図でつかむ
阿蘇山や桜島などの火山は、別府温泉や八丁原の地熱発電という恵みと、シラス台地の「水はけが良すぎる」という農業の制約を、どちらも九州にもたらしています。地図を南西へ島づたいにたどると、亜熱帯の沖縄までの位置関係もつかめます。
九州・沖縄8県
| 県 | 県庁所在地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 福岡県 | 福岡市 | 九州最大都市、政令指定都市、ラーメン |
| 佐賀県 | 佐賀市 | 伊万里焼・有田焼、吉野ヶ里遺跡 |
| 長崎県 | 長崎市 | 原爆、出島、離島多数、ハウステンボス |
| 熊本県 | 熊本市 | 阿蘇山、熊本城、水俣病 |
| 大分県 | 大分市 | 別府温泉、湯布院、地熱発電 |
| 宮崎県 | 宮崎市 | 農業(促成栽培・畜産)、日向夏 |
| 鹿児島県 | 鹿児島市 | 桜島、シラス台地、屋久島、種子島 |
| 沖縄県 | 那覇市 | 亜熱帯、琉球文化、米軍基地 |
地形と気候
九州山地:南北に走る
北部:筑紫平野(佐賀・福岡)
南部:宮崎平野・薩摩半島・大隅半島
主な火山:阿蘇山(熊本)・桜島(鹿児島)・雲仙岳(長崎)・霧島山
主な河川:筑後川(九州最大)、球磨川
気候:温暖、台風が多い、梅雨に大雨
沖縄:亜熱帯気候、年間平均気温22℃以上
火山と地熱
多くの活火山があり、温泉や地熱発電に利用される。
阿蘇山(熊本):世界最大級のカルデラ(外輪山が約25km×18km)
桜島(鹿児島):今も噴火する活火山、市街地に火山灰が降る
雲仙岳(長崎):1991年の噴火で大きな被害
霧島山(宮崎・鹿児島):新燃岳が活動的
温泉地:別府(大分、日本一の湧出量)、湯布院、黒川温泉、指宿(砂蒸し風呂)
地熱発電:八丁原発電所(大分)が日本最大
農業 ── 畜産と促成栽培
畜産:宮崎・鹿児島で 肉牛・豚・鶏の飼育が盛ん
・宮崎:宮崎牛、鶏
・鹿児島:黒豚、ブロイラー、肉牛
促成栽培:宮崎平野で冬〜春に夏野菜(ピーマン・きゅうり・なす)
シラス台地(鹿児島・宮崎):火山灰でやせている
→ さつまいも・お茶・たばこを栽培
筑紫平野(福岡・佐賀):稲作と 二毛作(米と小麦)
八代平野(熊本):い草(畳の原料)、トマト
佐賀平野:玉ねぎ・れんこん
シラス台地
鹿児島県・宮崎県南部に広がる 火山噴出物(シラス)の堆積地
水はけが良すぎて稲作に不向き
→ 畑作中心(さつまいも・お茶・たばこ)
→ 畜産に利用(広い土地)
大雨で がけ崩れが起こりやすい
北九州工業地帯
1901年:八幡製鉄所が操業開始(福岡県、現在の北九州市)
中国からの鉄鉱石と筑豊炭田の石炭で製鉄を発展
かつて日本4大工業地帯の1つ
現在は 地位低下(石炭から石油へのエネルギー革命、海外との競争)
近年:機械・自動車(トヨタ九州、日産九州)が中心
九州はIC・半導体工場が多く、九州全体が「シリコンアイランド」と呼ばれた(北九州工業地帯だけの呼び名ではない)
沖縄の特色
気候:亜熱帯(最も暖かい)、年間平均気温22℃以上
サンゴ礁、青い海、白い砂浜
農業:さとうきび・パイナップル・マンゴー・ゴーヤ
観光業が主要産業。観光客数は景気・感染症・交通事情で大きく変動するため最新資料で確認
琉球文化:かつての琉球王国の独自文化
・首里城(世界遺産、2019年焼失後、再建が進む)
・三線(さんしん)、エイサー、琉球料理
・琉球語(沖縄方言)
米軍基地:在日米軍専用施設面積の大きな割合が沖縄に集中。割合は資料集で確認
基地問題:騒音、事故、土地利用の制限
沖縄の歴史
琉球王国時代:中国・東南アジアと貿易で栄える
1609年:薩摩藩の侵攻、実質支配下に
