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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

力と運動 ── 慣性・斜面・自由落下

力が働かなければ物体はそのままの速さで動き続け、力が働けば速さが変わる。これが運動の基本ルール。慣性の法則・力がはたらくと加速する・作用反作用、3つの法則を整理します。

図でつかむ

斜面を下る台車 ── 重力の斜面方向の成分が加速の原因 重力を2つの成分に分解 重力 斜面方向の成分 (加速の原因) 斜面に垂直な成分 ※摩擦は考えない 記録テープ(0.1秒ごと) 1cm 3cm 5cm 7cm 9cm 差は+2cmずつ一定 → 時間(テープ1本=0.1秒) 力がはたらき続ける間、速さは一定の割合で増え続ける(等加速度運動) 自由落下も同じ ── 速さは毎秒9.8m/sずつ増える(2秒後 v=9.8×2=19.6m/s)
斜面を下る台車 ── 重力の斜面方向の成分がはたらき続け、記録テープは1→3→5→7→9cmと2cmずつ増える

斜面では重力の斜面方向の成分が台車を押し続けるので、0.1秒ごとに切ったテープは1・3・5・7・9cmと一定の差(+2cm)で長くなります。これが等加速度運動で、自由落下も同じしくみ ── 速さが毎秒9.8m/sずつ増えます。

慣性の法則 ── 力がなければそのまま

法則
慣性の法則(運動の第1法則)
力が働かないか、つりあっているとき、静止物体は静止し続け、動いている物体は等速直線運動を続ける。
身近な例

電車が急ブレーキ → 乗客が前のめり(体は動き続けようとする)

急発進 → 乗客が後ろにのけぞる(体は静止し続けようとする)

テーブルクロスを素早く引く → 上のお皿は動かない

力がはたらくと運動が変わる

  • 運動と 同じ向きに力 → 速さが増す(加速)
  • 運動と 逆向きに力 → 速さが減る(減速)
  • 運動と 垂直に力 → 進行方向が変わる(カーブ)

力の合成 ── 2つの力を1つにまとめる

用語
力の合成
同時にはたらく2つの力を、同じはたらきをする1つの力(合力)に置きかえること。角度をもつ2力は、その2辺を辺とする平行四辺形の対角線が合力になる。
  • 2力が一直線上・同じ向き → 合力はその和
  • 2力が一直線上・反対向き → 合力はその差(大きいほうの力の向き)
  • 2力が角度をもつ → 平行四辺形の対角線が合力(下の「力の分解」はこの合成を逆にたどる操作)

斜面を下る運動

斜面を下る台車(摩擦無視)

重力の 斜面方向の成分が力として働く → 加速

速さは時間とともに 一定の割合で増加(等加速度運動)

記録テープは 右へ行くほど間隔が広がる形

自由落下

用語
自由落下
物体が 重力だけを受けて落ちる運動。空気抵抗は無視。
特徴

速さが時間に 比例して増える(9.8 m/s ずつ速くなる、g = 9.8 m/s²)

時間 t 秒後の速さ:v = gt

時間 t 秒後の落下距離:y = (1/2)g·t²

→ 数学で学ぶ y = ax² と同じ形

水平投射・斜方投射(参考)

水平に投げると、水平方向は 等速、垂直方向は 自由落下と同じ。同時に2つの運動をしている。

作用反作用の法則

法則
作用反作用の法則(運動の第3法則)
A が B に力を加えると、B も同じ大きさで反対向きの力を A に返す。
例

壁を押すと壁から押し返される

ロケットが燃料を後ろに出すと、ロケットは前へ進む

スケーターが氷を後ろに蹴ると、スケーターは前へ滑る

つりあいと作用反作用は違う

運動の3法則(ニュートン)

ニュートンの法則

第1法則:慣性の法則 力が働かなければ等速直線運動

第2法則:運動方程式 F = ma(高校で学ぶ)

第3法則:作用反作用 力は対で生じる

→ 中学では第1と第3を学び、第2の概念は感覚的に理解

力と速さの関係(中3範囲)

  • 力なし → 等速(慣性)
  • 運動方向の力 → 加速(速くなる)
  • 逆方向の力 → 減速(遅くなる)
  • 強い力 → 大きな加速(速さの変化が大きい)
  • 軽い物体 → 大きな加速(同じ力でも軽いほど速く動く)

摩擦力と運動

摩擦力の種類

静止摩擦力:物体が動き出す前に働く(押しても動かない)

動摩擦力:動いている物体に働く(だんだん遅くなる)

