図でつかむ
イオン化傾向の大きい亜鉛(Zn>Cu)が電子を出して−極になり、電子は導線を通って銅板へ流れます。銅板では水溶液中のCu²⁺が電子を受け取って銅になり、板が重くなります。電流の向きは電子の流れと逆である点も図で確認しましょう。
電池の基本構造
- 負極(−極):電子を放出する電極(イオン化しやすい金属)
- 正極(+極):電子を受け取る電極
- 電子は 負極 → 外部回路 → 正極へ流れる
- 電流の向き:正極 → 負極(電子の逆向き)
ボルタ電池(最初の電池)
負極(亜鉛):Zn → Zn²⁺ + 2e⁻(亜鉛が溶け、電子が出る)
電子は導線を通って銅板へ
正極(銅):2H⁺ + 2e⁻ → H₂(水素ガスが発生)
ダニエル電池(実用的な電池)
負極(亜鉛):Zn → Zn²⁺ + 2e⁻
正極(銅):Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu(銅イオンが銅に戻る、銅板が太る)
2つの水溶液は 素焼き板やセロハンで仕切る → 水溶液が直接混ざりにくく、イオンは移動できる
イオン化傾向(金属の元気度)
イオン化列(中学範囲):Mg > Zn > Fe > Cu > Ag
- Mg(マグネシウム):最もイオン化しやすい
- Zn(亜鉛):ダニエル電池の負極
- Cu(銅):ダニエル電池の正極
- Ag(銀):イオン化しにくい
電池の種類
- 一次電池:使い切り(マンガン乾電池、アルカリ乾電池)
- 二次電池:充電して繰り返し使える(ニカド、リチウムイオン、鉛蓄電池)
- 燃料電池:水素と酸素から水と電気を作る。次世代エネルギー(FCV、定置式)
燃料電池の仕組み
負極:H₂ → 2H⁺ + 2e⁻(水素が電子を出す)
正極:O₂ + 4H⁺ + 4e⁻ → 2H₂O(酸素と水素イオンと電子で水ができる)
全体:2H₂ + O₂ → 2H₂O
→ 発電時にできる主な物質は水。水素を使う段階では CO₂ を出さない
身近な電池の種類
| 電池 | 種類 | 用途 |
|---|---|---|
| マンガン乾電池 | 一次電池 | リモコン、時計(弱電流) |
| アルカリ乾電池 | 一次電池 | 強電流のおもちゃ・LEDライト |
| ボタン電池 | 一次電池 | 腕時計・電卓・補聴器 |
| リチウムイオン | 二次電池 | スマホ・PC・電気自動車 |
| ニッケル水素 | 二次電池 | 充電池・ハイブリッド車 |
| 鉛蓄電池 | 二次電池 | 自動車のバッテリー |
| 燃料電池 | 連続供給 | FCV(燃料電池車) |
電池の歴史
1800年:ボルタ電池(イタリア・ボルタ)── 世界初の化学電池
1836年:ダニエル電池(イギリス・ダニエル)── 実用的な電池
1859年:鉛蓄電池(フランス・プランテ)── 充電可能
1888年:マンガン乾電池(屋井先蔵、日本)
1991年:リチウムイオン電池(ソニー)── 商業化
2019年:吉野彰がリチウムイオン電池でノーベル賞
ダニエル電池の改善点
ボルタ電池は 水素の泡が正極にたまる → 電気が流れにくくなる(分極)
→ すぐ電圧が下がる
ダニエル電池の解決策
2つの水溶液を 分けてセットする(素焼き板やセロハンで仕切る)
→ 銅イオンが銅板にくっつく → 水素が出ない
→ 安定して長く電気を供給できる
- 電子の流れ:負極 → 外部回路 → 正極。
- 電流の向き:正極 → 外部回路 → 負極(電子の逆)。
- 「電子は − から + へ、電流は + から − へ」と覚える。
- 2種類の金属で電池を作るとき、イオン化傾向が大きい方が負極
- マグネシウム vs 銅 → マグネシウムが負極
- 亜鉛 vs 銅 → 亜鉛が負極(ダニエル電池)
- イオン化列:Mg > Zn > Fe > Cu > Ag を覚える
- 一次電池:使い切り(マンガン・アルカリ乾電池)
- 二次電池:充電できる(リチウムイオン・鉛蓄電池)
- 充電できる電池の仕組み:放電と逆の化学反応を起こす
この章でつまずきやすいところ
電池の単元は、電子・電流・イオン・極の言葉が一気に出てきて、本文を読んでいる途中で「向きが逆?」「どっちが溶ける?」と混乱しがちです。ここでは読みながら起きる迷いを4つ取り上げ、見分け方を整理します。
電子の向きと電流の向きを同じだと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「電子は負極から正極へ流れる」と読んだ直後に「電流の向きは正極から負極」と書かれていて、矢印を同じ向きで書いてよいのか迷ってしまう場面です。
- 克服のコツ:因果関係で整理します。先に動くのは電子で、負極(−)から外部回路を通って正極(+)へ流れます。電流の向きはその反対と決められているだけです。「電子は−から+、電流は+から−」と二段で書き分けると混乱しません。
- ミニ例:ダニエル電池では、亜鉛板(−極)から銅板(+極)へ電子が導線を流れますが、回路図に書く電流の矢印は銅板から亜鉛板へ向きます。
ダニエル電池でどちらの金属板が溶けるか迷ってしまう
- つまずく場面:本文に「亜鉛板が溶け、銅板が太る」と書いてあっても、問題で「銅板はどう変化するか」と聞かれた瞬間に、銅も溶けるのか、それとも増えるのか分からなくなってしまう場面です。
- 克服のコツ:位置関係で整理します。負極=電子を出す側=金属が溶ける側、正極=電子を受け取る側=イオンが金属に戻る側と覚えます。ダニエル電池では亜鉛が負極なので溶け、銅が正極なので銅イオンが銅に戻って析出します。