1879年:琉球処分、沖縄県設置
1945年:沖縄戦、約20万人が犠牲(民間人含む)
1945〜1972年:アメリカ統治下
1972年5月15日:日本に 復帰
毎年「慰霊の日」(6月23日)に追悼
環境問題
- 水俣病(熊本):4大公害病の1つ、有機水銀。水俣市はその後の対策で環境モデル都市に選ばれ、公害を克服した都市として知られる
- 北九州市は公害を克服した後、リサイクル産業を集めた「エコタウン」として知られる
- サンゴ礁の保全(沖縄):温暖化・海洋汚染で減少
- 火山災害:桜島の降灰、雲仙岳の火砕流
- 台風:毎年複数の台風が直撃
- 気候変動の影響:強い台風、海面上昇
有明海と諫早湾干拓
佐賀・長崎・福岡・熊本の4県に囲まれた九州西部の内海で、干満差は日本最大級
満潮と干潮の差が大きいため、広大な干潟が広がる
のり(海苔)養殖の一大産地(佐賀県などが全国有数の生産量)
諫早湾干拓事業:1997年に潮受け堤防で諫早湾を閉め切り、干拓地を造成
→ 閉め切り後、有明海の漁業(のり養殖・貝類など)への影響が指摘される
→ 漁業者は堤防の開門調査を、営農者・国は防災上の理由から開門に反対し、長年にわたり裁判で争われてきたが、2024年に最高裁が開門を求める上告を退け、非開門の方向で決着した
現在は開門をめぐる対立から、国の交付金による有明海の環境再生の取り組みへと軸足が移っている
環境と開発の対立の代表例として取り上げられることが多い
九州・沖縄の観光資源
- 世界遺産:屋久島(鹿児島、自然)、長崎の教会群、明治日本の産業革命遺産
- 世界自然遺産:奄美大島・徳之島・沖縄島北部・西表島(2021年)
- 歴史:長崎の出島、熊本城、太宰府天満宮
- 温泉:別府・湯布院・黒川・指宿
- 観光地:阿蘇、桜島、ハウステンボス、首里城
- 気候が 亜熱帯(他は温帯)
- かつて 琉球王国として独自に存在
- 1972年に日本に復帰(戦後アメリカ統治)
- 米軍基地問題:在日米軍専用施設面積の大きな割合が集中
- シラス台地:火山灰の台地で水はけが良すぎる
- → 稲作に不向き、畑作・畜産が中心
- さつまいも・お茶・たばこ → 大型畜産(鹿児島・宮崎)
- かつて:八幡製鉄所中心、日本4大工業地帯
- 現在:地位低下、自動車・機械へ転換
- 九州全体はIC工場が多く「シリコンアイランド」と呼ばれた(北九州工業地帯だけの呼び名ではない)
- 原料:石炭(筑豊炭田)から石油へのエネルギー革命の影響
この章でつまずきやすいところ
九州・沖縄地方は、火山地形・工業の移り変わり・亜熱帯の自然と歴史が一気に出てきて、本文を読んでいる途中で混乱しやすい単元です。読みながら迷いがちな場面を4つ取り上げ、整理のコツを示します。
シラス台地を「水田が広がる豊かな土地」と思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「シラス台地」「鹿児島・宮崎」と出てきた瞬間、平野=稲作のイメージで「米どころ」と読み流してしまう。後で「畑作・畜産が中心」と書かれていて、頭の中の地図と合わずに止まってしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で押さえます。シラス=火山噴出物→水はけが良すぎる→水田に水がたまらない→稲作に不向き→畑作と畜産が中心、という1本の流れにつなげると、「平野なのに米が中心ではない」理由がすっと入ります。地名より先に「水はけ」の話を思い出すのがコツです。
- ミニ例:鹿児島・宮崎南部のシラス台地では、さつまいも・お茶・たばこなどの畑作と、肉牛・豚・鶏の畜産が盛ん、と教科書では整理します。
