が結びついて水になる反応です。残ったNa⁺とCl⁻が塩(NaCl)のもとになります。BTB液が緑になった瞬間が、H⁺とOH⁻がちょうど同数になった完全中和の点です。

中和反応の本質

公式
中和の化学式
酸 + アルカリ → 塩(えん)+ 水
H⁺ + OH⁻ → H₂O

酸とアルカリを混ぜると、水素イオン H⁺ と 水酸化物イオン OH⁻ が結びついて水になる。これが中和の正体。

塩(えん)── 中和でできる物質

用語
塩(えん)
中和反応で 水以外にできる物質。
陽イオン(アルカリ由来)と陰イオン(酸由来)が結びついてできる。
例1:塩酸 + 水酸化ナトリウム

HCl + NaOH → NaCl + H₂O

食塩(NaCl)と水ができる。

例2:硫酸 + 水酸化ナトリウム

H₂SO₄ + 2NaOH → Na₂SO₄ + 2H₂O

硫酸ナトリウム(塩)と水。

例3:塩酸 + 水酸化バリウム

2HCl + Ba(OH)₂ → BaCl₂ + 2H₂O

塩化バリウム(塩)と水。

「中和すれば中性」とは限らない

つまずきポイント①:中和 ≠ 中性
  • 中和は 「H⁺ と OH⁻ が結びついて水になる反応」。塩酸と水酸化ナトリウム水溶液のような組み合わせでは、ちょうど反応し切るとほぼ中性になるが、どちらかが余ればその性質が残る。
  • 例:塩酸 10mL と水酸化ナトリウム水溶液 5mL を混ぜる → まだ塩酸が余って酸性。
  • 「中和」=「混ぜる反応」、「中性」=「結果の性質」、と区別する。

BTB液で中和の進行を見る

実験:塩酸+水酸化ナトリウム

塩酸(黄、酸性)に水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ加える

→ 少しずつ 黄 → 緑(中性)→ 青(アルカリ性)

緑になった瞬間が「ちょうど中和した点」

量的関係:H⁺ と OH⁻ の数

中和に必要な量は「H⁺ の数 = OH⁻ の数」のときに完全中和。

例4:H₂SO₄ vs NaOH の比

H₂SO₄ は H⁺ を 2 個出す(H₂SO₄ → 2H⁺ + SO₄²⁻)

NaOH は OH⁻ を 1 個出す

→ H₂SO₄ 1 個に対して NaOH 2 個で完全中和

身近な中和の例

  • 胃薬:胃酸(塩酸)が強すぎるとき、炭酸水素ナトリウム(重曹)で中和
  • 虫刺され:毒の性質は種類で異なるため、家庭で酸・アルカリを使って中和しようとせず、水で洗い流して必要なら医療機関に相談する
  • 農業:酸性化した土壌に消石灰(水酸化カルシウム)を加える
  • 工場排水:酸性排水を中和してから放流
  • 歯みがき:口の中の酸性を弱アルカリ性の歯磨き粉で中和

代表的な塩の組み合わせ

酸アルカリ塩
HCl(塩酸)NaOHNaCl(食塩)
HClKOHKCl(塩化カリウム)
H₂SO₄(硫酸)NaOHNa₂SO₄(硫酸ナトリウム)
H₂SO₄Ba(OH)₂BaSO₄(硫酸バリウム・白色沈殿)
HNO₃(硝酸)NaOHNaNO₃(硝酸ナトリウム)
HClCa(OH)₂CaCl₂(塩化カルシウム)

沈殿する塩・しない塩

水に溶ける/溶けない

塩は2種類:水に溶ける(白色沈殿しない) vs 水に溶けない(白色沈殿)