- ミニ例:ダニエル電池で電流を流し続けると、亜鉛板はZn→Zn²⁺+2e⁻で減り、銅板はCu²⁺+2e⁻→Cuで重くなります。
2種類の金属のどちらが負極になるか判断できなくなる
- つまずく場面:「マグネシウムと銅で電池を作るとどちらが負極か」と問われたとき、イオン化列を見ながら「大きいほうが負極?小さいほう?」と本文を行ったり来たりして迷ってしまう場面です。
- 克服のコツ:見分け方で整理します。イオン化傾向が大きい金属ほど陽イオンになりやすく、電子を出しやすいので負極になります。中学範囲のMg>Zn>Fe>Cu>Agのうち、左にある金属が必ず負極です。
- ミニ例:Mgと銅の組み合わせならMgが負極、Znと銅の組み合わせ(ダニエル電池)ならZnが負極になります。
一次電池・二次電池・燃料電池の区別があいまいになる
- つまずく場面:本文を読み進める途中で、マンガン乾電池・リチウムイオン電池・燃料電池が次々と出てきて、「充電できるのはどれ?」「水しか出さないのはどれ?」が頭の中で混ざってしまう場面です。
- 克服のコツ:見分け方で整理します。充電できるかどうかで一次電池(使い切り)と二次電池(充電可)を分け、燃料を外から補給するかで燃料電池を区別します。一次は乾電池、二次はリチウムイオンや鉛蓄電池、燃料電池は水素+酸素→水という反応です。
- ミニ例:リモコンのマンガン乾電池は一次電池、スマホのリチウムイオン電池は二次電池、FCV(燃料電池車)の燃料電池は水だけを排出する連続供給型です。
練習問題
希硫酸に亜鉛板と銅板を入れて電池を作った。どちらが正極で、どちらが負極か。理由も。
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負極:亜鉛板(イオン化しやすい、電子を出す)
正極:銅板(水素イオンが電子を受け取る)
ダニエル電池で、亜鉛板はどう変化するか、銅板はどう変化するか。
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亜鉛板:溶けて減る(Zn → Zn²⁺ + 2e⁻)
銅板:銅が析出して太る(Cu²⁺ + 2e⁻ → Cu)
マグネシウムと銅で電池を作るとどちらが負極か。
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マグネシウムが負極(イオン化傾向が大)。
燃料電池の原料と排出物を答えよ。
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原料:水素と酸素 / 排出物:水(だけ)
まとめ
- 電池:化学エネルギー → 電気エネルギー。
- 負極:イオン化しやすい金属が電子を出す。
- 正極:イオンが電子を受け取る。
- 電子の流れ:負極 → 外部 → 正極。電流は逆向き。
- ダニエル電池:Zn(−)/Cu(+)、亜鉛が溶け銅が析出。
- イオン化傾向:Mg > Zn > Fe > Cu > Ag。
- 燃料電池は 水だけ排出のクリーン電池。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
日本の研究者が拓いたリチウムイオン電池発展
教科書に出るリチウムイオン電池は、二次電池(充電できる電池)の代表で、スマホやノートパソコン、電気自動車に使われています。旭化成の吉野彰さんは、当初は電気を通すプラスチック(ポリアセチレン)を負極に試したのち、最終的に炭素材料を負極に用いることで、軽くて繰り返し使える電池の原型をつくった功績で、2019年にノーベル化学賞を受賞しました。
日本生まれの乾電池発展
教科書のマンガン乾電池やアルカリ乾電池のような「乾いた電池」は、液がこぼれないよう改良された一次電池です。日本では時計技師だった屋井先蔵(やいさきぞう)が筒型の乾電池を実用化し、「乾電池王」と呼ばれました。その業績は「日本の一次・二次電池産業の誕生と成長」として2014年にIEEEマイルストーンにも認定されています。
水しか出さない燃料電池自動車(FCV)実生活
燃料電池は水素と酸素を反応させて電気をつくり、出るのは水だけというのが教科書のポイントです。これを動力にした燃料電池自動車(FCV)は走行中に二酸化炭素を出さず、ガソリン車のように数分で燃料(水素)を充填でき、航続距離が長いという利点があります。
水素は「どう作るか」も大切発展
燃料電池は使うときに水しか出しませんが、原料の水素を石油や天然ガスから工業的に作る段階では二酸化炭素が出てしまいます。将来、太陽光や風力の電気で水を電気分解して水素を作れば、ほとんど二酸化炭素を出さずに水素を用意でき、より環境にやさしくなると期待されています。
使い終わった電池はごみに混ぜない実生活
スマホやモバイルバッテリーに入っている充電式のリチウムイオン電池は、ふつうのごみに混ぜると押しつぶされて発火する事故が各地で起きています。国は2030年までに重大火災ゼロをめざし、住む市区町村のルールに従って分別して出すことや、回収してコバルトなどの資源に再利用することを進めています。
次世代の電池「全固体電池」発展
今のリチウムイオン電池は内部にしみこませた液(電解液)を使うため、発火の心配や寿命の問題があります。この液を燃えにくい固体に置きかえた「全固体電池」は、より安全で、たくさんの電気をためられ長持ちする次世代電池として研究が進み、2030年以降の本格的な実用化がめざされています。