北九州工業地域を「今も鉄鋼中心の4大工業地帯」と思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「八幡製鉄所」「日本4大工業地帯」と出てくると、今でも鉄鋼の中心地のように読んでしまう。少しあとに「自動車」「シリコンアイランド」と続き、北九州工業地帯そのものがシリコンアイランドだと取り違えてしまう場面。
- 克服のコツ:範囲の広さで区別します。北九州工業地帯は福岡県の一地域の工業地帯で、現在は自動車・機械が中心。「シリコンアイランド」は九州全体にIC工場が多いことを指す通称で、北九州工業地帯だけの呼び名ではありません。
- ミニ例:結果として、北九州工業地帯はかつての鉄鋼中心からトヨタ九州・日産九州などの自動車へ転換し、それとは別に九州各地(熊本など)にIC工場が集まったことから九州全体が「シリコンアイランド」と呼ばれた、と教科書では整理します。
沖縄の歴史を「ずっと日本の一部だった」と思い込んでしまう
- つまずく場面:「琉球王国」「薩摩藩の侵攻」「琉球処分」「アメリカ統治」「1972年復帰」と固有の出来事が立て続けに本文に出てきて、どれが「日本になる前」でどれが「日本になった後」か順番が頭の中で入れ替わってしまう場面。
- 克服のコツ:時系列で4つの段に分けます。(1)琉球王国時代=独自に中国などと貿易、(2)1609年=薩摩藩の侵攻で実質支配下、(3)1879年=琉球処分で沖縄県設置、(4)1945〜1972年=アメリカ統治→1972年5月15日に日本復帰。この4段で読み返すと、本文の順序とつながります。
- ミニ例:教科書では、琉球王国→薩摩の侵攻→琉球処分→沖縄戦→アメリカ統治→1972年復帰という大きな流れで整理されます。
「火山=危険なもの」一色で読んでしまい、観光や発電の話とつながらなくなる
- つまずく場面:本文で「桜島の降灰」「雲仙岳の火砕流」と続き、災害のイメージで読み進めると、すぐあとに出てくる「別府・湯布院」「八丁原発電所」「観光資源」が別の話のように感じられて、火山と結びつかなくなる場面。
- 克服のコツ:因果関係を「同じ火山活動から2方向に分かれる」と捉えます。活発な火山活動→一方で噴火・降灰・火砕流などの災害リスク、もう一方で温泉・地熱発電・カルデラ景観などの観光・エネルギー資源。同じ原因から「備え」と「活用」が出てくる、と読むと混乱しません。
- ミニ例:大分の別府温泉や八丁原地熱発電所、熊本の阿蘇のカルデラ景観は、火山活動を資源として活用した例だと教科書では整理します。
練習問題
- 九州8県(沖縄含む)
- 世界最大級のカルデラを持つ火山
- 沖縄が日本に復帰した年
- 1901年に操業を始めた製鉄所
答えを見る
(1) 福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄
(2) 阿蘇山(カルデラ) (3) 1972年 (4) 八幡製鉄所
シラス台地について、特徴と主な作物を答えよ。
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火山噴出物(シラス)が堆積した台地。水はけが良すぎて稲作に不向き。さつまいも・お茶・たばこの畑作、肉牛・豚・鶏の畜産が盛ん。
沖縄県の特色を、気候・農業・歴史・社会問題の各観点から述べよ。
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気候:亜熱帯(温暖、台風)
農業:さとうきび・パイナップル・マンゴー
歴史:かつて琉球王国、1972年に日本復帰
社会問題:在日米軍専用施設面積の大きな割合が沖縄に集中
九州で起きた4大公害病の1つは何か。原因も答えよ。