例:BaSO₄(硫酸バリウム)→ 水に溶けない、白い沈殿

例:NaCl(食塩)→ 水に溶ける、無色透明

硫酸バリウムは水に非常に溶けにくく、胃のレントゲン撮影の造影剤にも使われる

つまずきポイント②:中和の量的関係
  • 1価の酸(HCl)と1価のアルカリ(NaOH)は 1:1で中和
  • 2価の酸(H₂SO₄)と1価のアルカリ(NaOH)は 1:2で中和
  • 1価の酸(HCl)と2価のアルカリ(Ca(OH)₂)は 2:1で中和
  • H⁺ の総数 = OH⁻ の総数 が完全中和の条件
つまずきポイント③:塩の名前と性質
  • 「塩」は 食塩(NaCl)のことだけではない
  • 中和で生じる「塩(えん)」は広い概念。NaCl, KCl, BaSO₄, CaCl₂ などすべて塩
  • 陽イオン(金属由来)+ 陰イオン(非金属由来)の組み合わせ

この章でつまずきやすいところ

中和の本文を読んでいると、「中和したら必ず中性」「塩は食塩のこと」と思い込んで先に進めなくなる場面が出てきます。読みながら迷いやすい4つのポイントを、本文の流れに沿って整理します。

「中和」と「中性」を同じ意味だと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文で「塩酸10mLと水酸化ナトリウム水溶液5mL を混ぜる→まだ塩酸が余って酸性」という例を読んだとき、「中和したのに中性じゃないの?」と止まってしまう場面。
  • 克服のコツ:因果関係で整理する。「中和」はH⁺ と OH⁻ が出会って水になる反応そのものを指し、「中性」は反応後の水溶液の性質を指す。反応は起きていても、酸かアルカリのどちらかが余っていれば、その余ったほうの性質が残る。
  • ミニ例:塩酸10mLにNaOH水溶液5mLを加えると、5mL分のH⁺は中和されて水になるが、残った塩酸のH⁺はそのままなので液はまだ酸性。中和反応は起きているが中性ではない。

BTB液の色変化の途中で「緑=反応終了」と早合点してしまう

  • つまずく場面:実験の説明で「黄→緑(中性)→青(アルカリ性)」と書かれている所を読み、「緑になったら反応が止まるの?それともそのあとも反応するの?」と混乱する場面。
  • 克服のコツ:時系列で整理する。①最初は塩酸が多くH⁺だらけ→黄。②NaOHを加えるごとにH⁺とOH⁻が結びつき水になっていく。③ちょうどH⁺の数=加えたOH⁻の数になった瞬間が緑(完全中和の点)。④さらに加えるとOH⁻が余り始め青に変わる。
  • ミニ例:塩酸20mL(黄)にNaOHを少しずつ加えると黄→緑になり、ここで止めずにさらに加えると、余ったOH⁻のせいで青色になる。緑は反応の終わりではなく「ちょうど釣り合った瞬間」。

酸とアルカリは「いつも1:1で中和する」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文で HCl + NaOH の式を見たあとに H₂SO₄ + 2NaOH や 2HCl + Ca(OH)₂ の式を読むと、「なんで急に2がついた?」と立ち止まってしまう場面。
  • 克服のコツ:見分け方で整理する。酸が1分子から出すH⁺の数と、アルカリが1分子から出すOH⁻の数を見る。H⁺の総数=OH⁻の総数になるように個数を合わせるのがコツ。1:1とは限らず、価数の違いで比が変わる。
  • ミニ例:H₂SO₄はH⁺を2個出すので、OH⁻を1個出すNaOHとは1:2の比。逆にCa(OH)₂はOH⁻を2個出すので、H⁺を1個出すHClとは2:1の比で完全中和になる。

「塩(えん)」を食塩のことだけだと読み違えてしまう

  • つまずく場面:本文の途中で「中和では水と塩ができる」と書かれていて、次の例で BaSO₄(硫酸バリウム)や CaCl₂ が「塩」として出てくると、「えっ、これも塩?」と読み迷う場面。
  • 克服のコツ:位置関係で整理する。中和の反応式の右辺で水ではないほうが「塩(えん)」。アルカリ由来の陽イオンと酸由来の陰イオンが結びついた物質の総称で、食塩はその中のひとつにすぎない。
  • ミニ例:HCl + NaOH → NaCl + H₂Oの NaCl も塩、H₂SO₄ + Ba(OH)₂ → BaSO₄ + 2H₂Oの BaSO₄(白色沈殿)も塩。どちらも「水ではないほう」が塩にあたる。

練習問題

問題1(中和の式)