力 > 静止摩擦力 → 動き始める

水平面で物体を押す → 摩擦が小さければ加速、大きければ等速や停止

記録タイマーで分かる加速

  • 同じ時間ごとのテープの長さが 一定の割合で増える → 等加速度運動
  • 増え方が大きいほど、速さが増加する割合も大きい
  • 例:間隔 1, 3, 5, 7, 9 cm(毎0.1秒)→ 速さが増えていく
  • 各区間の速さ = その区間の長さ / 0.1秒
つまずきポイント①:「つりあい」と「作用反作用」の区別
  • つりあい:1つの物体に働く2つの力が打ち消し合う。例:机の上の本にかかる重力と、机が押し返す力。
  • 作用反作用:A → B の力と B → A の力(異なる物体同士)。
  • 区別:力が「同じ物体に働く」か「異なる物体に働く」か。
つまずきポイント②:自由落下と質量
  • 自由落下の 速さは質量と関係ない(空気抵抗を無視すれば)
  • 1kgの鉄球も1gの紙くずも、同じ速さで落ちる(真空中)
  • 実際の空気中では空気抵抗で違う(紙はゆっくり落ちる)
  • ガリレオが実験で証明したと伝えられる
つまずきポイント③:等速と加速の混同
  • 「速い」状態と「加速している」状態は違う
  • 等速直線運動 = 速いまま 変化しない(力がつりあい)
  • 加速運動 = 速さが 変化する(力が働いている)
  • 記録テープの間隔で見分けられる

この章でつまずきやすいところ

「力と運動」は読みながら頭の中で動きを思い浮かべる単元です。本文の図やテープを目で追っている途中で、慣性と加速が混ざったり、机の上の本の図で矢印の根元がどの物体に刺さっているかを見落として手が止まったりしがち。代表的な迷いポイントを先回りで整理します。

等速直線運動を「力で押し続けている」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文の慣性の法則を読みながら、頭の中で動いている台車をイメージした瞬間、「動いているなら進行方向に力がはたらいているはず」と感じて、図の力の矢印を探してしまう場面。
  • 克服のコツ:因果関係で整理する。力 → 速さの変化であって、力 → 動いていることではない。合力が0なら、止まっているものは止まったまま、動いているものは同じ速さで動き続ける。つまり「動き続ける」のに力は要らない。
  • ミニ例:急ブレーキで乗客が前のめりになるのは、体が前向きに押されているからではなく、体が動き続けようとしているから。バス全体が減速したぶん、体だけが取り残される。

机の上の本の図の矢印を追っている途中で作用反作用と混同してしまう

  • つまずく場面:机の上の本の図を見ながら、本にはたらく重力と机が押し返す力の矢印を順に確認している途中で、「これって作用反作用じゃないの?」と迷い、本文の説明とイラストを何度も往復してしまう場面。
  • 克服のコツ:読みながらの一手として、矢印の根元がどの物体に刺さっているかを必ず指で押さえて確認する。2本の矢印の根元が同じ物体に刺さっていれば、その図でいま見ているのは「つりあい」の話。根元が別々の物体に刺さっていれば、別の関係の話に切り替わったサイン。定義の比較自体は違い辞典側にゆずり、本文の図では矢印の根元チェックだけに集中する。
  • ミニ例:机の上の本の図では、まず本にかかる重力の矢印と机が本を押し返す力の矢印の根元がどちらも「本」に刺さっていることを指で確認する。根元が同じ物体に揃っていれば、その図はつりあいを示している場面だと読み取れる。

斜面の運動と等速直線運動を同じ「直線運動」とまとめてしまう

  • つまずく場面:記録テープの図を見ながら、「直線に並んでいる打点」と「斜面を下る台車の打点」を同じ種類の運動と感じてしまい、テープの間隔の違いに気づかずに本文を読み進めてしまう場面。
  • 克服のコツ:見分け方として打点の間隔の変化に注目する。間隔が等しければ等速直線運動(合力0)、間隔がだんだん広がるなら加速運動(合力が運動方向にはたらく)。斜面では重力の斜面方向の成分が常にはたらき続けるため、間隔は広がる。
  • ミニ例:摩擦を無視した斜面を下る台車の記録テープでは、連続する区間の長さの差が一定(2, 2, 2, … cm ずつ増える)ので、各区間の長さは1, 3, 5, 7, 9 cm のような奇数列になる。差が一定であることが、速さが時間に対して一定の割合で増える等加速度運動を表している。

自由落下で「重いほど速く落ちる」と感じてしまう

  • つまずく場面:本文の自由落下の式 v = gt を読んでいる途中で、「鉄球と紙くずなら鉄球が先に落ちるはず」という日常感覚が頭をよぎり、式に質量が入っていないことに違和感を持ってしまう場面。
  • 克服のコツ:式を見るときの一手として、質量 m が式に現れていないことを指で確認する。v = gt の右辺にあるのは重力加速度 g と時間 t だけで、質量は出てこない。空気抵抗を無視すれば、落下の速さを決めるのは g と t だけ。実際の空気中で紙がゆっくり落ちるのは、空気抵抗が大きいからであって、自由落下のモデルとは別の話。
  • ミニ例:同じ高さから同時に手を離した鉄球と紙くずは、空気抵抗を無視すれば同時に着地する。記録テープを使った落下実験でも、質量がちがう物体で打点間隔の広がり方は同じになる。参考までに式に当てはめると、t = 2 秒後の速さは v = 9.8 × 2 = 19.6 m/s で、これも質量によらない。