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水俣病(熊本県水俣市)。原因:有機水銀の海洋汚染で、魚介類を食べた人々が中毒。
まとめ
- 九州・沖縄8県。九州最大都市は福岡市。
- 火山と温泉(阿蘇・桜島・別府)、地熱発電。
- 農業:畜産(宮崎・鹿児島)・促成栽培(宮崎)・シラス台地。
- 北九州工業地帯:かつて4大工業地帯、現在は自動車・機械。九州全体はIC工場が多く「シリコンアイランド」と呼ばれた。
- 沖縄:亜熱帯・琉球文化・米軍基地問題。
- 1972年沖縄返還、世界自然遺産(屋久島・奄美沖縄)。
- 水俣病(4大公害病)の教訓。
- 有明海:干満差日本最大級・のり養殖。諫早湾干拓の開門調査は2024年に非開門で決着し、現在は環境再生へ。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
首里城の正殿が2026年秋に再建完成時事
2019年の火災で焼け落ちた首里城の正殿が、復元工事を経て2026年に再建されます。国営沖縄記念公園(内閣府沖縄総合事務局所管)によると、正殿の復元完成式は2026年11月22日に行われ、翌11月23日から正殿の供用(一般公開)が始まります。琉球王国の文化を伝える象徴がよみがえります。
出典:国営沖縄記念公園(首里城公式・内閣府沖縄総合事務局所管)「【2026年11月23日~】首里城正殿供用開始(一般公開)決定のお知らせ」
熊本にTSMCの半導体工場が進出(シリコンアイランド九州)時事
世界最大手の半導体メーカーである台湾のTSMCが、熊本県菊陽町に工場(JASM)をつくり、2024年末に量産を始めました。さらに、より先端の半導体をつくる第2工場の建設も進んでいます。第2工場は当初6ナノメートル・2027年稼働の予定でしたが、その後、AI向けなどの需要を背景に、より先端の3ナノメートルへ計画が変更されました。台湾の経済部は2026年3月31日にこの計画変更を承認し、量産開始は2028年、稼働は2029年ごろに延期されると報じられています。政府も経済安全保障の観点から大きな補助を行っており、「シリコンアイランド」と呼ばれた九州の半導体産業が再び成長しています。
出典:フォーカス台湾「TSMC、熊本第2工場で3ナノ半導体生産へ 経済部が投資計画の変更を承認/台湾」(2026年4月1日)/日刊工業新聞「TSMC、熊本第2工場稼働1年半延期 29年上期に」
奄美・沖縄が世界自然遺産に(2021年)発展
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」が2021年7月に世界自然遺産に登録されました。西表島だけにすむイリオモテヤマネコ、奄美のアマミノクロウサギ、やんばるのヤンバルクイナなど、ここにしかいない固有種が多いことが評価されました。生物多様性の豊かさが世界的に認められた地域です。
大分にある日本最大の地熱発電所発展
九州は火山が多いため地熱エネルギーに恵まれ、大分県九重町の八丁原発電所は出力11万kWで日本最大の地熱発電所です。地下の高温の蒸気でタービンを回して発電し、二酸化炭素をほとんど出さない再生可能エネルギーとして注目されています。火山地形が暮らしの電力にも生かされています。
1914年の桜島大正噴火で陸続きに発展
鹿児島の桜島は1914年(大正3年)に大噴火を起こし、流れ出た溶岩で海峡がうまり、それまで島だった桜島が大隅半島と陸続きになりました。火山灰は遠く東北地方まで届いたとされ、火山の力の大きさを示しています。今も活発に活動しており、気象庁が観測を続けています。