次の中和を化学式で表せ。

  1. 塩酸 + 水酸化ナトリウム
  2. 硫酸 + 水酸化カリウム
  3. 塩酸 + 水酸化カルシウム(係数も)
答えを見る

(1) HCl + NaOH → NaCl + H₂O

(2) H₂SO₄ + 2KOH → K₂SO₄ + 2H₂O

(3) 2HCl + Ca(OH)₂ → CaCl₂ + 2H₂O

問題2(BTB液)

塩酸 20mL(BTB黄)に水酸化ナトリウム水溶液を加えていく。緑(中性)になったところで止めたい。さらに加えたらどうなる。

答えを見る

水酸化ナトリウムが余って、青色(アルカリ性)になる。

問題3(量的関係)

H⁺ を 100 個出す塩酸を完全中和するには、NaOH からの OH⁻ が何個必要か。

答えを見る

同じ 100 個(H⁺ + OH⁻ → H₂O)

まとめ

  • 中和反応:酸 + アルカリ → 塩 + 水。本質は H⁺ + OH⁻ → H₂O。
  • 塩(えん):陽イオン(アルカリ由来)+ 陰イオン(酸由来)でできる物質。例:NaCl。
  • 中和 ≠ 中性:H⁺ と OH⁻ が反応しても、酸やアルカリが余れば中性にはならない。
  • BTB液で進行を見れる:黄 → 緑 → 青。
  • 身近な応用:胃薬・農業の土壌改良・工場排水の処理など。虫刺されは種類で性質が違うため、家庭で酸・アルカリを使って中和しようとしない。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

胃薬の重曹が胃酸を中和する実生活

胃酸は塩酸(HCl)を主成分とする強い酸で、出すぎると胃が荒れる原因になります。胃薬に使われる炭酸水素ナトリウム(重曹)は、NaHCO₃+HCl→NaCl+H₂O+CO₂という中和反応で胃酸を打ち消し、酸の働きをやわらげます。ただし出すぎを抑えると体が逆に胃酸を多く出そうとすることもあり、薬は決められた使い方を守ることが大切です。

出典:厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き Ⅲ 胃腸に作用する薬」

酸性の土を石灰で中和して畑を整える実生活

雨が多い日本では土が酸性にかたよりやすく、酸性が強いと作物の根が傷んだり養分の吸収が悪くなったりします。そこで炭酸石灰などのアルカリ性の資材をまいて土の酸を中和し、作物が育ちやすい状態に整えます。入れる量は土ごとの性質を調べて決めるのが原則で、まきすぎないようにします。

出典:農林水産省「地力増進基本指針 土壌改良資材」

強酸性の川を石灰で中和する世界初の事業実生活

群馬県の草津温泉の周辺では、火山の硫黄が溶けこんだ強い酸性の水が川に流れこみ、かつては生物がすめず建造物も傷む「死の川」と呼ばれました。今は上流で石灰を投入して酸を中和し、できた中和生成物を品木ダムにためています。昭和39年に始まったこの取り組みは、河川を中和する事業として世界で初めてのものです。

出典:国土交通省 関東地方整備局 品木ダム水質管理所「河川の中和」

水にとけない塩・硫酸バリウムを胃の検査に使う発展

硫酸(H₂SO₄)と水酸化バリウムが中和すると、水にとけにくい白い塩である硫酸バリウム(BaSO₄)ができます。硫酸バリウムはX線(レントゲン)を通しにくい性質があるため、飲んで胃や腸の形を写し出す造影剤として病院で使われています。体に吸収されず作用しないので、検査用として安全に利用できます。

出典:国立がん研究センター中央病院「消化管検査」

酸性雨は大気の中でできる酸発展

石油や石炭を燃やすと出る二酸化硫黄(SO₂)や窒素酸化物(NOx)が、空気中で化学変化を起こして硫酸や硝酸になり、雨にとけこんだものが酸性雨です。酸性雨は湖や川を酸性にして魚に影響を与えたり、森林や石でできた建物・文化財を傷めたりします。原因物質は数千km離れた地域まで運ばれるため、国境をこえた問題として対策が進められています。

出典:気象庁「酸性雨に関する基礎的な知識」