練習問題

問題1(慣性)

動いているバスが急停車したとき、乗客の体はどちらに倒れるか。理由も。

答えを見る

前方(進行方向)に倒れる。慣性によって体は動き続けようとするから。

問題2(斜面)

摩擦のない斜面を台車が下るとき、記録テープの間隔はどう変化するか。

答えを見る

進むにつれて 間隔が広がる(速さが増加する=加速運動)。

問題3(自由落下)

自由落下で 2秒後の物体の速さ(g = 9.8 m/s² として)。

答えを見る

v = 9.8 × 2 = 19.6 m/s

問題4(作用反作用)

本を机の上に置いたとき、本に働く重力と、机が本を押し返す力は「つりあい」か「作用反作用」か。

答えを見る

つりあい(どちらも本に働く力)。作用反作用は、本が机を押す力と、机が本を押す力の関係。

まとめ

  • 慣性の法則:力がなければ 速さも向きも変わらない。
  • 力が働くと 速さや向きが変わる。
  • 斜面の運動:等加速度(記録テープの間隔が広がる)。
  • 自由落下:v = gt、落下距離は (1/2)gt²。
  • 作用反作用:A → B と B → A は同じ大きさで反対向き(異なる物体同士)。
  • 「つりあい」は同じ物体に働く力、「作用反作用」は異なる物体間。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

シートベルトは慣性から身を守る道具実生活

走っている車が急に止まっても、乗っている人の体は慣性によって前へ動き続けようとします。シートベルトはこの動き続けようとする体をしっかり支え、ハンドルや前の座席に強くぶつかったり車外へ投げ出されたりするのを防いでくれます。慣性の法則が、命を守るしくみに直接いかされている例です。

出典:国土交通省 自動車のリコール・不具合情報(エアバッグの効果は、シートベルトを着用してこそ)

ロケットが宇宙へ進めるのは作用・反作用実生活

ロケットは燃料を燃やしてできた高温のガスを後ろへ勢いよく噴き出します。このとき噴き出すガス(作用)の反作用としてロケット本体が前へ押し出され、空気のない宇宙でも進むことができます。口を結ばずに手をはなした風船が飛んでいくのと同じしくみで、作用・反作用の法則そのものです。

出典:ファン!ファン!JAXA!(ロケットの噴射の力はどうやって出すのですか?)

月面で証明された「重さが違っても同じ落ち方」発展

1971年、アポロ15号の宇宙飛行士が月面でハンマーと羽根を同じ高さから同時に手放す実験を行いました。空気のない月では空気抵抗がないため、重いハンマーと軽い羽根が同じ速さで落ち、同時に月面に着地しました。質量に関係なく自由落下の速さは同じになるという、ガリレオの考えを実際に確かめた実験です。

出典:JAXA きぼう広報・情報センター(Hammer Versus Feather on the Moon)

ガリレオは斜面を使って落下のきまりを見つけた発展

自由落下は速すぎて当時の道具では時間を正確に測れなかったため、ガリレオはなめらかな斜面の上で球を転がし、落下をゆっくり再現して調べました。その結果、物体の落ちる速さは重さによらず、進んだ距離が時間の2乗に比例することを見いだしました。斜面の運動と自由落下が同じ仲間であることを示した工夫です。

出典:学びの場.com(科学エッセイ:ガリレオと物体の落下法則)

ABSブレーキはタイヤをロックさせない工夫実生活

強くブレーキを踏むとタイヤが回転を止めて路面をすべり、止まりにくく方向も変えられなくなることがあります。ABS(アンチロックブレーキシステム)はタイヤがロックしそうになるとブレーキを細かくゆるめて回転を保ち、車の進行方向の安定を守ってハンドル操作で障害物をよけられるようにします。摩擦のはたらきを上手に利用した安全技術です。

出典:国土交通省 自動車総合安全情報(ABS)

宇宙ステーションの中では物が止まらない発展

国際宇宙ステーションの高さ(約400km)でも地球の重力は強くはたらいていて、地上より1割ほどしか弱くなりません。それでも中が無重量状態になるのは、ISSと中の物体が地球を回りながら一緒に落ち続けている(自由落下している)からです。この中で軽く押した物は落ちたり止まったりせず、まっすぐ同じ速さで動き続け、慣性の法則がとてもよくわかります。

出典:JAXA 有人宇宙技術部門(どうしてISS内では、無重力になるのでしょうか)